(2014/10/12 00:00)
9月25日、日本ファルコムより「英雄伝説 閃の軌跡II」がリリースされた。同社のRPG「軌跡シリーズ」の7作目(世界観を共有しない「那由多の軌跡」を除く)であり、同時に前作「英雄伝説 閃の軌跡」の直接的な続編となる作品だ。
正直な所、実質的に前後編の前編である「閃の軌跡」を最後までプレイした人に「『閃の軌跡II』は買いか?」を語る意味はほぼないだろう。そこで本稿では主にシリーズ未プレイの方、および従来の軌跡シリーズはプレイしているけれどグラフィックスのフル3D化という大きな転換のあった「閃の軌跡」以降は様子見という方に向けて、シリーズ自体の魅力を振り返りつつ、「閃の軌跡」での変更点や、さらに「閃の軌跡II」での改良点などを紹介していきたい。
シリーズを特徴付けるシステム“オーブメント”はセッティング方法が「閃」で一新
軌跡シリーズにおいて、シリーズの顔とも言える独自要素の筆頭が“オーブメント”によるキャラクターカスタマイズだ。産業革命時代をイメージしたというスチームパンク風の世界観において、蒸気の代わりに発達したのが“導力”という架空の技術。これを扱うのが“導力器(オーブメント)”と呼ばれる機械で、主人公達は機械式時計のような形をした戦闘用のオーブメントに“結晶回路(クォーツ)”と呼ばれるパーツを組み込み、さまざまな恩恵を得て戦っていく。
システム的にはステータス向上や攻撃への状態異常効果付与、フィールドでの特殊効果(マップ上に宝箱が表示されるようになるなど)といった機能をもつクォーツを、各キャラクターのオーブメントに複数用意されたスロットへセットしていくというもの。さらにクォーツのセットにより導力魔法(オーバルアーツ、通称アーツ)が使えるようになるが、このセッティング方法が「閃の軌跡」で一新された。
クォーツは火・水・土・風・時・空・幻という7種類の属性に分類されるが、「閃の軌跡」より前の作品ではさらに各クォーツごとに“属性値”が設定されており、オーブメントの中央から伸びる複数のラインに沿ってクォーツをセットし、1つのラインの属性値の合計で使えるアーツが決まるという仕組みを持つ。オーブメントのライン構成は“長いものが1本”、“短いものが3本”などキャラクターごとに異なるほか(1つのラインが長いほど強力なアーツを使いやすい)、セットできるクォーツの属性が固定のスロットなどもあり、こうした制約の中でキャラクターの強化とアーツの使用を両立させる、非常にパズル要素の強いシステムだった。
手持ちのクォーツでなるべく強力なアーツを使うための最適解を考えるのが楽しく、気付けば数時間経っている……なんてこともあるユニークな仕組みだったが、「閃の軌跡」では廃止され、「特定のアーツを使えるようになるクォーツをセットする」というシンプルな方式になった。シリーズのファンとしてはやや拍子抜けの面もあるが、一方で物理攻撃特化・アーツ特化のキャラクターカスタマイズがしやすくなり、従来とはまた別の戦略性も生まれている。
「閃の軌跡II」でも基本は同じだが、「閃の軌跡」でいったん廃止されたスロットのレベルという概念が復活。1つのクォーツで複数のアーツが使えるような強力なクォーツ(レアクォーツ)をセットするにはスロットのレベルアップ(最大レベル2)が必要となる。スロットのレベルアップにはクォーツの作成にも使う“セピス”という素材アイテムが必要となるので、このどちらにセピスを投入するかというリソース配分も戦略要素となっているわけだ。
また、「閃の軌跡II」後半では新要素として“ロストアーツ”が登場。戦闘中に1度しか使えず、全EPを消費する代わりに“HPが200%回復(一時的に最大HPが増える)”など圧倒的な効果を持つもので、物理攻撃特化のキャラクターにもこれ1つだけはセットしておく、といった活用もしやすい。
恐らく次回作以降も大きく方向性は変わらないだろうが、パズル要素はともかく、オーブメントの1つのラインが長いことが、クォーツのセッティング上ほとんど意味を持たない点には何らかの改善を期待したい。キャラクターごとに1つ1つ異なるオーブメントのライン構成は、例えば“全く制約のない1本のライン”でキャラクターの天才ぶりを表現するなど、「ゲームシステムによるキャラクター演出」の面でも大きな意味をもつからだ。
余談ではあるが、設定上は「閃の軌跡」より前のオーブメントは導力技術の本家・エプスタイン財団製、「閃の軌跡」では舞台となる軍事大国・エレボニア帝国のラインフォルト社製となっており、遊び心より実用重視という変化は(意図したものかはともかく)ある意味世界観に沿ったものとも言える。
行動順の制御が肝となる戦闘。“オーバーライズ”でバトルの爽快感と戦術性がアップ!
本作の戦闘システムは、敵・味方が入り交じって順次行動する方式。行動順は画面左端の“ATバー”に常時表示されるほか、ATバーの横にはHP・EP(アーツの使用で消費するポイント)・CP(キャラクターごとに用意された特殊攻撃“クラフト”を使うためのポイント)の回復やクリティカル攻撃確定といった“ATボーナス”のアイコンがあり、行動順を制御してこれをうまく活用する(そして敵に使わせない)ことがバトルのポイントとなっている。
ここで重要となるのが、CPが100以上溜まっていれば行動順に割り込んでいつでも発動できる必殺技“Sクラフト”。また、アーツは詠唱から発動までタイムラグがあるが、これを逆手に取って発動タイミングにあるATボーナスを奪うというのもテクニックだ。このほか敵の行動順を遅らせるクラフトもあり、バトルに「機を伺い、有利な状況を作り上げる」という戦術性を与えているのが特徴だ。
こうしたシステムの根幹はシリーズを通して大きく変わらず定番のものとなっているが、ATボーナスの内容はシリーズを重ねるごとに増えていき、特定のフィールドでは攻撃に即死効果がつくようなボーナスも発生。もちろん敵の攻撃にも反映されるため、とりわけ緊迫感のあるバトルが楽しめるようになっている。
「閃の軌跡」での新要素は、パートナーと連携して戦う“戦術リンク”。敵に攻撃を当てた時、武器の種類と敵との相性に応じて一定確率で“体勢崩し”が発生し、パートナーが“追撃”を行なえる。また、“リンクレベル”が上がると追撃後、残りHPが低い敵に止めを刺す“止めの一撃”などが確率で発動。さらにレベルが上がると、パートナーが攻撃されるとCPが増加する“激昂”、パートナーがアーツを使おうとすると支援して威力を増加する“ブーストアーツ”など、キャラクターごとにさまざまな効果を得ることができる。
リンクレベルはリンクを組んで戦ったり、キャラクター同士の交流イベントなどでリンク経験値を溜めることで向上。そのほか、追撃時に溜まる“ブレイブポイント”を使って、パートナーと同時攻撃する“ラッシュ”やパーティ全員で攻撃する“バースト”も可能と、爽快感のあるシステムだ。
「閃の軌跡II」ではさらに、戦術リンクで繋がっているパートナー同士が数ターン連続行動できる“オーバーライズ”というシステムが追加。戦闘により少しずつ溜まっていくゲージがフルになると発動可能で、発動時にはHP・EP・CPが上昇し、体勢崩しが100%発生、アーツが即時発動という効果があり、ピンチからの復帰や、一気に畳みかける時に活用できる。
同様のシステムは前々作「碧の軌跡」にもあったが、こちらはパーティ4人全員が行動可能だったり、アイテムにより発動用のゲージを即座に溜められるなど、やや強力すぎるきらいがあった。オーバーライズでは使い所や「誰と誰を組ませるか」が重要で、爽快感と戦術性を両立したシステムとなっている。
「閃の軌跡II」では、こうしたシステムのサポートや後述する“騎神”により大ダメージを叩き出すことが可能になった一方で、敵の攻撃も激しく、また高HPかつ自己回復するボスが従来より多い印象。高火力 vs 高火力のガチバトルを堪能できる。
また、パーティに加入できるキャラクターは最終的に15人を越え、特定条件で攻撃の威力が上がるクォーツなどもあり、メンバー編成や効果的なクォーツの組み合わせなど、事前の準備が勝敗を分けることも。もはや“戦略級RPG”とも言える規模になっており、自分なりにベストな出撃パーティを組み上げるのが醍醐味の作品だ。
パーティメンバー自体は状況によって6~7人となり、戦闘に参加する4人以外は控えメンバーとなる。この際、「閃の軌跡」以降では戦闘中にメンバーの入れ替えが可能になったのも嬉しい変更点。従来も控えメンバーがサポート攻撃をしてくれる仕組みなどはあったが、やはりピンチの時などに交替できる方が、総力戦の趣がある。交替時に「後は頼む!」、「任せて!」といった掛け声のやり取りがあるのも演出的にアツいところだ。
そのほか「閃の軌跡II」での地味だが(人によっては)重要な変更として、取得経験値が9,999でカンストしなくなっている。軌跡シリーズは伝統的にレベルが低いほど高い経験値を得られるようになっているため、ザコ戦のエンカウントをなるべく避けた上で戦略と戦術を駆使してボスや固定配置の強敵を倒し、一気にレベルアップというプレイが可能なのだが、カンストの心配がなくなったことで、こうしたプレイを突き詰めるのがいっそう楽しくなった。新たなカンスト値は不明だが、筆者のプレイでは6万程度の経験値を取得できることを確認している。