「脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング」レビュー

東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング

筋肉の次は脳! Switch=生活の一部化に拍車がかかる“脳トレ”最新エッセンス

ジャンル:
  • パズル
発売元:
  • 任天堂
開発元:
  • 任天堂
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
3,480円(税込、タッチペン付き)
 
2,680円(税込、タッチペン別売)
(ダウンロード)
発売日:
2019年12月27日

 「脳トレ」というキラーワードが生まれたきっかけはゲームだった。その名も2005年発売のニンテンドーDS「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」。ゲーム的エッセンスで“プレーヤー自身の脳を鍛える”という内容で、ゲームファンにもノンゲームファンにも衝撃を与えたDS世代の大ヒット作である。

 その「脳トレ」が、Nintendo Switchに帰ってくる。タイトル名は「東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング」(以下、脳トレSwitch)。しかも、最新コンテンツを伴って。

【脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング 紹介映像】

 Nintendo Switchでのエクササイズタイトルといえば、10月18日に発売された「リングフィット アドベンチャー」だろう。ニッコニコの笑顔でどこまでも筋肉を追い込んでくる驚異のゲームデザインが幅広い層にインパクトを与え、現在も品薄状態が続いている。世の中の筋肉ブームにも乗る形で、かつての「脳トレ」現象にも似たヒットとなっている快作だ。

 タイミングとしては、「リングフィット アドベンチャー」のいい流れを汲む形で、狙いすましたかのように「脳トレSwitch」が発売されることになる。筋肉から脳へ。実際に「脳トレSwitch」に触れて見ると、DS時代の懐かしさも感じさせつつ、「これは毎日やりたくなるな」と思わせてくれる流石の仕上がりになっている。ではさっそく、ご紹介していきたい。

純正タッチペンの軽い書き心地が気持ちいい!

 「脳トレSwitch」の特筆すべきポイント。それは“縦持ち”であり、“タッチペン”を使うところ。中でも、タッチペンを使う操作は特に気に入った。

 縦持ち+タッチペンはDS世代の「脳トレ」プレーヤーならごく自然に感じられるスタイルだが、DS世代のタッチパネルは感圧式なのに対し、Nintendo Switchのタッチパネルは静電容量式。「脳トレSwitch」のパッケージ版にも付属する純正タッチペンで操作すると、軽い力でスルスルッと心地よく書いたりタッチしたりできる。

 シリーズ最初期からある簡単な計算問題を25問解くタイムアタック「計算25」などをプレイしてみても、タッチ感の“軽さ”が以前とは違う。それに画面が大きいのもいい。往年のファンには、ぜひこのタッチ感だけでも触れてほしいと思うくらいである。

本作ではNintendo Switchを“縦持ち”の上、タッチペンを使って操作する
「脳トレ」の代名詞的存在「計算25」

 もう1つ、特徴的で面白いのはJoy-ConのモーションIRカメラを使ったトレーニングがあることだ。ゲーム内では「指で脳トレ」と呼ばれており、カメラの前に手をかざしてプレイするものとなっている。

 たとえば「後出勝負テスト」では、画面に登場するじゃんけんのグー、チョキ、パーと一緒に「負けてください」、「勝ってください」と指示が出る。プレーヤーは実際にグー、チョキ、パーを出し、カメラは手の形を認識して正誤を判断する。問題を繰り返し、全体にかかった時間を計るというものだ。

 操作としてはカメラの前でグー、チョキ、パーを出すだけなので誰でもできる一方で、実際に手を動かすことでこれまでの「脳トレ」とはまた違った脳への負荷を実感できる。遊びとしても新しさがあり、「脳トレSwitch」の導入としても最適だ。「ちょっとこれやってみなよ」と誰かに言いたくなるようなニクい作りに、実に任天堂らしさを感じさせるトレーニングである。

モーションIRカメラが手の形を認識。感度がいいのでパッパッパッと出しても読み取ってくれる

懐かしくも新鮮な「脳トレ」プレイサイクル

 プレイサイクルの点では、以前のシリーズとそれほど大きくは変わっていない。メインモードの「毎日トレーニング」でトレーニングを繰り返し、1日に1個、カレンダーにハンコを押す。ハンコが増えるとまた新たなトレーニングがアンロックされて、次の日のトレーニングが楽しみになる、という感じだ。

このカレンダーとハンコの画面。懐かしさ満載だ

 トレーニングとしては、さきほどの「計算25」のほか、画面上の一番大きい数字をタッチしながら、ハードルにぶつからないよう走る人をジャンプさせる「二重課題」、指示通りに指でピアノの鍵盤をタッチしていく「名曲演奏」などなど。

 中には口に出して120を数える「高速数えテスト」、新聞記事を音読する「新聞音読」といったクリアを自己申告するものもある。極端に言えばズルもできるが……まあ、自身のトレーニングのためにちゃんとやるのが大人の対応だろう。

指で鍵盤を弾く「名曲演奏」。万人にピアノ的操作をさせるのがミソ
シリーズ最初期からある「細菌撲滅」もある

 そして1日1回のもうひとつのお楽しみが、「脳年齢チェック」。ランダムに出題される3つのテストから、脳の抑制力、処理速度、短期記憶力を評価して総合的な「脳年齢」を算出するというもの。

 最初は初見の課題もバンバン登場するので、勝手がわからずまごついていると、あっという間に脳年齢は上がっていく。結果、実年齢34歳の筆者、脳年齢43歳。その時点でも悔しいのだが、川島教授は「物足りないですね」などとダメ押しもしてくる。く、悔しい……! こうなったら毎日挑戦してやる! と思わず奮起してしまうのは、ゲーマーの性というものだろうか。

「脳年齢チェック」は3つの要素で構成
さらっと辛辣な川島教授。悔しさが募る

「数独」に「脳トレ」シリーズの真骨頂を見た

 毎日続けることで、次々オープンするトレーニングの数々。ひとつひとつ詳しく紹介してもいいのだが、何も知らない状態で課題に悩む驚きも本作の面白さのひとつかと思うので、そこは楽しみにしていただきたい。

 代わりに、個人的に「印象的で、さらに長く楽しめる」トレーニングがあったので取り上げたい。

 それは「数独」だ。まさか「脳トレ」で数独をやるとは予想だしにしなかったが、とにかくトレーニングのひとつとして収録されている。ゲーム内の情報では、「前頭前野の活性化」、「記憶力の向上」が期待できるとのこと。

まったく知らない人でもプレイできるように、チュートリアルが初歩の初歩から用意されている

 ポイントは筆者はこれまで数独にほとんど触れてこなかったことだ。世の中には本やアプリ、ゲームと数独に特化したコンテンツは色々あるが、前向きに「そうだ、数独やろう」と思ったことはなかった。おそらく、川島教授の導きがなければ今後も数独に面と向かって取り組むことはなかったと思う。

 しかし、そこは「脳トレ」である。「数独で脳が鍛えられるよ」と言われれば、ちょっとやってみたくなるもの。そして実際に取り組んでみて思うのは、“やってこなかったものをやるのは、脳への負荷がものすごい”という実感だ。

 筆者の場合、簡単モードの最初の2問目ですら30分以上かかってしまったが、途中、数独を解くコツがわからなくてとても苦労した。もともと数字関係が苦手なこともあるのだが、ミスから書き込んだ数字に齟齬が出て、すべてリセットして最初からやり直すことにもなった。

わざわざこんな苦労をしなくてもアシスト機能があるのだが、それは筆者のプライドが許さなかった

 1つずつ数字を確認し、矛盾がないことを何度も見返しながらコツコツと欄を埋めていく。その作業が泣きそうなくらい辛かったが、それでも全部数字を埋めきって正解。画面に「おめでとう!」の文字が表示された瞬間、今までにない新鮮な達成感を味わうことができた。

 今までやろうとは思わなかったし、何なら苦手に思うものをあえてやることで、トレーニングになる。まさに「脳トレ」ならではの仕掛けだし、思えば「脳トレ」の真骨頂は“いつもやらないことをやる”点にあるのではと思わせてくれる体験だった。「数独」に関しては問題数が多く収録されているので、元からの数独ファンも筆者のような場合も長く楽しめると思う。

Nintendo Switchがあれば健康水準が上がってしまう!

 トレーニングを続けていると、自分の苦手なものがはっきりとしてくるのも面白い。筆者の場合は30個の単語を2分間でできる限り覚える「単語記憶テスト」の成績がやや悪めであることがだんだんとわかってきた。

 苦手なものの傾向がわかるとやはり意識するし、トレーニングでも重点的にやってみたくなる。「リングフィット アドベンチャー」のように「ドラゴンを倒す」とはっきりとした目的があるわけではないが、ちゃんと苦手と向き合って、溜まったハンコに自分の努力の跡を感じ、1日1回の「脳年齢チェック」の成績に一喜一憂する。この思わず継続したくなる感じは、さすが「脳トレ」だ。

 ほかにもJoy-Conふたつ、2人で対戦できる「対戦脳トレ」があるなど、個人的なトレーニングとしても、簡単なパーティーゲームとしても楽しめる。

 そして、もし「リングフィット アドベンチャー」と「脳トレSwitch」を組み合わせるなら。この2タイトルを毎日プレイするだけで、筋肉と脳年齢のダブルアタックでプレーヤー自身の健康水準がグングン上がってしまう。Nintendo Switchは、「リングフィット アドベンチャー」と「脳トレSwitch」の登場によって新たな方向性を示したように思う。

パーティーゲーム的に遊ぶなら「お手軽」が最適。横画面にしてワイワイと楽しめる