レビュー
「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」レビュー
Joy-Conで見事にリメイク! 独自の操作と濃密さはいま改めてプレイする価値あり
2021年7月15日 00:00
- 【ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD】
- ジャンル:アクションアドベンチャー
- 発売元:任天堂
- 開発元:任天堂
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 価格:6,578円(税込)
- 発売日:7月16日
「ゼルダの伝説」シリーズにおいて、その起源にあたる“マスターソードの誕生”を描いた「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」。2011年にWii用ソフトとして発売された本作をNintendo Switch用にリメイクした作品が「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」だ。
「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」最大の特徴といえば、WiiのコントローラーであるWiiリモコンプラス(Wiiリモコン+Wiiモーションプラス)用に作られたゲームデザインだ。リモコンを振ったり照準を合わせたりして、リンクのアクションの一部を操作していく。
「ゼルダの伝説」シリーズのはじまりの物語という点では、2022年に発売を控える「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」続編の予習にもなるかもしれないし、ゲーム体験という点では、Joy-Conによる操作感がポイントとなるだろう。
本稿では「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」について、特に上記のポイントに触れながら本作の見どころをご紹介していきたい。
Wii版の操作方法をJoy-Conで再現
本作をプレイするにあたって、大きなポイントとなるのがJoy-Conによる操作だ。剣を振る、盾を構える、弓矢などの狙いを付ける、といったアクションはオリジナル版ではWiiリモコンプラスとヌンチャクの組み合わせで実現されていたが、本作ではJoy-Conの機能に置き換えられている。
操作方法は2種類ある。ひとつは、Joy-Conのジャイロセンサー機能を使って、振ったり動かしたりすることで上のアクションを行なうもの。もうひとつはジャイロセンサー機能を使わず、アナログスティックやボタンの組み合わせによってリンクの操作を完結させるものだ。
よりオリジナル版に近い感覚を味わいたいなら、ジャイロセンサーを使う方がいい。リンクの剣は縦、横、斜めに振れ、さらに下方向からの斬り上げもできる。Joy-Conを振ると同じようにリンクが剣を振ってくれるので、ゲーム体験としての没入感はより増す。
敵の攻略では避ける、攻撃するのタイミングの駆け引きだけでなく、“どの方向から斬りつけるか”がとても大切になってくる。剣士らしさを味わう意味でも、ジャイロセンサーでプレイすることを筆者はおすすめしたい。
ひとつ懸念点があるとすれば、Nintendo Switchにはセンサーバーにあたるものがないため、照準などを合わせる際にはジャイロのリセットをしておくことがほぼ必須となるところだ。
たとえば本作の序盤で入手できるキーアイテムのひとつに「ビートル」がある。ビートルは、遠隔操作で空中を飛ばせるアイテムで、遠くにある別のアイテムを獲得したり、見えない場所の偵察などに使用できる。
ビートルを使うときはまず飛ばす方向を照準を合わせるように決めるのだが、ここでジャイロがリセットされていないと、照準が画面外に行ってしまうことがある。照準の位置に合わせるようにリンクはぐるぐる回転してしまうので、慣れていないうちは思ったように操作できないことがあった。
ただ、リセットはYボタンひとつでできる。要は慣れの部分が大きく、気づいたらリセット、気づいたらリセットとジャイロ位置を戻すことを意識すると、かなり快適に操作できるようになった。本作プレイ時のコツのひとつとして、覚えておいていただければ幸いだ。
コツはいるが、ジャイロ機能オフでもプレイ可能
一方で、ジャイロセンサーを使わない操作は「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」での追加要素となっている。こちらでのポイントは、右Joy-Conのアナログスティックが斬りつけ操作に対応していることだ。スティックを右に弾けば右に、斜め左下から右上に弾けば同じようにリンクが剣を振る。
操作としてはやや特殊だが、手首や腕を振らなくていいので疲れにくいし、ジャイロ操作よりも機敏に剣を振れるようにも感じるのでこれはこれで楽しい。
ポイントは、カメラ操作が「Lボタンを押しながら右のJoy-Conのスティックを動かす」となっているところ。一般的な3Dアクションゲームの感覚で右スティックを動かすと本作では剣を振ることになるので、慣れないと操作が混乱しがちになる。
こちらも慣れの問題なのだが、筆者の場合は「戦闘以外では常にLボタンを押しておく」と割り切ることで、リンクをうまく操作できるようになった。
ちなみにNintendo Switchの携帯モードやNintendo Switch Lite、Proコントローラーを使う場合はこの操作方法になる。オプション機能では照準のみジャイロ機能をオンにしたり、ジャイロ機能によるカメラ操作をオンにするなど、細かくカスタマイズも可能だ。ぜひ自分にあった操作方法で、本作をプレイしていただきたい。
マップに仕掛けが凝縮! エリアごとの濃い体験が醍醐味
さて操作の説明による前置きが長くなってしまったが、本作の醍醐味は上記の操作を軸として「ゼルダの伝説」らしい戦闘と謎解きが存分に楽しめることだ。
本作の舞台は空に浮かぶ島「スカイロフト」を中心に、周囲に点在する小島や雲の下に隠された大地へと広がっていく。Wii世代の作品なので、現行の作品群と比べればそこまで世界は広大ではないかな……と思いきや、それでも濃密な冒険を体験できる。というのも、ひとつひとつのマップに体験が凝縮されているからだ。
特徴的なのは、ひとつのエリアには何層もの謎が仕込まれていること。たとえば序盤に訪れる大地エリアのひとつ「フィローネの森」には神殿(ダンジョン)がある。最初は神殿を攻略するため、植物のような動物のようなキュイ族を助けたり、謎を解いたりしていく。
「フィローネの森」の冒険はそこで一旦終わるのだが、冒険を続けていくと「フィローネの森」にはさらなる謎が隠されていることがわかる。リンク自身もさまざまなアイテムを獲得して行動範囲や移動手段が増えているし、再度訪れた「フィローネの森」をまた違った感覚で冒険することになる。
見過ごしていた場所から奥へと続く道が出現したり、取れなかったアイテムが取れるようになっていたり、“風景は変わっていないができることが増えている”という発見の連続が楽しい。
ほかの大地エリアである「オルディン火山」や「ラネール砂漠」、さらにはスカイロフトにも、それぞれにそれぞれの“できることの発見”が仕込まれている。ときには風景がガラリと変わることもあって、そのときは“知っている場所での未知の冒険”が味わえる。ストーリー上で再度訪れても、寄り道で訪れても何かしら発見があるので、結果的に深みのある冒険ができる。
謎解き的にも、簡単なものから大掛かりなものまで、あらゆるアイデアが詰め込まれている。アクションセンスが問われるものもあれば、ノーヒントでじっくり考えさせるものもある。限られたエリアを最大限活用し、大冒険の味わいを作っている意味では雑な設計がひとつもない。「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」の細やかさ恐るべしだ。
いまこそプレイしたい「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」
本作のほかの見どころとして、周囲を取り巻く様々なキャラクターとの関わりも面白い。
リンクとゼルダの同級生であり、明らかにゼルダに恋心を寄せているバドや、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」でも登場した商人のテリー、人間になりたがっている魔物のモルセゴなど、ゼルダを探す旅とは別に気になる人物がたくさんいる。
特にスカイロフトの住人たちは、困りごとを抱えているときがある。話を進めると一筋縄ではなく意外な展開が起きたりするので、助けてあげるといいだろう。個人的には、夜の騎士学校でのトイレと紙の話は笑いながら楽しめたのでお気に入りだ。
また話は変わるが、E3 2021で公開された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」続編の新映像では、リンクが空を落ちていく場面が印象的に使われている。
空を落ちるシーンは「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」でも共通するところであり、似た体験が待っているのか、それともまったく違う体験が作られているのか、想像がどんどん膨らんでいく。待望の2022年の発売に期待しつつ、いまは「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」に改めて触れることでその日に備えておきたいと思う。
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