「デスマッチラブコメ!」レビュー
デスマッチラブコメ!
告白をされたら即・爆死!? “リア充爆発系”学園伝奇ラブコメノベルADV・開幕!
- ジャンル:
- アドベンチャー
- 発売元:
- ケムコ
- 開発元:
- ケムコ
- プラットフォーム:
- PS4
- Nintendo Switch
- Windows PC
- 価格:
- PS4:パッケージ版 3,666円(税込)/ダウンロード版 3,000円(税込)
- Switch:ダウンロード版 3,000円(税込)
- WIN:ダウンロード版 3,000円(税込)
- 発売日:
- 2020年6月25日
2020年6月24日 00:00
女の子に告白されれば誰だって嬉しい。しかも、高校始まって最初の春、クラスのヒロイン的存在2人にダブル告白されたら、もう有頂天間違いなしだ。しかし、本作の主人公は「告白されると爆死する」という高校生男子にとってあまりにも過酷すぎる呪いにかかる。「リア充爆発しろ」とはまさにこのことなのか……。「デスマッチラブコメ!」ではそんな最高で過激な学園生活が幕を開ける。
「デスマッチラブコメ!」はケムコが手掛けるアドベンチャー作品である。その中でもビジュアルノベルやノベルゲームと称されるテキストベースのアドベンチャーだ。美笹木高校に通う1年生「矢木景」は女の子に告白されると「爆死」する呪いになぜかかかっていることを身を持って知る。自分にかけられた呪いを解除し、リア充まっしぐらの高校生活を満喫するため、クラスメイトの協力を得ながら奔走する。ぶっ飛んだ一面もある個性豊かな7人を中心としたスリリングかつ奇抜なストーリーが魅力の作品だ。
今回のレビューでは極力ネタバレに考慮しており、ストーリーについての言及は基本的に序盤のみの部分を取り上げている。しかしながら、中盤以降を想像させる内容も含まれているため、注意してほしい。
ケムコが手掛けるアドベンチャー
最初にケムコの作品について少し振り返りたいと思う。「ケムコといえばどんなタイトルを思い浮かべますか」と聞かれれば多くの人がRPGを想像するかもしれない。ケムコは数々の作品を世に送り出してきているが、ジャンルで分類するとRPGが多い。それもドット絵で描かれた昔ながらのRPGというような作品が多く、最近ではそれらの作品をセットにしてパッケージ化し多数展開している。
そんなケムコはもう1つの顔を持っている。それがアドベンチャー作品だ。特にここ数年、現行機向けにいくつかの作品をリリースしており、こちらに関してはタイトル数は決して多いわけではないが、一風変わったサスペンスやミステリー要素をメインとした作品を展開している。RPGが王道を攻めているとしたら、アドベンチャーはどれも“曲者”と形容したくなるほどのポテンシャルを持ち合わせた作品ばかりだ。
2018年に発売された「最悪なる災厄人間に捧ぐ」は透明人間の少女・クロと、透明人間しか見えない少年・豹馬というハンディキャップを背負った2人が世界を歩む。救いようのない世界がプレーヤーの心を抉る。キャッチコピーは「あと何度、君を殺せば、災厄(セカイ)は終わってくれるのか――」。
2015年に発売された「レイジングループ」は対戦テーブルゲーム「人狼」の世界観を和風伝奇ホラーへと再構成したアドベンチャー。記憶を保持したまま「死に戻る」男・房石陽明を操作し、狂気の因習にまみれた集落の謎を解く。様々なプラットフォームに展開されており、ノベライズ化もされた作品だ。
そしてこの度リリースされる「デスマッチラブコメ!」も「デスマッチ」と「ラブコメ」という2つの要素を上手に掛け合わせた作品だ。2013年にスマートフォン向け、2014年にWii Uで発売されていた本作が、ビジュアルやサウンドに手が加えられ現行機向けにリリースされる。
シナリオは「レイジングループ」も手掛けたamphibian氏。学園生活を想起させる緻密な描き方をしたかと思えば、一気にトンデモ展開へと動き始める一癖も二癖もあるストーリーとなっている。本作をクリアまでプレイさせていただいたがはっきり言って今作もヤバい。ラブコメというキャッチ―な要素でプレーヤーの心を掴み、後に展開されるミステリー要素へと一瞬で引きずりこむ。そんな本作を今回は取り上げてゆく。
告白されたら死ぬってなんだよ! 学園伝奇ラブコメノベルADVの魅力とあらすじ
主人公は美笹木高校に通う高校1年生の「矢木景」。ある日クラスのヒロイン2人に「放課後、中庭に来てくれないかしら」と声をかけられる。まさか告白じゃないだろとは思いつつ、既に心臓バクバクである。クラスメイトに妬まれながら中庭へ直行! そして2人はなんと本当に告白し始めた。「矢木くん、す――」緊張のあまり、血が煮えくり返るかと思った体は大爆発。
ここで謎のピンク色の猫が登場し主人公に「次はないぞ」くぎを刺して消えて行った。どうやら爆発によって死ぬことはなかったが、爆発が発生したことは間違いないということがクラスメイトの証言から判明。どうやら自分は告白されると爆死する運命にあることを理解する。
それらの出来事をきっかけに2人のヒロインは夕方になると暴走気味に主人公に告白を迫ってくるようになってしまう。ヒロインたちから逃げつつ「なぜ、告白されたら爆死する運命になってしまったのか」を究明するためクラスメイトを巻き込んだ一触即発のラブコメディが開幕する。
本作は高校生たちが主役の学園ものであるため、キャラクターがやや幼い見た目のビジュアル。女の子たちはとてもかわいく描かれており、こんな女の子に告白されでもしたらまぁ筆者はイチコロである。告白されたいけど、本当に告白されたら爆死。歯がゆすぎる思いを胸に果たしてクリアできるのか、という一抹の不安を胸に、「デスマッチラブコメ!」の世界に足を踏み入れていくのであった。
ことあるごとに爆死してゆく主人公のことを最初は笑ってみていることができるが、実際問題、告白されたら爆死するという呪いは軽々しいものではない。ストーリーを進めてゆくうちに真摯に呪いについて考えてくれるクラスメイトの姿勢を目にする。だんだんとプレーヤーである私自身も笑ってはいられないデスゲームが始まってしまったということを理解する。
序盤には、メインヒロインにあたる「津野るみ子」さんと「白詰乙羽」さんのみが物語上の最重要人物であり、2人を中心としたストーリーが展開されるのかと予想していた。しかしながら自分を含めた7人のクラスメイト達はしっかりとしたバックボーンがあり、ストーリーの完結にはなくてはならない要素となっている。
物語を読み進めているうちに本作におけるストーリーはミステリー要素が加速。主人公の記憶に何らかの齟齬が生じて不可解な現象が起こっているのか、はたまた「デスマッチラブコメ」という謎の現象が原因で発生しているのかはわからないが、とある部分でかなり驚かされることになる。筆者自身この部分を読んでかなり「ギョッとした」し、一度振り返って考察をしたくなるひねりの効いた展開になっていた。
また、これらの原因については1度に多くの理由が明かされることもあり、情報過多に陥ってしまうかも知れない。だが、そんなときには時系列順に更新されるTIPSを読みくことで理解を深めることが可能だ。
本作はこれまでのケムコのノベルゲーと比較するとよりカジュアルに遊びやすく、さらにはとっつきやすい印象を受けた。ラブコメというキャッチー要素でプレーヤーを引き付け、物語の背景やキャラクターについての理解が深まってきたところで、ミステリー要素へと一気に引きずり込んでゆく。張り巡らされる伏線、日常では起こりえない数々の出来事、奇っ怪な現象、身近にいる預言者、古来より続く因習、コックリさんなどなど、オカルト的な方向へと物語は進む。
しかしながら、それら物語で登場するすべての現象においては物語上で理由が明かされる。現実ではありえないような物事にはしっかりとした理由が用意され、同時に伏線を配置・回収してゆくストーリーは読んでいて本当に驚いた。そのため、中盤に差し掛かり、同時に複数の意味不明ともいえる現象が主人公の周りで巻き起こるが、それらが明かされた時には「な~るほどな!」と合点がいく。数多くの細かな出来事は後々に大きく響く伏線となっており、それらをしっかりと回収してくれる。
理解を深める便利な機能
また、本作には自分がストーリー全体から見て、どの辺りにいるのかを把握できるおなじみのチャートシステムを搭載。ゲーム内の進行度合いが可視化されるほか、すぐに直前の地点からやり直すことができるため、こまめにセーブする必要がなくなる。よりストレスフリーに読み進めることができるようになっている。
さて、死ぬことが多い本作であるがそれに対するアフターケアも万全だ。死んだ先では「とろりんの巣」という不思議な場所でヒントを貰うことができる。ここでは、「なぜ死んだのか・どうすればよかったのか」ということを、作中にも登場する「とろりん」こと「土呂 鈴」先生がメタ的な視点を交えながら解説。
このシステムのおかげで、ストーリー上で行き詰まる事がなくなり、テンポよくストーリーを読み進めることができるようになっている。その上、あまりアドベンチャーゲームを遊んだことがなかったり、アドベンチャーゲームならではのフラグ管理という文法を知らない人にとっても遊びやすくし、幅を広げることに成功していると言って良いだろう。
甘々な「ラブコメ」と命を懸けた「デスマッチ」が混じりあった本作「デスマッチラブコメ!」
選択肢で物語が分岐するノベルゲームとして、恋愛アドベンチャーとサスペンス要素のいいとこどりをした「デスマッチラブコメ!」は極めてよく練り込まれたストーリーが楽しめる作品に仕上がっている。学園で繰り広げられる序盤のストーリーはオカルト的な方向へと進み、勢いそのままに最終的な結末を迎える。終盤はかなりのハイテンポかつ、カオスな展開になるが、それもこの「デスマッチラブコメ!」の魅力の1つともいえると断言できる。
クライマックスは本当に怒涛の展開。物語に大きく関わる部分であるため、詳しくは語ることができないが、あまりにも破天荒な展開で、目まぐるしくストーリーが展開されてゆく。「えーーー!」と思わされた部分が何度あったか。軽く両手では数えきれないほどで、どれもしっかりとしたオチが用意されている。
そのうえ、幾重にも張り巡らされた伏線は物語上でほぼ全て回収しているといっていいだろう。そのため、読後感は非常に良い。また、クリア後のサブストーリーも大量に用意されているため、本作のキャラクターたちに引き込まれた人は「デスマッチラブコメ!」の世界にどっぷりと浸ることができる。
また、シナリオを手掛けるamphibian氏はブログ「ケムコのアドベンチャーポータル」にて「amphibianにとってデスゲームとは何だったか」ということを語っている。自身が手掛けるデスゲームの「ルール」などについて詳しく触れており、本編をクリアした後に記事を読むとまた新たな発見が生まれるかもしれない。
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