レビュー
「Ghostwire: Tokyo」レビュー
妖怪、地縛霊、都市伝説……。"日本のオカルト"を最新のゲーム技術で表現!
2022年3月21日 22:00
- 【Ghostwire: Tokyo】
- ジャンル:アクションアドベンチャー
- 開発元:Tango Gameworks
- 発売元:ベセスダ・ソフトワークス
- プラットフォーム:PS5/PS4
- CERO:C(15才以上対象)
- 3月25日 発売予定
- 価格:
- 通常版8,778円(税込)
- デラックス版10,978円(税込)
東京が"霧"に包まれ、その霧に触れた人々は肉体を消失、魂はこの世ならざる者"マレビト"達により、"筺(はこ)"に封じられてしまう。その大規模な消失事件を起こしたのは般若面の男。彼は一体何をしようとしているのか……。
「Ghostwire: Tokyo」は、"東京"を舞台とした"伝奇アクションRPG"である。妖怪や伝承、神道や呪術といった日本古来の要素が、現代社会と結びつくストーリー。そして現代の怪異"マレビト"や普段は目に見えない霊達に、に、指を組み合わせる"印"や、お札を使った術符、破魔の弓で立ち向かう。
「バイオハザード」の生みの親として知られる三上真司氏率いるTango Gameworksによる最新作であり、日本のエンターテイメントジャンルの1つ"伝奇アクション"の世界をたっぷり体験できる作品だ。
なお弊誌では、ファーストインプレッションとして「Ghostwire: Tokyo」の最序盤について、基本的な要素と魅力を紹介している。本稿のレビューと合わせて、ぜひ参考にしていただきたい。
夜の東京で怪異と立ち向かえ! 伝奇アクションの世界を満喫!
「Ghostwire: Tokyo」は主人公である暁人(あきと)と、彼に憑依し様々な術の使用を可能とするKKの2人の物語だ。舞台は現代の東京。般若面をつけた謎の男は、東京を霧に包み、そのきりに触れた人々は肉体を失ってしまう。
暁人は般若に妹をさらわれる。般若はある目的に妹を利用しようとしているのだ。その目的を阻むためには彼に取り憑いたKKと力を合わせるしかない。暁人はKKと協力し、般若の目的を阻み、妹を取り戻すため戦う。
KKの得体の知れなさに最初は警戒していた暁人だが、彼の過去を知り、KKの般若への激しい怒りを知る。KKもまた暁人の必死さ、人の良さを知り、様々な事件を一緒に解決していく中で信頼を強めていく。暁人とKKは一度は引き剥がされるが、暁人は囚われたKKを救い出す。暁人とKKの絆もまた、本作の大きなテーマだ。
「Ghostwire: Tokyo」で暁人はエーテルというエネルギーを様々な"術"として、背広姿やセーラー服、OLの姿をした"マレビト"と激しい戦いを繰り広げていく。マレビト達は一見普通の人の姿をしていながら、顔や首がなかったりする。また巨大なはさみを持った口割け女や、空に浮かぶてるてる坊主など、ネットや学校で語られる怪談が具現化したような姿をしている。彼らとの激しいアクションと、リアルな東京の描写が本作の大きな魅力だ。
特に東京で"夜の散歩"をした記憶のある人には本作の面白さは共感できるだろう。人の気配はするけど、視界には人のいない都会の夜。建物の影や、公園が暗く、何かが潜んでいるような気がする。ちょっと怖く、少しワクワクする都会の深夜の景色。その夜の記憶と本作の世界が融合していく。そして「Ghostwire: Tokyo」の東京には、本物の怪異がいるのだ。
今回は「戦闘」と「東京」という2つのテーマでプレイ動画を切り出してみた。風、火、水のエーテルを使ったアクション、そしてリアルに描き出された東京の風景が本作の大きなウリだ。この雰囲気が気に入った人ならば、是非この世界に踏み出して欲しい。
どの能力を強化していくか? 様々なアプローチが可能な戦闘システム
本作の細かいゲームシステムを紹介していこう。ミッションをクリアしたり、幽霊達を形代に取り込み転送装置を通じて救い出すと暁人は経験値を得て、レベルアップする。「Ghostwire: Tokyo」におけるレベルの概念は「KKとのシンクロ率」である。
そして「スキルポイント」を使うことで暁人はKKの術を学んでいく。風、火、水のエーテルショットのパワーアップだけでなく、弓や術符の技の習得、戦闘や、ステルスのスキルの取得などその技は多彩だ。
お札を使う術符は非常に強力な技だ。敵を一定時間拘束する「麻痺札」、敵のコアを露出させやすくする「露核札」などがあり、これを当てることで戦いをかなり有利に進められる。また弓は遠距離からのステルスキルに使える。
「Ghostwire: Tokyo」は中盤以降はかなりの敵と戦う。プレーヤーはスキルの上昇によって3つのエーテルショットを使い分け、敵との距離を把握し、かなりうまく戦えるようになっているが、それでも数とパワーで押してくるマレビト達の戦いに苦戦が多くなってくる。弓や札を駆使する戦い方を覚えることで、戦いを有利に進められるだろう。
物語が進むことで暁人とKKは「絶対共鳴」を使えるようになる。発動と同時に黒い衝撃波が拡散、触れたマレビトは動けなくなり、さらにそこから強力な攻撃で敵を殲滅できる。スキルを上げることで共鳴時間を増やすことができる。
またスキルの一部は解放するために「勾玉」が必要となる。これは後述するサブミッションをクリアすることで妖怪達からもらうことができる。探索し、戦い、様々なミッションをクリアしていくことで、暁人とKKはより強力な存在になっていくのである。
カッパや天狗、呪いの人形……。妖怪から都市伝説までバラエティ豊かなサブミッション
「Ghostwire: Tokyo」の基本的な目的は「霧からの東京の解放」にある。各地の鳥居を見つけ出し、それらを守るマレビト達を倒して封じられた鳥居を"浄化"することで霧を退けていくことができる。霧は進入不可のゾーンであり、プレーヤーは霧を退けていくことで行動範囲を広げていける。
鳥居の浄化というメインミッションの他に、様々なサブミッションが用意されている。このサブミッションが実に「都市怪談」として楽しいものになっている。「自殺者が多くいるビル」、「ゴミ屋敷に潜む怪異」、「古い銭湯に取り憑く存在」などネットや噂話で語られる怪談に"術"で挑むのである。怪奇現象を起こす人々の怨念に立ち向かい、呪いに苦しんでいる人々を助ける体験が本作では可能だ。
フィールドでは霧によって霊となっている人々だけでなく、現世に囚われ成仏できない霊もいるようで、暁人はその地縛霊と化した霊達も救う。彼らは悔(杭)に貫かれてその場を動くことができない。杭は「悔い」であり、暁人は浄化の印でその悔を霊から引き抜くことで解放させることができるのである。
妖怪関係も様々な者が出てくる。コンビニや屋台で商売をしているのは「猫又」で、珍しいものの収拾を依頼してくる猫又もいる。川に潜む河童、建物の中にいる「ぬりかべ」、空を飛ぶ「一反木綿」など妖怪もバラエティ豊かだ。彼らから力を貸してもらうことで勾玉が得られる。勾玉を集めることで暁人はスキルを強化できる。
サブミッション以外にも建物の上からいきなり襲いかかってくるてるてる坊主や、公園にいる首のない女子高生、道を塞ぐ禍々しい形をした木など歩いて出会う風景そのものが怪談ぽい。「Ghostwire: Tokyo」の面白いところは日常世界で重ってしまう空想や、ちょっとした不安に、オリジナルのビジュアルで具現化しているところだ。
なんとなく気持ちの悪い場所、嫌な雰囲気の地域。事件や事故があった場所、不審者の目撃情報がある裏道……。日本は治安の良い国ではあるが、やはり暗いところ、不気味な場所はある。まして人がひしめく世界一の都市だ。そこには人々の様々な情念が渦巻いている。その情念が"何か"を生み出し、人々に害をなす。そういうリアルとファンタジーの狭間の雰囲気を本作はうまく描き出している。
「Ghostwire: Tokyo」は世界的なマーケットを持つベセスダ・ソフトワークスと、Tango Gameworksの作り出した日本の要素を前面に出したゲームである。これまでも都市伝説や、妖魔との戦いをテーマにした作品は多い。その大きな成功例は「真・女神転生」シリーズであるとは思うが、「Ghostwire: Tokyo」はオープンワールド、アクション、最新のビジュアルなど本作だから可能なアプローチでそのテーマに挑んでいる。
まずは「Ghostwire: Tokyo」の登場を祝いたい。AAAタイトルとして労力を傾け、世界のマーケットに勝負するためのゲーム作品で、"日本のオカルト"を題材にしたその企画力と生み出されたユニークな世界はとてもユニークな魅力がある。是非手に取って欲しい。
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