素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】「魔法の布」を得た指輪の魔法使いの格好良さ、「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーウィザード フレイムスタイル」

題字:浅野雅世
【第22回魂アイテム】
「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーウィザード フレイムスタイル」、11月23日発売、価格は7,884円(税込)。特撮番組「仮面ライダーウィザード」の主人公であり、基本フォームとなるフレイムスタイルの立体化。最大の特徴は下半身の“ローブ”。全高14.5cmというサイズにもかかわらず布は薄く、はためいた形など様々な形で固定できる、アクションフィギュアの新たな可能性を示唆する商品だ

【ライター:勝田哲也】

超合金と洋ゲーを愛するライター。最近は「レッド・デッド・オンライン」にはまり、毎日のように狩りやミッションを楽しんでいる。これから年末に向け仕事も詰まっていく中、ホビー向け企画も考え中。ちなみに筆者が平成ライダーで一番好きなのは「仮面ライダーアギト」(絵:橘 梓乃)

 エンタメ系の仕事をして困ってしまうことは、欲しいアイテムがドンドン増えてしまうことである。特にインタビューはヤバイ。開発者がいかに苦労してその商品を生み出し、魅力を引き出すために努力したか、その商品にどんな思いを込めているか、聞けば聞くほどその商品を手にしたくなる。

 「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーウィザード フレイムスタイル(以下、「真骨彫 ウィザード」)」はまさにそういう商品だった。インタビュー“フィギュアが苦手とする布の表現に、「真骨彫製法」はいかにチャレンジしたか?”にて、「S.H.Figuarts 特撮」シリーズの統括プロデューサーの寺野彰氏と、「真骨彫 ウィザード」の企画担当プロデューサーの岡本圭介氏が熱を持って語ったのは、フィギュアのローブ部分、下半身の布を実現するのにいかに苦労したかだった。

 「実際に商品に触ってみたい」と思うだけでなく、「仮面ライダーウィザード」にも興味がわいた。気が付けば全話を視聴し、「仮面ライダーウィザード」そのものへの思い入れも深くなり、「真骨彫 ウィザード」の発売を心待ちにしていたのだ。今回はモチーフである仮面ライダーウィザードの魅力、そして自由に姿を変え、そしてそのまま固定できる“魔法の布”を獲得した「真骨彫 ウィザード」を語っていきたいと思う。

インタビューを行なった、「S.H.Figuarts 特撮」シリーズの統括プロデューサーの寺野彰氏と、「真骨彫 ウィザード」の企画担当プロデューサーの岡本圭介氏。このインタビューが筆者に本商品の購入を決意させた


フィギュアのポーズ付けに動きを加える、“魔法の布”の素晴らしさ

 「仮面ライダーウィザード」は作中で“指輪の魔法使い”と呼ばれるヒーローである。“ゲート”となる人が絶望したとき、その人の中から魔物・ファントムが生み出され、その人は死ぬ。主人公・操真晴人はゲートでありながら己のファントムを押さえ込み魔法使いとなる資格を得た。

 彼は仮面ライダーウィザードとなり、魔法の指輪の力を駆使して、ゲートとなってしまった人々を守るために戦う。ファントムは仲間を増やすためにゲートを絶望させようと暗躍しており、ファントムに対抗できるのは魔法を使うウィザードだけなのだ。ウィザードは絶望させられそうになるゲートとなった人々の「最後の希望」となり、彼らを守るために戦い続ける。

「魔法使い」、「魔法の指輪」をモチーフとした仮面ライダーウィザード。下半身のローブが独特である

 平成ライダーの大きな特徴と言えるが、仮面ライダーウィザードもまた非常に大胆なデザインである。魔法の指輪がモチーフのウィザードは頭部そのものが指輪そのもののように、顔面はクリア素材の1つの大きなパーツをシルバーの枠で抑え、目の形を形作ったような形状をしている。一見、“のっぺらぼう”のようなユニークな形状だ。

 仮面ライダーの特徴の1つであるいくつものブロックに分かれた胸「コンバーターラング」を思わせる胸も顔と同じクリア素材が使われ、“宝石のライダー”の印象を強めている。ベルトのバックルは手の形をしており、ウィザードはここに指輪をはめた手を重ね様々な魔法を発動させる。

宝石をはめた指輪そのままのような非常に大胆なデザインの頭部
ベルトは手のひらのパーツだけでなく、左右のレバーも可動。劇中のベルトの状態を細かく再現できる
ローブはフチに仕込まれたワイヤーにより複雑な表情付けが可能

 そして下半身である。ウィザードは魔法使いであり、スーツは魔法使いのローブをイメージしており、下半身に膝より長い布が配置されている。この布は左右に分かれており、ウィザードのアクションに合わせ激しくはためく。この布の存在がウィザードのアクションを大きく印象づけている。

 回し蹴りの時、姿勢を低くした時、側転宙返りをする時、それぞれローブは激しく動き、アクションに勢いを与える。また、見得を切るときには自らローブを持ちあげ後ろに跳ね上げるような動作をする。ウィザードの基本スタイルは火の属性を持つフレイムスタイルであり、ローブの布地は赤い。ローブが動くとき赤の裏地が見え、その動きが強い印象を残すのである。

前蹴り、回し蹴り、片膝立ち、ローブを動かすことでアクションに動きが加わる

 「真骨彫 ウィザード」は、アクションフィギュア「S.H.Figuarts」シリーズの最上位である「真骨彫製法」シリーズの商品。人体の骨格までも意識したフィギュアのスタイル、そして劇中のウィザードが自分の前に立っているかのようなリアルな造形、それでいながらアクションフィギュアとしてのバランスの調整まで行なわれている、アクションフィギュアの“最高峰”を追求するシリーズの最新作である。

 「真骨彫 ウィザード」で注目すべきはその下半身を覆うローブだろう。インタビューでも言及したが、全高14.5cmというサイズのフィギュアに布パーツを使う場合、大きな問題となるのが布の厚みである。本商品は薄い布でありながら、フチに配置されたワイヤーで様々な形に固定できるという、まさに“魔法の布”ともいうべきマテリアルを作成したのだ。表は黒、裏地に赤、フチに銀の枠というデザインも再現、この布の凄さを見てみたいがために本商品を購入したファンも多いのではないだろうか。筆者もその1人である。

 実際に動かしてみるとこの布を動かすアクションが非常に楽しい。1つのポーズにさらに布をどう動かせば良いか、“動き”を意識するのである。例えるならマンガのキャラクターを描く際、集中線や流線などの効果線を書き足す感覚に近いのではないだろうか。スーパーマンなどヒーローがマントをまとっている理由が改めて実感できる。このポーズ付けは単純に楽しい。そして自在に曲がり、固定化できる魔法の布の凄さを実感できる。

側転宙返り、ライダーキック。劇中の活躍を再現するのが楽しい

 仮面ライダーウィザードは、このローブを引き立てるためか、その殺陣は足技が非常に効果的に使われていた。ウィザードは足と武器で戦うライダーで、パンチなどの手の技は使わず、腕は合気道のように敵の攻撃を受け流し、いなすために使われていた。ローブをはためかせ縦に、横に回転し、流麗に敵の攻撃をさばきながら戦うウィザードの戦い方を、布の動きで再現したくなるのだ。この布の存在は、アクションフィギュアのポーズ付けの楽しさに、新たな一面を加えてくれたと言えるだろう。


指輪の交換の楽しさ、武器を構えるポーズ付けもどこまでも凝れる

 仮面ライダーウィザードのアクションのもう1つ大きな特徴が“指の動き”である。ウィザードは魔法の指輪を使うライダーである。ウィザードのベルトには魔法石のホルダーがあり、この魔法石を取り替えて様々な魔法を使うのだ。

 左手は属性の魔法をつけフォームチェンジを行ない、右手は「変身ベルト(ウィザードライバー)を出現させる」、「離れたところにあるものを呼び出す」、「ものを小さくする」、「必殺キックを放つ」など様々な魔法を使う。指輪を交換し、ベルトにかざすアクションは何度も画面に登場する。

ウィザードは魔法の指輪を使って戦うライダーだ。劇中同様、指輪パーツを交換し付け替えることができる
指輪のホルダーに魔法石を取り付け、交換できる。指輪パーツは本当に細かく、紛失には気をつけたい

 相手に指輪を見せるように顔の前で手の甲を向けるアクションの他、魔法を発動させる際、アクションの後の“残心”の時も、指先にまで気を使ったポーズをとる。それは発動させる指輪をつけている方の腕だけではなく、もう片方の腕も同様だ。このためウィザードのポーズは片方の腕を大きく横に伸ばし、中指を中心にピンと腕を伸ばしたポーズが多い。「真骨彫 ウィザード」はこの雰囲気を活かすために様々な交換用手首が用意されている。

 凝っているのはこの交換用手首の指輪を交換できることだ。「真骨彫 ウィザード」には属性の魔法石5つと、魔法の指輪4つが用意されている。劇中と同じようにホルダーから魔法石を取り出し手にはめることができる。……しかし、このパーツが非常に小さい。撮影中もとても気を使った。1番大事なフレイムのパーツをなくしかけてしまい、まさに絶望しかけた。管理は非常に気をつけたいところだ。

指の動きを考え交換用手首を付け替える。この時に指輪パーツも付け替える

 そして武器である。ウィザードはガンモードとソードモードに変形できる「ウィザーソードガン」を使う。他のライダーはフォームチェンジに合わせた武器を使っている場合が多かったが、ウィザーソードガンは強化フォームでも使用されかなり印象の強い武器と言える。どちらも回転しながら使用することも多く、流麗なアクションで武器を使用する姿は非常にカッコイイ。

 「真骨彫 ウィザード」ではガンモードとソードモードの変形をパーツ差し替えで再現、こちらの塗装も細かい。そしてベルトと同じように手のパーツが付属しており、この手と“シェイクハンズ(握手)”して必殺技を発するギミックも、商品できちんと再現しており、手のパーツがきちんと開閉する。

 振り向きざま銃を撃つ、鋭い剣先で突くなど、ウィザーソードガンは劇中で長く使われた武器だけに印象的なポーズも非常に多い。「仮面ライダー」では、番組ごとに「多彩な武器を使う」、「1つの武器を使い続ける」といったコンセプトがあるが、ウィザードソードガンはかなり印象に残る武器だ。この武器を使うポーズもローブで表情がつけられるのがとても楽しい。

ウィザーソードガン。2つのモードを差し替えで表現している
シェイクハンズのアクションも再現可能
劇中の活躍をイメージしてポーズをとらせる

 「真骨彫 ウィザード」はかなり人気のアイテムで、発売後店頭で見かけることも少ない。入手するのはちょっと難しい状況ではあるが、手に取ってこの魔法の布に触れて欲しい。ポーズをつける際、ローブを動かす楽しさは他のヒーローフィギュアでは中々味わえないものだ。このローブの技術はバットマンのマントなど、他のヒーローフィギュアでの活用にも期待したい。

 そして「S.H.Figuarts(真骨彫製法)」シリーズのさらなる進化にも注目していきたいところだ。次回作である「S.H.Figuarts(真骨彫製法) 仮面ライダーキバ キバフォーム」はスーツの細かい作り込みを再現したその造形が素晴らしい。こちらも大いに注目していきたいところである。

2019年4月発売予定の「S.H.Figuarts(真骨彫製法) 仮面ライダーキバ キバフォーム」