素晴らしきかな魂アイテム

【魂インタビュー】鋼の筋肉を持つ巨人、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」

イメージを崩さず、しかし全く新しいビジョンを提示

題字:浅野雅世
【第8回魂アイテム】
「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」。2019年2月発売。価格は23,760円(税込)。新たなMETAL BUILDのキャラクターに選ばれたのはエヴァンゲリオン初号機。デザインの生みの親である山下いくと氏自身がデザインをアレンジし、METAL BUILDだからこその表現を突き詰めた商品となるという
【話を聞いたクリエイター】
企画担当であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の洲崎敦彦氏。メカデザイナー山下氏と設計の坂埜竜氏、カラーコーディネーターの広瀬裕之氏といった各クリエイターを繋ぎ、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」を手がけた。アニメの「エヴァ」に関しても深い思い入れを持っており、今回のインタビューでは、その想いが商品に反映されているのがよくわかった

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」はティザーPVが発表されたのと同時に、大きな話題を集めた。最初に提示されたのは本商品の各部を切り取ったいくつかのカットで、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」の全体像は最後近くのカットで大写しになるだけだった。

 しかし、そのカットは強く印象に残るものだった。足を大きく広げ全身をひねって横顔を向けたそのエヴァンゲリオン初号機は、アニメに登場するエヴァンゲリオンのシルエットそのものだったのだ。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」の方向性の一端がはっきりとわかった瞬間と言えるだろう。そして今回、開発途中の最新の試作品を目の前に、本商品の特徴やコンセプト、企画開発者達の思い入れを聞くことができたのだ。

 「METAL BUILD」は独自のアレンジを行なうのが大きな特徴だ。キャラクターのディテールアップを行ない、コンセプトに合わせたデザインのアレンジや、機能の追求、どんなギミックを盛り込むか……その商品開発は他の商品以上に時間をかける。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」に関しては、アニメ本編でエヴァンゲリオンをデザインした山下いくと氏へ商品企画のための話し合いとデザインの発注を開始してから、2年半以上の開発期間がかかっているという。今回、企画担当であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の洲崎敦彦氏に企画からの思い入れ、細かい構造やデザインなど、様々な質問をぶつけてみた。

【METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機 予告ムービー】


METAL BUILDの質感だから表現できる“鋼の筋肉”

 METAL BUILDブランドで、エヴァンゲリオン初号機を! というプロジェクトがスタートし、オリジナルの初号機をデザインした山下いくと氏と話を始めたのがおよそ2年半前だ。「『METALBUILD』というブランドは、その名の通り金属パーツを使用することも大きな特徴としています。山下氏とMETAL BUILDでどのようにエヴァンゲリオンを表現していくかをご相談していく中で生まれたのが、“鋼の筋肉を持つ巨人”というコンセプトです」と洲崎氏は語った。

今回は開発中の試作品を前に、様々な話を聞いた。なお、撮影に使用した試作品は開発中のもので、実際の商品とは異なるので注意して欲しい

 “人造人間”として、劇中でも生物なのか、ロボットなのか、曖昧な場所にいるエヴァンゲリオンだが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では金属の筋肉を持つ存在として定義されているという。筋肉といっても積層の金属筋肉、ワイヤーをより合わせた人工筋肉など、様々なものが考えられる。どのような金属をイメージするかなどを話し合っていったという。

 「鋼の筋肉」というコンセプトがしっかり感じられるのが、股の付け根や、肘などの装甲板の間からエヴァの“肉体”が現われている部分。いくつかのマテリアルが複雑に絡み合っており、特に赤銅色のパーツが目を惹く。メカとしての部品の集合体と言うよりも、生物の筋肉を金属で再現したような、サイボーグの肉体のような印象を受けるデザインとなっている。

メカデザイナーの山下いくと氏のデザイン。凄まじい情報量とアイディアに圧倒される

 開発側の意図としても「関節は金属で見せたい」という意識はあったという。金属をどう使うか、どう見せるか、これまで培った金属の造形、メッキ技術、研磨技術などを使って盛り込んでいきたいと山下氏に伝えた。

 山下氏は“鋼の筋肉を持つ巨人”というコンセプトに関して、「そもそもエヴァンゲリオンの素材は何なのか、人造人間と言うけれども内臓などもあるのかそういうところもわからない。今回“鋼の筋肉”ということで、例えば、板バネ式の金属が積層している筋肉に包まれた巨人というイメージを考えた。生身でできている筋肉を持つ人間でも、腕を曲げるときに耳を腕に当てると筋肉が伸縮する音が聞こえる。エヴァンゲリオンのパイロットならば、操縦しているときに、全身の筋肉が動く音に包まれているのではないか、そういうイメージも込められているともうかがいました」と洲崎氏は語った。

関節部は“鋼の筋肉”というコンセプトが強調されている。鮮やかな金属の色味も、METAL BUILDで培った技術だからこそだ

 そして、金属の筋肉を持つエヴァンゲリオンを表現した本商品のシルエットが描く“しなやかなライン”は、設計担当である坂埜氏がこれまでの様々な商品を手がけた知識と経験から生み出されたものだと洲崎氏は語った。さらに単純に生物的な解釈だけではなく、エヴァンゲリオン初号機らしさまでシルエットを昇華させているのは、坂埜氏ならではの「作品を大事にする」という姿勢が、アレンジを加えたエヴァンゲリオンに、“エヴァらしさ”をもたらしている。「デザインは大幅に変わってるんですけど、間違いなく初号機に見えるんですよ」と洲崎氏は言及した。

 山下氏のこだわり、坂埜氏の思い入れが、唯一無二の「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」を生み出している。「弊社では様々な商品ブランドがあり、それぞれアプローチが違います。今回の『METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機』は、金属の筋肉の表現、デザインのアレンジ、山下氏、坂埜氏、そしてカラーコーディネイターを担当した広瀬裕之氏が生み出した、METAL BUILDだからこそできるエヴァンゲリオン初号機となったと思います」と洲崎氏は語った。

 「METAL BUILDはブランドとして、ガンダムだけではなく、フルメタル・パニック!、そしてマジンガーZまで拡大させていただきました。ユーザーさんからも評価いただいている中で、次のステップではどうすれば良いか、そこで考えていったのがエヴァンゲリオンでした。エヴァンゲリオンはロボットのようでもあるし、生物のようでもある。さらに常に新鮮さを失わない、スタイリッシュなデザインも大きな魅力です。非常に挑戦しがいのあるテーマと考えていました。本商品には、エヴァンゲリオンだからこそできた挑戦、そういう意味を込めてあります」と洲崎氏は改めて本商品のテーマを強調した。

エヴァンゲリオンだからこそできる、しなやかで躍動感のあるポーズ


従来と大きく異なる、しかし間違いなく初号機だとわかるデザイン

 洲崎氏の話を聞いた上で改めて試作品の細部を見てみる。そのデザインはアニメのエヴァンゲリオンのイメージを残しつつ、大きくアレンジを加えられているのがわかる。関節部だけでなく、腹部などの全体のデザイン、角も黒く塗られているし、手足の装甲の形状も、面の出し方も違う、パーツ1つ1つが異なりながら、全体だと“エヴァンゲリオン初号機”にきちんと見えるのが面白い。

 金属パーツは関節だけでなく、随所に効果的に使われている。原型であるエヴァンゲリオンもパーツ分割されている背中は見所の1つであるが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では関節部とは違う明るい色の銀色のパーツを強調している。大きなパーツをプレートが積み重なったような背骨が繋いでおり、金属生命体のような雰囲気がある。胸のプレートも金属感が強調されている。プレートに空いている穴は何かを繋ぐコネクターのようだ。「この奥にコアが隠されているのか」など、想像が膨らむ。

 背中ではアンビリカルケーブルも注目ポイントだろう。ケーブルは今まで出ている商品では皮膜に覆われたワイヤーで表現されることが多かったが、今回のケーブルは太めだ。柔らかい素材でできており、自由に曲がる。コネクター部分のデザインにも、山下氏のこだわりが活きておりでバーニアがデザインされている。映像作品で印象的な、エヴァ本体からケーブルが切り離されたとき、コネクターのバーニアをふかすことで着地時の衝撃を緩和する機能をよりはっきりと演出している様だ。

胸部のアップ、様々なマテリアルが重なっている。複雑な関節構造も確認できる
背中の金属色や、膝の構造など、デザインと可動が両立されているのがわかる

 “エヴァらしさ”を象徴する、背中の可動、足や手の大きな可動も見所の1つ。今回は肩の装甲板を外して撮影してみたが、腕の付け根に引き出し関節が仕込まれており、大きく内側に曲げられるのが確認できた。肩を動かすことで、赤銅色のパーツが現われ、足や肘同様、金属でできた筋肉の雰囲気をきちんと感じさせるのが細かい、装甲板を全部外した“素体”状態の筋肉パーツの分割なども想像させる演出である。

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」がオリジナルの初号機と大きく変わっているのが“肩の装甲板”である。エヴァの肩は大きく上につきだしており、これがシルエットの特徴となっているが、METAL BUILDではこの肩の装甲板が腕から独立し、背中の装甲板に支えられて固定されるようになった。

 これは山下氏自身が、「エヴァが手を動かすと、肩の装甲板が大きく動いてしまうため、シルエットが崩れる」というポイントを改善するためにアレンジ案を出したという。METAL BUILDでは、肩の大きなパーツを薄いパーツで支えるため金属パーツを使用している。このデザインも山下氏によるものだ。

腕に直接接続されていない肩の装甲。背中の支柱で固定されているのが確認できる

 ちなみに、山下氏のデザイン修正案は、洲崎氏と設計担当の坂埜氏をうならせたという。山下氏はCGに直接修正形状を上描きで指示しており、具体的なアイディアとして提案してくれる。その修正は自然で、しっかりしており、まるで元々の画像に山下氏がデザインしたパーツ存在しているのではないかと錯覚してしまうほどだという。指示が的確で具体的であるため、山下氏との意見のキャッチボールでより明確に皆が目指す「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」に近づけたと洲崎氏は語った。

 この他、エヴァンゲリオン商品の定番ギミックとしては、背中部分にパイロットが乗り込む「エントリープラグ」を差し込むものがあるが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」ではあえてオミットしているとのこと。ギミックを組み込むと可動や、デザインにどうしても影響が出る。今回は商品のテーマ、完成度、方向性を考えてあえて入れなかったという。

 商品での洲崎氏のお気に入りのポイントはやはりPVでの足を大きく開いたポーズだという。ロボットの記号をふんだんに使いながら、生物としての艶めかしさを持ったシルエット。きっとエヴァンゲリオンでしか採用しないポーズ、そして「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」を最も表現しているポーズになっているのでは、とのことだ。

 「撮影のために『METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機』の試作品を触って動かしてみたのですが、やはり既存の商品とは全く違うと感じました。手にしたお客さんにとって、オンリーワンの魅力を持った商品になるかなと。この商品だから表現できた、METAL BUILDだから提示できたエヴァンゲリオンになったと思っています」と洲崎氏は語った。

洲崎氏お気に入りの足を開いたポーズ。これこそがMETAL BUILDのエヴァンゲリオンだと伝わるポーズである


武器装備が可能なプラットフォームと追加装甲。広がるプレイバリュー

 もちろん「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は、造形、デザイン、アクションだけでなく、プレイバリューも充実している。大きな特徴としては、山下氏が提示した「追加武装」にある。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」オリジナルギミックとして、太ももにジョイントを接続することで、武器を装備できるようになっている。

 オリジナルのエヴァンゲリオンは、様々な装備が用意されている。肩のアーマーに内蔵されているプログレッシブ・ナイフ、アサルトライフル型のパレットライフル、巨大な槍のソニックグレイブ……これらは戦場である第3新東京市の武装ビルなど各部に収納されており、エヴァはそこから取り出して使用していた。

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では、五角形のジョイントが目立つオリジナルの武器のハードポイントが設定されており、太ももに接続パーツを着けることで、ナイフや大きな太刀「マゴロクソード」など様々な武器を取り付けることができる。ちなみに肩装甲にはデフォルトで六角形のハードポイントが標準装備されており、こちらにも武器が取り付けられる。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では、プログレッシブ・ナイフは肩アーマーに内蔵されておらず、肩のハードポイントに取り付けるという形になっている。

 このほか、足の脛には黒い追加装甲である脛前部アーマー、顔部分にも目を覆う形の追加装甲に交換が可能だ。エヴァンゲリオン初号機はカラーリングとして腕に黒色が使われているが、追加装備をすることで、手足が黒くなる。追加装備を身につけることで、アニメ版のエヴァンゲリオンとは異なる新しいイメージが加わる。多数ある装備を体中に装備し、状況に合わせて運用することができる「フル装備状態」の様な姿にすることもできる。

腿と脛、目を覆う追加装甲を装備。腿には武器を取り付けることが可能に

 また、パレットライフルは玩具らしい組み替えがとても楽しい設計となっている。通常のショートバレルだけでなく、銃身そのものを覆うロングバレル、銃身の下部に取り付けるグレネードランチャー、ナイフを取り付けて銃剣風にもすることができる。銃剣風のナイフ以外にも幅広の刃を持つプログレッシブ・ナイフも用意されており、武装の多彩さも楽しい商品となっている。

 もう1つ、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」を立たせる台座は、アニメでのエヴァを射出する拘束ゲージ風のデザインになっている。腕はまるでエヴァを縛り付けるような手首を固定するパーツが用意されており、想像力が刺激される。ステージ部分はハードポイントと同じ径の穴が空いているため、各種武器を飾ることも可能だ。

 武器を取り付けられる台は「METAL BUILD アーバレスト Ver.IV」などにもあったが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」のものはさらにしっかりとエヴァを固定する。エヴァは格納庫のドラマも多かった。発進シークエンスをイメージした“基地遊び”も楽しいところだ。追加装備により姿の変化、組み替えも楽しめる多彩な武装と、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」はプレイバリューも非常に高いものを目指しているのが確認できた。

パレットライフルは様々な組み替えが可能となっている
台座はエレベーター風に。エヴァを拘束しているような部分も


「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」だから実現できる新しさを!

 ここからもっと細かく「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」をチェックしていきたい。まずは初号機ならではの“暴走”状態を現わす、口の開閉だ。暴走はエヴァをロボットという枠組から外させる大きな要素であり、口が大きく開くことで、パイロットやシステムの制御下にはない、あたかも“生物”であることを強く主張する表現となっている。

 商品では口が大きく開き、口内部には赤い彩色もあり、エヴァの変化をきちんと表現している。首の可動範囲がとても広いため、エヴァならではの猫背のポーズだけでなく、ぐいっと前に突き出すような、より生物らしい表現が可能になっている。

 エヴァは人の制御下で、様々な武器を扱う姿だけでなく、本能で動いているような、生物感むき出しの、野獣のようなポーズもとらせられなくてはならない。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では、手足、背中、そして首の可動で、その表現の“幅”を実現させている。

 装甲の塗装は、あえて艶のないものを使っていると洲崎氏は語った。このつや消し塗装も山下氏と、カラーコーディネーターの広瀬氏とのキャッチボールで導き出されたもの。「巨大な建造物を見るような、霞がかかっているような感じ」というイメージを持たせた質感だという。艶を消す一方で、METAL BUILDとしてのリッチさ、“モノとしての色気”を出すという処理も行なっている。こういった彩色のセンスはカラーコーディネーターの広瀬氏の感性も活きているとのことだ

口を開く。エヴァンゲリオン初号機を象徴するアクションと言える
肩の装甲を外して関節を引き出してみた。赤銅色の塗装は、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」の“肉体”を象徴するポイントだ

 洲崎氏は山下氏らと企画開発を進めていっただけでなく、魂ウェブの企画としてインタビューも行なっているという。こちらは特設ページとムービーで公開されており、山下氏だけでなく、坂埜氏、広瀬氏のコメントも入る非常に贅沢なものとなっている。洲崎氏は山下氏のコメントで「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は、「碇ゲンドウがゼーレに示したエヴァンゲリオン初号機のペーパープランだったのではないか」、という見方が面白かったという。

 「エヴァというのはこういう兵器で、こういった武器を扱え、使徒と戦う存在です」。ゲンドウがゼーレにエヴァという存在を説明するときのイメージが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」にはあるのではないか、そういう山下氏の意見はとても面白い。洲崎氏は山下氏の見解を受けた上で、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」のイメージは、「人間のコントロール下に置かれた存在」という雰囲気が強いのではないか、と語った。

 アニメで描かれるエヴァは謎だらけで、人間の意思から離れた、野獣のような一面を持つどころか、神の領域まで近づく人知を越えた存在である。しかし、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」が素立ちで立っている姿は、ある種、「コントロールされた存在」という雰囲気がある。武器の追加プラットフォームを太ももにつけ、目の部分や足に追加装甲をつけた姿は、一層“制御されている感じ”が強まる。

 洲崎氏はあくまで個人的であるが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」に対して、「きちんと運用されているエヴァンゲリオン」というイメージも持っているとのこと。それが、口を開け、ポーズを変えるだけでイメージが変化する。それこそがエヴァンゲリオンというキャラクターの面白さだろう。

武器を構える「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は、“ちゃんと運用されている”というイメージがある

 「口の形、装甲、顔、身体……細かくチェックすればするほど、『METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機』はアニメ版と同じパーツが1つもないくらいに違っているんです。それなのにちゃんとエヴァンゲリオン初号機だとわかる。それは、やはり山下氏自身にMETAL BUILDのデザインを描き起こして頂いているからだと思っています。エヴァンゲリオン初号機はどういった要素で構成されているか、それを一番ご理解されている方だからこそ、全てが違うのに、エヴァンゲリオン初号機というのが伝わる。そのバランスをきちんと実現できているんだと感じています」と洲崎氏は語った。

 ファンが持つエヴァンゲリオン初号機のイメージを崩さず、それでいて全く新しい、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」でしか提示できない、エヴァンゲリオン初号機の姿。この難しいテーマをどう実現するか、洲崎氏をはじめとした開発チームが本当に気を使い、追い求めたのはそこであるという。ファンに驚きを感じて貰うと同時に、「これは間違いなくエヴァンゲリオン初号機だ」という安心感を持ってもらう、この命題はとても難しいことである。今回、試作品を見る中で、どれだけ難しいテーマに開発チームが挑んだか、改めて実感し、驚かされた。

山下氏のデザインと、修正指示。具体的、かつ視覚的にもわかりやすい修正案は、設計担当の坂埜氏を感嘆させたとのこと

 今後の計画はまだまだ未定とのことだが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」が商品化されたことで、可能性は大きく広がった。零号機、弐号機、量産機といった他のエヴァンゲリオン、また、METAL BUILDオリジナルの企画も考えたいという。ポジトロンライフルやロンギヌスの槍などの大型の武器も挑戦したい課題だとのこと。今後どのような動きがあるかも、楽しみなところだ。

 洲崎氏は「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」で、全く新しい、しかし間違いなくファンに「エヴァンゲリオン初号機だ」と認識してもらえる商品が提示できたのではないか、と語った。ファンに「エヴァンゲリオンの新しい商品か、今回のは何かわからないけどかっこいいぞ!」と思ってもらえる、そういう「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」になっていると感じているという。

 取材した筆者は洲崎氏の想いに強く共感できた。濃いファンの多いエヴァンゲリオンの商品はやはり高いクオリティが求められる。アニメに忠実なものも多いが、山下氏自身のアレンジ商品など、過去に様々な商品が出ている。

 その中で、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は、全く新しいデザインを提示しながら、間違いなくアニメのエヴァンゲリオン初号機のイメージが重ね合わせられ、さらに独自のビジョンと、プレイバリューを提示する、とても魅力的な商品だと感じた。