「Marvel's Spider-Man 2」レビュー

　「Marvel's Spider-Man 2」がいよいよ10月20日に発売となる。本作は2018年に発売した「Marvel's Spider-Man」と、もう1人のスパイダーマン、マイルズ・モラレスを主人公とした2020年発売の「Marvel's Spider-Man:Miles Morales」に続く3作目となる。

　映画によって主人公ピーター・パーカーの立ち位置やヴィラン（悪役）の設定が異なるように、本シリーズも新しい「スパイダーマン」のストーリーとなっている。今作のピーター・パーカーは高校生の時から8年間スパイダーマンであり、ヴィランと戦い続け、ニューヨークを守り続けてきた。

　「Marvel's Spider-Man」では長年戦い続けてきた犯罪界の大物キングピンとの一応の決着を付けるが、逆にキングピンが不在になったことでタガが外れ、ヴィランの活動が活発化することになってしまった混乱が描かれた。マイルズはその中でヴィランの1人ミスター・ネガティブによって父を殺されてしまう。「Marvel's Spider-Man 2」はこういった物語を引き継ぎ、ピーターとマイルズの2人のヒーローとしての葛藤と、そして成長が描かれる。

　「Marvel's Spider-Man:Miles Morales」ではマイルズが主人公だったが、ピーターは海外に行ってしまい1人でニューヨークを守ることとなった。2人のスパイダーマンが街の平和に力を合わせるというファンが夢見た展開が「Marvel's Spider-Man 2」でついに全面的に実現する。2人の主人公が並び立つ"ダブル・スパイダーマン"をしっかり楽しむことができるというのが本作最大の魅力だろう。

　今回は発売に先がけSIEからの評価用コードの提供を受けて、発売直前のバージョンをたっぷりプレイすることができた。「Marvel's Spider-Man 2」の魅力や今作ならではのポイントを紹介していきたい。

クレイヴン率いる邪悪なハンターが街を襲撃！ 迎え撃つスパイダーマンの絆

　「Marvel's Spider-Man 2」はかなり衝撃的なオープニングだ。マイルズの学校に新任の臨時講師としてピーターがやってくる。いざ最初の授業を……というところで事件発生。2人は授業を抜け出し、スパイダーマンとなって事件の中心地へと向かう。

　そこにはビルと同じ大きさに巨大化したサンドマンが大暴れしていた。サンドマンは砂を操ることができ、砂さえあれば体をいくらでも大きくすることができる。更生したはずの彼がなぜこんな騒ぎを？ 疑問を抱きながらピーターとマイルズは無事にサンドマンを捕らえることができたが、緊急事態に生徒達を放っていなくなったピーターは教師失格として、クビになってしまう。

街で暴れる巨大サンドマン。プレーヤーの心をグッと掴むオープニングだ

　本作ではピーターとマイルズどちらにも自身がスパイダーマンであることを知っている人がいる。ピーターは恋人であり有能な記者であるMJ。マイルズは親友のガンケと、ハーレム地区のコミュニティリーダーである母リオ・モラレス。そしてマイルズには気になる相手として、聴覚障害者であり優れたグラフィティアーティストであるヘイリーがいる。彼女もまたスパイダーマンの正体を知りマイルズを支えてくれる。本作のスパイダーマン達は、彼等を支えてくれる人がいて、同じような能力を持ち、大いなる責任と生活の両立の悩みを共有できる相手を持っている。誰にも正体を明かせず孤独に戦っているヒーローと大きく異なるポイントだろう。

　講師の職を失ったピーターだが、親友のハリー・オズボーンが手を差し伸べる。ハリーはここ数年ヨーロッパに行っていると言っていたが、実は病に冒され治療のために隔離されていたのだという。病気が完治したハリーは、父であるノーマン・オズボーンと彼の会社オズコープのバックアップを受け財団を立ち上げた。その運営をピーターに手伝って欲しいというのだ。

　時同じくして邪悪な影が動き始める。影の名前は「クレイヴン・ザ・ハンター」。本名セルゲイ・クラヴィノフは、天才的な狩りの腕を持つ狩人であり、屈強なハンター集団を率いるリーダーだ。彼はハンター集団を率いてニューヨークを襲い、囚人であるヴィランを奪おうとしてくる。そしてクレイヴンにさらわれたヴィランの1人にミスター・ネガティブもいた。マイルズにとって許すことのできない父の敵だ。そのむき出しの復讐の意思はマイルズの周囲の人達を不安にさせるが、マイルズ自身はどうしてもその暗い心を消すことができない……。

刑務所に囚われていたヴィランを手中に収めようとする「クレイヴン・ザ・ハンター」。彼の目的は一体？

病から完治したというハリー。彼は理想的な仕事をピーターに提案する

　「Marvel's Spider-Man 2」はヒーローとして悪人をバッタバッタとなぎ倒し、街をウェブスイングで駆け抜ける爽快なゲーム性がメインであるが、これまで以上に「ヒーローとしての葛藤」にもフォーカスが当てられている。ピーターはMJとの関係性やハリーとの夢。マイルズは楽しい学生生活と将来のための努力をしていく必要がある。しかしスパイダーマンとして街の平和を守らなくてはいけない。クレイヴン配下のハンターはニューヨークに着々と拠点を作っているし、炎をあがめる謎のカルトが事件を起こしている。犯罪者も暗躍しており、街の人達は助けを求めている。

　今作はスパイダーマンを支える人達にもフォーカスが当てられている。MJはスパイダーマンの"宿敵"であるJ・ジョナ・ジェイムソンに雇われ、彼が気に入るような記事を書くため頭を悩ましている。マイルズの母リタはスパイダーマンである息子を誇りに思っていても心配は消えない。

　ジェイムソンはスパイダーマンを悪人と決めつけ、スパイダーマンへのネガティブキャンペーンを続けている。ゲームを進めていると頻繁にジェイムソンのニュースが入る。その悪意と攻撃性に満ちた放送はユーモラスなところもあるし、正反対のスパイダーマンを応援するダニカ・ハートの放送もあるのだが、プレーヤー心理としてジェイムソンの悪意を聞いているときついところがあるし、劇中でもピーターが傷ついている描写がある。ヒーローとしてのつらさにどう立ち向かうかも、今作の注目のテーマの1つである。

ピーターを支えるMJは、今はJ・ジョナ・ジェイムソンに雇われて記事を書いている

マイルズの母親リタは、彼のミスターネガティブへの復讐心を危惧している

ツールに特殊能力、多彩な戦い方で強敵達に立ち向かえ！

　戦闘はシリーズの大きな魅力だ。□ボタンを連打するだけで多彩なコンボを繰り出すことができ、長押しすると相手を上空に打ち上げる。△ボタンは敵にウェブを巻き付け相手の場所に移動する。長押しをすると引っ張って敵を引き寄せる。近接武器を持った敵は□ボタンの攻撃をガードしてしまうので空中で△ボタンを長押しし引き寄せるのが得策だ。

　○ボタンは回避。マシンガンや弓など今作では遠距離武器を持っている敵が多い。敵に狙われると射線が出るのでこの射線が赤くなるタイミングで回避すると「パーフェクト・ドッジ」が発動。相手にウェブをぶつけ行動を封じることができる。×ボタンはジャンプだ。

ピーターは背中から出るメカの脚で敵を攻撃できる

マイルズは電撃を発生させることが可能

　シリーズを経た「Marvel's Spider-Man 2」では戦闘要素は複雑化していて敵はかなり手強い。近接をガードしたり、通常のコンボでは反撃してきたりする上、空中に罠を仕掛けてこちらの動きを制限してきたりもする。このため様々なガジェットや、特殊能力を多用し積極的に攻撃に出る必要がある。

　ガジェットはスパイダーマンの戦いをサポートしてくれるツール。「アップショット」は光弾を複数撃ち出し、敵を空中に持ち上げる。「ウェブ・キャッチャー」はウェブを発射し周囲の敵を一箇所にまとめる。「コンカッション・バースト」は音波攻撃で相手の動きを止める。

　さらにスパイダーマンそれぞれの特殊能力で多くの敵を一度に攻撃できる。ピーターのスーツにはメカの脚が装備されていてこの脚で攻撃したり、脚の先から電撃を発したりできる。マイルズは「ヴェノム・パワー」と呼ばれる体内電気を発生する能力を持っており、この力で強力な電気を発射することができる。多彩な攻撃と特殊能力、ガジェットを使う「Marvel's Spider-Man 2」の戦いは派手で見応えがある。ぜひ動画で見て欲しい。

　さらにピーターは物語中盤で謎の"黒い力"を手に入れる。「シンビオート」という新たな力を得たピーターは漆黒のスーツとなる。この黒いスーツは生きており、スパイダーマンの筋肉を肥大化させたり、触手状になって敵を攻撃できる。しかもゲージを解放することで一定時間シンビオートの力を全開にし強力な力を振るうことができるのだ。

ピーターは強力なシンビオートの力を手に入れる

　シンビオートと黒いスーツの存在はアメコミや映画の「スパイダーマン」ファンにはおなじみの存在だが、「Marvel's Spider-Man 2」ではちょっとひねった導入をされていて、それが今作の見所になっている。他の作品とキャラクターの立ち位置や関係性が変わってくるのはマーベル作品での「マルチバース」ならではの楽しさだ。今作ではピーターが、ハリーが、MJが、他の「スパイダーマン」とは少し違った関わり方をする。ぜひこの違いも楽しんで欲しい。次ページでは「Marvel's Spider-Man 2」の多彩なゲーム要素をもっと掘り下げていこう。