レビュー

「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」レビュー

こんなホームズ見たことない! 明治時代の日本と倫敦を舞台に個性的なキャラクターが法廷で立ち回る爽快推理ADV

【大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-】

ジャンル:大法廷バトル

発売元:カプコン

開発元:カプコン

プラットフォーム:PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)

発売日:7月29日

価格:
5,489円(税込、パッケージ版)
4,990円(税込、ダウンロード版)

 PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用大法廷バトルゲーム「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」が7月29日に発売される。価格はパッケージ版が5,489円(税込)で、ダウンロード版が4,990円(税込)。

 「大逆転裁判」は、大人気法廷アドベンチャー「逆転裁判」シリーズ生みの親である巧舟氏の手がけた大法廷バトルゲーム。「逆転裁判」の主人公である成歩堂龍一の先祖となる成歩堂龍ノ介が主人公となり、明治時代の法廷を舞台に戦う姿が描かれている。今作は、ニンテンドー3DSにて2015年7月に第1作目が、2017年8月に第2作目がそれぞれ発売された「大逆転裁判」シリーズのセットタイトルとなっており、今回の移植にあたって高解像度化や新機能などの改修が行なわれ、遊びやすさが倍増している。

 物語は“開国”から数十年後の明治時代後期の大日本帝国(日本)から始まる。主人公・龍ノ介は留学生として大英帝国(イギリス)の倫敦(ロンドン)にて司法を学ぶこととなる。なお、明治時代(19世紀末)の英国・倫敦といえば、シャーロック・ホームズが相棒のワトソン医師とともに、ロンドンのベイカー街221Bに拠点を構え、次々と事件を解決していった時代でもある。殺人事件、警察、被告人、弁護士——ここまで揃って、あの名探偵が登場しないわけがない。さらには“ワトソン”なる人物も登場するのだが……。

 そして、龍ノ介が、親友の弁護士・亜双義、法務助士の寿沙都、名探偵ホームズ、“死神”と呼ばれる検事・バンジークスなどを相手に、弁護士として成長していく物語が「大逆転裁判」である。

 本稿では、Switch版「大逆転裁判1&2」をプレイした上で、キャラクター・システム・物語の観点からレビューしていく。なお基本的にネタバレを含んでいない。未プレイの方も安心して読んでほしい。

独特の作風が特徴の原作ディレクター巧氏の味付けによる、本作のシャーロック・ホームズ。筋金入りのミステリーファンである巧氏の手による「新たなホームズの物語のひとつ」とも言える。もちろん原典となる「ホームズ」シリーズからの小ネタ、登場人物なども随所に登場する。「バスカビル家の犬」や元祖「逆転裁判」などを知っていると本作をより一層楽しめるが、知らなくても楽しめるので安心して手に取ってほしい
【大逆転裁判1&2 プロモーション映像】

個性あふれるキャラクターたち。ホームズにワトソン、夏目漱石まで登場!

 「大逆転裁判」の一番の魅力は、なんといっても個性的なキャラクターたちだ。早速ではあるが、キャラクターを語れなければこの作品を語れない、というほど重要な要素なので、筆者が紹介したいキャラクターたちを並べていきたい。

成歩堂龍ノ介(CV:下野紘)

 本作の主人公であり、「逆転裁判」の主人公・成歩堂龍一の先祖でもある成歩堂龍ノ介。勇盟大学2年生。親友・亜双義の誘いで英国へ向かい、弁護士の道を歩むこととなる。英語学部に所属しているため、英語が堪能。

 運命に導かれるように日本の法廷から英国の大法廷へ立つことになり、そしてシャーロック・ホームズの住処であるベーカー街221Bに住まうこととなる。倫敦では、シャーロック・ホームズの下宿の屋根裏部屋に「成歩堂法律相談所」を設立。倫敦の法廷でいくつもの裁判を経験していき、徐々に姿を現わしていく倫敦の闇へと立ち向かう。

「異議あり!」などのセリフがまだうまく言えない新米弁護士・龍ノ介は、「ちょっと!」や「はいッ!」と拙いツッコミを入れたり、動揺すると目が泳いでいることも。「1」では頼りない姿が目立つが、「2」ではやがて日本の司法の礎となるであろう成長っぷりが感じられる

御琴羽寿沙都(CV:花澤香菜)

 御琴羽寿沙都は、法務助士の資格を持っており、裏側から龍ノ介を支えるような大和撫子。真面目そうに見えるが、実はお茶目な性格で努力家でもある。父・御琴羽悠仁は、大日本帝国における法医学の第一人者だ。

 また、大英帝国の雑誌「ストランドマガジン」の連載小説「シャーロック・ホームズの冒険」の大ファンで、毎月英国から日本に船便で取り寄せている。当然ながらシャーロック・ホームズ本人の大ファンでもある。

ちょっとミーハーなところもある寿沙都。武道も嗜んでおり、「寿沙都投げ」なるものを披露することも。また、当時の女性の社会的立場の弱さに苦しむ姿なども見せる。法廷ではいつも龍ノ介の相棒として共に闘ってくれる、頼もしいヒロイン

亜双義一真(CV:中村悠一)

 龍ノ介の同級生にして親友。学生の身ですでに弁護士の資格を取得しているほど優秀で、大日本帝国の弁護士として大英帝国へ留学し、世界最高の司法を学ぶことを夢見ている。親友の成歩堂にも弁護士としての可能性を感じ取り、彼に留学への道を示す。

 熱血漢でありながらも爽やかで、成歩堂を力強く支えてくれる存在。常に名刀「狩魔」を帯刀。身寄りがなく、父の親友であり寿沙都の父である御琴羽悠仁が亜双義の大学の学費援助から英国留学まで世話をしてくれたことから、悠仁には深い感謝の気持ちを抱いている。また、寿沙都の法務助士としての力を信頼している。

熱い人間は密閉空間に風を起こせる法則があるが、亜双義もその法則の中にいるので彼のハチマキは常になびいている。恐らく全人類が認めるイケメンオブイケメン。龍ノ介も裁判中に「亜双義、カッコいい」と心の中で叫んでいる

シャーロック・ホームズ(CV:川田紳司)

 世界で最も有名な大英帝国の大探偵シャーロック・ホームズ(34歳)。言うまでもなく、コナン・ドイルによる小説「シャーロック・ホームズ」シリーズのキャラクターだが、その在り方は「大逆転裁判」色へとアレンジされている。

 人智を越えた観察力は本質を突きつつも、着眼点と論理が微妙にズレている(※寿沙都談)。その“微妙にズレた”推理を龍ノ介が修正していく名コンビ(?)となる。事件現場では“調査”という名目の奇行が目立つ。無邪気で、年齢の割に子供のような一面を持っているが、彼が本当にただのポンコツ探偵なのかというと、決してそんなことはない。

 ベーカー街221Bにてアイリス・ワトソンと同居しており、そこに龍ノ介と寿沙都も住まわせる。“相棒”の存在をしばしば匂わせるが……。

「あの“シャーロック・ホームズ”」と連呼するホームズだが、龍ノ介は「アノシャーロック・ホームズ」だと思い込む。……という経緯や、並居る“ホームズ”との区別もあって、ファンの間で本作のホームズは「アノシャー」と呼ばれることが多い(※豆知識)

アイリス・ワトソン(CV:久野美咲)

 ベーカー街221Bにて、ホームズと同居している天才少女。10歳でありながら、英国の大衆娯楽雑誌「ストランドマガジン」で、小説「シャーロック・ホームズの冒険」を連載。更に医学博士号も持っている。ホームズと昔から暮らしているが、ホームズは実父ではない。ある種ホームズよりも優秀なのでは、という程だが、年相応の少女らしさも兼ね備えている。

 なお小説の内容は、ホームズから聞いた事件の話や、ホームズの“相棒”が残した事件の記録をもとにして書かれている。

小説家としてだけではなく、発明家でもあるアイリス。天真爛漫という言葉が相応しいキャラクターだが、小説内で性別と年齢を変えた理由は「10歳の女の子を連れまわす名探偵って、なんだかビミョーだから」(※アイリス談)という非情に大人らしい視点を持っており、時には手厳しいツッコミをいれることもある、ちょっとませた女の子

バロック・バンジークス(CV:津田健次郎)

 「死神」の異名をもつ検事として、龍ノ介の前に立ちはだかる。偉大なる貴族・バンジークス家の血をひく、倫敦で最も優秀な検事。とは言っても、彼が検事席に立つと判決が必ず有罪になるわけではない。

 元々は大犯罪を中心に扱っていたが、龍ノ介との対峙をきっかけに、龍ノ介が弁護席に立つ裁判では小さな事件であろとも法廷に姿を現わすようになる。

自身に関わった被告が必ず死ぬということから、一度は法廷から遠ざかっていたバンジークス。5年ぶりに法廷へと戻ってきた。普段から法廷にも持ち込んでいる“神の聖杯”たるものの手入れを欠かさないといった一面も。一方でその神の聖杯を粉々に割ってしまったり、壁に叩きつけたりと、随分雑に扱う場面も。また、カカト落としも得意技

トバイアス・グレグソン

 本家「シャーロック・ホームズ」シリーズにも登場しているロンドン警視庁(スコットランドヤード)の警部。色々ぶっきらぼうなところも多いが、本当は心優しく、正義感も強い。

「シャーロック・ホームズの冒険」に登場して以降、彼なりの悩みがあるようだ

夏目漱石

 「吾輩は猫である」などの代表作を持つ、明治末期から大正初期にかけて活躍した近代日本文学の頂点に立つ作家のひとり。史実では1900年に英国留学を命じられ、約3年間倫敦に住んでいた。本作では留学から1年後、とある事件で被告人となってしまい、龍ノ介と出会う。

ホームズと同じくらい奇行だらけの夏目漱石。本作では“最も憎めない愛すべきキャラクター”のひとりでもある

亜内武土

 「逆転裁判」シリーズにて成歩堂龍一の前に立ちはだかってきた亜内検事の先祖……と思われる人物。

末代まで忘れなかった結果が「逆転裁判」(多分)

 ……と、「逆転裁判」シリーズを知っていると少々楽しめる小ネタはあるものの、登場人物からもわかるように実質「逆転裁判」シリーズとの関わりは「先祖である」という点のみで、これまで「逆転裁判」シリーズを遊んだことがない人でも楽しめる内容となっている。

 もちろんこれらは「大逆転裁判」シリーズに登場するキャラクターの中でも、ほんの僅か。実際にはもっとたくさんのキャラクターたちが、自身の状況・思想・思惑・権力など様々なものと葛藤しながら(葛藤しているように見えないキャラクターたちもいるが)進んでゆく。

愉快な仲間と共に進めていくストーリー。「探偵パート」と「法廷パート」で事件の謎を解き明かす

 物語は主に「探偵パート」と「法廷パート」のふたつで構成されている(必ずしもこの構成ではない)。

 探偵パートでは、基本的に法廷パートを戦うための証言や証拠を集めていく。そして探偵パートで集めた手がかりを元に、被告人の弁護を行ない、被告人の無罪を勝ち取るまで闘うのが法廷パートだ。これまでに「逆転裁判」シリーズを遊んだことがある人ならば、ほぼ同じ雰囲気で進めることができる。

 探偵パートは助手である寿沙都の他に、ホームズが協力(?)してくれることもある。その最たるところが“共同推理”だ。共同推理は本作からの新要素で、主にホームズのトンデモ推理に龍ノ介がツッコミを入れながら、軌道修正していくような構成となっているので、まずはホームズの推理に耳を傾けてみよう。

ホームズは天才すぎるが故に、思考が“ぶっ飛んで”いる。だからこそ、追い詰められているはずの人物も、思わず「?」マークを浮かべてしまうのだろう
寿沙都の言葉に、思わず「相当な“ほんの少し”ですね」というツッコミを入れる龍ノ介。会話のテンポの良さは巧氏のシナリオならでは
その“相当なほんの少し”を正してやるのが、龍ノ介の役目。ぶっ飛びすぎた思考を上手く正してやることで、ホームズの推理を修正することができる
本作で新登場のシステムとあって、最初の共同推理はチュートリアル的なものとなる。まずは共同推理の進め方を覚えよう
無事に正しい推理へ収束すると共同推理は終了。推理終了後にはふたりそろってのキメポーズ。初対面からいきなり息が合っている

 もちろん、共同推理に限らず、全てのパートにて最初は丁寧にプレイの仕方が指示されているので、「逆転裁判」シリーズに不慣れな人でもすぐに操作を覚えられるだろう。

特に最初の法廷パートを共に闘ってくれる亜双義からは「Rボタンで法廷記録を開く」、「Bボタンで戻る」、「Xボタンで突きつける」(※操作方法はSwitch版のもの)といった本当に基本的な操作方法まで細かく教わることができる

 チュートリアルは物語の中で必要に応じて説明されていくため、筆者のように「チュートリアルをスキップしたくなる」という残念な大人でも、ストーリーを楽しみながら操作を覚えられる。

 なお、Switch版での携帯モード時は、液晶をタッチすることでの操作も可能。特に証拠品を調べたりするときにいちいちカーソルを合わせずともタッチパネルで調べたいところをタッチすればいいだけなのは有り難い。

証拠品の多くが3Dになっているため、本作ではプレーヤーが好きなように証拠品をぐるぐる回して調べることができる。だが、強いて言うならばカメラの操作がノーマル固定のため、筆者のような「カメラは絶対リバース族」には、ここの操作だけ少し面倒くさい
恐らくここまで説明しなくてもいいのでは、という部分ではあるのだが、このチュートリアルのメタなテキストも含めてツッコめるのが本作の魅力ともいえる

 本作では、陪審バトルが新要素として登場する。

 陪審員は裁判の途中で「これ以上審議を続けるまでもなく、この被告人は有罪」と思ってしまったら有罪へと判決を入れてしまう。だが最終弁論では、陪審員たちの意見が全員“有罪”へと傾いてしまった時に、最後の説得を試みることができるのだ。陪審員たちの意見をよく聞いて、有罪とした理由から決定的な矛盾を見つけ出し、陪審員たちの評決を変えさせていく。

序盤の陪審論告はそこまで難しくもないので、答えも比較的簡単にわかるだろう。明らかにおかしい陪審員の意見を選んで、“ぶつける”ことによって、陪審員たちの意見を変えさせられる

とにかくストーリーが面白い! 巧氏による軽妙なストーリー運びに注目

 本作は殺人など重大な犯罪を犯した犯人を推理していく要素や、物語の展開で明らかになる謎が多いため、あまり物語には触れられないのだが、巧氏ならではの軽妙なストーリー運びは秀逸。シリーズのファンはもちろんのこと、これまでに巧氏のゲームに触れたことがない人には、ぜひ巧氏の描く世界観に触れてみてほしい。

巧氏の描く世界の良さはストーリーだけではない。龍ノ介の裁判でのセリフや画面の使い方ひとつにも、思わずくすっとしてしまうようなコミカルな要素が仕込まれていたりする。それらも全て含めて“タクシューワールド”なのだ
キャラクターの個性は文字からだけではない。例えば、最初の法廷で登場するレディの頭には何故か白鳥が乗っている。それだけならば、ただの出オチでしかないのだが……
龍ノ介が英国で最初に弁護することになるコゼニー・メグンダル。巧氏のセンスはキャラクターの名前でも光っている

 だが、何はともあれ画面内でオカシイ(怪しい)のはホームズだ。彼に関しては、静止画ではなくゲーム画面で動いているところを確認してほしいのだが、とにかく異様なまでに落ち着きがない。だが、それも「『大逆転裁判』の“アノシャー氏”」として立派な個性になっており、不思議な魅力に溢れている。そしてホームズと同じくらい挙動不審なのが、夏目漱石だ。

四文字熟語を多用する、夏目漱石。また、いちいち謎のポーズを取る

 龍ノ介の初々しさも眺めていて楽しいのだが、龍ノ介はどちらかというとプレーヤーの分身に近い存在でもある。そんな龍ノ介を取り巻く全ての人々に様々なドラマがあり、また“明治時代”当時の出来事や思想、日本と英国の当時の立場などを色濃く反映した物語は非常に読みごたえがある。

 時代ものとしても非常に興味深いストーリーで、特にシャーロック・ホームズと夏目漱石という架空の存在と現実の存在をしっかりとした時代検証と共に両立させ、貴族社会である当時のイギリスの闇を描きつつ、スチームパンクを彷彿させる世界観、それでいて少しレトロなキャラクターはもちろん、異国情緒漂う粒ぞろいのBGM、何もかもが“19世紀末の犯罪”という舞台を盛り上げるために、ひと役もふた役も買ってくれているのだ。

こんな執務室ある? とツッコミたくなるところだが、スチームパンク好きにはこの歯車だけで滾る。なおホームズやアイリスの服もスチームパンクをモチーフにデザインした模様で、細かいところまでこだわりが感じられる

 また、龍ノ介の周りに現われるのは“味方”ばかりではない。無罪・有罪を争うのだから当然ではあるのだが、物語には必ず“真犯人”がいる。だが、真犯人が本当に憎むべき相手なのかというと、必ずしもそうはならないところも本作の魅力だ。ほぼ全てのキャラクターにはきちんと一本芯が通っており、自身の信念に基づいた行動を取っている。それが善であれ、悪であれ、どんなに真っ直ぐでも、そして歪んでいても、時にはその生き方に強く惹かれることもあるだろう。

 本作には“明確な悪”が存在する。倫敦の闇を背負うその存在がどのようなものであるのかは、ぜひ自身の眼でプレイして確認してほしい。そしてその“明確な悪”は、プレーヤーの目から見た時に“本当の悪”なのであるのかも考えてみてほしい。それほどまでに“倫敦の闇”は深く、一筋縄で語れるものではない深いストーリーとなっている。

 ——のだが、本作は実質「1」が“前編”、「2」が“後編”にあたり、「大逆転裁判1」では全ての謎は明かされない。そのため「大逆転裁判1」だけでは少々不完全燃焼感があったのだが、「大逆転裁判2」では「1」の時に残した謎を全て回収しきるというシナリオになっている。もしも「1」をプレイしたけれど、「2」は遊んでいないというプレーヤーがいたら、ぜひ本作で改めてまとめて「大逆転裁判」シリーズをプレイしてみてほしい。

 また、本作を初めて遊ぶ人は改めて「1」が前編、「2」が後編という認識を強く持っておいてほしい。2本の作品に渡って壮大なスケールで描かれている物語が「大逆転裁判」シリーズなのだ。そういう意味では、元祖「逆転裁判」シリーズの「1」〜「3」までの物語と近い構成のタイトルだと思ってほしい。最後まで走り切るには少々時間がかかるが、そのボリュームに見合った内容だということは胸を張って言える。

謎解きまで自動で進めてくれる「ストーリーモード」が搭載!

 謎解きが苦手な人は、新たに搭載される「ストーリーモード」を活用してほしい。ストーリーモードは、謎解きも含めてすべて自動でゲームを進行できるモードなので、「ストーリーを忘れてしまったから、とりあえず流しておきたい」というようなこともできる。

 ただ、「大逆転裁判」シリーズはフルボイスではないため(むしろボイスはほぼないと思ってほしい)、ストーリーを楽しむには画面を見るしかないという欠点はあるものの、手応えのある謎解きを楽しみたいプレーヤー、ストーリーを楽しみたいプレーヤー、そのどちらのニーズにも対応している。

 シリーズ全体で見ても、本作は余分なところがかなり削り取られ、シンプルイズベストといったゲーム構成になっている。あくまで調査は調査。手がかりを得て、時にはホームズなどの力も借りて(むしろ乱されているとも言う)状況を推理しながらいざ裁判へと臨み、裁判でも遊びやすさを第一に考えられたゲーム作りが感じられる。

 「逆転」シリーズが生み出した奇跡の一声「異議あり!」をまだゲームで体感したことがない人はもちろんのこと、久しぶりに「異議あり!」の爽快感を味わいたい人にもオススメのタイトル。2本に渡って描かれるシナリオは、まさに“大逆転”の名に相応しい。

 本作は操作がシンプルでアクション的な要素は一切ないため、ある程度漢字が読める年齢の子供でも遊べるようになっている。親子そろってのファンも多いタイトルなので、ぜひ家族みんなでワイワイと物語の考察や推理を楽しみながら、遊んでほしい。