レビュー

「スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE」レビュー

善と悪との境界を探るストーリー。爽快なアクションバトルはやりごたえあり

【スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE】

発売元:スクウェア・エニックス

開発元:トライエース

ジャンル:RPG

発売日:10月27日

価格:
通常版:8,778円
DIGITAL DELAXE EDITION:11,858円
LIMITED EDITION:18,000円

 10月27日にスクウェア・エニックスから発売される「スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE」(以下、「SO6」)は、開発トライエースによる「スターオーシャン」シリーズ25周年記念作品タイトル。

 シナリオはトライエースの五反田義治氏をはじめ、「スターオーシャンアナムネシス」第二章以降の脚本を担当した小説家の和ヶ原聡司氏、小説家の更伊俊介氏らが参加し、さらにはキャラクターデザインにあきまん氏、梶本ユキヒロ氏、音楽に桜庭統氏と、豪華メンバーで贈る、まさに“25周年記念作品”に相応しい内容となっている。

 本稿は前回の記事ですでに語ったことと一部重複もするが、本稿では前回触れていなかったアイテム・クリエイションなど序盤のお役立ち情報も取り入れていきたい。

 なお、「スターオーシャン」の歴史やファーストインプレッションなどは前回の記事を参考にしてほしい。

【『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』ファイナルトレーラー】

W主人公の「スターオーシャン」

 本作は、先進惑星ベグアルドを出発した輸送艦イーダスの船長であるレイモンド・ローレンスと、そのレイモンドがトラブルによって不時着した未開惑星アスター星系第4惑星のオーシディアス王国の第一王女レティシア・オーシディアスによるW主人公。

 ゲーム開始時に主人公のどちらかを選ぶことになり、どちらかのルートでしか仲間にならないキャラクターも存在する。クリア後は「強くてニューゲーム」みたいなものは存在せず、全仲間を集合させるルートは恐らくないと思われるので、どちらのルートも全力で遊んでほしい

左がレイモンド・ローレンス、右がレティシア・オーシディアス

 レイモンド編とレティシア編で細かいところに違いはあるものの、まずは好みで選んでしまってもいいだろう。わかりやすい違いを書いておくとするなら、レイモンド編のほうがその特性上ほんのわずかに宇宙に出るのが早くなると思われる。

宇宙に出るタイミングはあくまでレイモンド編からの予想なので、もしかしたらレティシア編をプレイすると”ほんのわずか”の差ではないのかもしれないが……そこも含めてW主人公の楽しみとして取っておきたいところだ

 また、レイモンド編はノーマルバトル曲がいつもの「SO」らしいプログレッシブ・ロックなのに対し、レティシア編のバトル曲は荘厳さのあるシンフォニック・ロックとなっている。曲の好みによって選ぶのもいいだろう。バトルBGMなど一部の楽曲は「SO6」の公式サイトにてすでに公開されているので、気になる人はぜひ聞きにいってみてほしい。

□「スターオーシャン6」のページ

 操作キャラは一部で主人公キャラクターに限定される場面もあるものの、大抵は街のシーンなどに限ることが多く、バトルでは最大4名の仲間から好きなキャラクターを操作できるため、主人公に限らず自身が使いやすいキャラクターを使うことができる。なのでその点はそこまで気にしなくて良い。

レイモンドはシンプルに使いやすい片手剣型のキャラクターで、重装を装備できるので最終的なDEF値が高くなる
レティシアはスピード型の双剣キャラクターで鎧は軽装型となるため、レイモンドに比べてDEF値が低くなってしまうという欠点はある

 他は細かいイベントやレイモンドとレティシアが分かれて行動する場面でのシーンに差がある。今回レイモンド編をクリアまでプレイしたあと、レティシア編の序盤までをプレイしたが、単純な筆者の好みでいえばレイモンド編のほうがストーリーとしてはしっくりくる感じはあった。

 特にオープニングもレイモンド編のほうが内容が濃く、レティシア編はお供のアベラルドと共にレイモンドが墜落してくるシーンを見つける場面から始まるので、レティシアがレイモンド編で物語中盤まで明かさない事実などについては恐らくそのままだと思われるのだ。

レイモンド編のOPのほうがドラマチックな展開ではあるが……

 そのため、主人公をレティシアにした場合、主人公(自分)を操作しているはずなのに自分の知らない隠し事がある、という点が少々気になってしまう。特に物語の序盤はレイモンドが不時着した先でレティシアと出会い、レティシアが「ミダスという人物を探しているので協力してほしい」とレイモンドに旅の同行を願うことからも、レティシアを主人公にした場合、彼女がなぜミダスという人物を探しているのかなどが全く不明のまま物語が進んでしまうのだ。

自分に協力すれば、その代わりに他にこの星に不時着したはずのレイモンドの仲間を探す手伝いをしてくれるというレティシア

 レイモンドが主人公の場合、レティシアに何か事情があるのだということは簡単に察することができるのだが、レティシアを主人公にしていた場合、その点だけが気になる人には気になるかもしれない。ただいずれにしても物語が進めばきちんと解明される謎だけに、「どうせなら主人公を操作したい」派の人は使い勝手や好み、あとは前述の通りバトル曲の好みで選んでしまっていいだろう。

 なお、物語が始まって比較的すぐにバトル曲を聴くことができるので、どちらが好みか聞き比べてからリセットしてやり直しても全く問題ないレベルだ(その場合どちらもOPも見ることができるので、よりお得ではある)。

どちらのOPも見てからすぐセーブをしておけば、何回も見直す必要もない

 なお、「プライベートアクション」(PA)と呼ばれる、街中や道中にて、各キャラクターとの会話イベントが楽しめるシステムは本作でも健在だが、レイモンドが主人公の時とレティシアが主人公の時では当然ながら発生するPAが変わってくる。その点だけは注意してほしい。

序盤に訪れるラーカスの村で発生するPAだが、レイモンド編ではレティシアの従者であるアベラルドのツンケンしたイベントが見られる
上記と全く同じ進行状態でレティシアが主人公になると、当然ながら全く違った内容のPAとなる

バトルが最後まで面白かった一方で、アクションはそこそこに求められる

 前回の記事でもバトルについて触れているので細かい部分は省略するが、バトルは「SO4」のサイトアウトに近いシステムとなっており、レイモンドが運んでいた積み荷から出てきた謎の存在「DUMA」を使った高速アクションが非常に楽しい。DUMAは移動などで飛びたい方向に狙いをつけてビューンと飛んでいくこともできるのだが、その真価を発揮するのは主にバトルのほうだ。

R1ボタン長押しで飛んでいく方向に狙いを定めたら……
その方角へ、一足飛び!

 DUMAで敵に狙いをつけてひとっ飛びし、サプライズアタックなどを仕掛けたり、敵の目前で方向転換することによって「ブラインドサイド」という敵の動きを止められる攻撃を仕掛けたりすることができる。

敵が操作キャラを見ている状態でないとブラインドサイドは発生しない。敵が操作キャラを見失うことで発生するのがブラインドサイドなので、そのことをしっかりインプットしておくといいだろう

 特にブラインドサイドは本作の要となっており、これをマスターできないと本作のバトルの楽しさが味わえない。ブラインドサイドを成功させるコツは“敵の目前での方向転換”となっているが、実際にはあまり目前だと方向転換できないまま突進してしまうので、「どの程度の距離感で方向転換すればブラインドサイドが成功するか」というコツについては、とにかく何度も試して体に覚え込ませるしかない。

 ただ、このブラインドサイド、決まれば最高に気分が良く、敵は驚きで硬直しているのでその間に一気に殲滅できて爽快感も味わえるしで、さすがバトルについては納得のトライエースという一言に尽きる。

 一方で、ボス戦はブラインドサイドが有効なボスもいれば、ブラインドサイドが取れないボスもいる。やはり厳しいのは圧倒的にブラインドサイドが取れないボスだ。筆者のレベル上げが足りなかったのかどうなのかはわからないが、一部のボスなどは操作キャラ以外全員戦闘不能になり、操作キャラで必死に回避、回避、タイミングを見ながら攻撃、また回避を繰り返すような状態になっていた。

 ちなみに今回、時間の都合上プレイ難易度はEARTH(EASY相当)を選んでおり、筆者は普段「スターオーシャン」の難易度はGALAXY(NORMAL相当)でプレイしていることは伝えておきたい。つまりEASYですらそんな状態に追い込まれていたので、ボス戦については少々厳しめのアクションが求められると思っていいだろう。言うまでもないが、装備品はその近辺で買うことのできる最新のものを装備している。

見事に操作キャラ以外戦闘不能になっている図である。HP全快でもボスの攻撃で即死したりするのがなかなかにツラい

 レベル上げが足りていなかった可能性は大いにあるのだが、基本的に戦闘は避けず、フィールドで出会う雑魚もダンジョンで出会う雑魚も全て倒してきているので、これでレベルが足りないとなると必然的にレベル上げのような作業がもっと必要になってくると思われる。

 ゲーム性的にも意図的に「レベル上げ」をしなければならないように感じられるプレイフィールではなく、むしろテンポよく進んでいくストーリーに乗っかって進めていったらボス戦でひどい目にあった、という感じだったので、その点だけは少々残念だ。恐らく難易度GALAXY以上であれば、相応のレベル上げとアクションが求められると思っていいだろう。

 ただ、ボス戦のいくつかは数回やり直すこととなったが、全部のボスが厳しいアクションを求められるわけではない。ブラインドサイドが有効なボスであれば、むしろ10体ほどの群れで出てくる雑魚敵よりもブラインドサイドは取りやすく、とても楽しくプレイすることができる。

 しかしやはりブラインドサイドだけは必須のテクニックとも言え、それは難易度EARTHでも変わらない。やり応えのあるバトルは全体で見ればバランスが良く、ボタン連打では勝てないものの、初心者でも慣れてきさえすればDUMAを使用した各種アクションを楽しむことができるはずだ。

 なお、物語が進行していくと途中で「Vatting」という必殺技が使えるようになるのだが、このVattingをどこで敵に当てるかも重要となる。特にボス戦ではVattingの使用箇所によって、大きく難易度が変わるとすら言えるだろう。ボスがダウンしている最中を狙えばVatting一発でバトルを終わらせられるという局面もあるだけに、Vattingゲージの使い道はしっかり見極めてほしい。

Vattingゲージはパーティで共通。貯めやすいキャラクターでゲージを貯めて他のキャラで必殺技を使用するとかもできるので、ここぞというところで使えるようにしておこう

序盤で役立つアイテム・クリエイションを紹介!

 本作にももちろん、アイテム・クリエイションは存在する。アイテム・クリエイションは、旅の途中で収取したアイテムから強力なアイテムを生成することができる技術だ。

 ただ、アイテム・クリエイションを開放するにはとあるクエストをクリアしないとならない。そうでないと最悪物語の最後までアイテム・クリエイション未開放のまま、なんてことも有り得るので、その点だけは注意が必要だ。

 本作は物語があまりにテンポ良く進むため、その波にただ乗ってしまうと、クエストのことを忘れがちなのだ。ちなみに筆者はまさに途中までクエストのことを忘れており、アイテム・クリエイションを開放していなかったという実体験での話だ。クエストの内容自体は簡単なものなのだが、筆者はクエスト受注時点でクリア条件を満たしていなかったため、後で満たしてから戻ってこようと思ってそのまま忘れていたのだ。

アイテム・クリエイションあるところにウェルチあり。今作にももちろんウェルチは登場する。本作のウェルチもなかなかに奇抜もとい激しいデザインだ

 それはさておき、本作でもアイテム・クリエイションは必須と言える。もちろんストーリーをクリアするだけならば必須ではないのだが、とにかくお金がないゲーム序盤を乗り越えるためにもお得なアイテム・クリエイションをひとつ紹介しよう。

リザレクションボトルを作ってFOL(お金)を稼ごう

 アイテム・クリエイションが開放されると、まず「調合」が可能になる。そのまま町で売られているブルーベリィとフレッシュセージを20個ずつ買い、調合でブルーベリィ+フレッシュセージを合成すると、リザレクションボトルができる。

 このリザレクションボトルは400FOLで売れるので、ブルーベリィ代とフレッシュセージ代、調合代をあわせてもプラスになる。これを店で売って、再びブルーベリィとフレッシュセージを20個ずつ買い調合するのを繰り返すだけで、あっという間に数万FOLくらいは稼げてしまう。

ブルーベリィもフレッシュセージも0個の状態で9,594FOL持っているところからスタート
調合でリザレクションボトルを作成して……
リザレクションボトルを全て売ると、12,575FOLに。20回調合して、約3,000FOLほど稼げた。

 調合に失敗すると「やばいねばねば」になってしまうが、筆者の体感的には調合成功率は70〜80%ほどで、失敗してもFOLが最初の所持金より減ってしまったというようなことは一度もなかった。

 このFOL稼ぎは本当に序盤でしか使えないのだが(中盤になると装備が高くなってくるので、かかる時間の割に合わない)、それでも覚えておいて損はない。また、中盤になってくれば別のアイテム・クリエイションでお金を稼げるようになってくるので、今回もアイテム・クリエイションを制すものが本作を制すと言っても良さそうだ。

 アイテム・クリエイションのシステムは作品ごとに変わるため前作までのアイテム・クリエイションとは全く異なり、筆者もまだまだ模索中の身だが、リザレクションボトルのことさえ覚えておいてくれれば、「困った時のアイテム・クリエイション」と思い出せるだろう。それにリザレクションボトル自体、店での売値は4,000FOLと非常に高価な上に性能も高い。物語の後半になればなるほど出番の増えるアイテムだけに、この調合を覚えておくだけでも貴重なFOLの節約ができる。

飽きずに最後まで遊ぶことのできる物語

 これは前回の記事でも書いたのだが、とにかくテンポの良いストーリーが最後の最後まで続き、非常に楽しくプレイすることができた。一方で、バトル中でもおかまいなしに重要なことを喋りだしたりするため、バトルに集中していればセリフが聞けないし、セリフを聞いているとバトルに集中しきれないという欠点もあるにはあった。

 1周目をクリアするまでにかかった時間は約30時間ほどだったが、その30時間の中にどれだけの情報量が詰まっていたかと考えるとかなり恐ろしい。何せ彼らといえば、四六時中ずっと喋っているのである。移動しながらでも雑談を交わす。シナリオ上でも当然会話を交わす。バトル中でも話し出す。とにかく膨大なシナリオを詰め込むに詰め込んだと思われる物語だった。

フィールドを歩いている最中も、実によく話す
バトル中も話す……

 その進行の仕方からイベントゲームと言われてしまうような作りにもなっているかもしれないが、それはあくまでメインシナリオだけをひたすら追った場合だろう。筆者の今回のプレイもそれに近くはあったのだが、例えばプライベートアクションのためやアイテム・クリエイションのために世界各地を回ったり、寄り道はたくさん用意されていると想定される。

 しかもここまでですらすでにお腹いっぱいというくらいのシナリオを見せてもらえたのに、まだ見ぬシナリオがあるのかと思うと、ちょっと背筋がぞっとしてしまう量だ。

イベントも非常に多く、シナリオがよく作り込まれている

 なお、登場するキャラクターもみんな魅力的だった。前回レティシアを非常に推した筆者だが、今回はマリエルとJJを推したい。マリエルは連邦の英雄ケニー家に連なる子孫で、未開惑星保護条約違反の常連とも呼ばれる名家だからこそ、自身は決して連邦の法を乱さないと強く誓っている女性だが、未開惑星保護条約に縛られないレイモンドに翻弄される。

 JJは全身を機械化した剣士で、まるで侍のような見た目をしている。仲間を尊び、そして非常に落ち着いた物腰で、レイモンドたちにどんなに敵のような目を向けられても決して動じることはない。

マリエル
JJ

 さらにレイモンドの副官であるエレナや、レティシアの従者アベラルドなど、主人公の補佐役となるふたりはかたや冷静沈着なクルー、かたや激情型の騎士と、その在り方が対照的に描かれている。ただふたりとも、強い忠誠心のような心だけは共通しているのが面白いところだ。

エレナ
アベラルド

 想像以上に濃い物語を見せてもらった。そのシナリオについて深くは語れないものの、善と悪との境界を考えさせられる物語となっている。現代の科学と、その延長にある遠い先の未来の物語という設定から、いつかこんなことに直面するかもしれないと考えさせられるシナリオには思わず唸ってしまった。

 そしてもちろん、「SO」シリーズならではのちょっとした過去作を知っていると「おぉ……」となる部分もあるのだが、これまでのシリーズよりもその触れられ方は随分とあっさりしているように見えた。これは言い換えれば「SO」を知らない人が「SO6」からプレイしても全く問題がなさそうに思える内容であるということだ。これまで「スターオーシャン」に触れたことがない人も、ぜひこの機会に「スターオーシャン」の世界に触れてみてほしい。