素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】怪獣ならではの“異形”をたっぷり楽しめる「S.H.Figuarts ツインテール」

題字:浅野雅世
【第7回魂アイテム】
「S.H.Figuarts ツインテール」、6月23日発売、価格は7,560円(税込)。インパクトの強いウルトラ怪獣を商品化。これまでに怪獣フィギュアの技術が活かされ、異形の姿を精密に再現、フレキシブルな可動を実現している

【ライター:勝田哲也】

 「洋ゲーと超合金がメインの仕事」というホビー/ゲームライター。購入したものの記事にできてない商品もあり、この企画のために吟味中である。「ウルトラマン」シリーズでは、このシリーズの前身である「ULTRA-ACT ウルトラマンネクサス ジュネッスブルー」を買い逃したのが結構心残りだ(絵:橘 梓乃)

 今回取り上げるのは、「S.H.Figuarts ツインテール」。「帰ってきたウルトラマン」に登場する怪獣を立体化したアクションフィギュアだ。

 この怪獣を知らない人は、その造形にぎょっとせずにはいられないだろう。逆立ちしたムカデのような姿は、まさに“異形”という表現がぴったりで、強いインパクトをもたらす。今回は、商品の特徴はもとより、ツインテールが指し示した「着ぐるみ怪獣の造形」も語っていきたいと思う。

 そして商品の造形からは、開発者達の強い思い入れが伝わってくる。“ツインテールをフル可動のアクションフィギュアに!”という思いが「S.H.Figuarts ツインテール」を生み出した。今回のレビューでは、「S.H.Figuarts ウルトラマンジャック」と絡めてレビューしたい。


逆立ちしたムカデのようなウルトラ怪獣をアクションフィギュアに!

 「ツインテール」という言葉は、髪型の1つとして知られていて、初音ミクなどのキャラクターイメージで使われる場合が多い。しかし、筆者が小学校の頃、誰も彼もが「怪獣博士」だった昭和50年代は、ツインテールと言えばこの怪獣だった。当時の怪獣図鑑に載っていた「ツインテールはエビの味がする」というネタは、今でも特撮ファンの定番である。

 ツインテールは特撮番組「帰ってきたウルトラマン」の4話と5話という2話に渡り、登場する怪獣だ。この2話では怪獣グドンと共にウルトラマンを挟撃、倒してしまう。4話のラスト、夕日の中で2体の怪獣に挟まれ、追い詰められるウルトラマンの悲壮感はたまらないものがある。帰ってきたウルトラマンは、それまでのウルトラマン、ウルトラセブンよりも敗れてしまうシーンが多く、人間ドラマとしても個人や組織の弱さが強調される傾向があった。夕日の中のピンチのウルトラマンは、作品の雰囲気を象徴するシーンとも言えるかもしれない。

 設定的には、ツインテールはグドンの捕食対象であるが、劇中ではまずグドンとツインテールは共闘してウルトラマンを倒し、その後ツインテールはグドンに追われて姿を消す。2度目の戦いでも最初はウルトラマンを2体で襲うが、MAT(劇中の防衛組織)の猛攻にツインテールは目をつぶされ、ウルトラマンを援護するMATの四方からの攻撃に目標を見失い、グドンを攻撃してしまう。ツインテールは怒ったグドンの反撃にあい、倒されてしまう。その後グドンもウルトラマンのスペシウム光線に倒れ、力を合わせたMATとウルトラマンの勝利で幕が下りる。

ウルトラ怪獣ツインテール。1度見たら忘れられないインパクトの強い姿。“着ぐるみ”の固定概念を破る、衝撃的なデザインである

 「S.H.Figuarts ツインテール」は劇中のツインテールをそのまま縮小したような、リアルな造形が最大のウリだ。改めて見るとその“異形”さに感心させられる。逆立ちしたムカデのような、蛇のような、通常の生き物からかけ離れたフォルムは「ウルトラ怪獣」ならではだろう。頭を下に、胴体をサソリの尾のように逆立てている。昆虫や動物が相手を威嚇するとき、身体を大きく見せるために異様なポーズを取るが、それがイメージだろうか。

 フィギュアでは細かく節くれ立った関節でツインテールの胴体を再現。「S.H.MonsterArts ゴジラ」シリーズの尾の表現で培ったフレキシブルな関節構造を取り入れており、身体を大きく曲げることも、そらすことも可能だ。ツインテールは尾を振り立て、ムチとして相手を攻撃するが、フィギュアでも尾部が大きく曲がり、身体を折るような攻撃態勢を可能としている。

蓄積された技術を活かし、フレキシブルな可動を実現

 触っていて面白いのは、やはり細部のデザインだ。背面を覆う緑のゴツゴツとした突起物はこれが脚なのか、それとも変形した鱗なのか想像もつかないし、正面の赤い身体の無数のしわと、表面に浮かんだオレンジ色の模様は身体を伸ばして細かくチェックしてしまいたくなる。

 顔は、左右非対称の劇中の造形を再現した、不気味だがユーモラスな姿が印象的だ。特に上目遣いでにらんでいるかのような目がインパクトがある。大きな口と共に、いかにもな悪人面で、独特の愛嬌がある。顎の下の造形も力が入っている。

 そして尾部のデザインだ。ツインテールの尾部は大きく横に広がり、中央がより赤く、横に溝が掘られた異様な造形をしている。そしてその上に鮮やかなエメラルドの光を放つ謎の発光器官と、最大の武器であり、名前の由来であるムチ状の2つの尾(ツインテール)を持っている。緑の発光器官はツインテールの弱点であり、ここをグドンに攻撃され倒されてしまう。この尾部の異様さは顔以上に強い印象を与える。フィギュアは尾部の左右にある角のような突起の不揃いさまで表現しており、原型師の強いこだわりが感じられる。

ユーモラスな顔。上目遣いの目、左右で大きく違う顔、大きな口など、不気味さの中にユーモラスさも
謎の発光器官を備えた尾部。想像力がふくらむのがウルトラ怪獣の楽しさだ
模様が描かれた胴体。ひび割れた皮膚も印象的だ
背面。細かい凹凸など、生物としてどのような機能を持っているのか、考えてしまう一方で、着ぐるみを思わせる足の造形もあって、とても面白い

 さらに「S.H.Figuarts ツインテール」には「帰ってきたウルトラマン」の劇中描写を超えたギミックが仕込まれている。「ウルトラマンメビウス」では、ツインテールの別の個体が登場し、新たな能力「深海での姿」を披露する。この時のツインテールは身体を平らに、素早く水中を泳ぎ回る。「S.H.Figuarts ツインテール」はこの姿をパーツを取り外すことで再現可能なのである。平たくなったツインテールはまた新しいイメージがある。

背面パーツを外すことで水中形態に

 ここで少し劇中から離れて、特撮ファンにとってのツインテールの魅力を語りたい。ツインテールは特撮という視点において、やはり特別な怪獣である。特撮の怪獣は中に人が入り演技をする“着ぐるみ”が今でも主流である。着ぐるみはどうしても人間の形になってしまう。レッドキングや、バルタン星人でも、「中に人が入っている」事が容易に想像できてしまう。

 しかし、ツインテールは中に人がどのように入っているのか、驚かされるデザインとなっている。しかも劇中では、頭側に身体を曲げるだけでなく、背中側にも曲げるのだ。実際は演者が逆向きに入り身体を曲げるわけだが、そのフレキシブルな動きは「着ぐるみに人が入っている」という固定概念を持っている視聴者に衝撃を与える。

 「S.H.Figuarts ツインテール」を手に持ち、動かすことで、デザインの面白さ、怪獣をデザインした池谷仙克氏のアイディアの面白さと、挑戦心を感じずにはいられない。フィギュアでは残念ながら胴体を逆向きには折り曲げられないが、そのこだわりに満ちた造形と、練られた関節構造は細かく確認し、動かしてこそ高い満足感が得られる。


ウルトラマンジャックと対決! 並べることで広がるプレイバリュー

 怪獣フィギュアはウルトラマンと絡めてこそその魅力を倍加させる。先行して発売されている「S.H.Figuarts ウルトラマンジャック」と組み合わせた写真も紹介していきたい。ウルトラマンジャックは、長らく“正式名”が決まらなかったウルトラマンである。「ウルトラマン2世」、「新マン」、「帰りマン」……ちなみに筆者は“新マン”世代であるが、公式でウルトラマンジャックときちんと名前が固定されたことはうれしい。小学生の時にソフビを買ってから、筆者にとって1番好きなウルトラマンだ。

体型もきちんと再現された「S.H.Figuarts ウルトラマンジャック」

 ジャックの特徴と言えばウルトラブレスレットだ。宇宙怪獣とも互角に戦える武器として劇中にウルトラ兄弟より手渡されたものだが、「S.H.Figuarts ウルトラマンジャック」では、手首パーツを交換してのブレスレットの有無、手に持った状態の「ウルトラスパーク」、槍状の「ウルトラランス」、十字架の意匠が取り入れられた「ウルトラクロス」と、複数の形態が同梱されている。

 もちろんスペシウム光線、八つ裂き光輪といった光線技のエフェクトも同梱されている。体型も菊池英一氏が演じたジャックの姿を再現しており、握り手パーツも豊富で、劇中の様々な場面を再現したくなるフィギュアである。

ブレスレットは手首パーツを交換して再現
光線エフェクト、ブレスレットの様々な形態、手首パーツなど同梱パーツはとても充実している

 「S.H.Figuarts ツインテール」と絡めて遊んでみたい。劇中の名場面となるのがツインテールがウルトラマンの首に尾を巻き付け、足にかみつくシーンである。「S.H.Figuarts ツインテール」にはこのシーンを再現するための専用の尾のパーツが用意されている。ウルトラマンを苦しめるツインテールの姿は印象的だが、この後、ウルトラマンが手をクロスさせ、ツインテールにダメージを与える不思議な技で引き剥がすシーンがカッコイイのだ。

 ツインテールの登場する「帰ってきたウルトラマン」の4話、5話はMATを中心とした人間ドラマと隊員達の活躍が中心なため、実はウルトラマンと怪獣の対決シーンは短めである。しかし、ウルトラマンが登場し、ツインテールの尾部にチョップを食らわすが、あまりの堅さに手を押さえるシーン、片手を拳、片手を平手のジャックならではのポーズでツインテールと対峙するシーン、ツインテールにがっしりと組み付くシーンなど、番組を見ながら様々なポーズをとらせたくなる。劇中の動きを再現できる楽しさこそ「S.H.Figuarts ウルトラマン」の最大の魅力だろう。

対決シーンをイメージ。ついフィギュアを持ったまま映像をチェックしてしまった
象徴的なウルトラマンを羽交い締めにするシーンは、専用の尾のパーツが用意されている

 ウルトラ怪獣は、どれもが魅力的な存在である。どの怪獣を立体化するか、それはとても難しい選択だ。「S.H.Figuarts ツインテール」はその中でもあえてツインテールを出したい、この“異形”をフィギュア化したいという思いを、強く、強く感じる商品だ。正直、「プレイバリュー」という視点から見ると、動きの変化や、活躍の幅が狭いところもあるが、やはりこの特撮史に残る造形と、アイディア、その見た目のインパクトは、とても魅力的だ。

 この2体に欠かせないグドンも、現在プレミアムバンダイで「S.H.Figuarts グドン」として受注中である。筆者はもちろんも注文済みだ。こちらの受注は9月20日までで、受注生産商品なので、ファンはこの機会を逃さないで欲しい。

 ツインテールとグドンに挟まれ構えを取るウルトラマンの姿は、悲壮感とカッコ良さがあり、「帰ってきたウルトラマン」の中でも特に印象に残るシーンと言える。この姿を再現したい、と思うファンも多いだろう。「S.H.Figuarts ツインテール」は商品単体としてもとても魅力的だが、3体が並ぶ劇中のシーンを再現できるのはまた格別だ。

「S.H.Figuarts グドン」は、12月発売予定で、価格は7,560円(税込)。受注締め切りは9月20日 23時

【プレミアムバンダイで購入】