レビュー

「ソニック × シャドウ ジェネレーションズ」レビュー

「シャドウ」が紡ぐ完全新作のストーリーはファン必見の展開。ドゥームパワーがソニックとは異なるプレイ体験をもたらす

【ソニック × シャドウ ジェネレーションズ】

10月25日 発売予定

価格:6,589円〜

 セガは、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC用ハイスピードアクションアドベンチャーゲーム「ソニック × シャドウ ジェネレーションズ」を10月25日に発売する。

 本作は、ダークヒーロー「シャドウ」が主人公の完全新作「シャドウ ジェネレーションズ」と、2011年に発売された「ソニック ジェネレーションズ 白の時空」をリマスターした「ソニック ジェネレーションズ」の2つのゲームが楽しめるタイトルだ。

 「シャドウ」は、クールで闇を抱えたそのキャラクター性や、誕生の流れとそこにあるストーリーからシリーズファンから高い評価を得ているが、「シャドウ」が主人公として登場した直近の作品は2005年に発売された「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」が最後。ついに、ダークヒーロー「シャドウ」が主人公の完全新作が登場する。

 「ソニック ジェネレーションズ」のオリジナル版となる「ソニック ジェネレーションズ 白の時空」は、「クラシックソニック」と「モダンソニック」が時を超えて、過去シリーズに登場したステージを音速で駆け抜け、懐かしいボスと再戦できるアニバーサリータイトルだった。

 そんなアニバーサリー作品が10年以上の時を経て、現在の最新ハードでプレイできるのはもちろん嬉しい。だがやはり、「ソニック」シリーズのファンとしては、「シャドウ」を主人公とした完全新作タイトル「シャドウ ジェネレーションズ」に注目したい。

 そこで今回は「シャドウ ジェネレーションズ」にフィーチャーして、レビューをお届けしていく。

【『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』ストーリートレーラー】

時空を超えて紡がれる、シャドウの深層に迫る物語

 「シャドウ ジェネレーションズ」で筆者が興味深いと感じたのはそのストーリーだ。ストーリーの核心に触れることは避けるが、「ソニック ジェネレーションズ」の裏側で起きる物語が描かれる。謎のバケモノによる時空異常が発生し、シャドウは不穏な予兆に駆り立てられたため、真実を追い求めるため、スペースコロニー「アーク」へと旅立つのだ。

 シャドウが誕生した場所がまさにこの「アーク」だ。プロフェッサー・ジェラルドがアークで行なっていた「プロジェクトシャドウ」で誕生したのが「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」である。シャドウが初登場した「ソニックアドベンチャー2」、そして「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」にももちろん登場した印象的な場所で、本作の物語はそのスペースコロニー・アークから始まる。このステージ選択は、シリーズに精通したプレーヤーにとっては感慨深いだろう。

シャドウの物語は因縁の「スペースコロニー・アーク」から始まる

 アーク以外にも、シャドウの過去の冒険にまつわるステージが次々と登場する。これは単に懐古的な感情を抱くだけではない。当時の懐かしさ+最新ハードの表現力、そしてステージの世界観はそのままながら、異なるコースと異なるギミックにより新鮮さと懐かしさが混ざり合った体験が生まれている。

 一方、本作で初めてシャドウの冒険に触れる新規プレーヤーにとっては、本作をキッカケに過去作をプレイしてみることで、これらステージの別の側面を体験できるという魅力になっている。過去作にも登場する各ステージに本作で触れた後は、シャドウの物語をさらに深く掘り下げたくなるだろう。

 現行ハードでは遊びにくい過去作もあるため、すべてをプレイするのは難しいかもしれない。だが、シャドウが初登場した「ソニックアドベンチャー2」であれば最近Steamで日本向けに配信されたこともあり、新規ファンがシャドウについて深く知るための格好な作品だろう。

最初のステージは「スペースコロニー・アーク」だ。過去作をプレイしたプレーヤーには鮮明な記憶として残っているだろう
【ソニックアドベンチャー2】

 シャドウに思い入れがあり、彼の物語を知っているプレーヤーにこそ本作のストーリーは深く響く。時空を超えて再構築されたステージは、シャドウの歩んできた道そのものだし、時空異常が発生しているからこそ起きる出来事はプレーヤーの心を揺さぶるのだ。

シャドウのストーリー、シャドウの過去を共に歩んできたプレーヤーほど、心が揺さぶられるだろう

息をのむスピードとルート開拓の楽しさは健在

 「シャドウ ジェネレーションズ」のアクション面として、圧倒的なスピード感について触れたい。「目にも止まらぬ速さ」という文章表現は使い古されていることは筆者も認識している。だが、本作においてこの言葉を使わないのは本作に対して失礼にあたるだろう。

 特に初めてプレイするステージでは、めまぐるしく変わるカメラアングルとド派手な演出が続き、プレーヤーの意識を画面に吸い込んでいく。考える前に指が動き、気がつけば息をするのも忘れるほどの没入感があるのだ。

 さらに、このスピード感に加え、ルート開拓の楽しさも本作の魅力だ。初見のステージでは、足場を踏み外したり、見えていたオブジェクトに掴まれなかったりすることもある。だが、多くの場合これは標準的なルート。「ソニック」シリーズの伝統を受け継ぎ、別のルートも用意されている。

 別のルートにいけばアイテムがあったり、コースをショートカットできたり。もしくは普通のルートを進むよりも敵の数が少ないなど、簡単に進めるようなルートもある。こういったルートの選択が見えるから、本作では何度もステージをプレイしたくなるのだ。

1つのステージに複数のルートがあるのがシリーズの特徴。もちろん、本作にもそのシステムは導入されている

 最初は気づかなかったルートを見つけられるのは楽しいし、難易度の高いルートに入ることができたときはプレーヤースキルが向上したことが感じられる。その先に収集アイテムがあったりすると、さらに達成感を味わえる。それは「ソニック」シリーズの作品の醍醐味であり、本作にも受け継がれている要素だ。

 さらに、本作では各ステージ毎に、ACT1とACT2の2つのタイプが用意されている。ACT1はほぼ3Dで駆け抜けるステージ、ACT2は横スクロールを基調としたステージだ。この2タイプがあるのは、「ソニック ジェネレーションズ」の系譜を受け継いでいる。1つの作品、1つのステージでも、この2つの異なる遊び方ができるのは、プレイの幅を大きく広げているポイントだ。

同じステージでもACT1とACT2でプレイフィールが全く異なる

シャドウの独自能力「カオスコントロール」と「ドゥームパワー」で道を切り開く

 シャドウとソニックの大きな違いであり、本作を特徴付ける最大の要素は時間を止める能力の「カオスコントロール」と、今作から登場するシャドウの特殊能力の「ドゥームパワー」だ。

 まず、時間を止める能力「カオスコントロール」から紹介する。この能力の活用方法は多岐にわたる。序盤のステージでは飛んでくるミサイルを時間停止で受け止めたり、動く足場を一時的に静止させて安全に渡ったりと、比較的単純な使い方から始まる。

 しかし、使い方はそれだけではない。例えば、敵の動きを止めて倒しやすくするといったように、カオスコントロールを使うとより攻略しやすくなるような要素もある。

「カオスコントロール」を上手く使うことでステージを進めやすくなる。使うとゲージを消費するので使いどころが大切だ

 一方の「ドゥームパワー」は、ゲームを進めていくとシャドウが身につける特殊能力だ。特に、「ドゥームパワー」の能力のひとつである、敵を蹴り上げた後遠方に吹き飛ばすと同時に、自身もその場所にワープする「ドゥームブラスト」が印象深い。この能力は単に敵を倒すだけでなく、移動手段としても活用できるからだ。この能力を使うことで、ステージの新たなルートを開拓することができる。

 こういった能力を使って冒険をするのは、ソニックとの明確な差別化ポイントだ。シャドウはカオスコントロールとドゥームパワーを駆使し、同じハイスピードアクションでも、ソニックとは異なるプレイ体験を提供してくれる。

ゲームが進んでいくとドゥームパワーを身につけられる。この能力を使うことで新たな場所に行けるようになる

進化した「ホワイトスペース」は探索とやり込みの宝庫

 そして、ステージをクリアしたりボスを倒す以外のもう1つのコンテンツとも言えるのが「ホワイトスペース」という空間だ。「ホワイトスペース」からプレーヤーが挑戦する各ステージに飛び込んで行くのだが、単なるステージセレクトを超えた、ゲームの重要な要素として機能している。

 「ホワイトスペース」自体は「ソニック ジェネレーションズ」にも登場しているが、あくまでも平面的な空間だった。だが、本作では驚くほど立体的で奥行きもある3D空間へと進化している。

 3D空間なので、上下左右はもちろん、奥行きまでも自由に移動できる。グラインドレールやスプリングなどのギミックも配置されており、これらを活用しながら探索を進めていくのだ。この自由度の高さは、ミニゲームといったボリュームではなく、本作における1つのコンテンツとも言えるだろう。

 ホワイトスペースを探索する最も大きな目的は、次のステージへ進むためのゲートを見つけることだ。新しいドゥームパワーを獲得することで、ホワイトスペース内でできるアクションや、行ける場所が広がっていくのだ。

 ホワイトスペースの魅力は、その密度にもある。マップだけを見ると狭く感じたのだが、実際に探索してみると驚くほどの密度と広がりを持っている。特に上下の移動範囲が広く取られているため、体感的な広さは想像以上だ。

「シャドウ ジェネレーションズ」の「ホワイトスペース」は3D空間として描かれている。そのため、このスペースを探検する楽しさがあるのだ

 そんなホワイトスペースでは「コレクションアイテム」を探すのも重要な要素だ。通常のステージで見つけた「コレクションキー」を使って、ホワイトスペース内のコレクションアイテムをアンロックしていく。

 各ステージに複数存在するコレクションキーを見つけ出すこと、そしてホワイトスペース内でコレクションアイテムを探索する2段階の探索が楽しめる。これにより、メインストーリーをクリアした後も長く遊べるコンテンツとなっているのだ。そして、このオブジェクトをアンロックするとコンセプトアートや、過去作のBGMなどを見たり聴いたりすることができる。これを集めることがファンにはモチベーションの1つになるだろう。

ホワイトスペースでコレクションアイテムを集めるのも楽しい。膨大な数が配置されているので、これらを集めるだけでもかなりのボリュームになりそうだ

今プレイしても色褪せない「ソニック ジェネレーションズ」の魅力

 冒頭でも紹介した通り、本作には「ソニック ジェネレーションズ 白の時空」のリマスター作品も遊ぶことができる。ここまで「シャドウ ジェネレーションズ」を紹介してきたが、「シャドウ ジェネレーションズ」は「ソニック ジェネレーションズ」の裏で何が起きていたかが描かれる。そういう意味で表裏一体の作品なのだ。

 例えば、ACT1とACT2で3Dアクションがメインか横スクロールがメインになるかが変化するのは「ソニック ジェネレーションズ」でもそうだし、ホワイトスペースがあるのもそう。過去作のアートワークなどを見られるのも同様だ。そういった意味でもアニバーサリー作品としてファンに愛された作品なのだ。

「ソニック ジェネレーションズ」でもACT1とACT2で異なるゲーム体験を提供している

 「ソニック ジェネレーションズ」はただのリマスター作品ではなく、新しい要素も追加されている。ステージ内に隠れているチャオを探す「チャオレスキュー」もそうだし、ジャンプして着地直後にそのままダッシュできる「ドロップダッシュ」という新アクションも追加されている。当時の作品をやりこんだプレーヤーにも新しい体験を提供してくれる。

「チャオレスキュー」や「ドロップダッシュ」といった新要素も追加されている

 今年の12月27日に公開される映画「ソニック × シャドウ TOKYO MISSION」でもシャドウがフィーチャーされており注目を集めている。そういう意味では、本作でシャドウの物語を改めて体験するのは絶好のタイミングだろう。

【ソニック × シャドウ TOKYO MISSION】

 シャドウファンはもちろん、新たにシャドウの魅力に惹かれたファンも含めて、この影のヒーローの魅力を存分に味わえる作品だ。本作はプレイ時間が数十時間に及ぶ大作RPGではない。だが、ギュッと凝縮された物語の中に、シャドウという複雑な英雄の一筋縄では行かない思いや感情を鮮明に感じ取ることができる。

 短くも濃密な体験を通じて、プレーヤーはシャドウの内面に迫り、彼の抱える闇と光、そして彼が歩む道のりを共に体験できるのだ。「ソニック × シャドウ ジェネレーションズ」は、まさにシャドウの魅力を凝縮した、ファン必携の一作と言えるだろう。