PS3/Xbox 360ゲームレビュー「F1 2014」

F1 2014

F1の最新トレンドを忠実に再現した初心者にも楽しみやすいF1レースゲーム

ジャンル:
  • レース
発売元:
  • コードマスターズ
開発元:
  • Codemasters
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
価格:
7,400円
発売日:
2014年10月2日

今年もゲームのF1が開幕

 コンピューターゲームのF1世界選手権が今年も開幕する。コードマスターズが10月2日に発売を予定しているPS3/Xbox 360用レースゲーム「F1 2014」は、現在唯一の公式ライセンスに基づく、F1レースゲームシリーズの最新作だ。

 毎年10月上旬の発売となってきたコードマスターズのF1シリーズだが、今年は日本GP(10月5日、鈴鹿サーキットで開催)に間に合わせるため、日本版が世界で最も早く発売されるバージョンとなる。日本のF1ファンにとっては嬉しい配慮と言えるだろう。

 本シリーズは毎年のように、当年のシーズンにおけるF1を細かい部分まで忠実に再現してきた。それは今年も継承されており、ビジュアルや挙動の説得力は非常に高い水準にまとめられている。その一方で、昨年の「F1 2013」に搭載されていたックラシックモードは今回収録されず、基本的なゲームモードの内容については前作以前と同等になるなど、“走り”以外の進化は非常に保守的なものだ。さて、2014年シーズンのF1を反映した本作がどのようなゲームになったのか見ていこう。

【F1 2014: Announcement Gameplay Trailer】

F1の最新トレンドを忠実に再現。さらに初心者にも楽しみやすいゲームバランスへ

映像はよりフォトリアルに、澄んだ空気感に進化
1コーナーのデッドヒート
数々の名コースを楽しむ

 四輪レースの最高峰とも言われ、長い歴史を誇るF1は、時代とともにレギュレーションを変化させてきた。その中でも2014年のF1は特に大きな変化が起きている。V6エンジンへの統一、搭載燃料減少に伴うエネルギー回生システムの強化と自動化、安全対策のためのノーズ形状の規制などなど、エコ&セーフティへの舵取りが鮮明なシーズンとなっている。

 本作「F1 2014」では、そのレギュレーションの変化をくまなくゲーム内に反映している。操作面では、従来よりも1段増えた8速シフターと、自動化されたエネルギー回生システムの存在が大きい。手動で操作する特殊装置がDRSだけとなったため、走行中の操作がシンプルになり、より基本の走りに集中できるという側面が確かにある。

 走りの質という面ではかなりの違いが感じられる。ステアリングの感覚はマイルドになり、より容易に、安定したトラクションを維持してのコーナーリングや加減速が可能だ。ちょっとぐらいグラベルに足を突っ込んでも、マシンがコントロールを完全に失うことはない。

 数年前、筆者の経験では本シリーズで最もピーキーだった「F1 2011」あたりでは、ちょっとアクセル加減を間違えただけで車体が盛大にスピンしていたものだが、本作ではとにかく“コースを外れずに走る”ことは、きちんとハンドルを操れば簡単に達成できるようになっている。現実世界におけるF1の安全対策の進化が、ゲームの傾向にも反映されているような印象だ。

 これに加えて、初心者向けにはオートブレーキやオートステアリング等のアシスト機能がさらに強化されている。アシスト機能全部入りで本作をプレイしたなら、アクセルべた踏み、ステアリング操作のタイミングがガタガタでも、それなりに良い走りができてしまうレベルだ。V6エンジンになったとはいえ、最高時速360km/hを記録するスーパーマシンである。本物を素人が上手に走らせられるわけがないが、ゲームではそれができる。このスピード感を誰でも存分に楽しんで欲しい、という製作者の思いがひしひしと伝わってくる。

 一方で、「F1」シリーズをやりこんだ筆者のようなプレーヤーにとっても本作の進化点は感じられる。本気でプレイする場合、筆者はアシスト全オフでプレイするが、その際に、トラクションを最大限に活かすための情報源となるタイヤの摩擦音が、かなり表現力豊かになっているのだ。

 本作の挙動としては全体的にマシンの安定性が増しているため、多少ドリフト気味に横滑りしながらでもコースアウトせずに走ることはできる。しかし、サウンドの情報量が増しているおかげで、よく注意していればそうなる直前のギリギリのスピードや、舵角を適確に見つけ出すことができる。タイヤが「シュルシュル……」と僅かな摩擦音を発する時、いちばんスピードのあるコーナリングができる。「キュキュキュ」や「ズザザ」ではいけない。

 そういった表現力の向上や、操作ミスに対して寛容になったドライビングモデルのおかげで、本作では信じられないほどのスピードで疾走するF1の迫力を、本当に気持ちよく楽しむことができる。一方で、以前のシリーズ作では強く感じられたモンスターマシンならではのじゃじゃ馬感、というのは影を潜めてしまい、人によっては若干寂しさを感じる部分もあるかもしれない。

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(佐藤カフジ)