レビュー
「龍が如く8」レビュー
桐生一馬と春日一番が描くシリーズ最高の物語。シリーズファンならマストバイ
2024年1月25日 07:00
- 【龍が如く8】
- 1月26日 発売予定
- 価格:
- スタンダード・エディション 9,680円
- デラックス・エディション 10,780円
- アルティメット・エディション 12,760円
伝説の元極道「桐生一馬」、そしてハマの英雄「春日一番」。そのW主人公で描かれる壮大な物語を楽しめる「龍が如く8」がいよいよ1月26日に発売される。
「龍が如く」シリーズのファンにとっては、本作は首を長くして待ち続けた作品だと思う。細かな情報出しから、期待もしたし考察もさせてくれた作品だからだ。「龍が如く8」のティザートレーラーには、神室町を歩く桐生一馬と春日一番の姿が映っていた。ムービーの長さは約1分で情報量の少ないものだったが、髪型が変わった桐生一馬には何らかの理由があるのだろうと考えたし、これまでの作品に登場した多くのキャラクターのセリフが収録されており、「このムービーに声が登場するキャラクターはすべて『龍が如く8』に登場します」と発表した「龍が如く」シリーズ制作総指揮の横山昌義氏に度肝を抜かれたのは記憶に新しい。
ほかにも、素っ裸の春日一番が海外のビーチで歩き回るムービーが公開されたときは、「もしや今作の舞台はハワイなのでは?」と盛り上がったし、「桐生一馬」が抱えているある事情が発表されたときは本当に衝撃だった。
そういった経緯があり、本作は「龍が如く」シリーズのファンが首を長くし、そして高い期待を込めて楽しみにしている作品なのは間違いない。実際に、この記事を書いているのは発売の数日前なのだが、すでにSNSでは大きく盛り上がっていて、この記事が掲載されているタイミングにはその盛り上がりは最高潮になっていることだろう。
今回は、そんなシリーズファン待望の「龍が如く8」を先行して体験できた。この先はある程度の文字数になるので、本稿で伝えたいことをまず言ってしまおう(もちろん最後まで読んで本作の魅力を感じてほしいが)。
それは「『龍が如く7 光と闇の行方』を楽しんでいたファンなら確実に楽しめる。安心してプレイしてほしい」ということだ。これはゲーム記者としての言葉ではなく、過去のシリーズ作品もプレイしてきたファンとしての言葉として受け取ってほしい。
それでは、そこまでして筆者が感じた魅力を本稿で順番に伝えていきたい。なお、本稿ではストーリーに触れる部分もあるが、ネタバレを避けるために、公式サイトに公開されている情報までに留めている。これまでのトレーラーやインタビューなどで明らかになっている情報も伏せている部分があるので、それを前提に読み進めていただきたい。
あの人物がなぜ? 序盤から一気に引き込まれるストーリー
まずは序盤部分のストーリーの魅力について語っていきたい。
本作のストーリーはナンバリング前作の「龍が如く7 光と闇の行方(以下、龍が如く7)」、そして2023年11月9日に発売された「龍が如く7外伝 名を消した男(以下、龍が如く7外伝)」から地続きになるストーリーが展開される。
冒頭では「元極道者たちを一人残らず社会復帰させる」という「荒川真澄」の遺志を受け継ぎ、ハローワークで奮闘している「春日一番」が描かれる。正直、この状況ではどうやって「ハワイ」に行くか見当もつかなかった。
その部分が描かれるのが序盤の山場なのだが、スピード感と怒濤の展開で一気にゲームに引き込まれてしまった。「龍が如く7」で共に修羅場をくぐり抜け、本音や思いをぶつけ合い、友情という言葉では表せない濃い繋がりを持った仲間たち――具体的に言うと「ナンバ」や「足立宏一」、そして「向田紗栄子」が登場する。
ただ、同じく仲間として死闘を乗り越えてきた「ハン・ジュンギ」と「趙天佑」はこの時点では姿を見せない。というのも、あくまでも彼らは裏世界の住人、表世界を生きる「春日一番」らには会わない方が良いだろうという思いがあるようで、ここでは姿を見せなかった。だが、公式サイトのキャストとして紹介されているので、今後ゲームが進むにつれて登場することだろう。
そして、公式サイトに登場している前作のキャラクターとしては「ソンヒ」や「沢城丈」が気になるところ。最終的には春日一番たちに協力した「ソンヒ」はともかく、「なぜ『沢城丈』の名前が?」と思われた読者の方もいらっしゃるのではないだろうか。
なぜなら「沢城丈」は前作の“あるエピソード”のため、殺人の罪で服役しているはずだからだ。そんな沢城のページに「言えた義理じゃねえがイチ……お前に頼みがある。」という記載がある。なぜ「沢城丈」が服役していないのか、そしてイチこと春日一番にどんな頼み事があるのか。そういった部分がゲーム最序盤から描かれるのだ。このストーリー展開に引き込まれないわけがない。
そして、紆余曲折があり、「春日一番」はハワイに降り立つ。この紆余曲折については本稿では触れないが、当然ながら「春日一番」がハワイに向かう納得できる理由がきっちり描かれるので安心してほしい。そしてハワイで出会う人物たちもまた魅力的だ。
まずは本作のもう一人の主人公の「桐生一馬」。伝説の元極道でこれまでのほとんどのシリーズで主役を張ってきたカリスマだ。多くの修羅場をくぐり抜け、多くの仲間や敵対する人物や組織と出会い、数え切れないドラマがあった。そして、「龍が如く7外伝」でも描かれたように、現在は政財界で暗躍するフィクサー「大道寺一派」のエージェントとして素性を隠し生きている。一派の任務でハワイを訪れ、そこで「春日一番」と出会う。
「桐生一馬」と「春日一番」の2人は考え方や性格が異なる部分が多い。ある意味凸凹コンビとも言える。一方で、この2人に似ている部分もある。例えば、まっすぐな性格であったり、義理人情に厚いところもそうだ。そんな2人が同じ時間を過ごしながら物語が進んでいくのだからそれだけですでに面白い。
そしてハワイに到着した「春日一番」とで出会うのがタクシー運転手の「エリック・トミザワ」だ。日本語が喋れる「エリック・トミザワ」は春日一番と意気投合するのだが……、という展開だ。ネタバレにならない範囲で言えるのは、彼もまた、のほほんと過ごしているだけのタクシー運転手ではないということだ。そういった部分にも注目してほしい。
そして、ハワイで出会う家事手伝いの「不二宮千歳」もキーになる人物だ。彼女も「春日一番」らに出会い、本作の謎多きストーリーに関わっていくことになる。こちらもネタバレを防ぐために情報を抑えさせていただくが、彼女もまた、人に言えない事情を抱えている。
序盤だけでもこれだけ魅力的なキャラクターが登場するのだ。それぞれのキャラクターの目的や思いが交差しながら、ストーリーが転がっていく。それだけでも本作のストーリーの面白さの欠片が伝わるだろう。
筆者が本作のストーリーに引き込まれるのは、それぞれの登場人物のキャラクター性が際立っていることと、それぞれに“リアル”を感じさせるエピソードがあることだ。本作の大きなストーリーはもちろんあるのだが、それに加えて「このキャラクターには実はこんな物語があり……」というキャラクターそれぞれの物語が語られる。
例えば「エリック・トミザワ」のエピソードには筆者は胸を打たれた。すべての人がそうであるように、彼にも当然過去がある。匂わされているように一本道の楽な人生を送ってきたわけではなく、そういった様々な過去の延長線上に今の彼があるのだ。
当然、過去は変えられない。だが未来は変えられる。「春日一番」と「桐生一馬」というある意味で常識外れの人物に出会い、徐々に心を開いていく。そうすることで彼らの力を借り過去の出来事を精算し、未来に向かって歩き出す。そういった感情の揺れ動きがプレーヤーの心を動かすのだ。
進化した「新ライブコマンドRPGバトル」のプレイフィールは最高!
次に、進化したバトルについても触れていこう。
本作は、「龍が如く7」で採用された「ライブコマンドRPGバトル」がベースになっている。スクリーンショットを見る限りでは大きな変化がないようにも見えるかもしれない。だがそこは、新作を出すたびに、新しいチャレンジでファンを驚かせてきた「龍が如くスタジオ」だ。今回のバトルに採用されている「新ライブコマンドRPGバトル」は前作と似ているが、大きく進化したさらにエキサイティングなバトルシステムに仕上がっている。
進化した点で最も大きいのは、バトル中にプレーヤーキャラクターを一定範囲内で移動させることができる点だ。立ち位置を調整できることで一気に戦い方が変わることだ。
例えば、移動して街中に落ちている自転車や椅子などに近づけば、それらを拾って敵に攻撃してくれるし、敵が直線上に並ぶようにして攻撃すれば、吹き飛んだ敵が後ろの敵に当たって両方にダメージを与えることもできる。一定距離まで敵に近づくと、近接攻撃にボーナスがついたり、敵の背後から攻撃すればバックアタックになりより大きなダメージを与えられる。キャラクターを動かせるという要素だけで、これだけの選択肢が広がるのだ。
さらに面白かったのが桐生の独自システムだ。「桐生一馬」の専用ジョブである「堂島の龍」は戦闘中にバトルスタイルを変更できた。王道のケンカスタイルである「ヤクザ」、スピード型で複数回の攻撃ができる「ラッシュ」、そしてパワー型の「壊し屋」だ。
「ヤクザ」は王道で標準のスタイルだ。このスタイルで戦っていると、シチュエーションによっては「ヒートアクション」が繰り出される。「ヒートアクション」というのはその時のシチュエーションにあわせた特殊な必殺技のようなもので、例えば川の近くで戦っていると敵を持ち上げてその川に落とす、といった具合だ。これが発動すればかなり強いので、狙えそうなシチュエーションであれば、上手く移動させて狙っていきたい。
「ラッシュ」はその名の通りスピード感があるバトルスタイルだ。移動範囲が広めで、2回攻撃ができた。この2回攻撃が使い勝手が良く、筆者はこのスタイルを一番多く使っていた。使いどころとしては、体力が少なめの敵に使うことだ。あと軽い1撃を当てれば倒せるのだが、キャラクターの攻撃順を使い切ってしまうのはもったいない。そういうときにラッシュスタイルで攻撃すれば、無駄なく効率良く敵を倒すことができる。別のキャラで上手く複数の敵を攻撃して、まとめてダメージを減らしていれば1ターンで2体まとめて倒しきるなんてことも容易だ。
そして「壊し屋」は要所要所で非常に役立つスタイルだった。要所というのは具体的に言うと敵が「ガード」しているときだ。本作の敵は時々ガードしているときがあるのだが、このタイミングのときは通常攻撃も、ほとんどの極技も与ダメージがかなり減少させられてしまう。ガード状態を無視して攻撃できる極技もあるが、理想としてはガードを解除させたい。「壊し屋」はそういうときに役立つスタイルで、ダメージを与えつつガード状態を解除させることができる。そうすれば他のキャラクターでもガンガンダメージを与えていけるという非常に有用なスタイルなのだ。
今回は転職システムまでは試すことができなかったが、このシステムに加え転職で覚えられる多彩な極技(一般的なRPGで言う魔法のようなもの)を使えばさらに戦い方の幅は広がりそうだ。
防御面では、敵の攻撃にあわせてボタンを押すと「ジャストガード」が発動し、被ダメージを抑えるというシステムもある。
これらが相まって、戦闘中もなんらかの行動で操作をし続けるような形になる。これまでの「龍が如く」シリーズの多くで採用されてきたバトルのアクションとはもちろん違うが、コマンドRPGながら爽快感を感じられるバトルシステムになっている。これはいわゆるJRPGとも、アクションRPGとも違う、「新ライブコマンドRPGバトル」ならではのプレイフィールを実現している。
「伊勢佐木異人町」以上に広い「ハワイ」は歩くだけで楽しい!
そして「龍が如く」シリーズといえば街歩きも当然遊びたい要素のひとつだ。
本作の舞台は日本の横浜にある架空の町「伊勢佐木異人町」、そしてハワイが舞台になる。「龍が如く7」に登場した伊勢佐木異人町もそれまでのシリーズとは比較にならない程広いマップだったが、ハワイはそれ以上の広さがあった。
エリア毎に全く雰囲気も違う。ビーチの前と、スラムのエリアでは雰囲気が全く違うし、ショッピングモールの中をぶらぶらと歩くこともできる。ショッピングモールの中では買い物をしている多くのNPCが描かれており、本当に買い物に来ているような楽しさがあった。さらには天候の変化もあり、突然スコールが降ってくることもある。南国リゾートらしい突き抜けるような青空の表現もあり、本当に解放感が感じられるエリアだった。
それだけ広いと移動が大変なのではないか、と思われるかもしれない。確かに徒歩でマップの端から端まで移動しようとするとかなり大変だ。だが、お馴染みのタクシーが用意されているので長距離移動も問題ない。わざわざタクシー乗り場まで移動しなくても、マップのどこからでもファストトラベル的にタクシーで移動できるので、移動に関してのストレスはあまりない。
乗り物関連での新要素は「OKAサーファー」だ。「OKAサーファー」は二輪で動く乗り物で、徒歩より快適な移動ができる。この乗り物が素晴らしいのは、目的地を設定すると自動運転で目的地に連れて行ってくれることだ。それほどスピードが速いわけではなく、正直なところ「長距離移動はこれを使おう!」と言えるほどではないのだが、リゾート地であるハワイの空気を感じながら移動できる楽しい乗り物だ。目的はともあれ折角ハワイで過ごすのだ。こういったハワイの楽しみ方も体験してほしい。
そしてハワイらしい乗り物が「トロリー」だ。ハワイの街中をぐるっと回るバスのような乗り物。これに乗って移動している間は、敵に絡まれることはない。効率だけで言えばタクシーに乗ってしまえば良いのだが、たまには仲間と会話をしながらのんびりした時間を過ごすのも悪くないだろう。仲間達との会話も楽しめる。
思わず笑ってしまう「サブストーリー」も健在。新「プレイスポット」も魅力的だ
そして、街歩きがあれば本編とは直接関係のない「サブストーリー」や各種「プレイスポット」が楽しめるのもシリーズの魅力である。本作でももちろん健在で、ハワイの至る所にこれらが用意されている。
筆者が特に面白いと思った「サブストーリー」は、ミュージックビデオの撮影のために、ハワイを訪れたが「演出のための風が足りない」といって困っているアーティストのストーリーだ。どことなく既視感のある衣装を着たアーティストが、風を浴びたがっている。これだけでもかなり笑えるシチュエーションだった。
そして「プレイスポット」の中で筆者が面白かったのは「マッチングアプリ」だ。モテないと言われている「春日一番」が女性との出会いを通じてモテる男として成長するために……という名目でデートを目指す。
まずはプロフィールを作っていくのだが、自称バンドマンを詐称するなどして、女性の好みのプロフィールに寄せていく。実際に会ったらバレるのではないかと心配になるが、そこは気にしないでおこう。
そして、プロフィールが作れたら実際にマッチングしていく。ここではプロフィールと女性の好みによりマッチング率がパーセントで表される。もちろんここのマッチング率が高い方が有利だ。そこから女性とメッセージのやりとりをしていく。ここではその女性に受けそうなメッセージを入力して好感度を上げていく。
実際にメッセージを入力するときは一文字毎にコントローラーのボタンを押していく。ある種のタイピングゲームのような感覚だ。女性の好感度が高くなりそうなメッセージは文字数が多く制限時間内にちゃんと入力できるかがカギになる。
そうして女性を口説き落とせばいよいよデートができる……のだが、筆者が最初にデートに成功した女性はなんというかあまりにも事前にもらった写真とは異なる女性だった。
他にも本当に語りたくなる要素が多くあり、プレイしていてワクワクが止まらない作品だった。ストーリーも楽しいし、バトルも楽しい、ハワイの作り込みもすごいし、そんな街をぶらぶら歩いているだけでもあっという間に時間が過ぎていく。さらに今回は触れていないが武器の強化システムといったやりこみ要素なども多くある。やりこもうと思えばどこまでも遊べる、そう感じさせる作品だった。
最後にひとつだけ本作に対してネガティブなことを挙げるとすれば「龍が如く7」をプレイしていないと本作のストーリーを完全に楽しみきることはできない点だ。やはり、地続きになっている部分が多くあり、「『龍が如く7』ではこういう人物が出てきて、こういうことがあったよね」という話がいくつか出てくるのだ。もちろん、前作をプレイしなくても遊べるのだが、本作の魅力をより感じるためには「龍が如く7」をプレイするのがオススメだ(本音を言えば「龍が如く7外伝」もあわせてプレイしていただきたい)。
逆に言うと気になる点はそこだけだった。本当にシリーズ史上最高の作品になっているとシリーズファンとしての筆者は思う。願わくば、シリーズファンとしての筆者が感じたこの興奮が少しでも伝わることを祈りつつ筆を置くことにする。それでは「ボンボヤージュ、良い旅を。」
(C)SEGA