「ファークライ ニュードーン」レビュー

ファークライ ニュードーン

悪夢のような「崩壊」のその後を描いた「ファークライ5」の正当続編

ジャンル:
  • アクションアドベンチャー
発売元:
  • ユービーアイソフト
開発元:
  • ユービーアイソフト
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
5,832円(税込)
発売日:
2019年2月15日

 ユービーアイソフトの「ファークライ」シリーズの最新作、「ファークライ ニュードーン」が、2月15日に発売となった。昨年3月にリリースされた「ファークライ5」の続編的な位置づけにある作品で、同作のエンディングで起きた出来事の後日談を描いた作品であり、新たな驚異「ハイウェイマン」と、それを率いる双子の姉妹との戦いにファンからの注目が集まっていた。そんな本作のプレイステーション4版のレビューをお届けしていこう。

「崩壊」後のホープカウンティで起こる出来事を体感する

 「ファークライ5」にて語られたモンタナ州の田舎町「ホープカウンティ」を舞台とした、カルト教団「エデンズ・ゲート」との戦いは、彼らが予言した核兵器の投下という最悪の結末を迎えた。何もかもがが焼き払われ、ホープカウンティは教祖ジョセフ・シードの予言通り崩壊した……と思われていたが、全てが終わったわけではなかった。

 前作をプレイした人はご存じの通り、このホープカウンティには、カルト教団の唱える終末に備えたバンカー(シェルター)が点在していて、そこに身を隠すことで辛くも生き延びた人々が存在したのだ。焼け野原だった大地には新しい生命が生まれ、人々はバンカーから出て新たな生活をし始めるが、そこに「ハイウェイマン」と呼ばれる侵略者達が現われる。「崩壊」から17年後の出来事である。

核爆弾によって焼き払われた世界だったが、やがて息を吹き返す
ハイウェイマンは「追いはぎ」を意味する

 暴力によって略奪と支配を繰り返すハイウェイマン達に対抗するために、ホープカウンティに築かれつつある「プロスペリティ」というコミュニティを支援するためにこの地にやってくるのが、今回のプレーヤーである。

「キャプテン」と呼ばれる主人公もまた、ハイウェイマンに襲われてしまう

 いわゆるポスト・アポカリプス的な世界を描いた本作であるが、その舞台となる崩壊後のホープカウンティはことのほか原型をとどめている。フィールドはもちろんオープンワールドで、行ける場所は狭まっているものの、現存しているランドマークなどもあり、前作をプレイした経験がある人は、行く先々でかつての激戦を懐かしく思い出すだろう。

スナイパーのグレースとともに戦ったラムオブゴッド教会は原形をとどめていた
崩壊前に撮られた写真の場所を探すミッションもある

 崩壊を生き延びた人々の中にもまた、かつてプレーヤーとともにカルトと戦った人物達が存在している。それが誰なのかは劇中で確かめていただければと思うが、出会えばきっと「あんた、生きてたんだ!」という気持ちになるはずだ。何より驚いたのは、本作のヒロイン的な存在であるカルミナが、前作の重要人物のニックの娘であり、プレーヤーの拠点となるプロスペリティのリーダーがその母親キムだったということ。前作にはカルミナの生誕にまつわるミッションもあり、それを体験しているようなら、彼女に対する思い入れが変わるのは間違いない。

カルミナはプレーヤーを導く存在であり、後にともに戦う仲間にもなる

 そんな彼らの驚異として現われるハイウェイマン達は、ミッキー&ルーという双子の姉妹に率いられるバイカーのような姿をした武装集団である。全員が武闘派で、知性はあまり感じられないものの、自らの身体や車、ランドマークなどをド派手なグラフィティやペイントで飾り立てるという、芸術家肌なところもあるようだ。とにかくその数が多く、様々な攻撃手段を持った者が存在しているのが厄介で、さらに彼らにはランクがあり、それが高い者ほど強力な武器と固いアーマーを身に付けていて、倒すことが難しくなっている。

裸に近い姿の彼らは弱く、鎧を着ている者は強い。ゲームを進めるとともにランクが上がり強くなっていく
青いパーカーが姉のミッキー、ピンクのアーマーが妹のルー。彼女らも彼女らで、何らかの信念のもとに行動している

 イナゴのように数で押し寄せるハイウェイマンに対し、プロスペリティの面々は物語中に第3の勢力「ニュー・エデン」に助力を求めることになる。その正体について詳しくは言及しないでおくが、ホープカウンティの北に集落をかまえ、隠者のような生活をしている彼らに関連するある人物が、プレーヤーに対して意外な形で福音をもたらし、さらに物語に大きなうねりを与えていくということも述べておきたい。

後に仲間となるジャッジも、このニュー・エデンの人物である

「崩壊」は、本作のゲームデザインにも影響をもたらした

 ゲームシステムはこれまでの「ファークライ」シリーズ同様、広大なオープンワールドを1人称視点で駆け回り、敵と戦いながら様々なミッションや探索をこなしていく内容が展開する。崩壊した世界では貨幣の価値がなくなり、各地で見つけられる素材や、動物から手に入る皮などを使った物々交換が主流となったことで、ミッションの報酬などもそれらに準じたものとなった。中でも特に重要なのが、燃料の「エタノール」である。これは主にプロスペリティの設備の強化に使用するもので、特定のミッションや敵のタンクローリーの強奪などでしか手に入らない貴重な物資だ。

素材はマップ上のロケーションや「トレジャーハント」のミッションでも発見できる
「ガスバーナー」か「ロックピック」のPERKを取得すると、金庫に隠された素材を入手できる
プロスペリティの施設のアップグレードは、プロスペリティ自体のアップグレードにも繋がる

 本作ではこのエタノールの入手に際し、面白いシステムが導入されている。マップ上に点在するハイウェイマンの基地は、そこにいる全ての敵を殲滅することで解放でき、リスポーンやファストトラベルのための拠点となるわけだが、マップ上から「資材回収」を行なうことで一定のエタノールを獲得でき、再びその場所がハイウェイマンに占拠されるというものだ。

 前作の基地を解放前の状態に戻す「基地MASTER」を個別に行なうもので、行なうたびに現われるハイウェイマンのランクが2段階まで上がり、最高の状態では警報器が最大3つと「処刑人」なる最強の敵が配備され、装備やPERKを充実させていないと攻略が困難なほどの難易度となる。そのぶんもらえる報酬はより大きなものとなり、運がよければキャラクターの衣装が入手できることもあり、チャレンジして損はない。

「資材回収」を実行すると、その場でエタノールを獲得し、再び敵の基地となる
以前よりも強力な敵が登場する。かなわない可能性もあるので、選択は慎重に

 それともう1つ、素材を入手することが目的の「探検」というミッションが登場している。これはプロスペリティの同名設備から受けられるもので、ホープカウンティとは別の独立したマップ上で展開される、ステージクリア型のミッションとなる。各ロケーションにはハイウェイマンが配置されていて、マップのどこかにミッションアイテムの「パッケージ」が存在。これを探して持ち帰るのが目的なわけだが、パッケージは入手30秒後にGPSが作動し、その後は敵の追っ手を振り切り、ヘリコプターに乗って脱出すればミッション完了となる。どのマップも非常に凝っていて、この部分だけでも単独で成立するほどの手応えがあり、ストーリーに直接つながりがないぶん、エンディング後も楽しめる要素と言える。

「探検」では、空母、廃墟の遊園地、刑務所など、凝ったロケーションが舞台となる
パッケージはマップ上のどこかに隠されている。その場所を探すのも目的の1つだ

ハイウェイマンとの戦いは、手作りの武器と仲間の活躍がカギとなる

 FPSとして人気の高いシリーズの最新作となる本作では、その世界観に合わせて武器のデザインもかなりワイルドだ。最初にクラフトで入手する「ブレードランチャー」などは、拾った部品を寄せ集めて作った簡素な武器ながら、弾丸であるノコギリ刃を発射する音が小さく、ランクが低いハイウェイマンなら1撃で倒せるという強力な武器でもあった。

 銃器も同様に、素材を消費してクラフトすることになるわけだが、スコープやサイレンサーなどがパイプやスプレー缶などのジャンクパーツで作られているデザインも面白いところだ。こうしたパーツ類は武器とセットでクラフトするものなので、カスタマイズなどはできない仕様だ。ちなみにUbisoft Club経由で「ファークライ5」のゲームクリアのリワードとしてもらえるショットガン「罪喰いD2」は、ゲームのラストまで使える強力な武器なので、ぜひ手に入れておくべし。

ボウガンのようなブレードランチャー。跳弾により1ショットで複数の敵を倒せることも
こんなスコープを備えた銃もある。エイミング時はちょっと見づらいかもしれない

 また本作の戦闘において1つ特徴的なのは、攻撃がヒットするとダメージ数値が出るようになったことだ。これにより、敵に対して手持ちの武器の強さがマッチしているかどうかかを判断できるようになった。本作はランクの高い敵に対してランクの低い武器では太刀打ちできないことがほとんどで、ダメージ数値が低いような場合は、新たな武器を用意するのが確実だ。また、動物など一部の強敵の弱点を見つけるのにも有効だ。もちろんこの表示はオプションでオフにもできるので、もし気になるといういう人は切ってしまってもいい。

ヘッドショットなどが決まると、大きな数値が表示されてわかりやすい

 戦闘で頼りになる存在として忘れてはならないのが、「ガンフォーハイヤー」、「ファングフォーハイヤー」のシステムだ。前作同様、ミッションで出会う人物を相棒として連れていくというもので、今回は8人(正確には6人と2匹)のキャラクターのみが対象で、連れていけるのは1人のみというシンプルなスタイルとなった。

 相変わらず個性的なメンバーが揃っていて、カルミナがそこに含まれているのも興味深いところだ。個人的には、索敵及びアイテム探知能力の高さ、そして可愛さも備えた犬のティンバーは、基地攻略や物資収集にマストな存在であったが、スナイパーのナナもいい味を出していて、老人らしい皮肉が込められたセリフも楽しみつつ、捕虜やエタノールを積んだ敵車両の静止に大いに活躍してもらった。

ミッションで出会うガンフォーハイヤー達。彼らはキル数を重ねると特技が増えていく
ナナは凄腕スナイパーおばあちゃん。スカウト時はプレーヤーの狙撃の腕が試される

ラジオから流れてくるオールディーズに心癒される

 1つ個人的に評価したいのが、本作のサウンド面だ。今回も多くのライセンス曲を採用しているわけだが、基地や車から流れるラジオの曲がシチュエーションによって変わる演出が施されている。ハイウェイマンの車が通ったり、彼らの基地に近づいたりすると、ハードめのヒップホップを主とした楽曲が流れ、その存在がわかるようになっている。その一方で、プレーヤーが運転する車や解放した基地のラジオからは、往年のオールディーズの名曲が流れている。筆者のような年代にはいつまでも聴いていられる懐かしの楽曲揃いで、癒されると同時に、崩壊後のホープカウンティではオールディーズが人気という世界観が想像できたのも面白かった。

基地のラジカセから流れてくるオールディーズ。文明が失われた世界に、ことのほかマッチしている

「ファークライ5」の物語に新たな結末をもたらすタイトルと認識するのがマスト

 前作と比較してマップが小さくなったことによる、物理的に少なくなったプレイバリューを補うためのゲームシステムを、崩壊後の世界観に上手くマッチさせつつ、適度な手応えを持たせたゲームデザインには感心させられた。弱い武器では強い敵にかなわないというRPG的なバランスは賛否ありそうだが、前述の「資材回収」や「探検」といった要素を適度に遊んでいれば施設や装備の強化ができるし、ランダムに発生するイベントやチャレンジ要素でPERKのポイントが比較的簡単に入手できたりもするので、個人的には不自由なくプレイできた次第だ。

 ストーリー的にも前作のあの結末からの流れを上手くまとめていて、本作を通して遊ぶことで、ようやく全てに決着がついたという点も評価したい。それだけに、本作をプレイするのであれば、事前に「ファークライ5」をクリアしておくことを強く勧めたい。もちろん単独でもプレイできる内容ではあるが、ストーリーに対する印象はまったく異なるものになると思われるので、そのつもりで。ひとまず本作を終えた筆者は、時間のあるときにもう1度「ファークライ5」をプレイして、ホープカウンティのビフォーアフターを改めて確認してみようと思っている。