レビュー
Meta Quest版「トライアングルストラテジー」レビュー
ミニチュアのように目の前でユニットを操作できる! VRならではの没入体験が楽しめる作品に
2024年10月22日 18:00
- 【Meta Quest版 トライアングルストラテジー】
- 11月1日2時 発売予定
- 価格:3,990円
スクウェア・エニックスより11月1日に発売されるMeta Quest版「トライアングルストラテジー」。本作は2022年3月に発売された同名のタクティクスRPGをVRゲーム化したもので、ストーリーはそのままにVRならではの新たな体験が楽しめるようになっている。
すでにリリースされているNintendo Switch/PC版と最も大きく異なるところは、自分の目の前に立体的なオブジェクトとしてマップが表示され、その中でまるでコマを動かしていくように自分のユニットを操り、戦闘が楽しめるところである。それ以外にもVRらしい演出が多数盛り込まれており、ゲームの世界に没入できるようになっているのだ。
リリースに先駆けて、本作とMeta Quest 3をお借りしてひと足お先にゲームをプレイする機会がもらえた。本稿では、そこからわかったゲームの特徴や魅力についてレビューしていく。
かわいい見た目とは異なる重厚でリアル志向なストーリーが展開
まずは「トライアングルストラテジー」がどんなゲームなのか知らないという人のために、ゲーム内容についてご紹介していこう。本作の舞台となるのは、ノゼリアと呼ばれる架空の地域である。ノゼリアには3つの国が存在しており、それぞれが貴重な資源である塩と鉄を巡った塩鉄戦争を起こすという歴史を持っている。
その塩鉄戦争から30年のときが流れ平和が訪れていたのだが、エスフロスト公国の新総帥になったグスタドルフがある事件を契機にグリンブルク王国へ侵攻を開始し、ふたたび戦乱の時代が訪れてしまったのである。プレーヤーは、グリンブルク王国に仕える御三家の筆頭・ウォルホート家のセレノアとなり、自分の軍を率いて困難に立ち向かっていくのである。
ゲーム内に登場するキャラクターたちは、スクウェア・エニックスがお得意とする3DCGとドット絵を融合したHD-2Dで描かれている。そのため、物語的にも勧善懲悪なストーリーが展開されるのかと思っていたのだが、これがいい意味で裏切られた。
ドラマや物語でたとえるならば「ゲーム・オブ・スローンズ」や「三国志」のように、比較的重要な人物であっても死んでしまった場合は2度と生き返ることはない。また、たとえ敵対する相手であっても状況によっては手を取り合ったり、裏切ったりといったことも繰り返されていくのである。
それぞれの国はそれぞれの思惑で動いているのだが、主人公のセレノア率いるウォルホート家もそうした国同士の状況に流されつつも、自信の意志で道を切り開いていくことになる。しかし、その選択は必ずしも何が正しいのかは誰にもわからないのだ。ときには信念を貫き、時には妥協をしなければならない場面もあるのだ。そして、そうした判断が物語自体にも大きな影響を及ぼしていくことになるのである。
セレノアたちが置かれている状況は常に困難の連続となっており、ときには友を敵に差し出すべきかどうか、大きな決断を迫られることもある。身内のなかでも意見が分かれるなど、決断に迷う場面で登場するのが、「信念の天秤」だ。これはウォルホート家に伝わるならわしで、道に迷ったときはそれぞれの意見を持つものが投票を行い、多数決で進むべき道を定めるというものである。
ストーリー面でいうと、本作はマルチエンディングになっており、それぞれ異なる展開が待ち受けている。今回のプレイでは、ひとつのエンディングまで進むことができたのだが、必ずしもハッピーエンドとはいえないが納得感のあるものとなっていた。しかし、あのとき別の決断をしていたらどうなっていのか?といったifストーリーが気になるのもたしかだ。
ちなみに本作では、どこでストーリーが枝分かれしているのかをゲーム内で常に確認することができる。1回あたりのプレイ時間はそこまで長いというわけではないため、異なる展開になっているところをやり直してみるというのも、このゲームの楽しみ方のひとつといえるだろう。
VRならではの演出と操作感でよりゲームの世界に没入できる!
ここからはMeta Quest版で何が変わったのか?という部分についてご紹介していこう。細かなものもいくつかあるが、このゲームに登場するVR的な演出は、大きく2種類に分類することができる。
ひとつは、情勢を説明するナレーションやストーリーが展開されていくドラマ部分だ。こちらは巻物が広がっていき、そのなかで映像が流れるといったスタイルになっている。それだけではなく、より臨場感が増すようにシーンごとの演出も加えられているのだ。
たとえば、夕方のシーンでは背景もそれっぽくなり、夜ならば星空が輝いている。また、雨や雪といった天候のときは、画面いっぱいにそのエフェクトが表示されるのである。そのため、より没入感が増したように感じられるのだ。
もうひとつは、戦闘で表示される画面だ。こちらはまるで目の前にミニチュアゲームが置かれたかのようにマップが表示され、そこでチェスの駒を動かすかのようにユニットを操ることができるのである。マップはその戦闘ごとに地形が異なり、中にはかなり広いエリアで展開されることもある。当然のことながらデフォルトのままでは見えにくいところも出てくるのだが、そのときはマップ全体をMeta Questのコントローラーでつまむように回転させたり、あるいはリアルに顔を近づけたりして見るといったこともできるのである。
同様に、特定のマップ内を探索するRPGパートでもジオラマ風に目の前に表示されて、その中で主人公のセレノアを動かすことができる。こちらは通常のコントローラーでキャラクターを操作するときに近いのだが、フィールドそのものの向きなどは、戦闘のときと同じように自由に動かすことが可能だ。
コントローラーでいつでも情報を確認可能!
VRならではのポイントが、簡単にコントローラーのボタン操作を確認できるところだ。たとえば久々にゲームを起動したときに、「どのボタンがどれだっけ?」となってしまいがちだが、本作ならば両手に持ったコントローラーを少し上に上げるだけで簡単に確認することができる。
コントローラーに表示される情報は操作のみに限らず、戦闘中でも活用することができる。次にどのユニットが行動するのか確認したいときは、右手のコントローラーを少し捻ることで行動する順番のリストを表示することが可能だ。
また、ワールドマップが表示されている画面で、ときおり左手のコントローラーに「挿話」というアイコンが表示されることがある。こちらはメインのストーリーともサブストーリーとも関係無い場合が多いのだが、新たなユニットが仲間になることがあるので見逃さないようにしたい要素だ。
現実世界と融合したMRでのプレイにも対応
Meta Quest版「トライアングルストラテジー」のもうひとつの特徴が、現実世界と仮想世界を融合した複合現実(Mixed Reality)にも対応しているところだ。こちらはオプションから「XR設定」でパススルー機能をONにすることで利用出来る。
今回はRGBカメラを搭載した「Meta Quest 3」を利用しているので背景もカラーで表示されるが、前世代機の「Meta Quest 2」ではグレースケールになるなど、利用するモデルによって表示方法が異なるので、そこだけ注意しよう。
実際にパススルー機能をONにしてプレイしてみたところ、全面CGのVRとは異なる体験ができた。これはプレイする環境にも依存するが、生活臭溢れる場面が背景に見えると没入感が薄れてしまうということもあるが、このゲームの場合、とくに戦闘ではコントローラーを大きく動かすなどフィジカルに操作する場面が多い。そのときに、机の上などにいろいろなものがあると手があたってしまうこともある。そうしたことを防ぎたいときにも役に立つ。
また、ドラマシーンでは、まるで目の前に大きなスクリーンが表示されているような間隔で映像を楽しむことができる。ためしに近くの公園に持ち出して遊んでみたのだが、屋外もまったく問題なくゲームを楽しむことができた。このように良い部分も悪い部分も合わせ持ってはいるものの、そのときどきの状況によって切り替えられるのは嬉しいポイントといえるだろう。
様々なロケーションやギミックで毎回異なるバトルが楽しめる
ゲームのメインとなるのは、やはりバトルだ。こちらは連続で戦闘を行うというよりも、章の最後などで行われることが多いため、全体としてそれほど多くの回数をこなすわけではない。だが、今回はジオラマ風の見た目でプレイできるので、やはり戦闘に突入すると気分も盛り上がってくる。
戦闘では、どのユニットを出陣させるか最初に選んで行くことになる。ゲームを進めていくと選べるユニットの種類も増えるので、こちらも悩みどころのひとつだ。迷ったときは、戦闘準備の画面から「ユニット配置」を選び、そこに表示されている「おすすめ」と表示されているユニットを参考にするといいだろう。
戦闘が開始されると、行動が早い順番から動いていくことになる。ユニットごとに移動できる範囲が限られているが、移動する場所を選んでからアクションやアイテムなどを使って攻撃や回復などの行動をしていくといった流れだ。
味方で敵を挟み撃ちにすることで、追撃のダメージを与えることができたり、背後から敵を攻撃したりあるいは高台から攻撃を加えることで、より高いダメージを与えることができたりするなど、タクティクスRPGではおなじみの戦闘要素もしっかりと盛り込まれている。これらを利用しながら、いかに効率よく敵を倒していくか考えて行動していくことになるのである。
主に攻撃を加えるときなどに使用するアクションでは、通常の武器による攻撃に加えて、それぞれのユニットごとが持っているアビリティも使用できる。各ユニットのターンごとにTPと呼ばれるものがたまっていき、それを消費してアビリティを使用することが可能だ。そのため、TPが足りないときは次に備えた行動をしなければならないときもあるので注意しよう。
多くの場合は、すべての敵ユニットを倒すことで勝利となるのだが、特定のマップでは異なる勝敗条件が用意されている場合がある。たとえば、ノゼリア新鉱山の採掘場で行われる戦闘では、敵が時限式の爆弾を仕掛けてくる。それが爆発する前に近寄って解除しなければならないのだが、たとえこちらが優勢に戦闘を進めていたとしても、どこかで爆弾が爆発した時点で敗北となってしまう。
このように、マップによって地形も条件も異なり、敵の攻撃もどんどん狡猾になっていく。プレイヤーとしての成長や、ユニット自体の成長によって新たな戦闘に挑んでいくことができるのも、本作をプレイしていて楽しいところだ。
ちなみに筆者のお気に入りのユニットは、隠密のアンナと鷹弓士のヒューエットだ。アンナは戦陣を切ってマップを移動し、敵から身を隠しながら近づいて背後から襲い掛かることができる。一方、ヒューエットは飛行能力を活かして自由自在にマップ上を飛び回り、高台から弓で敵を狙い撃つことができる。
ほかにも個性豊かなユニットたちが登場するので、自分のお気に入りを見つけながら戦闘で活用してみるのもいいだろう。
詰所でユニットの育成やバトルの練習もできる!
本作ならではのユニークなポイントのひとつが、「詰所」である。こちらは、仲間になったユニットたちが集う場所だ。マップ内を歩き回り、それぞれのユニットたちと会話することもできる。それ以外にもアイテムを購入したり鍛冶屋でステータスの強化ができたりするほか、クラスアップすることも可能である。とくにクラスアップはTPの最大値や習得できるアビリティが増えるなどのメリットが多いため、忘れずにやっておきたいところだ。
また、なかなか戦闘の経験ができないというときは、酒場で想定バトルに挑戦することもできる。こちらはユニットの強化に必要な素材が手に入るなどの報酬も用意されているので、メインストーリーの合間にこなしておくといいだろう。
Meta Quest 3ならサウンドの臨場感もバッチリ!
ということで、Meta Quest版ならではの要素も含めて、新たにリリースされる「トライアングルストラテジー」のレビューをお届けしてきた。ひとつの章あたり概ね1時間ほどで遊べるようなボリューム感になっていたのだが、同時に本体で録画も行っていたということもあり、充電していない状態だとちょうど電池の残量も減ってくるようなタイミングであった。そうしたこともあってか、ちょくちょく休憩を挟みながらプレイしていたのだが、どうしても次の展開が気になってしまい、充電が待ちきれず夢中で続きを遊んでしまったほどである。
また、文字ではなかなか伝わらない要素のひとつに音があるが、こちらもMeta Quest 3の性能の良さもあり、雨の音などの環境音や豪華声優陣たちの熱のこもった演技、そして千住明氏による心に残るメロディーも含めて、素晴らしい音響で楽しむことができる。
全体的に非常に完成度の高い作品に仕上げられているので、一度本作を遊んだことがある人でも楽しむことができるのは間違いなしだ。もちろんオリジナル版を遊んだことがないという人は、VRならではの新たな体験ができるので、ぜひとも挑戦してみてほしい。
(C) SQUARE ENIX