レビュー
「ドラゴンズドグマ 2」レビュー
2024年3月21日 00:00
リアリティーを感じる仕掛けが生み出す至高の没入感
本作の最大の魅力は、プレイを進めるごとに強くなっていく没入感だ。
迫力ある戦闘シーンや美麗に描かれた世界はもちろんだが、街に住む人々の見た目や動き、ポーンの行動や言動、モンスターや野生動物がひしめくフィールドなど、作中ではあらゆるところが細かく作り込まれており、開発陣のこだわりを感じられる。ここでは「ドラゴンズドグマ 2」の世界で特に筆者が感じたこだわりポイントを紹介する。
シングルプレイなのに“人”を感じられるポーンたちとの冒険
シリーズ恒例となる仲間「ポーン」。「ポーン」には主人公の従者である「メインポーン」とほかのプレーヤーから借り受ける「サポートポーン」の2種類がいる。作中では主人公に加え、この「メインポーン」1人、「サポートポーン」2人の計4人で冒険を行う。
前作でも登場したこのポーンたちの進化が本当にすごい。ポーンにはそれぞれ個性が強く反映されており、全てのポーンが自身のの性格、特技、見た目やスキルに加え、それぞれが経験してきたことすらを基準として行動する。
前作でもこのポーンたちは十分優れていたのだが、今作ではよりいっそう自然な行動をするように進化している。プレイ中の会話やしぐさはもちろん、中でもすごいのが「経験」によって変化する行動の部分だ。
ポーンは自身が経験したことを記憶するので、その経験をもとにプレーヤーをつねに手助けしようとしてくれる。クエストの目的地へのルートや、道中にある宝箱やリムストーンの場所など、自身の記憶と経験をもとにプレーヤーに様々な助言をしてくれる。ポーンが常に会話しながらサポートしてくれるので、シングルプレイのゲームにもかかわらず、不思議と他のプレーヤーと遊んでいるように感じてしまうほどだ。
また、戦闘ではポーンがそれぞれ互いを補うように戦ってくれるので、AIとは思えない精度で「連携」して戦うことが可能だ。なんならしっかりと育成されたポーンは、平均的なプレーヤーよりもだんぜん強いと言える。
こんな感じでポーンたちと賑やかに冒険できるので、シングルプレイのゲームにもかかわらず、実際に仲間と一緒に冒険している気持ちを味わうことができる。冒険を進めれば進めるほど、長い時間を共に過ごすポーンにプレーヤーの多くはきっと愛着が湧いてしまうはずだ。
ちなみにポーンは設定上倒されてしまうことはあるが、死ぬことはない。水などに落ちると消えてしまうが、リムストーンで再び召喚することができるので安心してほしい。
プレーヤーの行動ひとつで変わるNPCたちの日常
本作ではプレーヤーの行動によって、ストーリーの展開が大きく変わるようになっている。作中には膨大な数のクエストが存在しており、この結果次第でプレーヤーが経験する過程はもちろん、「ドラゴンズドグマ 2」の世界のNPCたちそのものにも大きな影響を与える。それが作品への没入感をよりいっそう強くしており、開発者のこだわりを感じられる部分にもなっている。
まず、本作では「◯◯を何個集めてくる」といった、いわゆる“おつかい系のクエスト”が廃止されている。今回、クエストは自然な流れで連鎖的に発生するようになっており、フィールドや街で声をかけられて相談されることもあれば、突如からまれて発生するクエストなど、まさに当事者として物語を感じられるつくりになっている。これらのクエストをやる・やらないは全てプレーヤーに委ねられており、その選択が依頼人の運命に大きく関わってくるようになっている。
この作りによって、本作では単にクエストを消化するというよりは「困っているから手伝ってあげよう」といった形で感情移入してNPCたちの話を聞けるようになっている。クエストの展開もプレーヤーの行動過程によって変化するので、昼と夜で難易度が変わったり、住人の生死によって後の展開が変わったりと、まさに自分だけの物語を紡ぐことができる。
また、面白い要素のひとつとしてNPCの好感度がある。この好感度は全てのNPCに存在しており、クエストの依頼を受けたり、プレゼントをすることで上昇していく。気になるNPCと仲良くなることで変わっていく展開を楽しむことができるのも本作の魅力だ。
住人たちとの関係はプレーヤーとの間だけには止まらず、誰かの子供を助ければその親には感謝されるなど、プレーヤーの交流次第で様々な展開が繰り広げられる。
時間によって変化する「ドラゴンズドグマ 2」の世界
「ドラゴンズドグマ 2」ではゲーム内の時間という要素がリアリティを生むのに大きく貢献している。これはプレイにも大きく影響しており、夜間は視界不良から戦闘の難易度が上がるのはもちろん、時間経過によって食べ物が腐敗したり、一部の時間帯が対象になっているクエストがあるなど、時間経過によって様々な影響がもたらされる。
特に今作ではオープンワールドになっただけでなく、マップの大きさも前作の4倍と広大な世界になっている。つまり前作以上に、フィールドの移動には気を使う必要がある。
なかでも夜間の移動は危険が多く、「夜道は危険」という教訓を身をもって体験することができる。今作からはキャンプをすることで回復と共に時間を進めることができるようになっているので、これをうまく活用していくのが重要だ。
ちなみにキャンプでは肉を調理して振る舞うことができるのだが、調理時の映像がまさかの実写である。焚き火の上で焼かれるおいしそうな肉の飯テロ映像は力の入れようがすごいので、ぜひとも1回は観て欲しい。
作中ではこの肉料理以外にも様々な食べ物が登場する。フィールドではリンゴやブドウといった果物、ガライモと呼ばれる芋科の野菜などを採取することができる。
これらはアイテムとして使用することで体力やスタミナを回復することができる便利なアイテムだ。だが、注意点が一つある。それが時間による食べ物の腐敗だ。現実の果物や野菜同様に、これらのアイテムも時間の経過と共に腐ってしまう。
ただ、面白いのは腐りかけの時の方がアイテムの効果が上昇することだ。腐る手前が一番おいしいというやつなのか、たとえばリンゴなど、食料系アイテムの一部は腐りかけることで栄養価や味が上がり、回復の効果量が上昇する。リンゴひとつとってもこの凝りようには本当に驚きだ。
また、本作では特定の時間帯のみ利用可能や入ったりできる施設などもある。その一つが新たに追加された「牛車」だ。「牛車」は町と町を繋ぐかたちで使用できるファストトラベル的な要素だ。現実のバスや電車のように決まった時間帯に発車するので、使用する場合は出発時間まで待機する必要がある。
他には特定時間帯のみ入場できるクエストなどがあり、序盤では王宮への潜入クエストなどがそれにあたる。
異世界をシミュレートしているかのような世界観とシステム
このように、本作ではいたるところに世界観を構成するためのこだわりが存在している。この膨大なこだわりポイントがあることで、今までにないレベルでゲームに入り込むことができるのが「ドラゴンズドグマ 2」最大の魅力と言えるだろう。まだまだ筆者は序盤しかプレイできていないが、「ドラゴンズドグマ 2」のポテンシャルの高さをしっかりと感じることができた。
本作はシングルプレイタイトルの気楽に遊べる感覚で、オンラインゲームの美味しい部分を味わうことができるのはもちろん、シングルプレイならではの楽しみを追求した作品に出来上がっていること。
作り込まれた世界観やシステムは、まるで異世界をシミュレートしているかのように息づいており、かなりのリアリティと没入感を体験させてくれる。「ドラゴンズドグマ 2」のひとつひとつが、熱いこだわりのもと作られているとよく伝わってくる。
プレーヤーの選択によって変化するストーリーの過程も相まって、しっかりじっくりプレイすると、時間があっという間に溶けてしまうほど楽しめるタイトルだろう。
本作は前作ファンはもちろん、今回「ドラゴンズドグマ」を初めて知った方にもぜひプレイしてほしい作品だ。ナンバリングタイトルということもあってハードルが高く思われるかもしれないが、約10年という歳月をかけただけあって、RPGとしてもアクションゲームとしても誰もが楽しめる完成度となっている。
アクションゲームが苦手な方も、ポーンと協力することで十分に戦うことができるので、剣と魔法の世界が織りなす王道ファンタジーが好きという方は、この機会にぜひとも挑戦してみてほしい。
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