レビュー
「ソニックスーパースターズ」レビュー
2Dソニックが完全復活! 新しくもどこか懐かしい爽快横スクロールアクション
2023年10月19日 13:42
- 【ソニックスーパースターズ】
- 発売元:セガ
- ジャンル:ハイスピードスクロールアクション
- 発売日:10月17日
- 価格:
- パッケージ版・デジタル版:6,589円
- デジタルデラックス版:7,689円
セガは、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/Epic Games Store)用ハイスピードスクロールアクション「ソニックスーパースターズ」を10月17日にリリースした。
本作は、1988年に発売されたセガの家庭用ゲーム機「メガドライブ」の代表作とも言える「ソニック」シリーズ最新作だ。昨年11月8日に発売された3Dアクションの「ソニックフロンティア」とは異なり、横スクロールの完全新作“2Dソニック”となる。
本作では、ビジュアルをモダンな3Dグラフィックで表現しつつも、「2D横スクロール」に回帰したゲームプレイ、新たな力「エメラルドパワー」による攻略と遊びで、正統進化を果たしたクラシックソニックに仕上がっている。
次世代機のマシンパワーによって、3Dの「ソニック」シリーズがアクションへの比重を高めていった中、「ソニックスーパースターズ」は、永らく完全新作のスポットが当たらなかった2Dソニックだ。2017年に発売され、過去の2D「ソニック」シリーズから選りすぐりの名ステージに、新しい仕掛けを施して収録した「ソニックマニア」の反響を受け、今作の制作に至ったという。今回はそんな「ソニックスーパースターズ」を早速プレイしたので、その所感についてお届けしていきたい。
特殊能力やキャラクターの固有アクションを駆使してゴールを目指す!
「ソニック」は、1991年に発売された初代「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」から30年を超える歴史を持つが、ゲームハードの進化に伴い、ハイスピード3Dアクションへと変化を遂げていった。特に前作「ソニックフロンティア」は、既存のステージ攻略と、広大なワールドを自在に探索できる、2つの性質を備えたフリースタイルな3Dアクション。次世代機に相応しい映像表現とゲーム体験を魅力にしている。
30年も経てば、時代にそぐう形でアップデートされるのは当然だが、今作はあえてシリーズ原点の2Dアクションに立ち返ったわけだ。そして、ダイナミクスなアクションを展開する3Dソニックとはまた別に、昔ながらの2Dソニックを進化させていくコンセプトのもと、制作されている。
スピンオフ作品を除けば、シリーズを通してステージを駆け抜け、ゴールを目指す醍醐味はぶれない。それはやれることが増えて、3Dアクションの純度が強まった「ソニックフロンティア」も同じだろう。しかし、かつてのように2D横スクロールの完全新作を望む声はあるはずで、今作はまさしくそういったプレイヤーたちが熱望していたような、懐かしさと目新しさを実感できるタイトルになった。
操作はとてもシンプルで、方向キーによるダッシュと、ボタン操作で行うジャンプの2つが基本となる。極論、ゴールを目指すだけならダッシュとジャンプだけで十分クリアできてしまうのがこのシリーズ。ただ、クリアタイムを縮めるタイムアタックや、新たなルートの開拓などを意識し始めると、ほかにも活用すべきアクションが多く残っている。
1つはボール状に丸くなり、力を溜めて高速ダッシュを行う「スピンダッシュ」だ。上手いことステージの流れに沿って、トラップや敵の合間を潜り抜けられるのなら、積極的に使うべきアクションなのかもしれない。
筆者の場合、あまりの超スピードに決まって事故を起こしてしまうため、初見のステージは比較的安全そうな場面に限定して使っていた。それでもスピンダッシュで長距離移動に成功すると、大変気持ちがいい。とはいえ、やはり思い通りに使いこなすためには、修練を積む必要があるだろう。
2つ目は、さまざまな特殊能力が使える今作からの新アクション「エメラルドパワー」だ。各ステージに隠されたスペシャルステージをクリアすることで、シリーズでもことあるごとにヴィランの手によって悪用される「カオスエメラルド」を獲得する。手に入れたカオスエメラルドの種類ごとに、自分の分身を大量に生み出して攻撃したり、隠し通路やアイテムを発見する能力が使えるようになるというシステムだ。
エメラルドパワーは複数存在しているが、右スティックのホイールメニューから、それらを自由に使い分けられる。各能力は強力ゆえ、1度使うとチェックポイントを通過しない限り再チャージされない。ただ、チャージが能力ごとにそれぞれ独立していることや、チェックポイント(ポイントマーカー)が複数置かれていることも前提にすると、ある程度は意識的に使用しても良さそうだ。
能力と言えば、今作ではソニック以外にも、テイルス、ナックルズ、エミーと、シリーズの人気キャラクターがプレイアブルとして最初から選べる。先に挙げた共通アクションに加え、キャラクターだけが持つ固有アクションも存在しているから奥深い。
テイルスはボタン連打で空を飛び、高所のルートを開拓しやすい。ナックルズは滑空と壁登り、さらに進路を塞ぐ壁を破壊可能だ。エミーは2段ジャンプとジャンプ中のハンマー攻撃で、安全に跳躍できる。ソニックはジャンプ中にボタンを押し続けると、着地後にドロップダッシュが発生した。
これらの固有アクションは、どれもジャンプ後にキャラクター専用の挙動へと派生できる感覚に近い。そのため、使うボタン数が増えるわけでもなく、直感的なアクション操作はそのままである。
今回のプレイでは試せなかったが、今作は最大4人の協力プレイにも対応する。横スクロールかつ、ハイスピードに進行する2Dソニックでの4人プレイというのはユニークな試みだ。1992年発売の「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」から、2人プレイが可能ではあったが、オフラインで遊べる4人プレイはシリーズ初となっている。
仲間とお互い協力し合ってストーリーモードのステージを攻略でき、飛べるテイルスが仲間を高所に運搬したり、壁を破壊できるナックルズが道を拓いたりと、それぞれの強みを活かして遊べるようだ。
さらに、オンラインプレイ対応で最大8人対戦の「バトルモード」まで収録している。こちらはステージ攻略やタイムアタックと全く異なる遊びだ。4種類のミニゲームから3つのルールがランダムで抽選され、3試合の合計ポイントがもっとも高いプレイヤーが勝利する。画面分割の4人対戦に対応し、CPU戦も可能。どのモードもパーティー性の高い、盛り上がるマルチプレイが期待できそうだ。
プレイするたびに新しい発見ができる作り込まれたステージ
今作のステージはどれも高低差に富み、ジャンプ台や加速装置などのステージギミックを用いた移動の選択肢が豊富。中にはリングを入手しながら先へとワープできる、特殊なエリアもステージ内に存在している。
同じステージであってもプレイするたびに新しい発見ができるのは面白い。初見のときと2周目以降では、ステージ攻略の中で意識するものや見え方が変わるからだ。ステージのあちこちに「コッチにも行けそう」と、プレイヤーの探索意欲を掻き立てる余白が大量に眠っていると言ってもいい。
ゲーム中は、現在見えている画面の中でしかステージの構造を把握できないが、それもまた2Dソニックならではの良さだろう。マップと言えるものは存在しないし、どの方角へ目指せば良いのか、ゴールの方向すらも表示されない。
初回のプレイでは、とりあえずスタート地点からゴールのありそうな画面右側へと、文字通りの横スクロールをしていくのだが、行き着くまでに宙へ投げ出されたり、水に沈められたり、左向きに走らされたりと、そもそもゴールに辿り着けるのか一抹の不安を感じながらの進行になる。慣れないうちはそんな手探り感も楽しさを覚えたポイントだ。
2周目以降ともなれば、おおかた各ステージの特性は肌で感じた頃合い。ゴール地点を目指す中で道中の未使用のギミックを活用してみると、思いがけない方向に跳躍し、今度は以前とまた違ったルートを進むことになる……。すると、またもや見慣れぬ風景が広がっていたりして、探索への好奇心が徐々に芽生え始めてくるのだ。
恐らく過去作のやりこみで熟練され、余程精密操作の再現性に自信があるソニックマニアでもなければ、数回程度のプレイ数ではステージの全体像を計り知れないと思う。少なくとも筆者は、いまだに一番最初のステージ「ブリッジアイランド」について、ただ真横に伸びているという月並み過ぎる分析しかできてない始末だ。どのギミックがどのように作用するのかすら、ステージを遊び直さないと全く思い出せないほどである。
特殊能力やキャラクターの固有アクションのおかげで見つかるルートもあるだろう。テイルスでないと到達の難しい場所から、特定の位置で特殊能力の1つ「ビジョン」を使用すると可視化される足場まである。遊ぶたびに見つかる新しい発見は、プレイヤーをワクワクさせてくれるし、周囲を広く見渡せる3Dだとあまり体験できない、2Dソニックらしいステージ探索の面白さだ。
各ステージのテーマ性についてもぜひ注目してほしい。孤島、森、遺跡、砂漠、遊園地、工場など、登場ギミックの傾向はバラエティ豊かである。森ならツタで編まれたジップラインが随所に張り巡らされ、砂漠は沈みゆく砂場で足を取られやすい。
遊園地はとりわけ遊びが詰まったマップデザインで、ピンボールギミックの演出がとにかく楽しい。ファンによってはピンボールチックな過去作「ソニックスピンボール」に思いを馳せることができそうだ。
また、ボタンを連打してドリルで掘り進む、ちょっぴり気色の変わったギミックも登場する。
相変わらず懲りないDr.エッグマンと久しぶりに復活した賞金稼ぎのファング
ソニックのライバルと言えば、やはり「Dr.エッグマン」だ。一部ファンの中には「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」の名前を挙げたくなる人もいるかもしれないが、残念ながら今作には登場していない。エッグマンはシリーズを通して大体悪事を働き、ソニックらにその野望を打ち砕かれるのがお約束展開。そして全く懲りることがない。一部の作品ではそんな彼を操作できたり、ソニックたちと共闘したりするものも一応ある。
今作では各ステージの最終面で、彼自身が搭乗するメカ、あるいは彼の開発したメカがボス敵として、プレイヤーの前に立ちはだかる。そのステージで体験する仕掛けが攻略のヒントになっており、バトルでは試行錯誤を重ねながらボスを攻略していく。
ボス敵の行動はわかりやすくパターン化され、タイミングに合わせてジャンプで避けるなど、ドット絵のレトロゲームでよく見られる、簡単そうで意外と難しい手応えが確かにあった。ダメージを与えるたびに攻撃の激しさは増し、あと一歩の惜しいところで負けてしまう、あの感じがなんだか懐かしい。
そして、今作の敵はエッグマンだけではない。賞金首のトビネズミ「ファング・ザ・ハンター」が久しぶりに登場した。ファングは、1996年発売の3D格闘ゲーム「ソニック・ザ・ファイターズ」から、およそ27年ぶりの復活を果たすキャラクターだ。今作では、エッグマンに雇われており、新キャラクター「トリップ・ザ・サンゲイザー」と共に行動している。
愛機「マーベラスクイーン」に乗り、ステージ攻略中もお構いなしに妨害してくるのが中々に嫌らしい。久しぶりの登場とはいえ、作中においても主要な敵キャラクターとして、結構な見せ場を貰っていたのが印象深い。
ゲームのストーリーは、南国にある自然豊かな「ノーススター諸島」にて、打倒ソニックのためにエッグマンが作り出した巨大メカ軍団から、捕獲されてしまった巨大動物たちを救出していくというもの。3Dソニックとは違い、2Dソニックシリーズでは物語を多くは語らない。作中にボイスやテキストはほとんど存在していないと言っても良いだろう。そういった事情から、今作はアニメーション映像などで、物語を補足するスタンスを取っているとのことだ。
また、ノーススター諸島の案内役で、エッグマンとファングの部下に加えられている謎の少女トリップにも物語の秘密が隠されている。公式YouTubeチャンネルでは、この3人の目的や活躍を描いた前日譚のアニメーションが公開中だ。ゲームプレイと合わせてこちらもチェックしてほしい。
目新しさと懐かしさを両立した現代版2Dソニックに触れてほしい
今作に触れて、2Dソニックの正統進化は明瞭に感じ取ることができた。エメラルドパワーを使った多彩な能力アクションは、ステージ攻略の自由度を今まで以上に高めてくれる。また、ドット絵ではなく、現行ハードが描画する3Dグラフィックの表現も今どきに感じる部分だ。最大4人でワイワイとステージ探索の協力が楽しめるマルチプレイ要素も新しい体験になるだろう。
従来の2Dソニックシリーズを遊んできたファンが、「懐かしい」と思うポイントをちゃんと抑えているのも見逃せない。キャラクターデザインを前作の「ソニックフロンティア」と比較すると、今作ではメガドライブの初期作を彷彿とさせる、旧デザイン版へ寄せられていることに気がついた。ソニックなどは比較的わかりやすい。
公式サイトから確認できるビジュアルも、実際のゲームにおいても、軽いノリのちょっと生意気そうな音速ハリネズミ、という最近のソニックではないのだ。どこか丸みを帯びたソフトタッチのクラシックデザインでかわいいとすら思う。
ステージを彩る楽曲では、クラシック回帰の影響が如実に出ている気がする。英語ボーカル前提のノリノリなロックサウンドではなくて、キャッチーでほんのり懐かしさを感じるゲームメロディーだ。どれも新規楽曲なのに「なんだか聞き覚えのある感じ」と、ノスタルジーな心持ちになれるファンは多いかもしれない。
目新しさと懐かしさを両立させつつも、再びクラシックな2Dソニックが、この時代に登場するというのは、セガファンにとって大きな衝撃ではないだろうか。古参プレイヤーたちが求めていた爽快横スクロールアクションは、その姿形を変え過ぎることなく、絶妙な匙加減でアップデートされた。
アクション、ストーリー、ビジュアルと、3Dソニックの進化が顕著な一方で「これこそ2Dのソニック」と、過去作のファンも満足できる原点の魅力を丁寧に盛り込む。現代版2Dソニックとして正統進化を遂げた今作は、ファンはもちろん、若い世代のプレイヤーたちにもぜひ触れてほしい一作品だ。
(C)SEGA