インタビュー

3DS「3D 獣王記」まさかのオンラインインタビュー!?

オリジナルにはないラスタースクロールや「気まぐれ変身」などの追加要素、
そして気になるシリーズの今後について聞いてみました

5月29日 配信

価格:600円

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 セガは、ニンテンドー3DS用配信タイトル「3D 獣王記」を5月29日に配信する。「3D復刻プロジェクト」第4弾は「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」に続いて、メガドライブタイトルの3D立体視版が登場することになった。

 今回もセガにお邪魔して、本プロジェクトのプロデューサーであるセガの奥成洋輔氏、開発を担当したM2の堀井直樹氏にお話をお伺い……となるはずだったが、実は、前回のインタビュー時点で、次のラインナップが「獣王記」であること、そしてそのリリースまでそれほど時間が開かない予定であることをこっそり教えていただいていた。そして筆者含め、奥成氏、堀井氏の3者間で「苦労はしていますがその内容的に……」、「ネタ的にボリュームが出せますかね……?」、「時間あります?」などと、インタビューをやろうかどうか悩んだ結果、その時点では時間の都合もあり、最新バージョンを見せていただき、解散となった。

 その後、正式に「3D 獣王記」のリリースが発表され、悲喜こもごもの反響をオンラインや口頭などで見聞きし、Twitterで「ウェアベア」の変身シーンを模したアイコンが流行ってみたりと予想外の反応に。そこで、「これだけ反応があるのだから……」と多忙を極める奥成、堀井両氏にお願いし、インタビュー原稿をオンラインでやり取りするという、筆者的には斬新な手法で、改めてオンライン(?)インタビューをさせていただいた。時間のない中、こまごまお聞きしたので、いつも(?)よりはボリュームは少ないかもしれないが、お付き合いいただきたい。

【獣王記】

 1988年11月27日にメガドライブでリリースされたアクションゲーム。

 獣の力を手に入れた男たちが、魔人に捕らえられた女神アテナを救い出すために戦う。2人同時プレイ可能で、まずアーケード版がリリースされた後、メガドライブへの移植版がリリース、という順で登場した。

 獣戦士(主人公)は、白色のラスケルトウルフを倒すと出現する“スピリットボール”を取るたびに、「ノーマルボディ」から、「マッスルボディ」、「マキシマムボディ」へとパワーアップ。マキシマムボディのときに、さらにスピリットボールを取ると精神力が極限状態となり“獣人”へと変身できるのが本作の最大の特徴といえる。

 変身できる獣人はステージによってさまざまに変化する。炎の力を得た狼「ウェアウルフ」、空を自由に飛びまわれる竜人「ウェアドラゴン」、敵を石化するブレスを武器とした熊「ウェアベア」、衝撃波を繰り出す虎「ウェアタイガー」の4つで、獣人になると、いろいろな技が使えるようになり、攻撃力が大幅にアップする。特に対ボス戦での変身は非常に重要な鍵を握る。

【アーケード版】
【メガドライブ版】
プレイステーション 3「セガビンテージコレクション」より
Wii バーチャルコンソールより

「プロジェクトとしてある程度安定してタイトルを供給するために、メガドライブのタイトルは無くてはならなかった」
そして「きまぐれ変身」

――「3D 獣王記」でのインタビュー、お忙しいところすいませんが、今回もよろしくお願いします。

奥成氏:しかしまさか「獣王記」でも(インタビューを)やるとは思っていませんでした(笑)。ありがとうございます。

――早速ですが、「獣王記」はアーケード版、メガドライブ版がありますが、今回はなぜアーケード版ではなくメガドライブ版なのでしょうか?

奥成氏:まず、メガドライブタイトルからの移植は、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」だけでなく、複数続けて行なうことはこのプロジェクトの最初から決めていました。

 プロジェクトがスタートしたのが2年前(2011年)ですが、最初に着手した「3D スペースハリアー」を開発するのに大体1年半掛かってます。「3D スーパーハングオン」は、「スペハリ」の開発がある程度進んでからのスタートでしたが、それでも1年弱はやっています。これまで移植したことのある、元タイトルの中身をよく知っているタイトルでもここまで掛かってるんです。

堀井氏:全くノウハウの無い中、3DSの特性に合わせて作り替える時間が必要でした。動いているプログラマの数こそ多くは無いですが、どうしても時間が要ったのです、1秒間に120枚の絵を描くために。

奥成氏:それにしてもこの期間は想定よりもはるかに掛かりすぎなんですが(笑)。とにかくこのペースで開発を続けると、次のタイトルがまた1年後になってしまいます。それではプロジェクトとしてはまずいわけです。なので、プロジェクトとしてある程度安定してタイトルを供給するために、メガドライブのタイトルは無くてはならなかったんですね。同じシステムのハードであれば、元ハードの解析時間は短縮されるので、作業の効率化が図れますので。

堀井氏:単体の作品をタダ動かすだけなら、やりようもあったかもしれませんが、どうせやるなら後に成果が残る形にしたい。進む道の先に大きな可能性がある道を選びたかった。

奥成氏:メガドライブに移植するタイトルに関しては、Wiiのバーチャルコンソールでの実績をもとに、人気のあったタイトルから中心に開発候補から絞り込んでいった中で、選んでいきまして、そのうちの1つが「獣王記」だったんです。クマのことでネタにされがちですが、「獣王記」は結構人気あるんですよ。

――そうなんですか! タイトルが発表されてから、Twitterではクマさんブームが起きてましたし(笑)。

奥成氏:で、「獣王記」はもともとアーケード版があるわけですが、アーケード版と違って、メガドライブ版の「獣王記」は2重スクロールしていたことがポイントです。これがないと立体視に対応させるための足がかりが作れない。実は、アーケード版って基本的に多重スクロールしないんですよね。

 もうひとつの理由が、裏技にあった獣人のセレクト機能です。各ステージでどの獣人に変身するのか選べるようにできたのはメガドライブ版だけなんですね。

 当時のメガドライブユーザーは、とにかくソフト不足でしたので、1本を長く遊ぶ上で、この機能は非常に有効だったと思うのですが、自分で選ぶだけでは面白くないので、私の場合、友達と遊ぶ時に、あえて目隠しして、友達に適当に選ばせてプレイしたりしたんです。そうすると、自分が何に変身するのかわからないので、ちょっとワクワクするんですよ(笑)。当時のその想いをオートでできるようにしてほしいと思って、M2さんに作ってもらいました。

――今回の「SPECIAL」での追加機能「きまぐれ変身」ですね。

今作の「SPECIAL」は「きまぐれ変身」

堀井氏:開発の見積もりはほぼ例外なく増加方向に外れるんですが、こいつは思ったよりは少ない期間で実装できた奇跡の仕様なんです。遊んでみるとステージとの相性がとても出る。「こんなのできるかー!」という局面も多かったんです。「なんとかしなきゃ」と思っている所に、余ったスピリットボールで再度別のキャラに変身できる仕様をこのプロジェクトでディレクターをやっている松岡が提案してくれまして、時間は掛かったんですけれども、実装したらこれが楽しかったんです。時間が掛かったけど入ってよかったです(笑)。

奥成氏:これを使うと、この後のボスでまずい変身をしてしまったときに、復活のチャンスが生まれるんです。ここにさらなるゲームの奥深さが(笑)。ただ、普通に1人プレイで遊ぶと、最初に3つのスピリットボールを取ったところでボスにたどり着いてしまいます。だから私は、あえて1周目はスピリットボールは2つだけ取って1匹は逃がして、2周目でチャンスを2回に増やしてボスに臨む、というプレイスタイルになってたりして(笑)。

堀井氏:2度外れを引くと観念するとか、そういうのが(笑)。お陰で危うし奇跡の仕様! だったはずなのがなんとかなりました(※後日さらに2P同時プレイ時のデバッグ等で苦労するんですが、それはまた別のお話)。本当は2人プレイの時には別々の獣人に変身できないかも努力したんですが、限られた時間では実現できなかったのが少し残念です。

奥成氏:でも逆に、2人プレイではスピリットボールも出まくるので、間違って取っちゃったりするわけで、そうするともちろん2人とも新たに変身するので、「せっかくウェアドラゴンだったのに、お前、なんでスピリットボール取ってるんだよ!」みたいなことが起きて、これはこれで面白いかと(笑)。

白色のラスケルトウルフを倒すと出現する「スピリットボール」を取るたびパワーアップしていき、3段階パワーアップしている際にさらに「スピリットボール」を取ると、獣化する

2人プレイ時。2人とも獣化している場合はボス戦に突入するが……
2人とも獣化していない場合はボス戦が延期になる

「きまぐれ変身」で「ウェアドラゴン」から「ウェアベア」へ変身したところ。「ウェアドラゴン」の場合は空中に居続けられるが、「ウェアベア」になった途端落下してしまう

――(笑)。

奥成氏:こうしてできたのが「きまぐれ変身」なのです。余談ですけど、この名前を決めるまでにも結構揉めましたね。最初は「ランダム変身」という普通の名前だったんですけど、松岡ディレクターが変えましょうと言い出して。

 いざ実装されたらメニューに「きまぐれ変身」という名前で入っていたんです。あまりの気の抜けた名前に最初イラっとして、すぐに「替えよう!」とダメ出ししたんですよ。「もっと良い案を考えてくる!」と言ってその場は終わったんですが、2、3日遊んでたらなんかすごくなじんできて、翌週の会議では「やっぱりこのままにしよう」って(笑)。

堀井氏:そこは本当に揉めましたねー。ここにあげたネタはあくまで一部ですけど、こんなですよ。

【きまぐれ変身のボツ名称】
 おまかせ変身  サイコロ変身
 ドキドキ変身  ギャンブル変身
 おみくじ変身  驚愕変身
 シュレディンガー変身  不思議変身
 アドリブ変身  みだれ変身
 どばくち変身  闇変身
 ひがわり変身  ミラクル変身
 あいまい変身  ドリーム変身
 あやふや変身  アブノーマル変身


・(変化球ねた)
 シャッフル獣人  ゼウスの悪戯
 獣人ルーレット  変態
 突然変異

 かように沢山のネタから厳選されたのが「きまぐれ変身」です。

――いやー、ネーミング1つとっても、これだけの候補が(笑)。

奥成氏:私も全部は聞いていませんでしたが、片っ端からボツ出した記憶はあります(笑)。

オリジナルでは1枚絵の背景をラスター分割し、さらに立体視に対応!?

――前回のインタビューでのお話から気になるのは、今回の「3D 獣王記」での「ギガドライブ」的な部分ですが、具体的にはどのようになっているのですか?

堀井氏:ギガドライブ部にも現在は大幅な改訂が加わっています。新しいメガドライブタイトルを試す度に、必要な仕様や機能が見えてくるので、前回のドラフト以上にメガドライブの機能にあわせた立体視向けにブラッシュアップしています。

 例えば縦ラスター(※縦分割スクロールのこと)にどういう風に対応するか、等ですね。なんというか、前回のギガドライブは開発初期の仕様でしたね。実働させると、いろいろと意見が上がってくる。現実のハード開発もこんなだったのでしょうか? ……とはいっても、獣王記の時点では「ソニック」とほぼ同じドラフト1.0が使われています。ギガドライブ部ではなく、元ゲームの方をギガドライブ向けにいろいろ手を入れる形になってます。

奥成氏:本当はもっと楽に終わらせるつもりだったんですが、「3D ソニック」の開発を終えてからだと、いろいろ気になってくるんですよ。「どっかもっと3D化できるところがあるんじゃないか?」とか、みんなで無理やり探し始めて(笑)。

ステージ3
最終ステージ

堀井氏:そういう箇所は地味にかつ細々と沢山ありましたね。3面とか予定にない場所も立体視の餌食に。

奥成氏:一部は目に負担になりそうだったのでボツにして元に戻したりとか。後はやはり最終面の空かな?

堀井氏:今回の修正の最たるものですね。もともとはタダの一枚絵でしたが、「ラスター分割してくれ」と言わんばかりの絵だったので、ギガドラ立体視の餌食に……。今では大元のメガドラ版でもラスタースクロールしています。お見せする機会が無く残念ですが(笑)。

奥成氏:アーケード版からメガドライブ版に移植された際に、多重スクロール演出が追加されていたのですが、今回メガドライブからギガドライブに移植する際にも、さらに演出が追加されたという訳です(笑)。

 それから、せっかくなのでサウンドの再現度についても触れさせていただきます。今回の3D復刻プロジェクト進行中、M2さんにサウンドクリエイターの並木 学さんが参加されたおかげで、このシリーズの音の再現度は、過去のM2開発タイトルと比べても、さらに良くなっています。並木さんはプレイステーション 2の「SEGA AGES 2500」時代から、サウンドドライバなどで外部協力されていたんですが、現在は、エムツーのサウンドディレクターという内部の立場でかなり細かく監修していただいています。その並木さん曰く、特にこの「獣王記」は苦労したらしくて。

堀井氏:実機から録音し3DSで出力される波形を見ながら、なぜ差異が出るのか、そしてそれを直すにはどういう手段があるか? 3DSの限られた処理時間の中で実現できるか? のせめぎ合いの中で実現されています……という話だけならまだ良いのですが、M2でサウンドドライバを軽量化する担当は、別の3Dプロジェクトでも重要な行程を担っています。例えば、「3D スペースハリアー」の「HAYA OH」の実装とか(オマケなれど超重要です!)。

 他の3Dプロジェクトが激アツな中、並木からは檄が飛ぶわけですよ。「『獣王記』の低音が出とらん!!」と。結果は是非聞いて頂きたいですね。

奥成氏:初期タイトルの「獣王記」ですらこれなので、今後のギガドライブタイトルでも並木さんはきっと大いに活躍してくれることでしょう。

ローカルプレイ対応も努力の賜物。
次に控えしはメガドライブタイトル、さらに「今回のプロジェクトでもっとも難産」!? なタイトルも?

ローカルプレイの2人同時プレイに対応

――あと、このシリーズで2人プレイができるのは今回初めてですよね。

奥成氏:はい。ローカルプレイでの2人同時プレイに対応しています。オリジナル版にあった要素ですから、あって当たり前の機能なんですが。

堀井氏:あっさり言うよね。

奥成氏:実は、これも実現できるかどうかわからなかったんですよ。私は例によって「VC(バーチャルコンソール)ゲームギアでやったんだから、もちろんできるよね? 同じでいいから」とか軽く言ってたんですが、全然同じじゃないと。

堀井氏:VCの時も簡単じゃなかった上に、今回はより処理が重たいアーキテクチャのマシンですからね。

奥成氏:VCゲームギアのローカルプレイを遊んだことがある人ならご存知なのですが、実は、ローカルプレイは結構内部的にはいっぱいいっぱいで、ある程度表示を機能制限しているんです。

 例えば、VCゲームギアでは、額縁を付けた立体視には非対応なんです。これは「2つの本体のソフトの同期をとるために、ゲームを同じ設定にするのが良い」ということもあるのですが、そもそも3D立体視を載せると、フルスピードが出ないんですよ。

堀井氏:「3D 獣王記」は、もちろん立体視に対応したままローカルプレイに対応しています。「もちろん!」と言える程、ラクラクできた訳ではないとは、説明しましたけど(笑)。

――「3D ソニック」のインタビューで、「ギガドライブ」に移植したものを3DSにもってきた段階で、「すでにいっぱいいっぱいだ」というお話を伺っていたと思っていたんですが、ローカルプレイに対応させる余裕があったんですか?

奥成氏:最初「ローカルプレイは何とか実現させたいと思うけど、リリースは1番後回しにしよう」とか「2Pの時は30フレームになってもいいですか?」とか言ってましたね。

堀井氏:言いましたね。

奥成氏:この辺もギガドライブになったおかげ?

堀井氏:かならずしもそうではないです。立体視を楽にできるメガドライブとしてギガドライブを作りましたが、流石にメガドライブより軽くはならないんです。この辺りは単なる血反吐……もとい、努力(と書いて最適化とルビ)の賜物です。

――「3D 復刻プロジェクト」は第3、第4弾とメガドライブのタイトルが2本続いたわけですが、今後のラインナップも気になります。

奥成氏:次もメガドライブタイトルになります。アーケードタイトルももちろん開発は進めていますが、次に出せると思われるものが、とにかく今回のプロジェクトでもっとも難産でして……。

堀井氏:あり得ないレベルで苦労をしています。「スペハリ」、「スパハン」と3DSに戯れたプログラマが描画の最適化のためだけに助っ人を入れるレベルです。……と、ムダにあおっても仕方ないので、続報をお待ち下さい。

奥成氏:ともかく次のタイトルも、それほど間を開けずにリリースしたいですね。まだ開発途中なので、何とも言えませんが。

堀井氏:本来なら、さくさくリリースしたいトコなのですが、「3D ソニック」でもかなり3D立体視の効果がありましたし、立体視の為にギガドライブも日々ブラッシュアップされていますし、お陰で手付けもかなりイケますし、なかなか引っ込みが付かないですね。

奥成氏:次のタイトルは、もはや3D効果の半分以上は手付けじゃないですかね? 毎週少しずつ3Dの効果が増えていってます。期待していて下さい。

―――とりあえず、ユーザーの皆さんが想像していた「4本で打ち止め」説は突破しているという理解でいいんですね? 「3D復刻プロジェクト」はできる限り続いて欲しいな、と個人的には思っています。

奥成氏:誰も最初から4本なんて言ってないんですが(笑)、皆さんが4本単位で期待してくれたおかげで、自分の中で、この4本までの流れは特別でしたね。ありがとうございます。

 これまでのインタビューを読んでいただければ、ご理解されていると思いつつ、未だに誤解されている方も多いみたいなので、あえてお伝えしますと、今、このペースでリリースできているのは、すべて2年前から仕込んでいたからです。何しろ1本開発するのに数年単位なので(笑)。幸いなことに最初の「3D スペースハリアー」で非常に良い反響をいただけましたので、今後も同様にご支持いただければ、続けていけると思っています。

 そして、さらに大きな反響をいただければ、我々もここまで培った立体化ノウハウで、これまで以上に大きなタイトルに挑戦できますので、引き続き応援よろしくお願いします。

堀井氏:動くとは思えなかったタイトル群が3DSで動きつつあります。この調子でいけばわかる方には驚いていただけると思います。そう遠くない未来にお披露目したいです。

―――むむむ……これからも応援しつつ、お話をお伺いできるチャンスがありましたら、またお邪魔したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

(佐伯憲司)