レビュー

「ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター」レビュー

何度も繰り返し遊ぶことが楽しいフリーシナリオシステム。”閃き”でバトルを乗り切ろう!

【ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター】

発売元:スクウェア・エニックス

開発元:スクウェア・エニックス

ジャンル:RPG

プラットフォーム:PS5/PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)/Android/iOS ※いずれもDL版のみ

発売日:12月1日(Steam版は12月2日)

価格:
PS5/PS4/Switch 5,830円(税込)
Android/iOS 5,400円(税込)
CEROレーティング:B(12歳以上対象)

 12月1日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Nintendo Switch/PC(Steam)/Android/iOS用RPG「ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター」(以下、「ミンサガリマスター」)。

 本作は2005年に発売されたPS2向けタイトルのリマスター版であり、そもそもは1992年に発売された「ロマンシング サ・ガ」(以下、「ロマサガ」)のリメイク作品である。

 「ロマサガ」の世界観や、プレーヤーが物語を自由に進められるフリーシナリオシステムによるストーリーはそのままに、グラフィックスは3Dへと一新。「ロマサガ」では描かれなかったキャラクターの設定やイベントの追加・変更などの他、「ロマサガ2」から導入された新しい技を戦闘中に覚えられる「閃き」、「サガ フロンティア」から複数のキャラクターが一斉攻撃する「連携」、「アンリミテッド:サガ」から移動中に使えるスキル「マップアビリティ」など、その当時の過去シリーズからの様々なシステムを継承している。

 本稿では「ミンサガ」未プレイ者を主な対象として本作の魅力を紹介しつつ、「ミンサガ」ファンに向けて本作での大きな変更点などを挙げていこう。

【#ミンサガリマスター 【12月1日発売】ロマンシング サガ - ミンストレルソング - リマスター:#TGS2022 ゲーム概要紹介映像】
副題の「ミンストレルソング」を象徴するように、OPでは山崎まさよしさんが歌う吟遊詩人をイメージしたテーマソング「メヌエット」をBGMに、吟遊詩人が「ミンサガ」の世界の各所を回るムービーを見ることができる。こちらも必見だ。

フリーシナリオによる自分だけの物語

 「ミンサガ」の最も大きな特徴は、自分だけの道筋で物語が進むフリーシナリオシステムだ。最初にアルベルト、アイシャ、グレイ、クローディア、ジャミル、シフ、キャプテン・ホーク、バーバラの8人の主人公のうち1人を選んでゲームを開始することになるのだが、序盤は8人の主人公が別々の物語を歩んでいくことになる。また、オープニング以降、大体のキャラクターは地図を持っている地域に好きに移動することができて、そこで発生する様々なイベントをひとつずつこなしながら、ゲームを進めていくことになる。「ロマサガ」同様、物語全体の進行度が戦闘回数によって決まるのも特徴のひとつだ。

主人公のひとり、グレイ

 どういうことか具体的に説明すると、敵が強いからと言ってずっと弱い敵と戦闘ばかりしていると物語の進行度が自動的に進み、発生するイベントが変化してしまう。例えば序盤で発生する「宿屋の娘変死事件」などは、シナリオ進行度が15%〜30%の時でないと発生しない。シナリオ進行度は目に見える値ではないため、バトルばかりしてしまうとこのイベントは見ることすらできないまま消滅してしまうのだ。

 また、イベントが他のイベントのトリガーとなっていることも多い。物語中盤で発生する「皇帝の奇病」は、どのルートで発生するかにもよるのだが、例えばグレイルートの場合、発生しても最初は恐らく何をすればいいのかすらわからないはずだ。それもそのはず、「皇帝の奇病」は「ゲッコ族」というイベントをクリアせねばならず、その「ゲッコ族」のクリアにはゲラ=ハが仲間になっていなければならない。その上で「古文書」というイベントを発生、「古文書」はキャプテン・ホーク関連のイベントをクリアしないとならず云々……(以下略)といったフラグが密接に絡み合っているのだ。

「古文書」のイベントをクリアして初めて「皇帝の奇病」の解決へと進めることができる

 主人公次第では、例えばすでに「ゲッコ族」をクリアできていたり、キャプテン・ホークを仲間にしていたりすることもあるため、そうなるとまたクリア条件が変わってきたりする。そういったフリーシナリオシステムのため、基本的に”決まった攻略がない”というのが本作の特徴となる。イベント自体のクリア条件はある程度決まっているものの、イベントをどの順番でどうクリアしていくかはプレーヤーの自由であり、そもそもイベントを発生させずに終わらせてしまうこともできる。

 ある程度必須となるイベントもあるのだが、例えばラスボスに挑むにもシナリオ進行度100%の状態で3つのイベントのいずれかでラスボスの居場所を聞くことしか条件になく、自由度が非常に高いのが特徴だ。逆に言うと、ぼーっとしているとイベントはどんどん流れていってしまうので、どのような遊び方をしたいかはプレーヤーの指先ひとつに掛かっているのである。

 だが、そんな「ミンサガ」にも主人公によって序盤の物語には大分変化がある。自由度が特に高いのはグレイとバーバラ。このふたりは初心者がいきなり主人公に選ぶよりも、周回してプレイに慣れてきてから選んだほうが遊びやすいはずだ。

序盤から「……それでなにをすればいいんだい?」となりがちなグレイだが、むしろ1周で全イベントを回収するというようなやり込みプレイには、グレイかバーバラが最も適している

 一方で序盤のイベントがしっかりあり、そこそこ自由になれる頃には中盤に差し掛かるのがアルベルト。

アルベルト編は序盤のストーリーがしっかりしているので、初心者にはオススメのルートだ
序盤はシフとふたりきりで進んでいくことになる

 だが、アルベルトは自由になれる頃にはストーリー進行度がかなり進んでしまっており、序盤で発生するイベントはすでに消滅している可能性が高い主人公だ。なので、「初回から全イベントを見るつもりでいくぜ」という鼻息の荒いプレーヤーには向いていない主人公だとも言える。

 なお、当然ながらゲーム序盤〜中盤で仲間にできるキャラクターにもかなり差がある。実際、アルベルトでプレイした時とグレイでプレイした時では、序盤〜中盤での構成に大分違いがある。

アルベルトの序盤では、シフ、吟遊詩人、テオドール、ラファエルという構成に
グレイでは、ガラハド、クローディア、モニカ、ジャン

 とはいえど、これは「全イベントを見るぞ」というつもりではあまりプレイしていないため、そのつもりでプレイするならばもっと違うパーティ構成も可能である。また、不要なキャラは仲間にするだけして着ぐるみ剥いで装備品を売るという非道(?)プレイも可能だ。

「閃き」に「連携」、歴代「サガ」シリーズをいいとこ取りした戦闘システム

 「ミンサガ」のバトルは、前述の通りその当時にリリースされていた歴代「サガ」シリーズからのいいところを全部まるっと搭載しており、非常にプレイし甲斐がある。

 バトルはシンボルエンカウント制で、ターンの初めに全キャラクターの使用する技を決定すると戦闘が開始される。いちいち決定しなければバトルが進まないという点ではひと手間かかるのだが、本作のバトルは非常に難易度が高いため、入力ミスによる全滅を防ぐにはちょうどよい。本作のバトルがどのくらい難しいかというと、雑魚戦でも全滅することはままあるし、ボス戦に至っては4〜5回チャレンジしなおして運で勝つということも割とあるくらいに難しい。

 本作にはレベルはなく、基本的に戦闘時の行動などによってパラメータが少しずつ成長していく。なので、「あと1レベル上げてから再チャレンジしよう」というような明確な指標がなく、プレーヤーからはよく最大HPを目安に攻略難易度が語られることが多い(このイベントは最大HP200が攻略の目安、等)。

 とはいえど、戦闘終了時に死亡しているキャラクターは成長をしないため、何はともあれ全員生存状態でバトルを終わらせるのが最優先だ(なかなかそううまくはいかせてくれないのだが……)。

 また本作特有の変わったパラメーターとして「LP」という値が存在する。LPとは生命力で、戦闘不能時に攻撃を受けると1減り、このLPが0になると完全に死亡して、パーティから離脱してしまうのだ(主人公のLPが0になった場合はゲームオーバー)。なので、このLPの残量には常に気を配らなければならない。特に戦闘からの退却や、限界以上にマップアビリティを使用することでも消費する。なおLPは宿屋に泊まること(LP回復プラン)などで回復できる。このように非常に重要なLPだが、キャラクターによって数値が違う。最初に主人公を選ぶ際には、ぜひLPの最大値も気にしてみてほしい。

クローディアのLPは17もあるが……
アイシャのLPは10しかない

 本作のバトルでは「ロマサガ2」以降で採用されることになった「閃き」システムが取り入れられている。閃きとは、バトル中に技を使っていると突如新しい技を繰り出すことがあり、その繰り出した技は以降自分の覚えた技として使用できるシステムだ。この閃きシステム、「サガ」シリーズは未経験でもシステムだけは知っているという人も多いのではないだろうか。バトルの終了時だけではなく、バトル中にも刻一刻と成長を感じられる、それが閃きなのだ。

 なお、強敵が相手の時ほど、技は閃きやすい傾向にある。だからこそ、閃いた時には死んでも負けたくないのだが、それでも負けてしまうこともあれば、ピンチのピンチで大技を閃き全滅を免れることもある。やはり閃きは浪漫だ。

閃きといえば、この電球のアイコン。これが光ったら閃いた合図だ

 また、行動順によって、次の攻撃をするキャラクターと「連携」という攻撃をする場合がある。連携攻撃の場合、1人ずつで攻撃した場合よりも大抵はダメージが高くなる。ただし敵も連携攻撃を使ってくるので、注意が必要だ。連携時に一定の条件を満たすことで「陣」が発動し、連携の効果をさらにアップすることがある。連携の発生率は高くもなければ低くもなく、ちょうどいい塩梅となっている。

「サガ」の連携といえば、連携技によってとんでもない連携名が出てくるのも楽しみのひとつ。これは「でたらめ矢」+「衝突剣」+「切り返し」+「ロッククラッシュ」の連携

 様々な武器種によって多彩な対応技が用意されているのも「ロマサガ」シリーズの特徴。武器種だけでも15種ほどあり、その武器種それぞれに20種以上もの技がある。武器に耐久値があり、使用回数を超えると壊れて体術しか使えなくなったりもする。

 このように、「ミンサガ」は「サガ」シリーズの集大成のようなバトルとなっており、美味しいところ全部取りのバトルなのだ。やり込むと、やり込んだだけ手応えのあるバトルが楽しめる。特に「ミンサガ」ならではの追加ボスに「デス」や「シェラハ」などもおり、たっぷり育成したけれどラスボスをボコすだけで終わってしまった、というような事態も避けられるようになっている(ラスボスも10段階まで強化可能で、10段階目は鬼と化す)。とにかくやり込みがしたい人にはぴったりの作品なのだ。

本作での変更点

 本作での変更点をいくつか挙げておこう。

解像度はフルHDに。フレームレートは30fps

ムービーは15fps

進行設定は、超ゆっくり、ゆっくり、普通、早い、超早い、から選択可能

 進行度を上げたくない人は超ゆっくり、早くラスボスへ向かいたい人は超早い、を選ぶことなどでゲーム進行をある程度自在に管理できる。

超ゆっくりで普通の0.5倍、ゆっくりで北米版と同等速度、早いで普通の2倍、超早いで普通の4倍になる

UIの見直し

 ミニマップを中央に表示したまま移動可能に。

右上のミニマップをRボタンで拡大していくと画面中央にミニマップが表示される。どこへ行けばいいのかわかりやすい
UIを全部右にまとめたり
UIを全部左にまとめたり、好みに表示できる。デフォルトは左右両方表示。

スキルなど一部の表示を見やすく改良

階層はひとつ下がるものの、視認性がアップ

アイテムを預ける倉庫が登場

 倉庫には1000個までアイテムストックが可能。

倉庫はギユウ軍かショップで利用可能

セーブの仕様が変更

 基本的にいつでもセーブ可能だが、宿屋セーブやクイックセーブも残されている。

バトル画面のUI変更

 画面右上に武器種アイコンが追加された。

あまり使わない技を非表示に

 戦闘であまり使わない技は表示をオフにする機能が追加(非表示にするだけで、技を忘れるわけではない)。

逃走時のLP減少が変更

 逃走時のLP減少は一律で1に。

シェリル、モニカ、マリーン、フラーマ、アルドラが仲間に

モニカは簡単に仲間になる

武器が3つ追加

 「アルドラの杖」、「カルベ・ディエム」、「デスサイズ」。特にデスサイズは攻撃性能60と、かなり高い性能となっている。

入手困難だったアイテムの調整

 青の剣、紅孔雀、月下美人、クロスクレイモア、エスパーダ・ロペラ、コランダム、ダーククリスタルなどの入手が緩和。

5つのクラスが追加

 見習い騎士、ごろつき、預言者、トレジャーハンター、海神の使いが追加される。

強化ボス13体追加

 強化ボスに挑むには10段階目のラスボスに勝利して、次の周に進む必要がある。

 進行設定は最初はゆっくりと普通のふたつしか選べなく、早いはゲームを一度クリアすることで選べるようになるが、ゆっくりにできるだけでも非常に嬉しい。

「サガ」初心者にも優しい難易度

 「ミンサガ」は「サガ」シリーズ初心者にこそオススメしたいタイトルだ。もちろん上級者でも遊べるやり込み要素は山のようにある作品だが、全体的な難易度は「サガ」シリーズの中では優しい方。それでも頻繁に全滅してはコンティニューをし……コンティニューをしては全滅し……を繰り返すゲーム性ではあるが、スーパーファミコン版「ロマサガ」と比べても随分と遊びやすい。最近のゲームに多い難易度EASYなRPGに比べればかなり骨太な作りとなっているものの、「最近のRPGは優しすぎる」なんて感じてしまう人にこそぴったりなゲームだ。

死んでナンボのゲーム性だと思ってほしい

 初周はあえて無理をせず、イベントよりも育成を優先し、進行度がどんどん進んでイベントが消失しまっても、2周目以降でそれを取り返していくという心づもりで挑むといいだろう。実際、フリーシナリオシステムとバトルシステムが胸を一発貫けば、何周プレイしても楽しめるレベルだ。

 かくいう筆者もかつて「ミンサガ」を8人全員でクリアしているのだが、そこまでいってようやく「ミンサガ」1人前とも言える。そもそも主人公ひとりのボリュームも、普通にプレイすればそこまで長くない。8人全員でクリアしつつその間に周回で開放される隠しボスなどもやりながら、育成を楽しみ、まだ見ていないイベントを回収したり、お気に入りのイベントを何度も遊んだり、30人以上もいる仲間の中からお気に入りのキャラを見つけたり、真ラスボス(10段階目まで強化されたラスボスを真〇〇〇〇〇と呼ぶ)に挑んだり、レアアイテムを探したり、カッコいいBGMたちを心行くまで楽しんだりできるという、とにかく幅の広い受け皿を持っているゲームである。

特にノーマルバトルの「戦いの序曲」は本作で何時間も聞くことになるが、どれだけ聞いても飽きることがないというスルメ曲

 特にBGMについてはスーパーファミコン時代の音楽も素晴らしかったが、スーパーファミコン時代からのアレンジを中心にした本作も非常に出来がよく、特に「呼び醒まされた記憶」、「熱情の律動」など「ミンサガ」だけのオリジナルバトル楽曲は、いずれもファンからの支持も厚い。

 「サガ」シリーズのいいところを全部乗せたような”いいとこ取り”ゲームなのは間違いないので、この機会にぜひ改めてプレイをしてみてほしい。

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