「幻影異聞録♯FE Encore」レビュー

幻影異聞録♯FE Encore

アトラスと「ファイアーエムブレム」が融合した注目作品が、Nintendo Switchで蘇る!

ジャンル:
  • RPG
発売元:
  • 任天堂
開発元:
  • 任天堂
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
6,700円(税別)
発売日:
2020年1月17日

 任天堂とアトラスが開発したWii U版「幻影異聞録♯FE」。アトラスと「ファイアーエムブレム」(以下、「FE」)という驚愕のコラボにより、2015年発売当時大きな話題を呼んだ異色の作品だが、そんな「幻影異聞録♯FE」が、1月17日に「幻影異聞録♯FE Encore」(以下、「♯FE Encore」)として装いも新たにNintendo Switchで帰ってくる。

 「♯FE Encore」では今でも色あせない、「FE」シリーズのキャラクターたちが本作の登場キャラクターと共に織り成す物語や、"アトラスらしい"戦略性に富んだバトルなどが楽しめるほか、キャラクターの魅力をより深堀りするかのようなストーリー追加なども行なわれたまさに"完全版"とも言えるタイトルだ。早速本作の手触りをご紹介していこう。

【幻影異聞録♯FE Encore 紹介映像 世界観編】
【幻影異聞録♯FE Encore 紹介映像 バトル編】

アトラスと「FE」が、夢の共演!

 ある日主人公の樹が、幼なじみのつばさと共に謎の怪奇事件に巻き込まれてしまうところから物語はスタートする。どうやら樹が巻き込まれた事件は、5年前の演劇の公演中に起こった謎の集団失踪事件とも関係があるようだ。そしてこの集団失踪事件は、つばさも何らかの関係があるようで、つばさはそのために樹たちにも内緒で実はこっそりと芸能界への道を目指していた。

 つばさが何故アイドルになろうとしているのか。そして「イドラスフィア」と呼ばれる異界から訪れる謎の存在「ミラージュ」は敵対するものも多い反面、樹たちに力を貸してくれる存在もいることがわかる。その主人公たちに力を貸してくれる異界の住人である味方ミラージュが、「FE」側のキャラクターとなる。なお、「♯FE Encore」のメインの舞台は現代の渋谷など東京の街。アトラス作品を多く遊んでいる人ならば、「ペルソナ5」でも馴染みの深い街だ。

主人公・樹のミラージュは「クロム」。「FE覚醒」の主人公。クラスはロード。
ヒロイン・つばさのミラージュは「シーダ」。「FE暗黒竜」の時代からマルスを支え続けてきたヒロイン。クラスはもちろんペガサスナイトだ

 他にも、「FE暗黒竜と光の剣(※紋章の謎)」からソシアルナイトのカイン、アーマーナイトのドーガ、傭兵ナバール、「FE覚醒」から呪い好きの闇使いサーリャ、飄々たる弓使いヴィオールが味方ミラージュとして登場するほか、「FE暗黒竜と光の剣」で神竜だったチキは本作でも主人公たちをサポートする特別な立ち位置のキャラクターとして登場する。

 味方ミラージュの共通点は、全員記憶喪失であること。名前以外の全ての記憶を失っており、これらは後々物語の大きなキーとなってゆく。もちろん彼らの記憶はゲーム内で重要なファクターとなっている。

歌とダンスと「FE」のいいところどり!

 本作では味方ミラージュの持つ力を行使できる人間たちのことを、「ミラージュマスター」と呼ぶ。基本的に主人公の樹以外のメインキャストたちは芸能の道に携わっており、樹もこの事件に巻き込まれ、クロムのミラージュマスターとして目覚めたことから芸能の道を歩むこととなる。だが、普通のプレーヤーならば当然ながら「何故、そこで突然芸能の道に?」となることだろう。

 その理由は「演者(ミラージュマスター)の身に神(ミラージュ)の力を降ろす、いわゆる神降ろしに通じるものがある」――とされており、歌、演技、楽器演奏などの芸術に携わり技術を磨くことでミラージュの力を使う技術が高まるのだという。この話には、思わず「そうきたか」と唸ってしまった。この説明によって、ミラージュマスターが何故芸能人としての力を磨くのかをすっきりと説明され、「芸能」+「FE」という世界観をすんなりと受け入れられてしまうのだ。

主人公の蒼井樹。ある日事件に巻き込まれてつばさと共にミラージュマスターとしての力を得る
ヒロインの織部つばさは、ゲーム開始時に眼鏡をかけるかかけないかの設定を選べる。こだわりのつばさにしてあげよう

 主人公たちが拠点とするのは、芸能事務所の「フォルトナエンタテイメント」。表の顔は芸能事務所、だがその裏の顔はミラージュ事件の調査隊だ。本作では主人公の樹とつばさ以外にもすでにミラージュマスターとして目覚めていた仲間がおり、それぞれが独自に活動していた中、樹に協力する形で仲間になっていく。

樹とつばさのクラスメイトの斗馬は、ミラージュマスターとしては先輩
仲間のひとりの霧亜は、人気アーティスト「Kiria」として活動している。つばさはKiriaの大ファン

 バトルの基本的なシステムとしてはいわゆる"コマンドバトル"形式となっているが、芸能の能力を磨きながら進んでいくストーリーとあって芸能的な世界観は戦闘シーンでも活かされており、ステージ衣装のようなコスチュームにチェンジして、その場に集った観客に魅せるショーのような形式でバトルは行なわれる。

 そして敵の弱点を突いた時に発生する仲間の追撃を、本作では「セッション」と呼んでいる。このバトルシステムは実にアトラスらしい楽しさがあり、いかにセッションを狙うかがバトルで重要な要素を占めている。例えば槍が弱点の敵に槍属性スキル「串刺し」を使うことによって、他の仲間がセッション(追撃)に参加してくれる。

 ただしセッションに参加するためには対応するスキルを修得している必要があるため、パーティの組み合わせによっては弱点属性を突いても誰もセッションに参加してくれない、ということも起こり得る。このセッションの仕様は少々複雑だが、「行動ターンがきたキャラクターの選んだ攻撃で誰がセッションに参加できるか」というのは、コマンド選択画面左側にセッションラインナップで表示されるので、そこで判断するのが簡単だ。

 ゲームの難易度は「フレンドリー」、「イージー」、「ノーマル」、「ハード」、「ルナティック」の5つで、最初に選べるのはイージー、ノーマル、ハードだが、中でも一番カンタンな「イージー」でもセッションは必須なので、システムの理解だけは怠らないようにしたい。そういう意味では良くも悪くも”イージーですら易々とは進ませないアトラス難易度”であり、通常の雑魚とのバトルですらボタンを連打しているだけでは進めないようになっている。なお、イージーモードで一度全滅すると解放される「フレンドリーモード」という、一番難易度の低いモードもあるので、どうしてもバトルを手軽に進めたい人はイージーモードでわざと全滅するのもひとつの手段だ。

 また「♯FE Encore」ではセッション演出を短縮化するモードが新機能として追加されたので、バトルをできるだけさくさく進めたい人は活用しよう。

敵の弱点は、炎や氷といったアトラスおなじみの属性の他に、剣、槍、斧、弓という「FE」シリーズの属性も追加されている。例えば馬系の敵には「ホースキラー」が有効で、飛行系の敵には弓が有効だったりする

 バトルのひとつひとつにはある程度時間はかかるものの、バトルを進めていけばどんどん新しいスキルを覚えていき、敵から集めたアイテムで新しい武器を作ったりとキャラクターが成長していくのを実感できるので、意外とバトルの長さは苦にならない。

 何よりバトル画面が最高にポップで、「FE」シリーズとのコラボなのにこんなノリを楽しんでしまっても良いのかと戸惑いつつも、このゲームだからこそ出来た「芸能」+「FE」という世界観を楽しめる。

ノリノリなクロムやカインたちの姿を見るのも悪くない
バトル中に突然「アドリブパフォーマンス」としてKiriaのライブが始まることも……これも攻撃の一部なのだが、歌がとても綺麗で発生するたびに見入ってしまう
レベルアップ音は、「FE」でおなじみのアレ

 ダンジョンについても、攻略はかなり難易度が高めとなっている。恐らく得意不得意もあるとは思うが、筆者はダンジョンの謎解きにはかなり悩まされたほうだった。

このダンジョンは1章で行くことになるが、筆者は1時間以上同じところをぐるぐる回り続けてしまった……

 元々筆者は道を覚えるのが苦手で、何度もプレイしているゲームですら道を覚えられないというのもあるが、一部のダンジョンでは相当苦戦を強いられた。迷ってしまうと必然的にバトルの回数が増え、HPやEP(スキルを使用するためのポイント)にも深刻なダメージを負う。どんなにセッションを駆使しても、回復アイテムなしでダンジョンに飛び込むのは危険だ。

 道中には一定の間隔でワープポイントが設置されており、解放すればダンジョンの入り口まで戻れるため、ワープポイントを見つけたら一度脱出し、回復やアイテムの補充を行ない、またダンジョンに戻ってワープポイントから攻略再開、の繰り返しとなる。

 今作ではミニマップ機能が追加されて、攻略が楽になった。ダンジョンの攻略途中であまりプレイ時間を空けてしまうとより一層迷いやすくなると感じたので、マップを把握しにくいダンジョンは、できるだけ道を覚えているうちに攻略してしまいたい。

携帯機でもプレイがしやすい、ストーリー運び

 ゲーム中で樹は「TOPIC」というコミュニケーションツールを所持しており、TOPICでは仲間になったキャラクターたちとメッセージのやり取りが可能。

メッセージ内容によっては選択肢が発生するが、特に分岐したりということはないので、気楽に答えよう

 メインストーリーも、TOPICの着信から進んでいくことが多い。TOPICは「+」ボタンで簡単に開けるし、新しい着信があるとゲーム画面にも表示されるので、基本的に見落としてしまうようなことはなく親切だ。

 また、本作ではメインストーリーを「1章」、「2章」…と章単位で区切っているが、章と章の間には「インターミッション」と呼ばれる章が存在する。インターミッションでは大きな事件(メインストーリー)が進まず、サイドストーリーなどを自由にこなす時間となっており、インターミッション中に次の章に備えてレベル上げやスキル習得などをすることも可能だ。

 この構成のおかげでメインストーリーの間はメインに集中し、サイドストーリーやリクエストなどはインターミッション中にこなす、というメリハリが出来、非常に遊びやすい。インターミッションは特定の場所に入るまで終わらないので、この間にいくらでも自分がやりたいことを楽しめる。

 サイドストーリーは、メインストーリーを進めるほか、キャストのレベルアップなど一定の条件を満たすことでプレイが可能になる。進行が可能になるとTOPICでも知らせてくれ、指定箇所で対応キャラクターに話しかけると始まるという流れ。このサイドストーリーの達成状況がいわゆる「真エンディング」の条件につながるため、サイドストーリーだけは必ず全キャラクターの全てのストーリーをプレイしておきたい。

サイドストーリーはいっぺんにひとつしか発生させられない。複数のキャラクターからTOPICが届いた時は、順番に終わらせていく

その他「♯FE Encore」での変更点

 Wii U版からの主な変更点をあげていこう。

 まず、バトルシーンで使用できるコスチュームに、本作ではWii U版でDLCとして配信されたコラボコスチュームセット・東京ミレニアムコレクションが収録されている。ただし最初からDLCとして配信されていた衣装がコスチューム選択で選べるのではなく、物語中で条件を満たすことによって順に取得していくので注意だ。

 アトラスの「真・女神転生IV」や「デビルサバイバー2」、「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」とのコラボ衣装や、「ファイアーエムブレム 風花雪月」とのコラボ衣装などもあるので、ファンには嬉しいところだ。

コスチュームは一定条件を満たすことで徐々に解放されていく。どのコスチュームにしてもバトル面での性能は変わらないため、自分の好みの衣装でバトルに参加させられるのが良い

 また、「♯FE Encore」で新たに追加されたEXストーリーも。一番最初に遊べるEXストーリーでは、つばさがKiriaの楽曲をカバーすることになり、そのことへのプレッシャーを感じるつばさの姿、そして実際にそのつばさのカバー曲を聴いたKiriaとの心和むストーリーが展開される。

新ストーリーは「EXストーリー」と名付けられているので、Wii U版でプレイした人もすぐに新ストーリーが発生したことがわかる。新ダンジョンに挑戦して、EXストーリーを進めていこう。なお新ダンジョンには追加コスチュームなどが落ちていることもあるので、くまなく散策してほしい

 Wii U版でのDLCだった「サポートクエスト」も、ゲーム開始序盤からプレイできるようになっているので、レベル上げやスキル習得なども簡単に行なえる。

 更に、バトルには直接参加しないものの、EXストーリーを進めることによって、舞子、チキ、バリィらがセッションに参加するようになる。

ストーリーもバトルも楽しみたい人には絶対オススメ!

 本作は、現実の社会でもお馴染みのソーシャルツールを使ってストーリーを進められたり、メインストーリー、サイドストーリー、リクエストや育成といったバランスが取れていて、現在プレーヤーが進めている物語が解りやすい作りになっているので、自分が今何をしているのか迷うことがない作りになっている。元々はWii Uで発売されたゲームということもあり、持ち運べるスタイルにとても合った作りで、隙間時間に進めていきつつも本格的なRPGがやりたい、という人にぴったりなタイトルだ。

 「FE」キャラクターらが力を貸してくれる点ももちろんだが、本作のオリジナルキャラクターたちもみんな個性的。筆者は「真・女神転生」、「ペルソナ」シリーズなどのアトラスゲーム及び歴代のほぼ全ての「FE」シリーズの両方を嗜んでいるが、アトラス製品や「FE」シリーズを知らなくても、充分に楽しめるのではないだろうか。

 ただ、バトルに割かれる時間がどうしても多くなる。しかし本作では、セッション演出を短縮化する「Quick Session」という新機能も搭載されているので、全体的に読み込み速度の上昇などによりスピーディになっている点も好印象。”ストーリーも重要だが、バトルが面白いゲームは正義”派の人に、ぜひプレイしてみてほしい。