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オープンワールドゲームに革命を起こす「サイバーパンク2077」、Gamescom2018レポート
信じられない人の多さ、洗練されたシューター要素、自由すぎるクエスト、すべてが異次元クオリティ
2018年8月25日 18:26
E3やGamescomといった大規模なゲームイベントでは、様々な新作タイトルに出会う。期待の続編もあれば、未知の新規IP、リバイバル、意欲的なアップデートなど、それらとの出会いは刺激に満ちているが、個人的な経験上、数年に一度のペースでとんでもないゲームに出会う。直近で言えば任天堂の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」がそうだったし、過去作で言えば、「DOOM」、「Half-Life」、「Fallout 3」、「ウィッチャー3」、「METAL GEAR SOLID V」などがそうだ。溢れかえるほどの関係者がデモを見るために列を成し、カウンターは交渉する関係者で混雑し、メーカーエグゼクティブ等のVIPたちが次から次に横入りしていく……。そのショウを代表するゲームだけに見られるお馴染みの光景だ。
2018年、そのポジションにいる唯一無二のタイトルが「サイバーパンク2077」だ。「ウィッチャー」シリーズを生み出したCD PROJECT REDの最新作で、2013年の発表から5年が経過してようやく続報を出したという曰く付きのタイトル。当然、発売時期未定。日本では“「サイバーパンク2077」先輩”とでも呼称すべきタイトルだが、E3 2018のXbox Media Briefingを皮切りに、プロモーション活動を本格始動させたのだ。
GAME Watchでは、E3でデモレポートと、インタビューをお届けしたが、Gamescomでも最新のデモと、クエストデザイナーへのインタビューを行なうことができたので、本稿ではデモレポート第2弾をお届けしたい。
Gamescomのデモは、バージョンアップしているもののE3バージョンとほぼ同じで、言わばこのレポートはE3の焼き直しだ。ただ、このゲーム、非常に複雑かつ奥深いゲームであり、幾らでも新しい光を当てることができる。
さて、デモでフォーカスされているのは3つ。バトル、ナイトシティ、クエストシステムだ。
バトルについては、「ウィッチャー」とはまるで異なる1人称視点の純粋なシューターになっている。デモでは、シンプルな撃ち合いに終始し、特殊なアイテムを駆使した戦いというのは見ることはできなかったが、撃つことによって壁に穴が空くなど、「Battlefield」シリーズで取り入れられているような、リアルタイムでのレベルの変化が取り入れられていたり、バレットタイムが発動できるなど、「Fallout」や「GTA」シリーズのような“RPGがゆえの簡易的なシューター”ではない点に注目したい。「RAGE」シリーズの向こうを張るような本格的なシューターに仕上がっているというのがまず驚きだ。
さらに驚かされたのがナイトシティの作り込みだ。バトル終了後、ステージの奥にいるターゲットの女性を探し出し、救援チームに引き渡してミッション終了となる。シーンは主人公の家に移り、サイバー感溢れる屋内が描かれる。ここでは装備を切り替えることもできるようで、クローゼットにはパラメーターの設定されたジャケットが置かれてあった。
外に出ると、E3トレーラーにも描かれている街ナイトシティを自由に歩き回ることができた。外の景色を見ると、屹立した金属の建物がキラキラ輝いてサイバー感溢れているが、屋内は現代同様汚れており、九龍城的な高密度のスラム的雰囲気を醸し出している。「ブレードランナー」や「攻殻機動隊」の影響が濃厚に感じられる表と裏のあるサイバーシティだ。
驚くべきはそこで描かれている人の数の多さだ。数人、十人というレベルではなく、何百、何千といて、しかも一定の法則に従ってなんとなく歩いているというものではなく、自由な姿勢、体勢で自由気ままに動いており、ぱっと見ではプリレンダーの映像としか思えない。あまりにも信じがたくて、スタッフのコントローラーの動きと、画面の動きがちゃんとリンクしているか確認してしまったほどだ。
主人公は人混みをかき分け、次なるミッションに向けて、様々な人物に出会う。「マスエフェクト」のようなダイアログが表示され、その選択によってストーリーが進み、シナリオが変化していく。移動手段も歩くだけでなく、人の車に相乗りしたり、自身で運転したり、実に多様。すべてシームレスで、ロード無しで行なわれていく。あらゆる点で、従来の常識をぶち破りまくっているゲームだ。
人との出会いで特に印象的だったのは、身体改造を行なってくれる人物だ。改造手術は画面がブラックアウトして終わりではなく、目の交換、右腕の改造がリアルタイムに描かれる。目の交換では、目の前に人物が来て、ガパッと目を外され、新しいものが装着される。生理的に「ウッ」という感じがするが、それによって目が新たにズーム機能を獲得し、さらに視界内のUIに残弾表示が加わったことがわかる。こうした個々のリアルタイムイベントのクオリティがいちいちぶっ飛んでいる。これは5年掛けても完成しないはずだ。
デモの後半では、主人公ら2人は、クルマで郊外にあるギャングのアジトに乗り込み、奪われたクモ型ロボットを取り返しに行く。最高に険悪なムードで交渉が行なわれ、「これはどう見てもドンパチが始まるパターンだな」と思わせておいて、もう一段仕掛けがしてあった。
クモ型ロボットと引き換えに支払ったチケット端末に実はウィルスが仕込まれており、確認しようとコンピューターに接続した瞬間に、施設の電源がシャットダウンし、コンピューターに繋がっていたギャングを殺してしまう。主人公らはこの仕掛けは知らされておらず、コンピューターに接続してアジトの位置を特定させることだけが目的の捨て駒だったのだ。かくしてアジトでは、騙されたもの同士の乱戦がはじまり、最奥にいるアーマーをまとったボスを撃破してデモは終了となる。
このデモは、メインクエストの1つ分ぐらいを駆け足で見せてくれた感じだが、感じ方は人それぞれだ。単純にデモが長すぎて退屈さを感じた人もいれば、複雑なストーリー性に感動した人もいる。筆者はというと、この濃度、密度でクエストを作っていたら、完成までにどれだけ時間が掛かるんだろうと恐ろしくなってしまった。このゲームが「ゼルダ」、「Fallout」、「GTA」クラスに勝るとも劣らないコストとリソースを掛けて開発しているのは間違いなく、2019年中にリリースされれば早い方で、2020年になってもまったく驚かない(原作の年にあえて重ねてきそうな気もする)、というのが正直な実感だ。
オープンワールドゲームのファンの個人的な意見としては、“5年に1度”、いや“10年に1度”のタイトルとして、発売を急がないで欲しいところだ。近年だと「マフィアIII」は発売を急ぎすぎて、多数のバグを残したままリリースして大失敗した。一度下げた評判を取り戻すのは難しく、アップデートで不名誉は回復できない。“この惑星を代表するゲーム”として大事に見守りたいゲームだ。