プレイステーション 3/PS Vitaゲームレビュー

英雄伝説 閃の軌跡II(限定ドラマCD同梱版)

軌跡シリーズでロボットバトル!? 騎神戦はパートナーの活用が鍵

軌跡シリーズでロボットバトル!? 騎神戦はパートナーの活用が鍵

ストーリーの要所ではリィンが騎神を召喚。搭乗してバトルとなる

 「閃の軌跡」の終盤で、新たな力“騎神”を手に入れた本作の主人公リィン。サプライズ的に投入された新システムでのバトルは、もちろん「閃の軌跡II」でも重要な役割を果たす。巨大ロボット的な存在はこれまでもシリーズに登場したが、乗り込んで実際にバトルができるのはシリーズ初。シナリオの流れに応じて敵の人型兵器“機甲兵”などと戦いを繰り広げていくほか、ゲームを進めていくと通常戦闘時も召喚が可能となり、怪獣のような巨大ボス“幻獣”との戦いなどで力強いパートナーとなってくれる。

 ロボット同士の戦いでは、頭、胴、腕と狙う場所に応じて体勢崩しの効果が発生、連撃を行ないブレイブポイントを溜めると必殺技の発動が可能に……という所までは「閃の軌跡」を踏襲。「閃の軌跡II」では加えてパートナーによる支援が受けられるようになり、パートナーごとに異なる“EXアーツ”が使えるようになった。EXアーツには騎神の一時強化やバリア、敵のステータス低下などがあり、状況に応じてパートナーを切り替えていくのがバトルの肝となっている。ブレイブポイントを最大まで溜めることで、パートナーと協力して超強力な必殺技を繰り出すことも可能だ。

 物語を進めることで、敵の機甲兵も新型がどんどん投入。モーション、SEともに重厚感あふれるロボットバトルは本作の大きな見所のひとつとなっている。

パートナーのEXアーツは敵のステータスを下げるなどさまざまな効果が。状況に応じてパートナーを切り替えながら使っていく
ブレイブポイントを溜めて必殺技を発動
新型機甲兵も次々に登場する

シリーズを重ねるごとに向上するプレイアビリティ。ロード時間は「閃の軌跡」初期より劇的に改善

 ここまではRPGの華とも言える戦闘を中心に紹介したが、軌跡シリーズのもう1つの柱と言えるのが高い物語性。そしてそれを支えるのが、町の住人ひとりひとりにまでエピソードが用意された、生活感あふれる舞台作りだ。

 ストーリーの進行に応じて町の人々の台詞が代わり、追い続けているとその人なりの物語が見えてくる。とくに士官学院生を主人公とした「閃の軌跡」では、メインキャラクター以外の学院生も個性的な面々で、ストーリーやサブイベントなどで主人公達と絡む場面も多い。交流していくうちにお気に入りの同級生などもできてくるだろう。

「閃の軌跡II」では、さまざまな事情で各地に散らばった学院生達を集めていくのも重要なミッションとなる

 こうした人々に話しかけることでサブイベントが発生したりアイテムが貰えたりと、ゲーム進行上もメリットがある。進行に応じて居場所も変わる人々を常に追いかけるのは結構大変だが、「閃の軌跡」以降ではSTARTボタンで表示できるエリアマップに人の位置が表示され、極力無駄な人捜しが省けるようになった。さらに、各種施設への移動にもショートカットメニューが用意されている。

STARTボタンで表示できるエリアマップには人の居る位置が光点で表示。ダンジョンでは仕掛けの位置なども表示される
町では□ボタンでタウンマップを表示。ショートカット移動も可能だ

 フル3D化と視点の自由回転により、ダンジョンなどでは若干迷いやすくなったが、これもマップ上に足跡(古いものからだんだん薄くなっていく)が表示されることで、どちらから歩いてきたか見失うことがないなど、プレイアビリティへの配慮はますます深まっている。メニューのUIなども軽快かつわかりやすいもので、操作していてストレスを感じることは全くないと言ってよいだろう。

 プレイアビリティの面ではフィールド切り替え時や戦闘開始時のロード時間も気になるところ。「閃の軌跡」はリリース当初、快適にプレイできるとは言い難い状態だったが、その後パッチにより改善している。「閃の軌跡II」ではさらに改善が進んだようで、筆者の環境(SSD換装済みPS3)におけるざっくりとした計測だが、「閃の軌跡」の5~6秒から「閃の軌跡II」では4~5秒へと短縮していた。

フル3D化による“ファルコム芝居”の変化。「閃の軌跡II」ではおおむね満足のいくものに

 二頭身の2Dキャラクターがちょこまかと動き、飛び跳ね、切った張ったを繰り広げるのがこれまでの軌跡シリーズ、ひいてはファルコムRPGの売りだった。それだけに「閃の軌跡」でのフル3D化については期待半分不安半分だったが、実際「閃の軌跡」では、従来であればキャラクターを動かして芝居をしていたような殺陣のシーンが暗転+SEのみとなるなど、演出面でやや物足りなさを感じたのも事実だ。ただ、終盤になってようやくハッタリの効いた集団戦が展開され、続編でのさらなる改善に期待がもてる内容だった。

 こうして迎えた「閃の軌跡II」は十分期待に応える内容で、巨大ロボ同士のバトルも含め、ダイナミックなシーンが展開される。またキャラクター芝居の面では、細かい表情の動きやジェスチャー、身長差の表現など、フル3D化の恩恵を受ける部分も大きく、これらを活かした演出が随所に見られる。

「閃の軌跡」ではやや物足りなさもあった動的演出も「閃の軌跡II」でこなれてきた印象

 「いまどきの3Dゲー」と言ってしまえばそれまでだが、カメラワークも含めファルコムらしい丁寧さは健在。キャラクターのモデリングも含めまだ改良の余地もあるとは思うが、フル3D化については時代の流れもあり、いずれは避けられないものだっただろう。「閃の軌跡」から「閃の軌跡II」への進化具合を見るに、今後さらに期待が持てそう、というのが現時点での評価と言えそうだ。

集大成にして転換点。10年目にしてなお進化をみせるシリーズの今後に期待

 以上、主にシステム・演出面に着目して軌跡シリーズと「閃の軌跡II」について紹介してきた。「前後編の後編を、前編をプレイしていない方に向けて紹介する」という本稿の性質上、「高い物語性が売り」と言いつつストーリーの紹介が最小限となった点はご容赦いただきたい。以下に「閃の軌跡」をプレイしていれば「おおっ」と思うかもしれないシーンを大きなネタバレにならない範囲でピックアップしたので、参考にしていただければ幸いだ。

「閃の軌跡」では実習としてさまざまなことを学びつつ、帝国各地の実情を目にしてきたVII組のメンバー達。「閃の軌跡II」では帝国を揺るがす事態の中、自分達のすべき事を見極めていく。言わば“実践編”といったところだ
リィンは「閃の軌跡」でその片鱗を見せた、自身の内に潜む“力”と向き合っていくことになる
「閃の軌跡」で初登場の高速巡洋艦カレイジャスは、トワ生徒会長以下トールズの学院生に委ねられる
色々な意味で相変わらずな人達
ミニゲームには、リィンの故郷ユミルでプレイできるスノーボードが追加。ジャンプで障害物を避けつつフラッグを取得していく本格的なもので、景品も用意されている
ボードのカスタマイズ要素もあるが、いわゆる“痛ボード”も……

 トールズ士官学院の特科クラス“VII組”の少年少女達を主人公とした物語としては、「閃の軌跡II」でしっかりとした結末を迎えるが、シリーズを追い続けているプレーヤーなら大方予想がついている通り、軌跡シリーズ自体は10年・7作品を経て収束するどころかなお風呂敷が広がり続けている。長く続いているRPGのシリーズは多々あるが、基本的にはそれぞれの繋がりは間接的であったり、多くても数作で世界観がリセットされるものであろう。

 対して軌跡シリーズは、正体不明の結社「身喰らう蛇」とその企みに対抗する人々の戦いを背景に、直接的な続編としてシリーズが続いている。これにはさまざまな意見があるだろうが、筆者としては1つの世界観、1つの時代を多くの作品を通じて描く、“大河RPG”とでも言うべき構想には魅力を感じている。1~2作品ごとに主人公や所属する勢力が変わり、異なる視点で世界と物語が描かれるのも面白い。

過去作で扱いが小さかったキャラクターがメイン級に抜擢されることもままある。こちらは前々作「碧の軌跡」が初登場の“神速のデュバリィ”。敵ながら憎めないキャラクターだ

 とくに「閃の軌跡」と「閃の軌跡II」では、これまでどちらかと言えば敵方として描かれることが多かったエレボニア帝国が舞台となった。1作の中でも登場キャラクターが多く群像劇としての側面が強いが、さらに複数の作品で物語が立体的に構成されるのがシリーズの大きな魅力となっている。

 また、「閃の軌跡II」の終盤ではこれまでにないほど激しい“物語のうねり”を感じさせる出来事があり、ここからいよいよシリーズも佳境に入ってくるのではないかと感じさせられた。ゲームシステム的にも物語的にも“集大成であり転換点”と言えそうだ。

 作品間の繋がりが深い軌跡シリーズだが、「空の軌跡」三部作、「零の軌跡」、「碧の軌跡」二部作、そして「閃の軌跡」、「閃の軌跡II」でそれぞれ一纏めになっており、この中でならどこからプレイしても楽しめる(流石に「閃の軌跡」をプレイせず「閃の軌跡II」から始めるのは無理があるが)。「閃の軌跡」の序章を丸ごとプレイできる体験版も公開されているので、シリーズ未プレイの方や「空の軌跡」までしかプレイしていないといった方も、興味があればぜひ10年かけて培われた“最新の軌跡シリーズRPG”を体験してみてほしい。

(中村友次郎)