レビュー

「Rise of the Ronin」レビュー

幕末が好きなら絶対遊びたい! オープンワールドらしい遊びも詰め込んだ意欲作

【Rise of the Ronin】

3月22日 発売予定

価格:
通常版 8,980円
デジタルデラックス版 9,980円

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、プレイステーション 5用オープンワールドアクションRPG「Rise of the Ronin」を3月22日に発売する。

 今作は幕末の日本を舞台に名もなき浪人として、激動の時代を生きた英傑たちと自分だけの歴史を紡いでいく作品。コーエーテクモゲームスが抱える「Team NINJA(チームニンジャ)」の注目のタイトルだ。メディア向けハンズオンイベントの先行プレイレポートが各種メディアから公開されるなり、SNSでは発売を心待ちにしているゲームファンたちから、“死にゲー”かどうかなどの話題にもなった。

 近年ではTeam NINJAが手がけてきた「仁王」、「仁王2」、「Wo Long: Fallen Dynasty(ウォーロン フォールン ダイナスティ)」などが、死にゲーとして認知されていることだろう。しかし、時代を遡って「NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)」シリーズから考えてみると、実はこの頃からTeam NINJAがコアなアクションゲーマーに向けた切り口の作品を作り続けていた時代が確かにある。開発チームのスタッフが入れ替わったとしても、ゲームのコンセプトが根底から異なったとしても、雑に言えば“手強いゲーム”のDNAは脈々と受け継がれているのだ。

 それでは「Rise of the Ronin」は死にゲーなのか、という部分に対するアンサーだが、この前置きでお伝えしておくと、プレイヤーが選択した難易度次第ということになる。詳細は後述するが、今作は選ぶ難易度次第で楽しみ方が変化するゲームなのだとプレイしていて感じられた。

 本稿では、メディア向けの先行プレイだけでは見えてこなかった部分も含めて、ゲームが持つ魅力を深掘りしていきたい。なお、ネタバレについては極力避けているが、気になる人は注意してほしい。

【『Rise of the Ronin』日本版特別トレーラー】

片割れの行方を追うため育ての親と刃を交える

 「Rise of the Ronin」では、プレイヤーが自身の分身になるキャラクターを作成して、幕末の世界を体験していくことになる。主人公は徳川幕府に謀反を起こすため、黒州藩(くろすはん)が、密かに育てている特殊な訓練を受けた兵士「隠し刀」の1人だ。隠し刀は二人一組で幼少の頃から訓練され、さまざまな任務を共にする強い因縁で結ばれている。

  ゲーム冒頭は、密書の奪取と来日してきたマシュー・ペリーを暗殺する藩命を受けて、片割れと共に黒船に2人で忍び込んでいく。しかし、ペリーとの交戦後、トドメを刺す寸前のところで謎の忍者「青鬼」の奇襲を受け、あえなく暗殺に失敗。青鬼は片割れと2人で挑んでも圧倒的な強さをほこり、倒すことはおろか、2人無事に里へ帰還することもままならない状況に陥ってしまう。

キャラクタークリエイトはプレイヤーが操作する主人公と相棒の片割れで2人分行うのが今作の特徴。冒頭では育て親でもある「研師」から、藩命を承って黒船への潜入を試みる
ペリーとの戦いはチュートリアルを終えた後に待つ、実質的に最初のボス戦だ。サーベルと短銃を用いた戦い方で刺客2人を相手に立ち回る
プレイヤーには最初に外見を決めたキャラクターから、どちらか1人を選ぶ選択肢が与えられる。物語の主人公として幕末を旅させるための最終決定になるので、非常に迷う

 片割れを犠牲にして、命からがら密書を持ち帰ることに成功した主人公だったが、やがて月日の流れたある冬の日、今度は隠し刀の里が幕府からの襲撃を受けて壊滅的な状況に。里の仲間たちが次々と殺害される中、幕府の刺客を退けながら師であり育ての親でもある「研師」の元へ急ぐ主人公。

 師と共に迫り来る刺客を全て討ち倒すことに成功するも、研師は主人公が里を抜けて、片割れを探す旅に出ようとしているのを看破していたのだった。そうして、研師は里の掟を破らせまいと、ついにその白刃をプレイヤーへと向ける……。

幕府から送り込まれてきた襲撃者には精鋭たちが揃う
片割れと離れてから生存を信じ続けていた主人公。師である研師は何を思い、主人公と戦うことになるのか。冒頭の中でもとりわけ印象的な場面

「歴史」を物語に組み込む。サブクエでなかなか本編が進まない現象を解消する設計

 オープンワールドのゲームでは、プレイヤーに自由度を提供する仕組み上、メインストーリーで得られる体験がやや薄まりやすい。無数のサブクエストやサイドストーリーの存在によって、プレイヤーの感じる「今、物語を追っている」といった目的意識が、自然に乱されてしまうからだ。そのような観点で今作を見つめたとき、ゲームをプレイしていて感じたのは、逆に“メインストーリーで得られる体験の濃さ”だったと思える。

 横浜に行き着くまでのゲーム最序盤こそ、広々としたエリアを目的なく巡り、気ままに賊が占有する村々を解放する遊びはある。だがそれはゲーム開始からほんの1時間程度の範疇でしかない。坂本龍馬と出会い、横浜に入った辺りから、プレイヤーには歴史を体験しながら片割れの行方を調べるといった目的意識が根づく。

横浜の街に入るため、通行手形を探して龍馬と一時的に行動することになる

 物語のベースが“幕末の歴史”という、普遍的ですでに史実として結末が定まっている題材のため、今作に用意された横浜以外の江戸・京都のロケーションに進むためには、やはりメインストーリーを進める必要性も出てくるワケだ。

 しかもただ歴史を追っていくのではなく、プレイヤーの選択次第で桂小五郎率いる倒幕派の活動が間近に見られたり、井伊直弼が独自ルートから主人公との接触を試みたりと、進みゆく歴史を登場人物との交流が多彩に彩る。

 それは見ようによって、プレイヤーキャラクターが大河ドラマの名脇役的にも映るだろうし、攘夷志士たちを支えた幻の浪人的にも映るかもしれない。かつて実在していた歴史上の英傑たちに挟まれ、どの視点から幕末の時間軸にアプローチを仕掛けるのかは、プレイヤー次第で没入感も高い。

 広大なワールド、各地に点在する美しいロケーション、探索してない未知のエリアに、個性豊かなキャラクターと紡ぐサブシナリオなどなど、コンテンツに幅があればあるほどプレイヤーは自由気ままに行動しがちなもので、それがオープンワールドゲームならではの醍醐味・遊びなのは間違いないだろう。

 しかし、今作はプレイヤーが揺れ動く時代の最中にあって、歴史の転換期となる大きな事件を間近に体験する魅力十分なシナリオ展開。マップをウロウロするよりも単純に話が気になって仕方がない。また、メインストーリーを進めなければ歴史も進まないことから、新たなワールドマップには当然進めず、自由気ままにプレイしてても、ある満足した段階で物語を進めようとするタイミングが必然的に訪れる。

 この「物語を進める」=「歴史を進める」と同義な構造が、ごく自然に物語本編への導線として機能しており、いちプレイヤーの目線からも感心せずにはいられなかったポイントだ。厚みのある物語体験がしっかり軸となり、オープンワールドはあくまで添えられた惣菜の一部にも等しいだろう。

横浜だけでも訪れたい場所や、やりたいことは非常に多い。ただ、物語本編もそれに負けじと面白い題材なので、何を優先するか非常に迷ってしまう
物語を進めると舞台は江戸へ。時代劇で見たような街並みがそのまま広がっており、江戸城を中心に走り回るだけで楽しい。なお、過去の時間軸に戻って横浜をしっかり探索するのももちろんOK
メインストーリーだけを単体で楽しんだとしても、物語としてちゃんと面白い。開発プロデューサー兼ゲームディレクター・安田氏が、インタビューでも挙げていたケレン味も随所で発揮されている

「アクションゲームが得意」と舐めていると、鼻っ面を折られるプレイヤーは多いかもしれない

 今作では主に3つの難易度に分けられており、主に物語の体験を重視したいプレイヤーであれば、最初は「薄明(やさしい)」を推奨したい……というのが遊んで得られた難易度の所感。というのは、タイミング良く武器で敵の攻撃を弾くアクション「石火」であったり、攻撃の動作後にR1ボタンを押してスタミナを回復する「閃刃」であったりと、ある程度慣れを要するシビアなアクション操作に、相応のプレイヤースキルも求められるからだ。

 バトルは敵の攻撃を防いで回避して、やがて攻撃へと転じる流れが基本。しかしながら、これら一連の動作には全て「気力(※いわゆるスタミナ)」を消費するため、早々に気力を切らして連続攻撃と強力な武技を敵から叩き込まれてしまうケースが多発しやすい。特にボス敵は縦横無尽に動いて激しい攻撃を続けるキャラクターも多いことから、難易度「黄昏(ふつう)」以上は、「仁王」、「Wo Long: Fallen Dynasty」のような“死にゲー”を思わせる、手応えある戦闘が展開される。

横浜に入れる通行手形を入手するため、龍馬と共闘して賊のアジトへ突入する最初のミッション。ボス敵「権蔵」はここに至るまで登場したどの敵とも異なる大振りな動きだが、操作慣れしていないゲーム序盤だとかなり厄介
ミッション以外でも横浜の街中や各地に強敵が出現している。倒せば流派が取得できたり、貴重な武器・防具が獲得できることも

 体感的な話になって恐縮だが、操作が手に馴染んで来るとザコ敵の動きも身体が覚えはじめて、積極的に石火を狙いにいける。すると、自分自身のプレイヤースキルが上達したように感じられ、通常のザコであれば余裕を持っていなすことが可能だ。ただし、操作スキルがそこに行き着くまでには時間を要するし、そこには個人差も大いにあるはず。

 今作は「薄明」、「黄昏」、「宵闇」の順番に難易度が上がっていく。「自分、アクションゲーム得意なんで」と、たかを括って「宵闇」を選べば、恐らく選択した多くのプレイヤーがその自信を物語冒頭、隠し刀の里を襲撃してきた忍者たちに叩き折られると思う。

 幸いなことに難易度の途中変更が可能な親切設計なので、物足りなさを感じてきたら自分の操作スキルに合わせ、後から難易度を上げても良い。こだわる人なら、先述したように「宵闇」に縛ってプレイするのも自由である。難易度選択によって得られるバトルの体験が変わることから、Team NINJAらしい骨太アクションを、幅広いプレイヤーたちが楽しめるというのは間違いない。

アクションの幅広さも魅力。ミッション中に物影から奇襲を仕掛けて暗殺したり、離れた敵を銃や弓矢で倒したりと、生き抜くために戦いの手段を選ばずに攻略できる
街中の道場では任意のキャラクターと稽古が行える。アイテム数も限られ、1vs1の勝負がアツい。「石火」を上手く使いこなして短い時間で撃破できれば報酬も得られる

多彩な武器と流派で変わる戦闘スタイルの奥深さ

 「Rise of the Ronin」では、刀・二刀・大太刀・槍・銃剣etcと、多彩な武器種が登場している。当たり前だがそれぞれ強みは異なり、武器のモーションも異なっている。ゲーム中では、そういった武器種を使い分けるのも素直に楽しい部分。そして、武器種と合わせてもう1つ紹介しておきたい要素が「流派」だ。

 流派は多くのユーザーが想像した通り、“武器の流派”を指し示す。今作では武器種ごとに複数の流派が存在し、流派ごとに武器の攻撃モーションが変化するこだわりようなのだ。また、主人公の成長傾向(能力パラメーター)で、流派の攻撃力にも個別で補正が乗る仕組みとなっている。補足しておくと、遠距離武器の手裏剣・銃・弓矢には流派が備わっていない。

「流派」は装備している武器1つに対して3つ装着できる。バトル中にこれら装着した流派を切り替えながら戦闘を行える。「北辰一刀流」、「二天一流」など、実在した流派が多数収録
当然、流派で武器の持ち方は変化している。刀を逆手に持った忍者のような流派もあって、侍の剣術とは違ったスピード感溢れる攻撃モーションに

 流派は攻撃方法や攻撃力が異なるだけでなく、戦っている敵との相性にも関係してくる。主に「天」、「地」、「人」の3種類に流派のタイプは分けられていて、現在ロックオンしている敵が持つ武器種ごとにそれぞれの相性が備わっているのだ。この相性は、石火で敵の攻撃を弾いた際、相手の体勢を大きく崩すなどの効果があり、戦闘においては欠かせないもの。しかも流派は条件を満たすと強化され、新しい技が増えていく。

 今作では戦闘中にアイテムを使用したり、周辺の利用できるオブジェクトを活用したり、あるいは敵との距離を離して遠距離攻撃を行ったりと、実に多彩な選択肢で立ち回れるが、そこに武器種と流派が加わることでさらなる自由度が生まれている。たとえボス敵と好きな流派の相性が悪くても、その流派の強みと扱う武器種の特性さえ駆使すれば、難易度を下げることなく突破できる糸口だって見つけられることだろう。自分にとって最適な攻略法を見つけ出す楽しみ方には、奥深さを感じられた。

武器を持たない「素手」で不殺の戦いを繰り広げることもできる。ミッションによっては死者を出さないという目標もあるので、慣れておくと便利
気力の消耗は大きいが、連続攻撃を得意とする「二刀」が意外に使いやすい。動きもカッコいいので積極的に使いたくなる
振りの大きい武器だがリーチが広く、複数の敵に有効な「大太刀」。攻撃力も高めなので、ボス敵相手なら一撃離脱を意識するとダメージソースとしても優秀。それにしても顔に浴びた返り血が怖い

キャラクターと因縁を結ぶことでまた歴史が好きになれるキッカケに

 幕末の世界を生きるにあたり、プレイヤーは各地を駆け回ることになるが、そんな旅の中では名前の知れた多数の有名人たちと「因縁」を結べる。坂本龍馬、桂小五郎、高杉晋作、マシュー・ペリー、勝海舟、福沢諭吉などなど、日本人であれば義務教育の中でしっかり耳にした偉人たちばかりだ。メインストーリーでは彼らと関わり合うほか、ミッションに同行してくれるNPCキャラクター「徒党」という要素によって共闘する場合も多い。

 筆者は時代劇を見る機会さえあれば、すすんで視聴する程度には好きだが、別にそこまで歴史に詳しいわけでもない。それでも、一万円のお札を財布から取り出すたびに目にしていた、かの福沢諭吉に背中を預けて共に戦うアクションゲームがプレイできるのは、ちょっとした感動にも近い心持ちだったし、“戦う諭吉”という物珍しさに驚きもした。

 なにせいくら歴史の偉人と言っても、福沢諭吉が侍のように戦うイメージは全くなかったからだ。だが、気になって調べてみると、彼は実際に「立身新流」の居合を使いこなす達人であったことにまた驚かされる。そしてその立身新流の流派でさえ、諭吉と因縁を結ぶことで習得でき、プレイヤーの旅を支える力として貢献してくれる。

攘夷派のキャラクターはやや過激な思想を持ち、手段を選ばない人物も多いので、福沢諭吉のように理路整然とした論法で落ち着きのあるキャラクターが癒しのような存在に感じた
史実のエピソードにおいても「立身新流」の使い手として知られていた福沢諭吉。ミッション中ならば、そんな彼すらをキャラクター切り替えで操作可能だ

 キャラクターとの因縁を結ぶということは、ゲームプレイヤー的な視点で見れば、流派や武器がもらえるといった、攻略に欠かせないメリットを享受することにある。だが、ゲームを遊び、自分でも気が付かないうちに、歴史のキャラクターにまつわる豆知識が累積される感覚が、“歴史沼”への入り口に思えてならない。それはこれまで戦国時代や三国志などの歴史を題材にしてきた、コーエーテクモゲームスらしい作品の魅力といえる。

 今回は幕末で時代考証に扱われる資料が比較的多く現存していることから、過去におくりだしてきた作品とまた違った密度で、時代のエッセンスをゲームに落とし込めたということが、メディア向けハンズオンイベントのインタビューにて明らかとなっている。

 もちろん、キャラクターの性格や人物描写はゲームのシナリオとして楽しめるものに脚色されているのだろう。それはそれとしても、大河ドラマの世界に飛び込んだような今作の世界観とキャラクターたちは、過去の歴史を紐解く面白さを今一度思い出させてくれるに違いない。

 世代を感じる部分ではあるものの、かつて「戦国無双」、「三國無双」シリーズをプレイして感じた、武将の逸話を巡りたくなる小さな好奇心は、今作を遊んでも得られるものだ。戦国時代・三国志に続き、新たに江戸時代(幕末)がコーエーテクモゲームスの紡ぐ歴史ゲームのラインナップに加わると思うと、十数年越しの妄想が具現化したようで感慨深い。

「因縁」を結ぶとそのキャラクターがプレイヤーのホーム「長屋」へと遊びに来る。会話を楽しんで交流したり、旅の途中で見つけたアイテムを贈って因縁を深めるといったことができる
交流などを通してその人物により詳しくなっていけるのが歴史を題材にしたゲームの良さ。筆者は学生時代に母親から「戦国時代や三国志の歴史系のゲームなら遊んでもいい」と、言われたことがあった。「Rise of the Ronin」も現代の親御さんが納得できるゲームに……?

オープンワールドらしい遊びも抜かりなく詰め込む。幕末が好きなら絶対遊びたい意欲的な作品に

 今作には「運命を切り開け」といったコンセプトが掲げられている。偉人たちと関わり、自分だけの歴史を体験していくゲームの構造にピタリと当てはまるフレーズだ。プレイヤーは元隠し刀の1人として、片割れの行方を追っていく過程でさまざまな歴史のドラマをその目で見ることになるだろう。

 そこには歴史を追体験しながら、自分の下した選択が、幕末に大きな変化をもたらす可能性をも秘めている。そうした瞬間は、まるで歴史好きの誰かが1度くらいは妄想しそうな、ifの歴史を紡ぐ感覚にも等しい。浅慮だが、実に夢のある妄想をアクションゲームとして遊べるなんて、素晴らしい時代になったと感じた次第だ。俗に言うならば「ぼくのかんがえたさいきょうの浪人」を体験できるゲームであり、コーエーテクモゲームスに強く求められていたものとは、もしや「Rise of the Ronin」だったのかもしれない。

 物語やキャラクターについてここまで長々と触れてきたが、無論オープンワールドゲームならではの遊びもしっかり詰め込まれていたのでそこは安心してほしい。

 広大なワールド内は要所的に敵の拠点が設けられ、制圧するために真正面から突入しても良いし、「阿鼻機流(あびきる)」と呼ばれるグライダーのようなからくりで上空から攻めても良い。草むらにしゃがんで隠れ、極力無用な殺生を避けるステルスアクションのような楽しみ方もやってみると中々面白い。

 各地には、貴重な武器・防具などのアイテムが隠された蔵が設置されているほか、社に手を合わせることで能力ポイントが付与される育成促進要素など、実際に歩き回って探索するありがた味がちゃんと用意されている。旅の途中で突発的に発生するクエストもあり、ワールド内の隙間を埋める工夫が見られた。

 なお、武器・防具は通常の敵を倒しても獲得できるが、装備ごとに多彩なスキルが付属している。これがお気に入りの装備にスキルを継承させられるという機能面において、欲しいスキルのために敵を倒しまくるような、ハクスラの片鱗すらも見えている。こだわり始めたらキリがないのだが、より強力な装備を求めるプレイヤーのニーズには答えてくれるはず。

 ほかにも猫好きに堪らない多様な種類の猫たちに触れ合う依頼、指定された情景を写真に納めてくる依頼、流鏑馬(やぶさめ)、阿鼻機流のタイムアタック、射的など、寄り道で遊べるものも豊富である。

装備スキルには同じ系統のものを身に付けることで発動する特殊スキルもある。装備は主に4種類のレア度に区分されるが、ゲームを進めていくとレア度が低くても強力な装備を見かける場合も増えてくる
装備の能力にこだわると見た目が犠牲になってしまいがちだが、「意匠変更」機能では、1度入手した装備の見た目を外見に反映させることができる。チグハグな見た目にならず、物語での没入感は高いまま。合わせてキャラクリも再度行えるのが嬉しい
ゲームディレクター・安田氏が推す「猫集め」。猫に近づいてボタンを押すだけ良いのだが、中には警戒心が強くステルスで近寄らないと逃げてしまう“三毛猫”が登場している
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 今作は、コーエーテクモゲームスが今までやれなかったこととやりたかったことを、とにかく詰め込んできた印象が強い。Team NINJAの培ってきたアクションの醍醐味をも取り入れてはいるが、決してアクションゲーマーだけが楽しめる作風ではないのもポイント。

 筆者はかつて、オープンワールドゲームが人を選ぶイメージを抱えていた。だが今作は、時代を追体験しながら自分の意思決定が物語に大きく左右する構造と、時代を進めなければ、魅力溢れる江戸・京都の街並みを堪能できないという強制力が絶妙に融合を果たしている。つまり、“誰が遊んでもクリアを目指せるオープンワールドゲーム”に昇華できているのでは? と思うのだ。ゆえに、幕末の世界が好きな人には、自信を持ってオススメできる意欲作とお伝えしたい。