PCゲームレビュー

シリーズ初搭載!AIエディタで新感覚「信長」を体感せよ!
文化施設追加でシリーズ随一の面白さに!

「信長の野望・天道 パワーアップキット」

  • ジャンル:歴史シミュレーション
  • 発売元:コーエーテクモゲームス
  • 開発元:コーエーテクモゲームス
  • 価格:6,090円(「信長の野望・天道 with パワーアップキット」13,440円)
  • プラットフォーム:Windows
  • 発売日:発売中(12月17日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


 「信長の野望・天道」発売から1年。ついに「信長の野望・天道 パワーアップキット(以下「天道PK」)」が発売された。「天道PK」では、シリーズ初となるAIエディタを取り入れた新しいプレイ感覚がもたらされている。「天道」や過去のシリーズ作品では、ただAIにプレイを「委任」することしかできなかったが、本作ではほとんどすべてのコマンドに対してAIの行動方針を設定して、プレイを委ねることができるようになった。

 特筆すべきは「文化」の導入でゲーム中~後半が格段に面白くなったことだ。かつて、全国統一モードでは地方一帯を制圧して大兵力を動員できるようになってから一気にゲームの流れが決まってしまいがちだったが、本作ではそういったシチュエーションに対して大幅なテコ入れが行なわれている。文化振興の要素を導入し、武将の能力を高めたり、大同盟を真っ二つにするような外交要素も盛り込まれた。複数の大大名同士が精鋭部隊を結集させて1つの拠点をめぐって争う模様はまさに戦国。圧巻そのものだ。



■ AIエディタで自分の「信長の野望」をクリエイトしよう!

1つの拠点をめぐって3つ巴の争いが勃発!大兵力がシノギを削り合う

 シリーズ初となるAIエディタは、内政・軍事・人事・外交の各コマンドついてAIの傾向をユーザーが設定できるというものだ。最初にどの項目に関してAIに任せるかということを選択し、その後詳細なコマンドについて方針を決定する。例えば内政の場合、技術・文化・開発・募兵・軍馬・鉄砲・兵器生産という項目について、それぞれ事細かに方針を指示することができる。もちろんその一部はAIに実行させないこともできるし、AIの下す命令の合間にプレーヤーが直接コマンドを実行することも可能だ。

 AIエディタの面白い点は、自分の勢力ばかりでなく、他勢力に対してもAIを設定できることだ。攻略目標や攻略方針も優先順位を設けて設定することができるため、CPU大名同士の争いさえも、ユーザー任意で展開を演出することが可能になったのだ。

 プレーヤーの補助的な役割でAIエディタを使用する場合は、様々な内容をAIに任せきりにできるため、施設の建設といった中盤以降に煩雑になりがちなコマンドを任せられて大変重宝した。人事についても昇進や家宝の授与も優先武将を設定して自動で行き渡らせることもできる。前作では、募兵や生産は奉行を指定することで自動で行なってくれたが、この機能はほとんど不要になった。

 また、本作ではどういったタイミングで戦争をしかけるか、兵糧や兵力が集められなくても果敢に戦争を挑むかといった項目まで設けられており、コマンドの細部にまでAIの傾向を味付けすることができるのだ。ただ、武将の処遇に関するコマンドは一長一短で、敵将を捕縛した際にどの程度の割合で処断するか、どの程度の家臣を維持するかという項目まで用意されているのだが、自勢力の資金力に照らして武将を雇い過ぎたとAIが判断すると、せっかく引き抜いたり、仕官してきた武将をあっけなくリストラしてしまうこともあるのだ。一度リストラした武将は、後々まで恨まれて仕官させられなくなってしまうため、後で気づいてがっかりする事もしばしばだった。

 ともあれ、AIエディタのおかげでプレーヤーは常に今後の大局的な展開をイメージしながらプレイできるし、設定したAI同士で覇権を競わせるなど、AIの組み立て自体がゲームの楽しみにできるまで完成されているのは非常に嬉しい。AIのデータはファイルに書き出すことができるため、プレーヤー間で交換してプレイし合うのも面白い。AIエディタに加え、「信長」のストーリーを作る手助けをするような、イベントをエディットしたり、オリジナルのシナリオが作れるような仕組みも期待したいところだ。

【スクリーンショット】
ほとんどすべてのコマンドをAIに設定することができる果敢な戦争方針を採用したところ、かなり「無謀」な展開が多くなったすべての武将にAIを設定した状態からシナリオをはじめることもできる


大名間の相性さえもAIで決定できるため、ゲーム展開までも形作ることができる合計11本の新シナリオと100名以上の新武将が追加されているため、かなりのボリュームとなっている



■ 文化を振興し、最強軍団を養成しよう!

文化振興は、兵馬を集めやすくなったり、武将の能力が飛躍的に高まったりと、覇権をかけた礎として不可欠だ
新コマンド「教練」では、武将それぞれが持つ成長力を消費して、能力の高い武将を教官役に、能力をアップさせる

 本作でもう1つの目玉となっているのが、新要素の「文化」だ。文化は公家館や茶室といった、名声上昇施設を規定数作ることで、新規のコマンドが解放されたり、文化施設が建設できるようになるという新要素だ。文化には「武家文化」、「公家文化」、「寺社文化」、「南蛮文化」の4系統があり、それぞれに特徴がある。

 たとえば、茶室を作ることで文化が発展する武家文化では、文化施設「八幡宮」(戦法による状態異常が複数部隊に及ぶ効果を持つ)を建設できるようになったり、武将の育成コマンドである「教練」にて上げられる能力の種類や適性が増えるのが特徴だ。

 「教練」のおかげで、有能な武将を中心に中盤以降武将の個々の能力の底上げができるように計られている。動員できる兵力が多くなればなるほど、戦法によるダメージがどんどん大きくなるため、大兵力対大兵力の戦いが益々面白くなった。

 ゲーム展開的に最も重要だと感じたのは公家文化だ。公家文化を振興すると朝廷との交流の中でさまざまな恩恵を受けることができる。本作の肝ともいえるのが、朝廷のサポートで特定の勢力と同盟を結ぶことができる「仲立礼式」と、朝敵を指名できる「勤皇論」だ。

 本作では、プレーヤーが勢力を伸ばし始めると、周辺大名が包囲網を作ったり、さらに進むと1つの大名家に勢力を結集する大連合を行なってくる。その際に、敵対大名を朝敵に指名して同盟関係を崩したり、敵対大名の後方の大名と同盟を結ぶことができるという点で、この要素は非常に面白い。特に、文化施設が建てられるようになる文化は大名が1地方を制する頃が振興のタイミングとなるので、バランスの取れた追加要素となっている。また、諸勢力をすべてお抱え衆にし、全国にはせ参じてくれるようになる「聚楽第」は、前線から遠ざかってしまった諸勢力がゲーム後半で使い物にならなくなる不満を一挙に払拭した文化で、プレイする際は積極的に振興していきたい。

 本作はプレイのしやすさという点においても、前作からのブラッシュアップという点においても、完成度の高いパワーアップキットに仕上がっている。筆者が特に感動的だったのは全国統一モードで、シリーズナンバーワンの面白さだ。一地方を治めた時点でなんとなく全国統一が見えて中だるみしてしまうことは決してない。

 「天道」をプレイした際は、ゲーム後半の兵力のインフレを何とかして欲しいと考えていたが、「天道 パワーアップキット」で出された答えはむしろ逆だ。寺社文化の発展で、兵馬の生産は飛躍的に伸びる。しかし、ゲーム後半から、能力が向上した優秀な武将たちと大兵力をぶつけあいながら、ゲームとして大味になることなく、外交の妙味を味わえる。小さな大名がやっと地方を統一して、そこから全国統一に向けて動き出すプレイ感覚が、筆者自身の考えていた戦国時代の国盗りのストーリーにぴったりと合致した。この面白さはシリーズ随一といっても過言ではないだろう。

【スクリーンショット】
教官となる武将によって、自身の持つ戦法を伝授することがある文化振興のツリー。全国統一には不可欠なものばかりだ南蛮文化振興により解放される施設「城塞」は、範囲内の敵を鉄砲攻撃し、移動スピードを落とす
寺社文化の振興で建設可能となる引抜・扇動を防ぐ「五重塔」。「黄金大仏」は募兵量を増加させる大同盟の一部を朝敵に指名することで、瓦解させることもできる
浪士斡旋では、朝廷に全国の在野武将をあっせんしてもらうこともできるゲーム後半になると教練で武将個々の能力が高まっていき、戦いがダイナミックになっていく。何万対何万の軍勢が兵力をガンガン削りながら戦っていくシーンに繋がっている


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(2010年12月28日)

[Reported by 三浦尋一 ]