インタビュー

「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」インタビュー

さらに続く「3D復刻プロジェクト」!

さらに続く「3D復刻プロジェクト」!

奥成氏:結果として堀井さんの「ギガドライブ」が着々と……。

堀井氏:M2的には、という言い方をさせていただくと、今回のメガドライブのエミュレーターを作って3D立体視化するという目論見が外れて、立体化しやすいメガドライブを拡張したハードの仕様を策定しようということで、僕らの中ではすでに、「ギガドライブ」はセガさん非公認の「セガさんのニューハード」なんですよ。

 これは仕様がはっきりしているんで、どこかに腕のある方がいたら、たぶん同じハードウェアが作れます、というレベルでやっていて。たぶんそのハードウェア上では、「ギガドライブのカートリッジを差せば、立体視の「ソニック」が遊べるし、過去のメガドライブのカートリッジを差せば、メガドライブのソフトが遊べるし、というレベルで、互換性もきっちりとって、今開発をしているので……。

 個人的にはすごく感慨深いんですけれども、みなさん「ギガドライブ」って聞いて、「え? それってどうなの?」っていうのか、「わー!」って喜んでくれるのかわかりませんが、スペックシートを送るんで、掲載してみてください(笑)。

――ギガドライブ (a.k.a. すごいMD)仕様 Draft 1.0――

M2では、架空の1990年代前半に普及した3D TVに対応したとされる、空想
セガハードギガドライブの仕様策定をしています。今後セガさんからリリース
される3D メガドライブは、この空想ハードのスペック(※)に準じた形で作成されます。
万が一にも具現化する事はないと思いますが、万が一になった時の為実際に
メガドライブのカートリッジと互換を崩さず動かす配慮もなされています。
当時は、メガドライブのソフトを3D化した物を皮切りに、少ないとは言い難い数の
ソフトがリリースされたとされています。

 キミも「3D ソニック」をネタにセガ社の空想ニューハードに思いをはせてみないか?

 ※スペックに関してはドラフト版ですので、順次改訂されています

■ ギガドライブはMDと互換性を持つ(無改造MDROMを動かしたときに、MD と同じように動く)

・ 拡張機能制御のための、拡張VDPレジスタを持つ
・ 拡張VRAM を持つ
・ 拡張BG面を 4面持つ
・ 拡張BG面は、面単位またはライン単位で Z値を設定できる
・ スプライトの各々に Z値を設定できる
・ VDPレジスタ、VDP拡張レジスタにメモリマップドでアクセスできる
・ VRAM、拡張VRAM にメモリマップドでアクセスできる

/*
* メモリマップ
*
* $c00000 r/w VDP DATA
* $c00002 r/w VDP DATA
* $c00004 r/w VDP STATUS(read)/CTRL(write)
* $c00006 r/w VDP STATUS(read)/CTRL(write)
* $c00100-$c0012f -/w VDP REGS(write only)
* $c00130-$c0015f -/w EXT VDP REGS(write only)
* $c00200-$c0024f r/w VSRAM
* $c00300-$c0030f r/w DIPSW
* $d00000-$d0ffff r/w 64KB VRAM
* $d10000-$d1ffff r/w 64KB EXT VRAM

――以下、詳細なI/Oマップが続きますが割愛――

奥成氏:まさに「ボクの考えた、『メガドライブパワーアップ』構想」ですね。

堀井氏:最強のメガドライブという物を3DSに中に再現できたら、かなり面白いと思うんですよ。メガドライブらしさを残すために、パレット周りだけは変更してません。4本のままです。

 拡張BG面が4枚増えて……これは右目用と左目用に2枚ずつ。そのBG面がライン単位でZ値を持てる。スプライトにもZ値を持てて。あとは、「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」でVRAMが足りなくなったので、拡張VRAMがメガドライブと同じく64kByte増やされているという感じのハードウェアを作ったので。あとひと押しすれば、ニューハードが具現化するんですよ。販売されないと思いますが(一同笑)。

奥成氏:対応ソフトがないからね(笑)。

堀井氏:そう。ないから。勝手に作るのはやるんですけど、社内で「今回は『プロジェクトギガドライブ』だよ」っていう言い方をすると、みんな「ギガドライブ」という用語を使って週報や日報を上げてきて、「じゃ、こんなことをやろう」という話もできるんで、社内的には非常によかった。数年後には、「パワードリフト」をその上で動かして、世に出すと(にっこり)。やれればいいですね。

――「ギガドライブ」はアーキテクチャー的に言うと、どんなレベルのものなんですか?

堀井氏:PCエンジンがPCエンジンスーパーグラフィックスで拡張したものよりは(スプライトとBG面を倍増させ、メモリ容量を増やしている)、メガドライブをフレキシブルに拡張した感じで。拡張機能のためのVDP(Video Display Processor)機能が増えていて、スプライトの定義テーブルが増えているとか、BG面が6枚使えて、拡張BG面にはZ値が持てるとか、オブジェクトすべてにZ値が持てるとか。それができると、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」が3Dであんなふうにできるということですね。

奥成氏:正直なことを申しますと、今回とてもスペックギリギリだったので、「3D スペースハリアー」や「3D スーパーハングオン」と比べると、若干無くなった部分があります。1つはワイド画面対応。画面の外まで見せるという部分に関しては、やっていません。これはオリジナルに忠実なゲームのバランスを守るという問題もあるのですが。でも額縁も入らなかった。

堀井氏:TVのフレーム(額縁)は本当に付けたかったんですけれども、それをやると、3D立体視のための処理が足りなくなって。描画が増えるんであきらめました。その代わり、立体視モードのもう1つとして、立体視を使ってブラウン管の丸みを再現した「クラシック」モードを付けました。これはかなりいいですよ。「TVっぽいなー」って思ってもらえれば。絵もにじみますし。

画面モードは「ノーマル」と「クラシック」を切り替えられる
「クラシック」では、ブラウン管画面風の画面のゆがみだけでなく、表示もにじむようになっている

奥成氏:曲面再現に関しては、他社さんでもやっていたので、「ああ、あるよね」と思っていたんですが、よくよく画面を見ていたら、にじんでるんですよ。

堀井氏:コンポジットケーブルで接続した時を想定してにじませています。赤のにじみは実機より弱いです。いつかできたらと思います。

奥成氏:コンポジット接続したメガドライブのちょっとボヤッとした感じもうまく再現していて。

――これは、ノーマルの画面にフィルターをかけるような処理がされているんですか?

堀井氏:そうですね。フィルターというか、シェーダー的な感じですね。

――レンダリングする時にさらに処理を加えている感じですね。

堀井氏:そうですね。だからギリギリになってしまって、ブラウン管の額縁が付けられなくて。苦労しましたね。

奥成氏:フル画面やリプレイも入れられなかったですね。メモリも苦しかったので。それぐらいメガドライブを3DSで動かすのは、アーケード(を再現する)の時よりも大変でした。

堀井氏:立体視を切れば、TVの枠を描いても大丈夫だったんですけれどね(笑)。

奥成氏:付加部分はシンプルになりましたが、3DSでメガドライブの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」が動いていて、しかもばっちり3Dです、というところまでは無事達成したので、無事第3弾としてラインナップに参加させることができました。といっても、この3D部分が画面写真では「3D スペースハリアー」など以上にまったく伝わらないんで、歯がゆいんですが。どう3Dになったかを確認したい方は、600円なので、ぜひ買ってプレイしてみていただきたいですね。なんと言っても動いているのを見て欲しいんです。

――ラスター処理部分の立体具合とか、実際に見ていただきたいですね。ラスタースクロールに感動した世代ならなおさらですね。プレイした方に、宝探し的に「ここが違う!」と探していただけるといいですね。

奥成氏:意味なく遠景が見える上ルートに上がってみたくなったり、自分が過去にやったゲームと同じものなのに、全然違って見えるという意味では、「3D スペースハリアー」と同じなのかな、と。メガドライブも今年で25周年なので、メモリアルイヤーに「ソニック」がリリースできて、それもよかったなと。

堀井氏:ラスタースクロールって背景を多重スクロールさせて奥行きをつけようという目的で使われることが多かったので、そこを立体視化するとバッチリですね。

――それがZ値を持っていると考えるとすごいことですね。

堀井氏:そうですね。そこはもう、手間さえかければなんとかなると。

奥成氏:僕は言うだけなんで。

堀井氏:あとは、時間さえあれば……と毎度思いますが(笑)。

奥成氏:今回、メガドライブのアーキテクチャーを3DSで再現することができましたので、今後は、これも積極的に使っていきます。ただ、3Dの向き、不向きがありますので、3Dにしたときに、いいかどうかとか、ダウンロードソフトの開発期間の範囲内で3D化できるか……例えば「ランドストーカー」は実に3D栄えするタイトルなんですが、あれこそ、2Dで描いた究極の3Dなので、アレをもし3D立体視化するなら、イチから作り直したほうが早いかもしれないんですよ。どの程度労力がかけられるか、ということと、効果が出るか、という部分ですね。「バーチャルコンソール」と違って、ただ移植するのではなく、手付けで立体化しているので、その労力に見合うだけのものか、選定が難しいです。

――そういえば、3D復刻プロジェクトのサイト、「3D スーパーハングオン」が更新されたときに開き枠が2つできて、「全4タイトルか?」って言われてましたね。

奥成氏:「『起承転結』で4本出るんじゃないか?」という話にもなっていて。そうすると「ソニック」が「転」の役割を担うことになると(笑)。でも、「3D スペースハリアー」も「3D スーパーハングオン」も反響を頂いて、実際に遊んでくださった方がいろんなところで広めてくださったので、もう少しこのプロジェクトは続きます。……というか実は次は本当にすぐです(笑)。

堀井氏:もう少し続くので、皆さんよろしくお願いします。

――ありがとうございました。今後も期待していますので、がんばってください!

(佐伯憲司)