「Xbox Series S」プレビュー
Xbox Series S
2020年11月5日 23:00
1440p/512GBをどう見るか? ユニークな立ち位置の次世代機
Xbox Series Sのウィークポイントは、まずわかりやすいところだとUHD Blu-rayドライブがない。前モデルとなるXbox One Sは、フルHD世代のゲーム機でありながら、UHD Blu-rayドライブを標準搭載。4K/HDRによる映像再生を実現し、“史上最安のUHD Blu-ray再生機”とゲーム業界の外でもてはやされた。だが、Xbox Series Sはそれすらもなくなる。
きっかけとなったのは、2019年5月に発売された最後のXbox One「Xbox One S All-Digital Edition」だ。これは文字通りXbox One Sから光学ドライブを廃し、オールデジタル化を実現した初のXboxだ。
米国は国土の物理的な広さから、日本のようにパッケージ版、あるいはディスクに対するこだわりが薄く、デジタル版に対する抵抗感が低い。Microsoftはここに目を付け、コンペティターに先駆けてデジタルエディションを投入している。次世代機発表後にリリースされた最後のハードということで注目度はそれほど高くなかったが、次世代機ではローンチと同時投入するということは、一定の手応えがあり、引き続き重視していくという証拠だろう。
日本では、Xbox Oneで日本がTier2に降格したことで、パッケージ版の取扱そのものが激減したため、現存するXboxユーザーは幸か不幸か、ほぼデジタル化が完了しているはずだ。この流れはXbox Series X|Sになっても変わらないどころかより加速するとみられる。光学ドライブの必要性は、あなたが熱心なXboxユーザーで初代Xbox時代からのディスクを保有し続けているか、あるいは熱心な映画/アニメファンでUHD Blu-rayを買って観る趣味を持っているかどうかに絞られる。両方ともノーなら、Xbox Series Sは十分選択肢に入ってくる。
2つ目のウィークポイントは、ゲーム性能が4Kではなく1440p止まりというところだ。ここはゲーマーにとってクリティカルな部分だと思う。Xbox One S同様、4Kモニターに接続すれば4Kにアップスケール表示されるが、あくまでアップスケールであって、真の4Kを実現したXbox One Xや、8Kまで対応してしまうXbox Series Xと比ぶべくもなく、“全然違う”。
ただ、この評価は、筆者のようにゲームで飯を食っていて、いつもXbox One XやPS4 Proで4K環境でゲームの遊んでいるコアゲーマーの戯言であって、MicrosoftがXbox Series Sと共にゲーマーに問い掛けているのは、「4Kって本当にあなたに必要ですか?」ということだ。
あなたがもし現在、フルHDでゲームをプレイしていて、次世代機でもフルHDで遊び続けるつもりなら、Xbox Series Xは完全にオーバースペックで、8Kや4K/120fpsという縁もゆかりもない機能に2万円を追加で払うのは無駄な投資だ。反対に、次世代機に向けて4Kモニター、あるいはちょっと奮発してLG等の4K/120Hzモニターを新調しているなら、Xbox Series Sではガッカリする可能性がある。
“1440pのアップスケール”とはどういうことなのか。具体的に見ていこう。下記は「Gears 5」でXbox One S、Xbox Series S、Xbox Series Xを同じ4Kモニターで起動させたものだ。いずれも4K表示となっているが、Xbox One SはフルHD(1,920×1,080)からのアップスケール、Xbox Series Sは1440p(2,560×1,440)からのアップスケール、Xbox Series Xのみネイティブ4K表示となっている。
如何だろうか。Xbox Series Sは、Xbox One SとXbox Series Xの丁度中間に位置するビジュアルクオリティを実現していることがわかる。ただし、アップスケール4Kとネイティブ4Kには歴然とした差があり、そこが許容できるかどうかがポイントになる。「Xbox Series Sは次世代機の中で唯一4Kマシンではない」。ここはしっかり理解しておきたい。
そして個人的に実はもっともクリティカルだと思うのが、ストレージの少なさだ。標準でわずか512GBしかなく、Xbox Series X|SではOSの領域がますます大きくなっているため、ゲームをインストール可能な領域は364GBまで削られてしまう。今回検証に使用した「Gears 5」が71.9GB、「ウォッチドッグス レギオン」が35.5GB、「DiRT 5」が65.2GB、「レッドデッドリデンプションII」が102.2GB。1タイトルあたりざっくり50GBと考えても10本入らない。これはいかにも少ない。
Xbox Series Xプレビューでもお伝えした通り、Xbox Series X|S世代の凄味は、Xbox Velocity Architectureによる圧倒的な起動の速さとロードの短さだ。しかし、Xbox Velocity Architectureは、内蔵ストレージか、「Xbox Series X | S 用 Seagate ストレージ拡張カード」でしか実現できない。Xbox One/PS4世代で流行したSSDへのストレージ換装はXbox Series X|S世代ではまったく通用しない。それよりもっと速いソリューションをすでに内蔵しているからだ。
さらに日本限定の問題が、頼みの綱である「Xbox Series X | S 用 Seagate ストレージ拡張カード」がいつ発売されるのかわからないところだ。仮にこれがローンチ時に出ない場合、Xbox Series Xは約800GB、Xbox Series Sは364GBで戦わなければならなくなる。
もちろん、外付けHDD/SSDをゲーム用ストレージに使うことはできる(USB3.0以上かつ128GB以上、Xbox専用フォーマットの必要あり)が、その場合、パフォーマンスが下がってしまう。これでは次世代機の効果半減だ。このため、ゲーム目的でXbox Series Sの購入を考えている場合、ストレージ問題をどうするかはあらかじめ考えておく必要がある。
ここまで読んで「う~ん、Xbox Series Sはちょっと微妙かな……」と思ったゲームファンもいるかもしれないが、実際はそんなことはない。次のページからは「マシンの性能の違いが、ゲーム体験の決定的な差ではない」ことを具体的な数字とともにお伝えしていく。