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「ウィッチャー」のスタッフが贈る「サイバーパンク2077」とはどんなゲームなのか?

圧倒的な情報量が生む、ダークで過激な未来社会のRPG

 今回のE3で大きな話題を集めた作品として「サイバーパンク2077」は外すことができないだろう。E3ではメディア向けのデモプレイ出展のみだったが、その人気は高く、3日間の期間中ブース前の待機列が途切れることがなかったのである。

 「サイバーパンク2077」は、FPP-RPGという、1人称視点でのオープンワールドRPGである。近未来世界を舞台としたSF作品であり、複数の企業が支配する巨大都市「ナイトシティ」を舞台に、主人公はフリーランスの傭兵として様々な仕事をこなしていく。

 本稿では1時間のデモプレイ映像から本作の世界観、演出、ゲームのシステムなど、多彩な要素をピックアップしていきたい。SF好きの少年達が思い描いた危険で過激な未来世界に、どっぷりと没入できる作品である。

【サイバーパンク2077 ― E3 2018 公式トレーラー】

 「サイバーパンク2077」は、「サイバーパンク2.0.2.0.」というテーブルトークRPGを原作としている。TRPGは1990年代にブームを起こした。「D&D」からファンタジー世界を舞台としたTRPGは、その後宇宙開拓や、1920年代のクトゥルフ世界、架空のヒーロー世界など様々な世界を提示したが、サイバーパンク世界を提示したのが「サイバーパンク2.0.2.0.」だ。

 作家のウィリアム・ギブスンが提示した「サイバースペース」という概念はその後多数のクリエイターを刺激し、日本でも「攻殻機動隊」など優れた作品を生み出した。人間の能力を拡張する改造技術、人間の個の認識を越え新たなフロンティアとしてのサイバー空間、国家より力を持つ企業達の戦い、変化していく人々の日常……「人間はどこへ行くのか」、とても想像力をかき立てる世界。「サイバーパンク2077」はそんな未来世界を舞台としている。

人類はどのように進化しているのか、それを提示するのが「サイバーパンク2077」の世界だ

 ゲームの主人公「V(ヴィー)」はカスタマイズ可能で性別や、外見も選べる。ゲームは1人称視点だが、カットシーンなどで外見も映し出される。今回のデモプレイでは「V(ヴィー)」という女性としてでデモプレイが行なわれた。キャラクターには生い立ちの設定なども行なうことができ、クラスとして「ネットランナー」、「テッキー」、「ソロ」の3つが用意されているが、それらの特性を兼ねるハイブリットな育て方もできるという。

 舞台は企業が国家を越え世界を支配している世界、6つの地域がある巨大都市「ナイトシティ」。Vと相棒のジャッキーはフリーランスである。街で起こるもめ事にフリーの立場として雇われ、様々な介入を行なう。まずは行方不明になった女性の捜索だ。

 このミッションは「サイバーパンク2077」のチュートリアルと言えるシーンだ。敵のアジトのドアを開けるとむごたらしく身体を切り刻まれた死体がある。何かの施術の結果なのかはわからないが、「人体を改造する」というこの世界での“常識”がかなりグロテスクなものであることを印象づける。

 ゲームとしては、1人称視点の情報量の多さに圧倒される。FPSでの1ステージに相当する量のオブジェクトがあり、様々な情報が詰まった、圧倒的な密度で世界が構成されているのがわかる。この情報量と密度でオープンワールドを描写しているというのだから、驚くべきものだ。

世界の緻密さ、描画の細かさは驚くべきだ。この密度でオープンワールドを作るというのだから驚きだ
Vの相棒のジャッキー

銃撃戦を経て、薄暗いアジトの奥でVは目標を発見する。彼女は氷の入った浴槽に沈められていた。Vは手のひらからケーブルを抜き出し、彼女の身体に接続して状態を確認する。間違いない、対象だ。彼女は、クライアントの緊急事態にかけつける救急集団「トラウマ・チーム」と契約していたが、信号を阻害するチップを首に挿入されていたのだ。

 Vが首からチップを抜き取ると、直ちにトラウマ・チームに緊急信号が発信された。Vはジャッキーに周りを警戒させ、建物の外に出る。そこで初めて観客に「ナイトシティ」が提示される。香港の街のような、看板だらけのカオスな街。「カラオケ」などの日本語の看板も確認できる。その独特のカオスな世界観はとても魅力的だ。

 外に出たVの前に空を飛ぶ輸送車両が降りてきて武装集団がVを取り囲み、乱暴に女性を引きはがして蘇生処置を行なう。トラウマ・チームのVへの扱いは乱暴なものだが、これがこの世界なのだ。こうしてVとジャッキーはミッションを成功させたのだ。

武装救急サービスを提供する企業「トラウマ・チーム」。クライアントのためなら、時に手段を厭わない

今回のプレイデモではもう1つミッションが提示されるが、その前にゲーム要素を提示するいくつかの場面があった。1つは移動要素、この広いナイトシティをVは車で移動することができる。ダッシュボードなどではレトロフューチャーとも言うべき古めかしい未来の世界観がしっかり表現されており、車の窓越しに見える街の風景も歩いているときとはひと味違う。ドライブもかなり楽しい要素となりそうだ。車に乗っているときは、3人称視点への切り替えも可能だという。

街の移動は車やバイクでも行なえる

 もう1つが、サイバネティックに代表される身体改造の要素。Vはクリニックで“目”の交換と、右手へのフィルム移植を行う。新たな目によって、Vの視界にはオブジェクトの詳細情報など様々な情報が表示されるようになる。さらに戦闘中には神経を薬でブーストさせ、世界がゆっくり動くように感じる能力を獲得する。

 新たな義眼によって得た視覚情報は銃を握る右手ともリンクし、残弾数が視界の隅に表示されるようになり、さらに“跳弾”の弾道を計算できるスキルを獲得した。弾の跳ね返りをあらかじめ計算して、どの角度で銃を撃てばどこに当たるかわかるのだ。この能力を使うことで、隠れた敵も狙えるようになった。

 2つめのミッションにはVはこの拡張された能力で挑む。依頼主の女性は企業の重役。高そうなスーツを着た、いけ好かない女だ。彼女は開発した蜘蛛型ロボットを、ギャングに奪われてしまったのだ。Vとジャッキーは、客を装ってロボットを買い戻すという仕事を依頼される。

依頼主の企業の重役。気にくわない女だ

 ギャング達の待ち受けるアジトに向かうV達。ロボットを受け取り、企業から預かった代金情報が入った端末をギャングに渡す。しかしその端末は企業が仕掛けた“罠”だったのだ。コンピュータに繋がれた端末は、アジトの電気系統をダウンさせ、ジャックイン中のギャング達に殺人ウィルスをまき散らす。V達は最初から捨て駒として扱われたのだ。ウィルスの働きで停電が起こる中、V達はギャングと戦い必死に脱出しようとする。

ロボットを奪ったギャング達

 このトラップでギャングの本拠地を知った企業の兵士がアジトを強襲する。何とか生き残ったVとジャッキーは兵士と共に現場に降り立った依頼主に食ってかかるが、依頼主は涼しい顔だ。企業はやはり信用できない。しかし彼らこそがVの雇い主であり、生活の糧なのだ。Vはこんな過酷な世界で生きている。そういう世界を観客に印象づけて、デモプレイは終わった。

 しびれる様にカッコイイ、魅力的で、エグイ世界観である。「ああ、早くプレイしたい」と強く思わせられた。ダークな世界観が良いし、未来描写の細かさが良い。まずはナイトシティを歩いてみたい。弊誌ではさらに、インタビューで本作の世界に迫ってみたい。