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「3D ギャラクシーフォースII」インタビュー
「スプライトをネオクラシック準拠にしてください」
(2013/7/24 00:00)
「スプライトをネオクラシック準拠にしてください」
奥成氏:とりあえずのレベルでは動きました。で、サウンドもエミュレーションでいけるかも? という話をしていた時に、(グラフィックスは)動いたから、ここから「ネオクラシック」準拠の仕様をスタートさせよう、という話を一方的に始めました。アーケード版の「GFII」がもしそのまま動いたとしても、ファンの皆さんは、みんな「ネオクラシック」を見ているだろうと。だとするときっと見劣りすると思ったんですね。だから「3DS版はネオクラシック準拠じゃないとだめですよ」という話をしたんです。
そうしたら、「半透明は、大丈夫ですよ」とエムツーさんが言うので、「いや、それだけではなくて、ドット絵をネオクラシック準拠にしてください」と。PS2版のときに、エムツーさんがすべてのグラフィックスを4倍の解像度に描き換えてくださったんですから、そういう絵があるのに使わないのはもったいないじゃないですか。
堀井氏:でもそれって、ようやくアーケード版準拠のものがなんとか動いた、という状態で、元の解像度から4倍にしたオブジェクトデータを置いて、ってことですよね。ということは、メモリも4倍食うわけですよ。その時点でアーケード版のデータがメモリに載るかどうかわからない状態で、いきなり4倍にしてくれっていうんだから、かなり御無体ですよね。……お客さんの気持ちというか、僕も遊び手としては、「そのぐらい……もう21世紀も10年経ってるし、やってくれて当然だよな」って思うんですけど、現場的には「ひぃー!」って感じですよね。
奥成氏:3DSの解像度は、400×240ピクセルというもので、左右を除くとアーケード版の解像度に近いんですよね。だから、「アーケード版のグラフィックスでそのまま忠実にドットバイドットが再現できる。だから、アーケード版の解像度で問題ないじゃないですか」ってエムツーさんに言われました。でも、「『GFII』って、敵が後ろから飛んでくる時もあるし、背景も通り過ぎるし、アップになったときのあのギザギザしたやつ(ジャギー)がいやだ!」と。
堀井氏:そうなんですよ。「アフターバーナー」もそうだけど。だから、僕が奥成さんがそう言うかもしれない、ということをわかっていて、「(オリジナル版の移植で)いいじゃないですか!」って言うんですよ。とりあえず。それはね、細かい絵が載せられればそれがいいですけれども……。
奥成氏:だから、「アップの絵が綺麗なほうがいいから、やってみて」ということで(笑)。PS2版の時のような劇的な効果がないのはわかっていたんですけれども、「その効果がまったくないわけじゃないから、それはやったほうがいいんですよ」という話をしました。
堀井氏:もうね……。60フレームでゲームが動くかわかりもしないうちから、「わかった、じゃあやろう」って言って、それまで、全ステージのグラフィックデータを1つにパックしてメモリに詰め込もうとしていたのをやめて、1ステージに使う絵だけをパックして、という切り分け作業をするのは、担当者も「まだ勝算が見えてないけど、その先をやるのか……」という感じですよね。
奥成氏:1ステージごとにハイレゾ(リューション=高解像度)化したグラフィックスを読み出すように作り直さなきゃならなくなったわけです。
堀井氏:ただ、幸い、そういう作業はPS2版のときに1万枚ぐらいあるビジュアルをすべてハイレゾ化していた時に比べれば、はるかに楽なので、やることはできましたね。ただ、うっかりパッキングを間違えたとしても、そこは何も表示されないだけで、バグったりはしないので、間違いに気が付かないかもしれない、みたいな危険もありつつも、とりあえず全部切り分けてパックして、その都度読み出すようにして、3DSのメモリに落とし込みました。当然、まだこの時点では全部60フレームで回るかどうかなんてわかってないわけですが。
――ムチャ振りってこういうことを言うんですね(笑)。
奥成氏:しかもステージ間にロードする時間的余裕はないわけです(「GFII」はスタート時、ステージ選択が可能なため、選択ステージによって呼び出し順が変わることも影響している)。そこもエムツーさんの「超絶技術」で待たせることなく。
堀井氏:超絶技術というよりは、後ろでちまちま皆が努力しているだけです。「本当に泥臭いことをあいつらは延々とやってるに違いない」ってネットで書いてくださっている方がいらっしゃいましたが、明らかにその言葉の通りだと僕も思います。かき集めれば小銭で何かが買えてしまう、という感じで貯金していく感じですね。
――うーん(笑)。うなるしかないです。
堀井氏:奥成さんの「スケジュールは絶対」という裏で「こうしようよ、ああしようよ」というのがズルいよね。本当にズルい。こっそり見習いたい。
奥成氏:(笑)。でもこうして無事にちゃんと高解像度画像で、60フレームで動いているものが完成しました!。結局予定より少し延びたわけですけれども。
堀井氏:あっ! ……でもPS2のときに比べたら全然延びてないですよね。あれは年単位で伸びましたからね。
――(笑)。
奥成氏:いや3DSでも……。
堀井氏:……あ。……ともかく、その甲斐あって、スプライトが拡大しても絵が荒れないですね。わざわざ比較しないとわからないかもしれないですけれど、効果は絶大ですよ。
奥成氏:今回、実は1度ゲームを最後までクリアしていただくと、アーケード版の忠実移植版が選べるようになりますので、高解像度と半透明の恩恵を後から実感していただければと思います。
――アーケード版そのままのものも遊べるんですね!
奥成氏:アーケード版のエンディングが無音なのはオリジナル通りですので驚かないで下さい(笑)。ともかく、おかげで「GFII」も1番いい形のものが3DSで実現できました。「GFII」はPS2のときに1度完成形が示せたと思っていたんですが、唯一どうにもならない弱点が、やっぱり洞窟に入った時に、方向等がよくわからなくなるという問題でした。
そこで立体視なわけです。「立体視にすればわかりやすくなるだろう」ということはわかっていたんですが、今回、作っている途中で、みるみるよくなっていくのが面白かったですね。それが15、20、30フレームとレートがエムツーさんの手でどんどん早くなっていく度に見やすくなっていって、60フレームになった時に、「ああ、本当に見やすくなった」って感じました。60フレームの恩恵なんですけれども、描画が早いと、絵の違いがはっきりするんで。立体視の時の洞窟の描写は、60フレームじゃないとダメなんだ、と。
最初は「洞窟に入ると30フレームになっちゃうかも」という話もあって。それは描画負荷やメモリの問題などがあっての話だったんですけれども、僕はその時は、「ゲームがスローになったりしないなら、それでもしょうがないんじゃない」と言っていたんですが、最終的にほぼ60フレームで回るようになって、30フレームとの差は歴然で。描画にゲームが合ってるんだな、ということを改めて感じましたね。
昔の3Dシューティングを3DSに持っていくことで生まれた立体視の恩恵としては、「3D スペハリ」の時の「迫ってくる柱が避けられるようになった」とか、「2面ボスのIDAが回りながら迫ってくるときに、どこにいれば避けられて、どこにいれば当たらないかがわかるようになった」という部分がありましたが、「GFII」に関しては、洞窟はいわばすべてが柱なので、その境がよくわかります。
堀井氏:宇宙が広いとか、炎の柱が渦巻いて奥に向かって「ガーッ」と進んでいるのがわかるとか、気持ちいいですよね。やってよかった。
奥成氏:このゲームは、立体視に対応させればよくなるだろうな、という予想はしていたんですが、予想以上というか。完全にゲームの中に空間が表現できているなと。3Dポリゴンの立体感とはちょっと違う「存在感」というんですかね、それがすごくよくできているゲームなんだなと。この表現はゲームがポリゴン主導になる直前の、過渡期のロストテクノロジーだったと思うんですが、実は立体視に対応させてみると、「この未来もあってほしかったな」、というような、スチームパンク的な魅力がありますね。スプライトの重ね合わせ3Dというものは。
――「スペハリ」と「GFII」の違いは、「GFII」は洞窟のシーンなどで上下左右をスプライトで埋め尽くしているというところですよね。「スペハリ」は、地面があらかじめ閉じられていて、それをスクロールさせてなめらかにスピード感を出していたけれども、「GFII」の場合は、洞窟なら上下左右を奥から全部スプライトで埋めていくから、ちょっと見え方が違うんですよね。
この手法は「アフターバーナー」ぐらいから始まっていたと思うんですが、スプライトが拡大しながらどんどん手前に送られてくるので、それが高速に流れてしてこないと、見栄えがおかしくなるというか、つながって見えないんですよね。3D立体視にしたときも、そのつながりが綺麗に描画されないと、せっかく深度をつけてもガタガタになってしまうのではないかと。「アフターバーナー」で途中で撃墜されたときとか、スピードが落ちて順にスプライトが横一列に描画される時が気になって……(笑)。
堀井氏:ポリゴンでも、遠くのほうから徐々に描画するものもありましたけどね。
――あれもそうなんですが、違和感がやっぱりあって。「3D GFII」をプレイして思ったのは、やはり深度と描画速度、スプライトの表示スピードのバランスが立体視には重要なポイントなのではないかと感じたんですよ。
奥成氏:さらに、スプライトの半透明処理を加えているのも、綺麗にわかりやすく見えている理由の1つだなと。溶岩の雰囲気や、水が張っているといった雰囲気は、半透明によって綺麗に溶け合っていて、背景が綺麗に見えるなと思う部分ですね。PS2で1回作ったときに「できることはすべてやった」というのが「ネオクラシック」だったわけですが、ハードが変わった事で、レベルが1つ上がったというところがありますね。
堀井氏:「GFII」の元のプログラムの仕組みを調整して、奥から出てくるオブジェクトの数を倍にできないか、という試みをPS2版の時にやってみたんですが、そこはいじれなかったので、今回、3DSで立体視に対応することで別の方法でわかりやすくできてよかった。
――最終面などを見ていると、自分で知覚できるキャパシティが立体視のときと2Dで見ているときの差が大きいなと。
奥成氏:最終面の冒頭、亜空間のワームホールを抜けるステージは、オリジナルで遊んでいるとき、背景がうねうねしているな、エフェクト的にかっこいいところを抜けているな、ということだけだったんですけれども、よくわからなくて、最初の頃はゴツゴツ当たるんですよね。でも今回深度情報を入れて3Dになったら、ちゃんと通るべきルートが見えるんですよ! あの時に見ていたものはちゃんと道だったんだ、とわかりました(笑)。
――そうなんですよ。個人的に、最終面は、空間と背景の境目がわからなくなっちゃってたんですよね。それが立体化されたことで、エッジが見えるようになるというんですか、ポリゴンゲームでいうところの、衝突判定用の透明なポリゴンが見えるようになった感じというか。
堀井氏:あー。
――ここが壁との境で、コリジョン(衝突判定)が付いてます、という部分が見えるというか。あれはなんなんですかね?
奥成氏:人間の眼の問題じゃないんですかね。立体であるからこれが壁で、ここに当たると感じられる。2Dで遊んでいる時はわからない、空間として認識できるというか。
――2Dでプレイしていると、スプライトの重なりの境界線が特に最終面では紛れ込んでしまうように見えるんですよね。立体視でプレイしていると、その境界線がとたんに目の前に浮かび上がってくるんですよね。不思議だなと。
奥成氏:立体情報をもらえれば、眼がそれを認識できるからじゃないですかね。
――「3D スペハリ」の時にも思ったんですが、自分の場合、アーケード版をプレイしているときは、画面情報と自分の認識が完全にはやりとりできていなくて、パターンとして8の字に避けているだけだったんですね。だからビンズビーンも大げさに避けてみたり。それが立体視になることで、それを知覚して自分でちゃんと避けている感、というのが全然違うなと。
奥成氏:「スペハリ」もそうですが、「GFII」は時代に対して早すぎたんだなと。それがようやくゲームとしてより遊べるようになったというところがあるのかもしれません。
――当時は歯がゆかったんですよね。ゲームと瞬間瞬間にコンタクトが取れてなかった気がしていたんですよ。そういう意味で、立体視ができたことで、錯覚かもしれませんが、やっとそれが知覚できて、コンタクトが取れている感覚がするんですね。
奥成氏:そういう意味で、「GFII」がついに完成した、という感じがしますね。
――しますね。
堀井氏:「3D スペハリ」のときと同じなんですが、ぜひ触ってもらいたいですね。
奥成氏:「スペハリ」は2Dで遊べるぐらい敷居が低かったんですけれども、「GFII」の場合は、3Dだと難易度が大幅に下がる気がします。
堀井氏:操作といえば拡張スライドパッドにも対応させましたし。
奥成氏:これも最初はやりません、って言ったのに、「でも開発機材は貸して下さい」って矛盾したこと言ってて。
堀井氏:もともと「ギャラクシーフォースII」は右スティックに左スロットルのゲームだったので、そういう遊び方もできてほしいというのは痛い程わかったので。
奥成氏:もちろん操作設定は細かくカスタマイズできますので、いつもどおり左側でもプレーヤー操作できますのでご安心ください。