インタビュー

AC「maimai」開発チーム楽曲配信Vol.2記念インタビュー

洗濯機(?)の形はなぜ生まれたか? など聞いてみた

12月17日収録

「maimaiPLUS」筐体。ドラム型洗濯機のようなデザインはひと目見れば忘れることはないだろう

 12月19日、セガはアーケード用フィジカル&パフォーマンス系音楽ゲーム「maimaiPLUS」(12月13日よりバージョンアップ)に収録されているセガオリジナル楽曲のアルバム第2弾「maimai SEGA Sounds Vol.2 -アダルト・ヒーリング・パック-」(1曲 150円/12曲セット 1,200円)をiTunes Store、Amazon MP3ほかにて配信した。

 それを記念する形で、「maimaiPLUS」開発チームの小早川 賢ディレクターとサウンドディレクターのHiro師匠に、本作企画立ち上げの経緯、独特な筐体デザイン、ゲームやサントラに収録されている楽曲、今後の予定など、様々な質問をぶつけられる機会を得た。

企画立ち上げや筐体デザインについて。
「丸いインターフェースで“舞い”を体現できるものを目指した結果、最終的には洗濯機に落ちついたと(笑)」

株式会社セガ 第一研究開発本部 企画開発セクション ディレクター 小早川 賢氏
株式会社セガ 開発1-1部 サウンドセクション セクションマネージャー/ミュージック・コンポーザー Hiro師匠

――企画自体はどのように始まり、進められていったのでしょうか?特徴的な筐体のデザインのことも含め、お願いします

小早川氏:私が企画を立ち上げまして、Hiro師匠にはかなり早い段階から参加してもらいました。始めは「maimai」ではなく、「○○ダンスマスター」みたいなタイトルでした。プロジェクト当初から“ダンス”というキーワードはあったものの、「とはいえ、ダンスって難しいよね(出来る人が少ないよね)」みたいな話もある中で、「誰でもできるダンスゲームを作ろう」という方向性でまとまりつつ、現在の企画の原型がスタートしました。ボタンだけで手を使って踊らせるというアイデアと、丸いインターフェースを使うという所までは固めてはいたんですけど……この筐体が“洗濯機”になった話をした方がいいんですよね(笑)。

Hiro師匠:ゲームについてですが、最初はマークに対して、右手で押す、左手で押すと決まっていた譜面だったのですが、それだと個人が持っているパフォーマンスが出しにくくなってしまうので、右でも左でもいいようにその規制をとっぱらったんです。筐体は洗濯機ってオーダーしてはいないですよ。ゲームセンターに置いて目立つようにお願いしました。

小早川氏:丸いインターフェースで“舞い”を体現できるものを目指した結果、最終的には洗濯機に落ちついたと(笑)。

Hiro師匠:ゲームセンターに入っても普通の筐体だと印象に残らないじゃないですか。でも、この筐体だと“なにコレ?”となる。つかみとして大事かなと。

小早川氏:(プロジェクトの中で)賛否両論あったんですよ、このデザイン。女性の評判は良かったんですが、年配の男性はこういう斬新なデザインに抵抗があるみたいでしたが、若いセンスを信じ通した結果、“ドラム式洗濯機”になってたみたいな。市場では、カップルの女の子は「遊ぼう」と言ってくれているんですが、彼氏が照れたりしてしまっているのを見かけます。そういうのを見ると、ある意味狙い通りのものに仕上がったのではないかと思います。メカメカしいデザインの頃もあったんですけど、女性デザイナーたちが“怖い”と言っていたんです。怖いのは避けたかったので、角を落としていき、今の形に落ちついたんです。

Hiro師匠:普通、筐体上部には「ビルボード」というゲームタイトルの入った看板のようなものがあるのですが、「maimai」にはないんですよ。ビルボードで「maimai」と伝えなくても、この筐体を見ただけでmaimaiとわかる。工夫もいくつかあります。例えば音の面であれば、ゲームセンターでは音が広がって他のゲームの邪魔をしてしまうようだとボリュームを下げられてしまう。そうなると音楽ゲームとして成立しないので、上にスピーカーを置いて、音が広がらず、プレーヤーが音に包み込まれるよう調整してあります。

――2台が隣接していますが、互いの音が邪魔になってしまったりはしないんですか?

Hiro師匠:同じ曲が流れるのでシンクロだけさせておけば問題ないですね。ハード的には中のボード1枚でコントロールしています。最初はそれぞれ違う曲もできるようにしようというアイディアもあったんですけど、2人で一緒に遊んで欲しいという狙いがあったのでやめました。

小早川氏:いい意味でも悪い意味でも、一緒にプレイしている人間の音が伝わるようにしたかったんです。ボタンの音って結構響くんですよね。隣のボタンの音が聞こえてきて、それが重なった時、気持ちいいんですよ。

Hiro師匠:シンクロモードが1番の押しだよね。最初からあったし。

小早川氏:はい。「2人で揃って遊ぶだけで誰でも注目を集められるような面白い動きになるだろう」という考えが企画当初からあり、2台が隣接している設計については、色々な議論を重ねながらも現在の形に決めていきました。現段階では、音楽ゲームとして楽しめる部分が増えたことで、必ずしも2人である必要がない設計になりましたが、「2人で遊んだ時が一番楽しい」という部分は今もしっかりと残っていると思っています。

――“踊ってみた”の動画があると思うのですが、ニコニコ動画のアップロード機能にはどういう狙いがあったんですか?

小早川氏:音楽ゲームではアピールするお客さんが結構いらっしゃいます。特にダンスジャンルでは、そういう文化があるだろうという仮定を元に“ユーザーさんの姿を発信することを提案できないか”という所からカメラのアイデアはスタートしました。“踊り”というジャンルもそうですが、音楽ゲームは自分の凄さをアピールしたい所があると思うんです。また、人はカメラを前にするといい意味で“バカになる”んですね(笑)。今までかなりの数の動画を上げてもらっているんですが、信じられない程、いい意味でバカバカしい動画を上げて頂いております。コスプレしてのプレイ、片手プレイ、目隠しプレイなど、当初の遊びの幅としてはなかった部分がカメラがあることで広がっています。ニコニコ動画で「maimai動画」をタグ検索してもらえれば、その一旦を見れますので、是非一度ご覧いただきたいと思っています。

Hiro師匠:カメラを使ってどう映るかも遊びなんです。maimaiならではですね。普通のカメラを使って撮影してアップしてもできますけど、それが手軽にできるんです。

(木原卓)