DSゲームレビュー

スタジオジブリのアニメとレベルファイブのRPGが融合!
本物の本を使ったギミックが特徴のファンタジーRPG

「二ノ国 漆黒の魔導士」

  • ジャンル:ファンタジーRPG
  • 発売:株式会社レベルファイブ
  • 価格:6,800円(※魔法指南書「マジックマスター」同梱)
  • プラットフォーム:DS
  • 発売日:発売中(2010年12月9日)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


 株式会社レベルファイブがリリースしたファンタジーRPG「二ノ国 漆黒の魔導士」は、アニメーション作画をスタジオジブリ(アニメーション監督・百瀬義行氏)が、音楽を作曲家の久石 譲氏が担当。各キャラクターの声を担当する声優陣も非常に豪華なキャストとなっている(出演している声優陣についてはこちらをご覧頂きたい)。

 また、ゲームのギミックでは、ゲームに同梱されている書籍「マジックマスター」を使うのが最大の特徴。「マジックマスター」はゲームの進行に欠かせないもので、魔法のルーン(魔法発動の書き方)であったり、魔物の情報であったり、世界観をより膨らませる物語などが綴られている。プレイ中は「マジックマスター」を手元に置いて、辞書を引くように扱う。

 このように、豪華な制作陣と、ユニークなギミックが特徴の本作。このレビューでは、それら特徴とともに、実際にゲームとして遊んだ手触りはどうなのか? どんな面白さがあるのか? そのあたりもまとめていこう。


― Story ―

ある事故で最愛の母を亡くした主人公オリバー。
悲しみに暮れる少年の前に現れたのは、
異国の世界「二ノ国」からきた不思議な妖精シズクだった。

"限りなく透きとおった心"を持つオリバーにシズクは
闇の魔導士ジャボーから二ノ国を救ってほしいと頼む。

初めはためらっていたオリバーだったが、
「二ノ国に行けば、母親を生き返らせることができるかもしれない」
というシズクの言葉に、「二ノ国」へ旅立つ決意をする。

現代世界と別の時間軸に存在する"もうひとつの現実"「二ノ国」。
オリバーは1冊の本を手に、自らの「こたえ」を求めて旅に出る……。



■ スタジオジブリ制作のアニメーションは、さすがのハイクオリティ

ホットロイトという、クルマ産業で賑わう街で暮らしているオリバー。親友のマークとある計画を実行するのだが……
母親を亡くし悲しみにふさぎこむオリバー。幼い頃に母からもらった人形に涙がこぼれる

 主人公のオリバーは、ホットロイトという町に母親のアリーと2人で暮らしている13歳の少年。ホットロイトは1950年代の海外を彷彿とさせる町並で、クルマ産業によって急速に発展しようとしている。機械いじりの好きなオリバーと親友のマークももちろんクルマが好きなようで、密かに進めていたある計画を実行するのだが……。

 ……ある事故で最愛の母を亡くしたオリバーは、大きな悲しみにふさぎこんでいた。部屋に閉じこもり、幼い頃に母親からもらった大切な人形を抱きしめる。人形に、大粒の涙がこぼれる。

 すると突然、人形は光を放って動き始めた。涙のおかげで魔法が解けたと語るのは、なぜか関西弁で喋る妖精の「シズク」だ。シズクはオリバーを「限りなく透き通った心」の持ち主だと話し、自分を封印し“二ノ国”を支配する闇の魔導士「ジャボー」を倒せるのではと考え、オリバーを二ノ国へ導こうとする。最初は乗り気でなかったオリバーだったが、“母親を生き返らせることができるかもしれない”と聞いて、二ノ国を救う決意を固める。

 ここまでが物語のプロローグになるわけだが、プロローグからスタジオジブリ制作によるアニメーションがたっぷりと展開される。暖かみのある街並み、オリバーが走っていく様子、親友のマークとのやり取りなど、いずれも「あぁ、これこれ、これがジブリのテイストだよね」と実感できるアニメーションだ。説明的ではないのに、見ているだけで色んな感情や情報が自然と掴めてくる。

 音声ももちろん、アニメーションシーンはフルボイス。ゲーム中の会話シーンでも、全てではないが、かなり多くボイスが入っている。音質についてはさすがに少し圧縮されていてる感じが気になりはするものの、スタジオジブリのアニメーションや世界観にしっかりマッチしている。アニメーションも音声も「ニンテンドーDSでここまでやるか」と感心する。

 世界観も暖かでユニーク。世界にはオリバーたちが暮らしている現代世界以外にもパラレルワールド“もうひとつの現実”があり、そこは「二ノ国」と呼ばれている。その二ノ国の住人たちから現代世界は、「一ノ国」と呼ばれているわけだ。

 「二ノ国」と「一ノ国」は互いに影響しあっていて、特に人物がリンクしている。「二ノ国」で何か問題を抱えている人は、「一ノ国」のリンクしている人物に何か原因があったり、といった具合だ。オリバーはマジックマスターの魔法「ゲート」で両方の世界を行き来しながら冒険していく。


人形はなんと、「二ノ国」の妖精シズクだった。なぜか関西弁で話すシズクは、二ノ国を支配する闇の魔導士ジャボーの魔法を打ち破れる「限りなく透き通った心」として、オリバーを二ノ国へ導く
オリバーやマークが暮らす現代こと「一ノ国」と、シズクたちの世界「二ノ国」は、いわゆるパラレルワールド(平行世界)。2つの世界には共通点があり、そして互いに影響しあっている。例えば、一ノ国でオリバーを心配してくれるレイラおばさんは、二ノ国だとある国の王女になっている。一方が何か問題を抱えていると、もうひとつの世界の自分にもその影響が現われたりする

■ 魔法指南書「マジックマスター」を自分で調べて、魔法のルーンを描き、謎を解く!

魔法指南書「マジックマスター」が同梱されている本作。そのパッケージはかなり大きい。マジックマスターは豪華な特典などではなく、これがないと本作のプレイはできない、ゲームの一部になっている
魔法のルーンを書いている様子。マジックマスターを参照しつつDSにタッチペンでルーンを描く
ゲーム画面側はこのようになっていて、マジックマスターが手元に無くても進行できるような仕組みはない。ストーリー進行には必須となる

 「マジックマスター」はハードカバーで全352ページあるしっかりとした書籍だ。表紙には水晶玉を思わせるような飾りがついていたりと、本格的な装丁に感心する。このマジックマスターは一見、豪華なファンアイテムかと思ってしまうかもしれないが、ゲームの進行に欠かせないもので購入特典などではない。「マジックマスター」を含めて「二ノ国」というゲームだ。

 「マジックマスター」の中には、各種の魔法のルーン、イマージェンや魔物の特徴、装備品等のアイテム、さらに二ノ国の物語なども収録されていて、プレイに必須であり、攻略本のような存在でもあり、世界観を膨らませるものにもなっている。文章や挿入されているイラストは、純ファンタジー調のテイストで難解なものではないが本格的だ。

 「マジックマスター」をゲームプレイ中に最も多く使うのは、魔法のルーンを調べる用途。魔法はマジックマスターに載っているルーンをタッチペンで描くことで覚えられるようになっていて、1度覚えた魔法は戦闘などのRPGのパートでは魔法リストから選ぶだけで発動できる。だが、イベントシーンから魔法を使うという展開では、既に覚えている魔法であってもルーンを描く必要がある。魔法のルーンはゲーム側からは一切ガイドされないので、プレイ時にはマジックマスターが絶対必須となるわけだ。

 DSを傍らに本を開いて目当ての目当ての魔法を探し、見つけたらそのルーンをタッチペンで画面に描く。攻略本を見ながらゲームをプレイするような体勢に近いが、おまけのようなものではなく、ゲームの進行に欠かせないギミックになっているのは、独特でちょっと不思議な感じの面白さだ。ちなみにマジックマスターには付属品に五十音順で索引できるしおりもあり、それを活用すると目当てのページを探しやすい。

 魔法のルーンを探す以外に、ダンジョン内の謎解き要素を解いたり、文章から特定のキーワードを探してゲーム側で入力したり、「アストラム言語」という独自の言葉を解読したりと、様々な場面でマジックマスターを活用する。ちなみにマジックマスターの表紙にもアストラム言語が書かれているが、これは「マジックマスター」と書かれている。書籍内の言語対応表を見てひとつひとつ解読していくのはアナログな感触があって、今の時代にはむしろ新鮮かもしれない。

 こうした、ゲーム側からマジックマスターを見るように促される場面は、非常に親切な作りになっている。「マジックマスターを見るんや!」とか、ものによっては「マジックマスターの○○ページに書いてあったはずや」みたいに妖精のシズクが詳細に教えてくれたりもする。このあたりはちょっと親切すぎるような気もして、慣れてくると若干、嫌な作業感も感じてしまうかもしれない。もう少し突き放し気味のほうが手探り感や発見の喜びが楽しめて良かったように思うのだが、小さな子供でも楽しめるようにと考えるとこれぐらいになるのだろう。

 謎解きのアナログ感や、実物の本があることでの新鮮さと本格さを楽しめるが、当然のデメリットもある。それは、“マジックマスターを常に携帯していないとゲームを進行できないこと”だ。例えばストーリー展開で魔法を使う場面でルーンがわからなければ、そこからは一切進められない。謎解きに関しても同様だ。そのため、例えば移動中のちょっとした合間にプレイしたりといったことは難しい。

 ただ、ストーリーを進展させる以外のことは手元にマジックマスターがなくてもできる。詳しくは後述するが、「イマージェン」という幻獣を捕まえたり、その育成やたまごを交換したりするのが、外で遊ぶ際のメインになるだろう。ストーリーはマジックマスターを手元に置きつつ家でプレイし、外ではイマージェン関連の遊びを楽しむというのが無難だ(外でもマジックマスターを安全に広げられるのなら問題はないのだが)。



■ 小さな子供でスムーズに楽しめそうな丁寧で親切な作りのRPG。やりこみ要素「イマージェン」もある

一ノ国とは全く違う、ファンタジックな世界の「二ノ国」

 豪華なアニメと声優、そしてマジックマスターと特徴が多い本作だが、RPGとしての「二ノ国」はゲームとしてはどうなのかについて触れていこう。「二ノ国」はオーソドックスなスタイルながら丁寧に作られているファンタジーRPGだ。

 「二ノ国」の世界は現実(ホットロイトこと一ノ国)のパラレルワールド。ネコの王様が統治する国、砂漠の国や、人々が水着で暮らす不思議な港町、シズクのような妖精、さらにイマージェンと呼ばれる幻獣がいたりと、ファンタジックなテイストが詰め込まれている。人々が自然の中で暮らしている暖かみのある世界が広がる。

 だが、「二ノ国」は闇で覆われている。闇の魔導士ジャボーによる支配だ。ジャボーは人々が魔法を使うことを禁じ、人から心を奪って意のままに操っている。心を奪われた人々は「ヌケガラビト」と呼ばれ、やる気を奪われれば無気力に、優しさを奪われれば荒々しい性格になってしまう。

 ヌケガラビトを元に戻すには奪われた心を戻してあげないといけない。例えばやる気を失っているなら、やる気があり余っている別の人から魔法の「ハートピース」でその心をわけてもらい、ヌケガラビトに「ハートキュア」という魔法で与えることで元に戻る。心は「トレビン」という器に貯めておけるので、心をわけてもらえそうな人がいないか街を探索しておくのがいい。

 オリバーの旅の目的はジャボーを打ち倒すことだが、ヌケガラビトのように困っている人を見過ごすわけにもいかない。メインストーリー以外に、クエストという形式で人助けを請け負う。クエストには他にも、探し物を集める依頼だったり特定の魔物を倒す依頼だったりなど種類があって、クエストをこなすと、アイテム等の報酬とは別に「えいゆうスタンプ」がもらえる。このスタンプを貯めると、例えば移動速度がアップしたりなどのプレイを快適にするような特別な報酬がもらえる。


二ノ国には、闇の魔導士ジャボーによって心を奪われて「ヌケガラビト」になってしまった人がたくさんいる。マジックマスターに記されている魔法で、心を与えてあげよう
メインストーリー以外に、クエストがたくさんある。ヌケガラビトを助けたり、探し物や魔物討伐の依頼を受けたり。クエストを完了すると報酬とは別に「えいゆうスタンプカード」というものにスタンプがもらえて、このスタンプを貯めることで特殊な報酬が手に入る
フィールドマップをウロウロしている魔物に触れると戦闘になる

 フィールドに魔物が徘徊していて、それに触れると戦闘になるシンボルエンカウント方式となっている。戦闘はコマンド選択式のターン制で、戦闘に参加するメンバーは最大3人だ。

 戦闘では魔法や特技を活かして戦うことになるが、「配置」が重要な要素になっている。パーティーメンバーは、前3マス、中3マス、後ろ3マスの位置に自由に配置できて、前ほど近接攻撃が強力になるが敵からのダメージも大きくなる。近接攻撃を得意とするキャラクターは前へ、オリバーなど魔法がメインのキャラクターは後ろが基本だ。

 配置によって“敵の放つ特殊攻撃をかわす”ことができる。例えば敵が十字に斬ってくる全体攻撃を放ってくるのなら、4隅に3人を配置していれば攻撃を受けずに済む。また、縦1列に配置すれば、前のキャラクターが盾の役割をして後ろのメンバーに攻撃がいかないようにもできる。敵の攻撃を予想してうまい配置で戦えるかがポイントだ。

 敵の弱点の属性を突いたり、配置によってうまく攻撃をかわすことができると、キャラクターの頭上に「ナイス!」という吹き出しが出る。このナイスな行動を何度か行なうとキャラクターの能力が一時的に解放されて、強力な攻撃ができる。

 ボス戦ではこのように配置と属性に気を配りながら戦うことになるが、雑魚敵との戦いでは「おまかせ」というオートバトルでサクサクと進めてしまうのが楽だ。おまかせ時の各キャラクターの行動は、バランス重視、回復重視、わざ禁止の3つから選べる。


戦闘はオーソドックスなコマンド選択式のターン制バトル。配置が重要で、敵の繰り出す全体攻撃をうまくやりすごす配置で戦うのがポイントになってくる
メインメンバー以外に「イマージェン」という幻獣を仲間にできる。その種類は350種類以上で、コレクション、育成、さらに他プレーヤーとの交換や対戦といった遊びができる

 オリバーやシズク、ヒロインのマルといったメインメンバー以外に、「イマージェン」という幻獣の仲間もできる。このイマージェンこそが本作のやり込み要素のメインと言っていい。イマージェンはストーリーをプレイする上でも重要な仲間だが、ワイヤレス通信で友達と交換したり対戦したりと、収集・育成を楽しめる要素だ。

 イマージェンは全350体以上と非常に多く、その系統もせんし系、みず系、けもの系など約13種類に分類されている。それぞれに習得する技だったり、攻撃の属性やそれに対する耐性など、個性が異なる。

 仲間にするチャンスは戦闘中。戦闘中に敵を攻撃するとハートマークが出ることがあるので、その敵にマルの特殊能力である歌を聴かせると仲間にできる。注意点として、マルが戦闘メンバーに出ていないとハートマーク自体がいくら攻撃しても出ないので、マルの参加は必須だ。

 イマージェンはレベルが上がることで進化もする。進化すると姿や名称が変わり、ステータスも全体的に高まって、新たな技も覚える。さらに“アイテムリンクできる枠”も増える。

 アイテムリンクというのは、イマージェンにアイテムをリンクさせて能力を高めるというもの。装備品については、オリバーたちメインメンバーはアクセサリーを2個装備可能だが、イマージェンは武器なら赤、防具なら青、アイテムなら緑と、アイテムリンクできる種類が枠ごとに1種類と決まっている。進化することでその枠がさらに増え、能力をさらに高められる。

 装備品等は、例えばオリバーなら手には魔法を使うための杖、防具は決まった服があるので、そこは変更できない。メインメンバーはアクセサリーの装備に限定されるが、イマージェンは武器防具もリンクできる。ほとんどの装備品はイマージェンの強化のためにある要素と言っていいだろう。

本作では装備品の活用も「イマージェン」がメイン。ステータスをアップできる

 このほかにも、メニューの「育成カゴ」では、イマージェンをタッチして触ったり、ねこじゃらしのようなものを動かして遊んだり、ブラシをかけたり、特定のアイテムをあげることもできる。お気に入りのイマージェンをかわいがることで、何らかの変化が起きるようだ。

 連れて行けるイマージェンには限りがあるが、街にある「イマージェンマンホール」というところで、預けたり引き取ったりできる。DSのワイヤレス通信を使った、他のプレーヤーとのイマージェン交換や対戦も、イマージェンマンホールから進める。

 すれちがい通信で、イマージェンの“タマゴをすれちがい通信でやり取りする”こともできる。タマゴは「旅するタマゴ」システムというもので、通信によってたくさんやり取りされることでタマゴのレベルが上がって、中身が変わってくる。また、タマゴを割るのにはすれちがい通信をすることで貯まっていくタマゴポイントが必要になる。つまり、たくさん人と通信してタマゴポイントをたくさん集め、そのポイントでたくさんやり取りされたレベルの高いタマゴを割るのが1番良いというわけだ。

 こうしたイマージェン関連の要素は、マジックマスターなしで楽しめるのがポイントだ。メインストーリーは、家でマジックマスターを用意して楽しみ、外では「旅するタマゴ」のすれちがい通信状態で移動し、友達とイマージェンの交換や対戦、育成を楽しむ。この2軸になっている。

 また、それ以外に、DSのWi-Fi接続でアイテムやクエストの配信も行なわれている。特殊なアイテムやクエストがダウンロードできるので、そちらも含めて遊びこんでいける。

 物語がある程度進行すると、アイテムを合成できる「合成なべ」が手にはいる。街の人にもらったレシピをもとにアイテムを作成したり、自分で素材を指定して、新しいアイテムを作り出せる。こちも装備品やアイテムの活用方法がイマージェンのほうが多いことからして、イマージェンを強化して対戦を楽しんだりするのに必須な要素と言えるだろう。


イマージェンを仲間にするには、戦闘中にハートマークの出た魔物にマルの歌を聴かせる。歌を気に入ってくれたら心が通じ合い、仲間になってくれる。名前も自由に決められる
イマージェンを育成し、進化させ、友達と交換したり対戦を楽しんだり。たっぷり遊び込める要素になっている。イマージェン関連だけなら、マジックマスターが手元に無くても育成したり対戦したりができるのもポイントで、すれちがい通信によるタマゴ交換「旅するタマゴ」というものもある
目的地へのガイドなど、非常に親切なシステムになっている。スムーズで遊びやすいが、もう少しクセが欲しいと感じるところも

 プレイした印象として、非常に丁寧に作られていのが印象的な遊びやすいRPGだ。システムは非常に親切で、例えばDSの上画面にはマップが表示され、その時の目標や目的地への矢印も表示されるなど、迷わず進めるようになっている。

 難易度という観点では、ダンジョンの長さや難解さで苦労したりすることはほとんどなく、マジックマスターを使った謎解きギミックが歯ごたえの基本になっている。戦闘もレベル上げが必須というほどではなく、どんどん進んでいける。ボスとの戦闘は少々歯ごたえがあるが、メンバーの入れ替えや配置で魔物の繰り出す技に対策することに重点が置かれている。

 ストーリーに関して言うと、不思議な世界を魔法を使って旅するというファンタジーの魅力、なぜか関西弁なシズクなどのコミカルな魅力など、様々な魅力がバランスよく入れられている。スタジオジブリの世界観に通じているような暖かくて楽しげな感触だ。

 心を奪われたヌケガラビトや、心をわけてもらうトレビンなど、“心”がキーワードに感じられる。街の人が、やる気に満ちている理由や、勇気が人一倍ある理由にしても、それぞれエピソードがある。また、一ノ国と二ノ国でリンクしている人物のエピソードにも、そうした心理を描くようなエピソードがある。

 ただ、ゲームとしては、遊びやすい一方で少々の物足りなさを感じたところもある。うまく整えられすぎていて、クセを楽しめないというか、あまりにキレイに丸くできていて、尖った部分がなく、そのためプレイしても印象が薄い。この意見は人によってわかれるところと思うが、少なくとも筆者はそうした“クセのある濃さ”のようなものがもう少しあっても良かったのではと感じた(子供に楽しんでもらう主旨ではそこは不要なのかもしれないので、このあたりの判断は難しいところだ)。



■ 遊びやすく、クオリティの高い、安心感の代表のような作品。イマージェンがどれぐらい楽しめるかが鍵

母親を生き返らせようと二ノ国を旅する少年の物語。心を題材に扱っているところがあり、オリバーの冒険と成長が描かれている。暖かな物語だ

 スタジオジブリの世界観を軸に、ファンタジーRPGを丁寧に描いている「二ノ国」。そのテイストは小さな子供でも安心して遊べるもので、大人からすれば小さな子供に遊んでもらいたいと思えるものだ。魔法の本「マジックマスター」のギミックも、自分で本を引いて調べ事をすることを楽しみながら知ってもらったり、ゲームをきっかけに文章に触れてもらったりと、子供に積極的に楽しんでもらいたいものと思える。ゲーム中の文章にも丁寧にルビ(漢字の読み)が振られているなど、しっかり配慮されている。

 ゲームの特徴としてはやはりマジックマスターが最大の特徴ではあるが、マジックマスターを使わずに携帯ゲーム機のメリットを活かして遊べる要素として、「イマージェン」がある。コレクション、育成、交換、対戦、すれちがい通信の要素を押さえた、長く遊べるものだ。家ではマジックマスターをかたわらに置いてストーリーや謎解きを楽しみ、外ではイマージェンやタマゴのすれちがい通信を楽しむ。その2軸がメインの楽しみ方になる。

 ただイマージェンへの懸念として、この要素は一緒に遊ぶ友人がいれば長く遊べるものになるが、そうでない場合は活きてこない。簡単にいうと、流行って盛り上がってくれないと奥深くは楽しめない要素だ。そこがどうなってくるかは、現段階ではわからない。

 また、ゲーム好きの目からすると、斬新さやオリジナリティには欠ける印象を受けるところがあるだろう。マジックマスターは確かに斬新でオリジナルなギミックだが、RPG単体のほうにもう1歩、独自の目新しさが欲しかったように思う。これは他のゲームをよく知るゲームファンからすると強く感じてしまう部分ではないかと思える。

 若干個人的に思うところはあったものの、スタジオジブリによるアニメーション、豪華な声優陣、配慮が行き届いていてプレイしやすいゲーム内容と、不満のない出来映えでクオリティは高い。

(C)LEVEL-5 Inc.

(2011年1月11日)

[Reported by山村智美 ]