レビュー

「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1」レビュー

“時間経過ギミック”も搭載。「メタルギア」シリーズの魅力を改めて味わえる

【METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1】

開発元:KONAMI

発売元:KONAMI

ジャンル:タクティカル・エスピオナージ・アクション

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/Steam(PS4/Xbox Series X|S/Steamはダウンロード販売のみ)

10月24日 発売予定

価格:7,480円

 コナミデジタルエンタテインメントが10月24日に発売するプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/Steam用タクティカル・エスピオナージ・アクション「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1」。

 戦闘を避けて敵地に潜入するという革新的なゲーム性で人気を獲得し、ステルスアクションゲームの金字塔的な作品として真っ先に名前が挙がる「メタルギア」シリーズは、1987年に第1作目「METAL GEAR」が発売され、2022年にシリーズ生誕35周年を迎えている。

 今回発売される「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1」は、シリーズの集大成となるマスターコレクションの第一弾。「METAL GEAR SOLID(以下、MGS1)」、「METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY(MGS2)」、「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER(MGS3)」のシリーズ3作品に加え、シリーズ第1作目となる「METAL GEAR(MG)」とその続編「METAL GEAR 2 SOLID SNAKE(MG2)」も収録される。なお、本作に収録される「MG2」、「MG3」は2011年にリリースされた「METAL GEAR SOLID HDエディション」と同様のものとのことだ。

【METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1 - Official Trailer】

 「メタルギア ソリッド」の旧作タイトルは「MGS1」がPS Vitaなどでダウンロードできるゲームアーカイブスか、2018年に数量限定発売された「プレイステーション クラシック」でしかプレイすることができなかった。また、「MGS2」および「MGS3」も直近ではPS Vita用ソフトとして発売され現行機では遊べない状態となっていた。そのため、今回のコレクション版の発売及び、同時に展開される旧作の単独販売を待ち望んでいた人も少なくないだろう。

 また、「MASTER COLLECTION Vol.1」には初代「MG」及び「MG2」に加え、各作品のゲーム内テキストが収録されたシナリオブックや、ストーリーやキャラクターを深堀りして知ることができるマスターブック、デジタルサウンドトラックなど豊富なコンテンツが目白押しで、シリーズファンならば是非とも手にしたいコレクションとなっている。

 今回はそんな本作のSteam版を先行プレイした。なかでも本記事では「MGS3」を中心的に紹介していく。筆者はシリーズ作品をほぼ全てプレイしているが、改めて色褪せることのない「メタルギア」シリーズの魅力を存分に味わうことができた。

「MGS1」より「MGS3」までを簡単に紹介

 「メタルギア」シリーズはステルスアクションだけでなく、反戦・反核といったテーマや、現代にも通ずる社会問題を取り入れたメッセージ性の強いストーリーが展開される。一方で、リアルな戦場を舞台にしながらも随所にSF的な設定が垣間見れること、メタな演出を筆頭に笑いを誘うようなユーモアなども全作品に盛り込まれている。

 なお、「メタルギア ソリッド」シリーズの発売順は数字の順番に沿って1→2→3の順だが、時系列では3→1→2となっている。発売順にプレイすることでゲームの進化を感じるのもよし、時系列順でプレイすることでシリーズのストーリーをより楽しむのもよしだが、筆者個人としては発売順にプレイすることをオススメする。発売順にプレイすることでゲームシステムだけでなく、ハードの進化も感じることができ、また、「MGS3」には過去作をプレイしているからこその小ネタも存在するからだ。

 さて、「MGS」シリーズを未プレイの読者に向け、各ナンバリングをリリース順に簡単に紹介しておこう。

 1998年に発売された「MGS1」は初代プレイステーションのゲームとしては最高峰のグラフィックスを誇っており、冒頭のシーンから当時プレイした当時の驚きを思い出すプレーヤーも少なくないだろう。

 本作は「メタルギア ソリッド インテグラル」を除く日本語版だと難易度の設定がなく、同梱されている海外版のみ変更が可能となっている。そのため、日本語版でのプレイは後続作品よりも難易度が高くなっているが、「ソリッド」の原点となる物語をプレイすることで続編での進化と展開をより深く感じることができるはずだ。

「メタルギア ソリッド」第一作目となる「MGS1」。初代PSのゲームとしては最高峰のグラフィックだった

 PS2で2001年にリリースされた「MGS2」は、主人公がシリーズの顔であるスネークと、本作からの新キャラクターである雷電の2人となっており、プレイの大半で雷電を操作することになる。主観での射撃やローリング、柵などでぶら下がるエルードなど、シリーズの共通アクションが初めて採用された作品でもあり、シリーズのアクションシステムの基盤となった作品といえる。

 また、本作のストーリーは複雑ではあるが、2001年のゲームでありながら現代のデジタル社会の到来やその問題点に言及する部分もあり、改めてプレイすることで本作の先見性に驚かされることになるだろう。ちなみに筆者は当時、物語終盤の演出に衝撃を受けたのを覚えている。ネタバレとなるので詳細は伏せるが、ゲームであることを逆手にとったとも取れる演出を未プレイの読者にも味わって欲しい。

本作では冒頭のみスネークを操作することができた
雷電というキャラクターが賛否両論だったことも今ではいい思い出

 前作と同じくPS2で発売された「MGS3」は、シリーズ最高傑作の呼び声が高い作品だ。軍事基地などの人工物に潜入することが多かった「MGS1」、「MGS2」と異なり、ジャングルなどの自然への潜入活動を中心に展開され、野生動物を狩ることでスタミナを回復するなどのサバイバル要素も盛り込まれていることが特徴となっている。また、周囲の環境とのどれだけ同化できているかを示す「カムフラージュ率」や、近接戦闘術「CQC」など、後の作品でも登場する要素が導入された作品でもある。

 本作の主人公は後の「BIGBOSS」となるネイキッド・スネーク(「MGS1」および「MGS2」の主人公はソリッド・スネーク)で、ストーリーは「メタルギア」シリーズの起点となる過去の事件を扱ったものとなっている。シリーズ全体の物語を理解する上でも重要な作品となっているので、「メタルギア」シリーズを抑えるためには特にプレイしておきたいタイトルだ。

シリーズ最高傑作とも名高い「MGS3」。ジャングルでのステルスが特徴だ

今なお色褪せない「MGS3」

 そんな「MGS」の中でも、筆者が最も思い入れのあるタイトルは「MGS3」だ。ジャングルでのステルスアクションは他のシリーズ作品にはない緊張感があり、多彩なアクションを活用して様々な局面を切り抜けていく楽しさは何度プレイしても色褪せることはない。今回の事前プレイでも真っ先に「MGS3」をクリアした程だ。そんな本作は「MGS」の魅力が詰まったタイトルだと思うので、未プレイの読者に向けて紹介していこう。

 架空の1964年を描く「MGS3」は冷戦時代を舞台とした作品で、プレーヤーはネイキッド・スネークを操作し、ソ連へと潜入。敵兵の目を掻い潜ってジャングルの奥にある敵基地に忍び込み、ミッションをこなすことになる。

舞台となるのは冷戦時代

 ステルスの手段は様々で、茂みやオブジェクトの影に隠れ、ほふくで移動することで敵兵の視線を逃れつつ進んだり、麻酔銃で眠らせてやり過ごしたり、気付かれないように背後に近付き投げ飛ばして気絶させたりと様々だ。

茂みの中でほふくし、敵をやり過ごす
敵兵を拘束し情報を聞き出すことも可能

 また、周囲の環境に併せて迷彩やフェイスペイントを変更することでカムフラージュ率を高くすることで敵兵から見つかりづらくすることができる他、周囲にあるものや、アイテムを活用して敵兵の意識をそらすことで活路を開くこともできる。

カムフラージュ率は本作からの要素だった。周囲の環境に合わせて迷彩服やフェイスペイントを変更することで敵から見つかりづらくなる
シリーズ恒例のダンボールもしっかり存在するが、ジャングルで被っても不審に思われてしまう。軍事基地などで使用すればしっかりと効果を発揮する

 もし敵に見つかった場合は戦闘となり1対多数の不利な銃撃戦をこなすことになってしまう他、敵をやり過ごしても暫くの間は警戒体制をしかれてしまい潜入が困難となる。サブマシンガンなどの銃火器を手に入れることができるものの、基本的にはステルスプレイが推奨されるというのは「メタルギア」シリーズ通しての特徴だ。

 敵兵の動きや周囲を観察することで段々と攻略の糸口が見えてくるのだが、攻略法の幅が広く、似たようなシチュエーションでも多彩な方法で突破できるのが本作の魅力の一つとなっている。今回のプレイでも、今まで試していなかった攻略法を見つけることができ、本作の奥深さを再発見することができた。

気づかれたら1対多の戦闘になってしまうので、射撃時も敵に見つからないように配慮しなければならない
近接戦闘術「CQC」は敵を投げ飛ばして気絶させることができるなど非常に有用

 密林での潜入では、ライフだけでなくスタミナも重要だ。スタミナは時間とともに減っていき、武器を構えた時の手ブレなどに影響する。スタミナは食事をとることで回復できるが、ジャングルでは真っ当な食事にありつけることは稀で、ジャングルに生息するワニや蛇、木の実やキノコといった動植物をキャプチャーすることとなる。また、敵との戦闘で負傷した際には適切な応急処置を行なうことが必要となるなど、ステルスだけでなく、サバイバル要素を取り入れているのが「MGS3」の特徴だ。

 食料となる動植物の中には毒を持っているものもある他、食べられるものも時間経過とともに腐ってしまう。これらを摂取すると食中毒になってしまうが、敵兵に食べさせれば排除できるなど、食料が潜入の助けになることも少なくない。また、敵兵が食べているレーションや即席麺、コラボで登場するカロリーメイトなどの保存食も登場し、入手することが可能となっている。

 サバイバル要素は密林での任務というロケーションにリアリティや没入感を与えてくれる。また、時間をかけて敵兵をやり過ごしたいのにスタミナは減っていくというジレンマが、ステルスアクションをより緊張感があるものにしていると改めて感じさせられた。

野生動物などをキャプチャーし食料に。味によって回復量が異なる
負傷した際は最大ライフが減ってしまうので適切な応急処置が必要となる

 「メタルギア」シリーズはステルスアクションだけでなく、個性豊かなキャラクターや、随所に散りばめられた小ネタなども魅力の一つとなっている。本作でも、スネークを無線越しにサポートしてくれるゼロ少佐やパラメディック、現地での協力者であるEVA、敵対することとなるザ・ボスが率いるコブラ部隊の面々や、オセロットなど多くのキャラクターが登場している。

本作の主人公。ネイキッド・スネーク
オセロットはシリーズ通して重要な立ち位置にいるキャラクターだ

 筆者の中で特に印象深いキャラクターはパラメディックとコブラ部隊のメンバーだ。パラメディックはセーブ用の無線を担当しているため会話する機会が多く、セーブ時には現実に存在するB級映画について話してくれる。ボスとして対決することになるコブラ部隊のメンバーは蜂を自由自在に操ったり、自然の声を聞けたりと突き抜けた設定の人物が多く、まさかの攻略方法が存在するキャラクターもおりインパクトから記憶に残りやすいのだ。

コブラ部隊の面々は蜂を操るザ・ペインや、光合成をして回復ができるジ・エンドなどインパクト抜群

 「MGS3」はシリーズの中では比較的わかりやすい物語となっているものの、実在した事件にも言及し、戦争をテーマにしたシリアスなストーリーが展開される。 また、シリーズの起点となる作品というだけあって、本作に登場するキャラクターの多くは続編の物語にも大きく関わってくる。彼らが続編でどのような道を歩むことになったのかを考える上でも、本作はプレイしておきたい作品となっている。

無線での会話もシリーズの魅力の1つとなっている

 本作はパラメディックのB級映画紹介を筆頭に小ネタも充実している。無線での会話はスネークの行動や状況に応じて変化し、攻略のヒントだけでなく、シリアスな内容のものから笑えるものまで幅広く存在する。

 また、無線以外にも「MGS2」で登場したキャラクターに酷似した人物が登場するといったユーモアもあり、緊迫したミッションの中での清涼剤的な要素としてプレーヤーを楽しませてくれる。また、食糧庫を破壊することで敵兵が食料難になり弱体化し、空腹を訴えるようになるなど攻略にも役立つ小ネタも存在する。

 なお、本作には時間経過で発生するイベントがあり、PS2版では本体の時間を弄ることで簡単に見ることができた。Steam版でもPCの時間を変更することで同様のイベントを発生させることを確認した。このイベントはとある難所を突破する救済処置的な要素になっているので、再現されているのは有難い。

食糧庫を爆破した結果、敵兵が空腹を訴えるようになり弱体化

 このように「MGS3」は緊張感のあるステルスアクションと、個性的なキャラクターと重厚なストーリー。プレイが重くなりすぎないよう散りばめられた小ネタの数々といった「メタルギア」シリーズの魅力が詰まった作品といえるのではないだろうか。

シナリオブックやマスターブックで世界観を深堀

 そんな「メタルギア」シリーズの魅力をプレイで感じるとともに、「MASTER COLLECTION Vol.1」に収録されるシナリオブックやマスターブックを通じて「メタルギア」の世界で展開されるシナリオも楽しんで貰いたい。こちらはプレイだけではわからない物語やキャラクターの背景や設定を深堀するものとなっている。

各タイトルに収録されているマスターブックとシナリオブックを読めば本作の世界観をより深く知ることが可能
「MASTER COLLECTION Vol.1」にはサウンドトラックや初代「メタルギア」も同梱されている

 2022年に生誕35周年を迎えた「メタルギア」だが、今回発売される「MASTER COLLECTION」はVol.1ということで、今後のVol.2のリリースにも期待がかかる。また、「MGS3」のリメイクとなる「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」も発表されており、こちらの新情報も待ち遠しい。

 このように今なお盛り上がりを見せている「メタルギア」シリーズ。未プレイの方は「MASTER COLLECTION Vol.1」を通じてシリーズの魅力を味わってみてはいかがだろうか。また、シリーズファンにも多くのコレクション要素から見逃せないタイトルとなっているはずだ。

「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1」収録作品一覧

【ゲーム作品】
・「METAL GEAR」
・「METAL GEAR 2 SOLID SNAKE」
・「METAL GEAR SOLID」(INTEGRAL含む)※
・「METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY」(HDエディション版)※
・「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」(HDエディション版)※
・「METAL GEAR」(FC/NES版)
・「SNAKE'S REVENGE」

【映像作品】
・「METAL GEAR SOLID BANDE DESSINEE」
・「METAL GEAR SOLID 2 BANDE DESSINEE」
※「BANDE DESSINEE」の最後から2番目のEはアキュートアクセント付きが正式表記です。

【デジタルブック】
・「METAL GEAR SOLID シナリオブック」
・「METAL GEAR SOLID マスターブック」
・「METAL GEAR SOLID 2 シナリオブック」
・「METAL GEAR SOLID 2 マスターブック」
・「METAL GEAR SOLID 3 シナリオブック」
・「METAL GEAR SOLID 3 マスターブック」
・「METAL GEAR & METAL GEAR 2 シナリオブック」
・「METAL GEAR & METAL GEAR 2 マスターブック」

※:これらの商品は単体発売(ダウンロード版のみ)対象。
 収録作品およびボーナスコンテンツの詳細は公式サイトを確認してほしい。

【サウンドトラック】
・「METAL GEAR SOLID デジタルサウンドトラック」

 パッケージ版早期購入特典・ダウンロード版予約特典として、本コレクション収録作品のメインテーマ3楽曲「METAL GEAR SOLID」・「METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY」・「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」を新たにオーケストラアレンジ版で収録した限定デジタルサウンドトラックのダウンロードコードが付属する。