ゲーミングデバイスレビュー「SHIELDタブレット」
SHIELDタブレット
ハイエンドゲーム、録画&配信、PCゲームも。多彩過ぎる遊び方をサポート
(2014/10/10 00:00)
ハイエンドゲーム、録画&配信、PCゲームも。多彩過ぎる遊び方をサポート
既存のAndroidゲームをコントローラーで遊べば、自然と端末は立てかけて使う形になる。さらに大画面で楽しみたければ、本製品にはHDMI出力端子がついているので、大型テレビやPCモニターでAndroidゲームを楽しむこともできる。いわゆる据え置きゲーム機スタイルだ。
このスタイルで遊ぶなら、ゲームコンテンツのほうも据え置きゲーム機に匹敵するハイエンドな内容であるべきだ。というわけで現在、いくつかのTegra K1最適化タイトルが、“据え置きスタイルで遊べ”とばかりにコントローラー専用で提供されている。Valve謹製「Half-Life 2」と「Portal」だ。
「Half-Life 2」は言わずと知れたPCゲームの金字塔、2004年に登場したシネマティックFPSの開祖であり、永遠の傑作である。「Portal」は2007年登場のパズルアクションFPSで、こちらもPCゲームの大傑作。両作とも、グラフィックスの世代としてはPS3/Xbox 360相当の水準だ。これが「SHIELD タブレット」ではヌルヌル動く。
驚いたのは、上記2本のタイトルがどちらも、いわゆる“モバイル向け”になっていないことだ。起動にはコントローラーが必須、タッチ操作は非対応、グラフィックスはPC版と全く同等で、解像度は1920×1200フル。ゲーム内容も全く省略なし。完全にPC版と同じものなのである。もちろんプレイフィールもPC版(をコントローラーでプレイした時)と同じ。これ本当にタブレットか?!
これらがヌルヌル動くということは、「SHIELD タブレット」はPS3やXbox 360に匹敵するゲームマシンである、と言える。こんなに小さくて、しかもモニターまで付いているのに。プレイ時の発熱も大したことはない。ほんのり背面が暖かくなるだけだ。消費電力は2W。凄い!
ちなみに、Tegra K1最適化タイトルとしては本製品にプリインストールされた「Trine 2」もある。こちらはより凝ったシェーダーグラフィックスを使った横スクロールのパズルアクションゲームで、コントローラー複数接続によるローカルの多人数協力プレイ(最大4人)にも対応するなど、本製品でのみフルに楽しめる作品となっている。
・GeForce搭載PCと同等のShadowPlay機能
上記で「SHIELD タブレット」はPS3やXbox 360に匹敵、と書いたが、機能的にはPS4やXbox Oneと同等のものも載っている。ShadowPlayだ。
ShadowPlayはゲームプレイのバックグランド録画・配信機能。良いプレイができたらすかさず動画を保存して共有したり、リアルタイムにTwitchで配信することができる。録画の時間は5分から最長20分で、画質は480p、720p、1080pに対応。フレームレートは30fpsと、PC向け(最大60fps)に比べて低くなっているが、その他の点では全く同等のスペックである。ちなみに上掲の動画はこの機能でサクッと撮ったものだ。
ShadowPlay機能は画面右上のコントロールパネルをスライドしてくることで(Wi-Fiや本体設定などのボタンがあるあのパネル)、いつでも有効・無効を変更したり、品質の設定等ができる。保存したビデオは標準アプリの「ギャラリー」等で開けばトリミング等もすぐにでき、あとはAndroid標準のシェア機能でYoutubeや各種クラウドにアップするだけで共有が完了。当然、USBやSDカード経由でPCにそのまま持ってくることもできる。
PCゲーマー的にはプレイを録画したり配信するのが日常になっているだけに、タブレット端末でも同様の機能が使えるというのはありがたい点だ。特に、PCと変わらないレベルのハイエンドなゲームが遊べる端末なのだから、当然PCやコンソールマシンと同等レベルのニーズが出てくるのは自然なことだ。その自然なことを、本製品は先取りしているのである。
手元でフルスペックPCゲームを遊ぶ!GameStream機能
ついでと言ってはなんだが、前モデル「SHIELDポータブル」でデビューしたGameStream機能も、当然ながら本製品に実装されている。
これはKeplerアーキテクチャ以降のGeForce GTXを搭載したデスクトップ/ノートPCでゲームを走らせて、それを手元の端末上で遊ぶ、という機能だ。ゲーム本体はPC上で動作するので、当然ながらフルスペックのPCゲームが遊べる。その映像がWi-Fi経由で「SHIELD タブレット」上に表示され、操作はもちろん「SHIELD コントローラー」だ。
家庭のネットワーク環境にもよるが、表示遅延はほとんど気にならないレベル。「Skyrim」や「ダークソウル2」では全く気にならず、直接照準操作の多い「Battlefield 4」で少し違和感があるかな、という感じだ。「FIFA 15」や「Gauntlet」といった見下ろし型、3人称視点型のアクションでは遅延の影響は全く感じられず、快適だった。
画質はWi-Fi経由の場合、自動的に720p/30fpsになる模様。60~144fpsのPCゲーム環境に慣れていると多少物足りなさを感じるが、ベッドやソファーに寝転がってだらだらプレイするぶんには全く問題ない。ちなみにUSBイーサネットアダプターを経由してPCと有線接続すると1,080p/60fpsでのプレイが可能になる仕様となっているが、そうなるとPCと同じ部屋で遊ぶことになる。それならPCで遊んだ方が快適なわけで、実用性は薄い。
「SHIELDタブレット」でのプレイの快適さはタイトルによって微妙に異なるが、期待外れだったのは「Civilization V」だ。本作は基本的にマウスで操作するストラテジーゲームで、Windows 8向けにはタッチパネル操作モードもついている。それならば、「SHIELD タブレット」上でもタッチ操作でスイスイ遊べるかな、と思っていたのだが、実際はタッチパネルでPC上のマウスカーソルを遠隔操作する(パネル上のタッチ位置とPC上のマウスカーソル位置が一致しない)というスキームだった。ちっちゃいボタンにカーソルを持っていくのが大変すぎて、5分でプレイを諦めた。ゲーム側が対応しているのだから、ぜひGameStreamでもタッチモードに対応して欲しい。
もし、ゲームプラットフォームがひとつに収斂するなら
以上、「SHIELD タブレット」のゲームマシンとしての使いでをひととおりご紹介してきた。本製品は据え置きゲーム機並みのパワーがあり、実際に据え置き機と同じように使え、ハイエンドなゲームが快適にプレイできる、これまで考えられなかったようなパワフルなタブレット端末だ。
もちろん、課題も残っている。そもそも、Tegra K1最適化で据え置き機並みの品質を持つゲームタイトルがまだまだ少ないこと。上記でご紹介した「Half-Life 2」、「Portal」、「Trine 2」のほかには、「War Thunder」がどうやら近々出るらしい、というくらいで、本製品のパワーをフルに発揮し、据え置き機並みのエクスペリエンスを与えてくれるコンテンツがまだまだ不足している。NVIDIAには、ぜひこの点に最大限の注力をお願いしたい。
コンテンツ不足という問題が解消されていけば、「SHIELD タブレット」が切り開くハイエンドゲーミングタブレットというデバイスカテゴリーは、ゲーマーにとって次第に、無視できない存在になっていくことだろう。なにしろ、ハイエンドゲームを遊ぶのに巨大なPCやかさばるゲーム機が不要となり、それなのに、大画面で遊ぶことも、電車の中で遊ぶこともできるのだ。キーボードやマウスを繋げてフルスペックのFPSをPCゲームライクに遊ぶことだって可能だろう。
つまり、「SHIELD タブレット」のようなデバイスの性能が本当に充分なものになれば、PCやゲーム機は本質的に不要になるのである。いま、モバイルゲームの発達で一般層にとってゲーム機は不要になりつつあるが、それがコアゲーマーにまで広がるのだ。ヘビー級の次世代「Battlefield」や次世代「Total War」シリーズだって、いずれタブレットでフルスペック版を遊ぶ時代が来る。「SHIELD タブレット」の世代ではまだ無理だが、次の世代、また次の世代でそこに近づいていくことは間違いない。
そうして、今後数年のうちにゲームプラットフォームはタブレット形態に収斂していく。そのためにはより高速なWi-FiやワイヤレスHDMI、Bluetoothの次世代化といった周辺規格の刷新も必要だと思うが、時間の問題だ。間違いなく、いずれはタブレットがPS4やXbox One、ハイスペックゲーミングPCの役割も充分に果たすようになっていく。遅くとも2020年までに、ほとんどのコアゲーマーがタブレットをメインプラットフォームにしている風景が見える。
「SHIELD タブレット」は、そのような将来のゲーミングシーンに向けて時代を切り開く、第1世代の本格ゲーミングタブレットなのだ。