PC版「DEATH STRANDING」レビュー
DEATH STRANDING(デス・ストランディング)
分断された世界をもう一度繋ぐ。小島秀夫監督が描く人類再生のストーリー
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- 505 Games
- 開発元:
- コジマプロダクション
- プラットフォーム:
- Windows PC
- 価格:
- 7,590円(税込)~
- 発売日:
- 2020年7月14日
2020年7月14日 00:20
2019年11月にプレイステーション 4版が発売された「デスストランディング」。本作は小島秀夫監督がコジマプロダクションとして手がける初の作品だ。小島監督が描く世界を好きな人は多く、発売前から期待していた人も多いだろう。かくいう筆者もその1人で、「メタルギアソリッド」シリーズでの重厚なストーリーがとても好きだったため、小島監督の新作にはとても期待していた。本作はPS4版ももちろんプレイしたが、PC版であればより高解像度な画質でプレイできるはず。あの世界よもう一度。この7月が来るのが本当に待ち遠しかった。
今回事前にプレイしたPC版は、思っていた期待以上の仕上がりだ。アスペクト比21:9のウルトラワイドディスプレイと、60fpsを超えるハイフレームレートに対応した画面。そこで改めてゲームのあらすじや、本作の特徴である「ソーシャル・ストランド・システム」に触れつつ、PC版におけるゲームの変化を交えながら、その魅力に迫っていきたい。なお、本記事は公式画像を用いて執筆している。
分断されたアメリカを再構築する究極の”お使いゲー”
本作をざっくりと言ってしまうと、オープンワールドゲームで、モノを運び続ける“お使い”を主眼においたゲームだ。プレイヤーは「伝説の配達人」と呼ばれた男、サム・ポーター・ブリッジズとなり、世界を分断と孤立に陥れた現象「デス・ストランディング(DS)」後のアメリカをたった1人で横断し、点として孤立した拠点をつなぎ直す旅に出る。
サムは荷物運び人(ポーター)だ。大量の荷物を背負い、自分で歩いて移動するだけでなく、バイクやトラックなどを用いて広大なアメリカの大地を移動していく。依頼を受けてモノを運ぶという行為が重要なゲームシステムとなっていて、いかに配達物を壊すことなく相手に届けるかが大事なのだ。
また「デスストランディング」が描く世界には「カイラル通信」という、いわゆる“あの世”、死後の世界を通じて超大容量の通信を一瞬のうちに行なえる技術が使われている。カイラル通信を使って、さまざまな装備や設備だけでなく、道路もプリントアウトして作ることができる。このほかにも、休息場所となるセーフハウスや、乗り物に必要なバッテリーを充電するための発電器などを、建設装置を利用しつつ作ることで拠点間を移動し、依頼を達成していくことになる。
ただしもちろん、世界にはサムだけでなく、サムの行く手を阻む者がいる。「DS」後になって、物資を配達することではなく、物資そのものを集めることに執着しだした人間「ミュール」は、自分のエリアに入ったサムへ攻撃をしかけてくる。また「DS」によってあの世から出現した「BT」と呼ばれる亡霊のような存在が、触れたものの時間を奪う雨である「時雨(タイム・フォール)」とともにやってきて、サムを捕まえてあの世へ連れて行こうとする。
そしてもう1つ重要な役割を担っているのが「BB」だ。BBは胎内にいる赤ん坊のようにケースの中で暮らす兵器。BBはサムが装備しているセンサー「オドラデク」を使ってBTを可視化してくれる。この能力でBTから逃れたり、あるいはBTに対抗できるのだが、あまり長くBTと対峙していたり、ダメージを受け続けたり、川の中に長くいるなど、さまざまな条件でストレスが溜まってしまう。そしてストレスが溜まりすぎると自家中毒を起こして拠点に戻るまで行動不能になってしまう。むずかったときにはBBをあやしたりすることも大事で、拠点があったらBBとともに体を休めることも重要となる。
サムのほかに、この世界に登場するさまざまな人物がいる。アメリカ初の女性大統領であるブリジットの娘で、新大統領に就任したアメリ。BBのメンテナンスを含めた、技術面でのサポートをするデッドマン。サムが身につける装備を作り出してくれるママー。サムにさまざまな指令を出す、ブリッジズの長官であるダイハードマン。同じ荷物運び人であるフラジャイル。そして各拠点に住んでいる人々。こうした人物との関わり合いを広げながら、ストーリーは展開していく。
サムへの配達依頼は、各拠点での「サム指名依頼」と「指名なし依頼」という形で行なわれる。サム指名依頼は、ストーリーを進めるために必須となるものが多い。指名なし依頼は、ほかの拠点へ物資を運ぶ以外に、ミュールに奪われた荷物を取り返して欲しいというものもある。こうした指名なし依頼をこなすと評価が上がり、サムのポーターとしてのランクが上がるだけでなく、装備や道路などを作るための物資をより多く引き出すことができるようになる。
またこのほか、フィールドにはさまざまな物質が散乱している。金属や樹脂、セラミックといった素材のほか、拠点へ届けるはずの落とし物があったりする。金属などはそのまま材料として使えるが、この落とし物を拾って行き先の拠点に持っていくと、こちらもまた評価が上がるという仕組みが用意されている。ちなみに落とし物は、本来の配送先以外の拠点でも受け付けてくれる。この場合は他のプレーヤーに託されることとなる。
このように、拠点間へ荷物を運びつつストーリーを進めていくのが本作だ。
PC版で深まる映画体験&ハイフレームレート。「Half-Life」コラボも
本作のPC版は、映画と同じ「21:9」のアスペクト比と60fpsを超えるハイフレームレートに対応した。これによってイベントシーンはもちろん、通常のゲームプレイも映画の中で遊んでいるように感じられる。
なお21:9のサイズは、通常のフルHDディスプレイでも楽しめる。上下に黒い帯が入り、映画を見ているサイズと同じになるのだ。これは小島監督が、映画のサイズでのプレイを提供しようとしていたからと聞く。なおこのアスペクト比に対応するディスプレイであれば、より没入感が高まる。今回のレビューにあたっては、フルHDでリフレッシュレートが240Hzのディスプレイ(LG「27GN750-B」)とウルトラワイド(21:9)/リフレッシュレート144hzのディスプレイ(LG「34GN850-B」)でプレイしてみたが、特にウルトラワイドは感動的なほど良かった。少し画面サイズが広がるだけで、映し出される世界がこうも違うのかという印象だった。
またリフレッシュレートが高いということは、視点を移動してもなめらかに動くということ。PS4版では最高で60Hzまでの対応だったが、PC版では最大240hzまで対応することで、非常にスムーズなプレイが楽しめるようになった。たとえばミュールとの戦いでは、さまざまな方向から襲ってくる敵に、カメラを動かしつつ対応しなければいけないのだが、リフレッシュレートが高ければ画面展開がスムーズになり、目がチラチラすることもなく戦える。
このほか、サムの姿を多彩なオプションで撮影できる「フォトモード」が実装されている。これはPS4版にもアップデートで追加された機能だが、PC版なら21:9のアスペクト比でゲームを撮影できる。フィルターをかけたり、焦点距離や画面の傾きを設定して、サムにポーズをとってもらうこともできる。
PC版ではキーボードでのプレイにも最適化された。荷物が傾いたとき、左右にふんばる操作は、PS4版ではL2、R2に割り当てられているのだが、これはマウスの左右クリックに。周囲の地形を確認する「オドラデク」の起動はQキーに。Eキーで荷物を背負い、PS4版ではR1に統一されていたオドラデクの起動と「息止め」が分割され、Altキーにとなっている。
そしてもちろんゲームパッドにも対応している。ゲームパッドを接続するとPS4のDUALSHOCKシリーズでいえばデフォルトで○がキャンセル、×が決定になっているが、これは設定で反転可能。BBをあやす動作にモーションセンサーを使用できるうえ、振動機能も用意されている。
このほか、NVIDIAのGeForce RTXシリーズを持っているのであれば、ディープラーニングを使って描画の負荷を抑えつつ、より美しい画面表示を行なう「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」を利用できる。これをオンにして最高解像度でプレイすると、まさに映画を見ているような美しい画面となるので、ぜひとも使ってプレイしておきたい。
なおPC版ではValveの「Half-Life」とコラボしている。6つの追加ミッションが同梱されていて、それぞれを進行することで追加アイテムを入手できる。PC版プレオーダートレーラーには、同作に登場する「ヘッドクラブ」を模した帽子もゲットできるようだ。
一緒にプレイしている人たちとつながる「ソーシャル・ストランド・システム」
本作はオンライン機能に対応しているが、それはPvPや、リアルタイムなCOOPプレイのためではない。自身と別の世界のサム、つまりどこかのプレーヤーをつなぎ、助け合うためだ。ほかの誰かがフィールドに設置したものや、危険地帯を知らせたりアドバイスができる標識、簡易的な倉庫、川に架かる橋、遠くを見通せる監視塔、そして拠点間を繋げる「国道」といった様々なものをリンクさせてくれる。これを、世界を超えてつながる「ブリッジリンク」と呼ぶ。
また、同じ世界でプレイする誰かが落とした物資がフィールドに置かれていることもある。これを運べば自分が評価され、さらに落とし主からの評価がもらえるのだ。加えて拠点で荷物や乗り物を他の人にあげると、それを誰かが使うこともできる。プレイする最中には、こうした誰かが作り上げた設備に助けられることも多い。
たとえば、トラックで拠点を移動しているとき、時雨にさらされて劣化してしまい、「あ、そろそろやばい」と思ったときにプライベートルームがあったりして、何度助けられたことか。また国道を復旧しつつゲームプレイを進めると、「○○が国道を使った」と表示されて、ああ大変だったけど作ってよかったなあと思ったり。こうした人たちが残したものを利用しつつ、自分も誰かも助け合いながら進めていくのが非常に楽しいのだ。そんなこんなでメインストーリーのほかに用意されている荷物運びの依頼をひたすら続けていたら、プレイ時間が97時間となっていた。
ただしこのブリッジリンクは、ゲームを遊んでいるすべての人と共有されるわけではなく、ある程度の数のプレーヤーが選ばれてつながりを共有していくことになる。ゲームの進行度によっても共有されるものが変わっていくため、先に進んだプレーヤーがゲームを始めたばかりの誰かを導くということはできないので、拠点をカイラル通信でつないだら、その周りにいきなり橋が登場したりして驚いたこともあった。こんな時には「もっと早く登場してくれよ、それなら楽に越えられたのに」と言いたくなる。このあたりは多少もどかしく感じてしまう点だが、初心者が手探りで助け合う、いわばMMOゲームのサービス開始当初のような雰囲気とも似ているかもしれない。
つながり、つなげる。十人十色の体験が生まれるゲーム
本作は“お使い”を楽しむゲームとなっているため、作り上げられたオープンワールドを歩き回ったり、崖やクレバス、川、そして敵が出現する地帯といった危険にどう立ち向かうか考えるのが大事だ。ゲームの中では、ミュールの存在やBTの妨害といった要素はあるものの、それと戦うことだけでなく、拠点を歩き回っての荷物運びがとても楽しいゲームなのだ。荷物運びがこんなにも楽しいかと思わせてくれるゲームはこれまでにはない。戦闘をサブコンテンツに置き、移動とそれに関連する行動が重要なゲーム。そしてオープンワールドを歩きつつその重厚なストーリーを味わう。筆者オススメの傑作である本作を、ぜひ楽しんでほしい。
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