素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】自由度の高いポージングで波動拳から竜巻旋風脚まで思いのまま。アクションフィギュアの最高峰「S.H.Figuarts リュウ」
2019年1月1日 12:00
【ライター:遠藤浩之】
レトロゲー、格ゲー、自分ツッコミくまが大好物なライター。映画「ボヘミアン・ラプソディ」を鑑賞してからというもの、S.H.Figuartsの「フレディ・マーキュリー」が欲しくてしょうがない。現在プレミア価格になっており購入を断念。再販待っています!(絵:橘 梓乃)
ゲーマーの中では知らないものはいないであろう、世界的人気を誇る格闘ゲームの金字塔「ストリートファイター」。対戦格闘ゲームというジャンルを確立させ、一時代を築いたゲーム史に名を刻む伝説的作品だ。現在の2D格闘ゲームにも多大な影響を与えた本シリーズは、1987年に1作目がアーケードでリリース。30年以上経つ現在でも新シリーズが展開されるほどの人気作だ。
ゲームとキャラクターともに筆者が愛してやまない「ストリートファイター」シリーズの主人公である孤高の格闘家、「リュウ」のアクションフィギュア「S.H.Figuarts リュウ」。店頭で気になっていた商品だが、「ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル」をプレイしたことで自分の中で熱が盛り上がり、思わず手に取ってしまった。作品の思い入れなどを交えながら本商品の魅力を伝えていきたいと思う。
男が惚れる男のカッコよさ! 真の格闘家への道を追い続けるその生き様
MARVELヒーローやタツノコヒーロー、そして最近では「スマブラ」で任天堂キャラクターとも拳を交えている人気キャラクターのリュウ。筆者が初めてその存在を知ったのは、初代「ストリートファイター」の家庭版、アーケードから移植された際に何故かタイトルが変わった、PCエンジンの「ファイティングストリート」だ。
初代の頃から主人公キャラクターとして登場しているリュウだが、1作目の頃と現在とでは大分印象が変わっている。白い道着はそのままに、初代では赤髪に赤いカンフーシューズという出で立ち。キャラクター性も現在の寡黙な感じとは違い、瓦割りのミニゲームでは失敗すると1枚も割れず、手を痛がって観客からブーイングを浴びせられるというコミカルな一面を見せていた。
そんな初代をプレイしていた頃は、キャラクターというよりも純粋に格闘ゲームの面白さに夢中になっていた。敵がめちゃくちゃ強かったり、入力判定が厳しく必殺技が全然出なかったりと、今思うと“結構アレ”なゲームバランスだったのだが、格闘ゲームを初めてプレイした衝撃の前では、そんな粗などまったく目に入っていなかった。
そして、初代ではプレーヤーが操作できるキャラクターは主人公のリュウとライバルのケンの2人のみ。同門同士ということもあって見た目が違うだけでどちらも性能はまったく同じというものだった。そんな仕様であったため、初代は対人戦よりもCPU戦がメインの作品であった。
そして、1991年には待望の続編「ストリートファイターII(以降『スト2』)」がアーケードに登場。爆発的な格ゲーブームを起こした作品だ。プレーヤーキャラクターは前作の2人から大幅に増え、個性豊かな8人から選択できるようになった。誰を使うおうか悩まされるというのが普通だと思うが、筆者は馴染みのあるリュウとケン以外にはさほど興味がなかった。
「ストリートファイター」といったらリュウとケンでしょ。波動拳に昇龍拳でしょ。というような、「ガンダム」でいうなれば“ファースト以外は認めん”というような面倒臭いこだわりを持っていた。この頃からゲームの魅力だけではなく、リュウというキャラクターへの思い入れも強くなり、より一層「ストリートファイター」シリーズにどっぷりハマっていった。
リュウというキャラクターは、“真の格闘家とはなにか?”その答えを見つけるため、世界中を渡り歩き、自分より強い者との戦いを求め続ける生粋の格闘家だ。真の強さへの探究心だけが全てで、悪く言えば究極の格闘バカなのだが、無骨なまでに筋の通った生き様だ。「スト2」のエンディングでは、リュウは大会優勝後、表彰式には姿を現わさず、次の戦いを求めて旅立っていく姿が描かれている。富や名声などリュウにとっては何の価値もないのだ。己の求める答えに辿り着くため、ただ戦い続けるというその姿は男から見てもカッコいい。
飽くなき探究心から力を求め過ぎるがあまり、道をはずしてしまうと“殺意の波動”という破壊衝動に飲まれる危険をはらんでいる。ストーリー上は殺意の波動に飲まれたことはないのだが、IFの設定として何度かゲームに登場している。白の道着は黒く染まり、自我を失い、本能のまま相手の心臓を止めるという危険な存在だ。本来のリュウとは一変する殺意のリュウ。真の格闘家を目指すという目的は殺意の波動を克服する意味も兼ねているのだ。屈強な肉体と精神を持ち、一見超人に見えるリュウも、殺意の波動への恐怖と戦っているという人間臭い弱さを秘めているのも筆者が惹かれるポイントだ。
熱が入って前置きが長くなってしまったが、ここからは「S.H.Figuarts リュウ」を紹介していきたいと思う。本商品のリュウは「ストリートファイター5」の仕様となっており、短髪の髪型が特徴。バンダイの公式ホームページで商品のサンプル画像を見たときは若干細身の印象を受けたのだが、実物を手に取ってみるとそんなことはなく、ゲームのイメージを損なわないガッシリとした体つきであった。太く引き締まった上腕二頭筋は惚れ惚れする造形だ。
顔の造形や全体のシルエットにいたるまで再現度も非常に高く。中でも筆者が感動したのは、道着の質感と塗装だ。ゲーム内でも簡略化されている、道着の刺し子生地の質感(表面がデコボコしている)までも表現しており、製作側のこだわりを強く感じた。そして、道着の塗装もとてもよい。
もともとは真っ白だったものが、年季が入って段々と薄汚れてきている感じが上手く出ている。過去に他社で発売されたリュウのフィギュアは、今日新調しましたといわんばかりの白さでコレじゃない感が強かった。本商品の“長年戦いに明け暮れて汚れきった”この道着こそリュウといえよう。筆者を含む全国のリュウマニアも大満足のクオリティだろう。
ゲームで見たアクションを完全再現できる! ポーズを取る楽しさが詰まっている!!
「S.H.Figuarts リュウ」に付属しているパーツは、「雄叫び」と「食いしばり」の表情差し替え用頭部2つと、波動拳用の手を開いた状態の手首が2つ。波動拳のエフェクトパーツとそれを支える台座。さらに、ゲーム中のステージがデザインされた背景シートも付属している。これでより「ストリートファイター」の世界を再現することができる。
アクションフィギュアの重要なポイントは造形もさることながら、ガシガシ動かしていかにいろいろなポーズをとれるかだ。本商品はどのくらい楽しませてくれるのかと触ってみたところ、これが驚きの稼動域で、S.H.Figuarts史上――いや、アクションフィギュア史上もっとも動きまくるフィギュアなのではないだろうか。本商品は「格闘キャラクター固有の技の再現」をコンセプトにバンダイの最新技術を投入した「新(ネオ)・格闘素体」が使用されており、この技術こそが、これだけの遊びの幅を広げていたのだ。
首を前後に倒すことや足首を立たせたり、さらに、つま先までも稼動させることができる。脚の開閉はきれいに股割までできるほどの稼動域で、これは遊び応えがあると確信した。当然激しく動かすのを想定されており、ジョイント部分がこれでもかというほどゴツイ。ちょっとやそっとじゃビクともしない頑丈な作りになっており、安心して心置きなく遊ぶことができる。
さっそくゲームで見せるリュウのアクションをいろいろ試してみる。初めに試したのは肘打ちのアクション。ゲームでいうところの弱パンチだ。従来のS.H.Figuartsではなかなかカッコよく決まらないポーズなのだが、そこはさすがの新・格闘素体。肘が結構な角度で曲がる。さらに肘から下の前腕部分も上下に稼動できるので、力のこもったポージングができた。
リュウといったら欠かすことのできない攻撃、それはしゃがみ中キック。コンボの要となる攻撃で、リュウ使いなら飽きるほど見たであろうアクション。結構厳しい体勢になるので再現できるかは微妙なところであったが、結果から言うと驚くほど忠実に再現できた! 腿の部分が想像以上に柔軟に曲がることできれいに屈んだ姿勢がとれた。
そのままカッコいいしゃがみ蹴りが決まる。フィギュアでこのしゃがみ蹴りのアクションはさすがにちょっと無理だろうと正直思っていたので、その想像を良い意味で裏切られて感動してしまった。
いろいろなポージングをさせてみたが、複雑なポーズでも難なく再現できる自由度の高さを確信した。通常攻撃のアクションを存分に堪能した後は、やはり必殺技のポーズを決めなくては終われない。
まずはリュウの代名詞でもある波動拳のポーズをとらせることに。手首を波動拳用のものに付け替えて、どっしりと腰を落とせばバッチリと波動の構え決まる。エフェクトパーツも使えばまさにゲームさながらの迫力ある波動拳が炸裂。この再現度はファンにはたまらない。
続いて昇龍拳、竜巻旋風脚、上段足刀蹴りと、どの必殺技もゲームのシーンをそのままにダイナミックなポーズを決めることができた。想像の上をいく自由度の高さで、好きなポーズを自在につけられるというのは動かしていてものすごく楽しい。これぞ真のアクションフィギュアと呼ぶに相応しい出来だと感じた。
今回「S.H.Figuarts リュウ」に触れて、アクションフィギュアはここまで進化したのかと驚かされた。遊びの幅が大きく広がったこの新・格闘素体には無限の可能性すらも感じる。これからもS.H.Figuartsで「ストリートファイター」シリーズが続々展開していくので目が離せないところだ。
これは個人的な願望だが、格闘ゲームファンとしては、「ストリートファイター」だけに止まらず、様々な格闘ゲームのキャラクターをこの素体でどんどんリリースされることを願っている。
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