2018年6月1日 07:00
「超合金 ゴールドライタン」は、超合金の歴史を語る上で記念碑的な商品だ。アニメと同じ1981年にポピー(バンダイの子会社)かた発売されたゴールドライタンと彼の仲間である「ライタン軍団」を再現した超合金は大ヒットとなった。ゴールドライタンとライタン軍団5種類で150万個も売れたという。今回、筆者が雑談の際に「超合金のゴールドライタンを買う」という話をすると、「当時持っていた」という人が多く、改めて「超合金 ゴールドライタン」の人気を実感した。
今回BANDAI SPIRITSから発売された「超合金魂 GX-32G24 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ(以下、「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」)」は、2006年に発売された「超合金魂GX-32 ゴールドライタン」のリニューアル商品である。リニューアルにあたり全身のメッキ処理を18金メッキから24金メッキに変更、さらにリッチな輝きをまとっての登場となった。
本商品の第1の魅力は四角いライターがロボットに変形するというコンセプトだ。1981年当時、子供達に衝撃を与えた変形システムをブラッシュアップし、アニメの設定に近いスマートな体型を実現している。そしてもう1つが“高級感”である。表面にクリスタルカットを施し、金の輝きを一層鮮やかに表現したその手法は、玩具という固定概念を打ち破る斬新さがあった。「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は、24金メッキ仕上げという、さらなる高級感に挑戦している。商品の魅力を詳しく語っていきたい。
高級ライターがロボットに! 1981年に大ヒットした超合金のリニューアル
1981年当時、超合金のゴールドライタンとライタン軍団は大きなヒットとなった。ゴールドライタンの企画が生まれた経緯は、“超合金の父”とも呼ばれるポピーの村上克司氏が「ライターが変形するロボット」というアイディアを温めており、そのコンセプトをタツノコプロがアニメ化したことで生まれた。ライターが変形してロボットとなり、戦うという、玩具企画主導のアニメだったのである。
アニメ「ゴールドライタン」は、メカ次元の戦士ゴールドライタンがこの世界を侵略しようとするイバルダ大王に立ち向かうというストーリー。普段は主人公のポケットにライターとして姿を隠しているライタンが、巨大化し戦う。アニメそのものも強い魅力があった。ゴールドライタンは武器などは使わず徒手空拳の格闘で戦う。そのアクションは激しく、カッコ良かった。
そして様々な形、機能を持つ「ライタン軍団」が彼をサポートする。彼らはいつもはライターサイズで主人公の少年とその仲間達と暮らしており、いざとなると巨大化して戦う。そのコンセプトに、視聴者は親近感を持った。ゴールドライタンの必殺技は腕を“単一分子”化し敵を貫き、中枢メカを引き抜いて握りつぶす「ゴールドクラッシュ」。こちらもタツノコらしいド派手でバイオレンスなワザで、強く印象に残った。
アニメの面白さ、そして劇中そのままの「ライターがロボットに変形する」というコンセプトをきちんと再現した「超合金 ゴールドライタン」はヒットした。当時、変形によって大きく変わる様なギミックを持つ玩具は存在しなかった。何の変哲もないライターがロボットに変わる、ゴールドライタンによって現実がSFに世界が変わるような気持ちを味わうことができた。
さらに村上氏は商品にもう1つ仕掛けを盛り込んだ。表面をダイヤモンドの刃で削る「クリスタルカット」を施し、さらに金メッキではなく金を張ることで本物の高級ライターそのままの質感を与えたのだ。子供は金ぴかの高級ライターが好きだ。だけど火がつくライターは危なくて大人は触らせてくれない、そうなると子供はますますそれを触りたくなる、村上氏はそういう「大人の世界への憧れ」を超合金に盛り込むことで、商品の魅力をアピールした。その読みは大きく当たった。
「超合金 ゴールドライタン」は実際にその表面処理を実現させるため、ライター職人を総動員した。商品のヒットで職人達はこちらにかかりきりになり、高級ライターの生産に支障が出たという。さらに村上氏は「ライタン軍団」には実用ツールの機能を併せ持たせた。ライターからロボットになるだけでなく、巻き尺や望遠鏡、時計などの機能を持ったライタン軍団も大いに売れた。その人気は超合金の歴史を語る上で欠かせないものであり、2007年には1981年当時そのままのゴールドライタンとライタン軍団が復刻されている。
そして、2006年に発売された「超合金魂 GX-32G ゴールドライタン」は、大人向けブランド「超合金魂」にふさわしい、当時の技術ではなしえなかった、よりアニメに近いスタイリングを実現、当時は技術的にもコスト的にも難しかった腕の部分にも金メッキを施した“決定版”ともいえるアイテムとして製作された。高級路線も受け継ぎ、18金メッキを施し、クリスタルカットも継承することで非常にリッチな雰囲気を放つ商品となった。
そして今回、この2006年版ゴールドライタンが、「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」として販売されたのである。当時は18金メッキだったが、今回はさらに上のグレードである24金、10年前の「超合金魂 GX-32G ゴールドライタン」が6,300円だったのに対し、今回の「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は、定価12,960円(税込)とかなり高くなってしまったが、「24金メッキを施した玩具」というのは強いインパクトを与えるワードだ。
「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は強く“高級感”にフォーカスされた商品である。まず、“内箱”があるのだ。このうち箱は手触りの良い表面処理をされた紙に包まれた化粧箱となっており、蓋には金箔で型番が描かれている。
蓋を開けるとまるでビロード布に包まれたような商品が確認できる。この梱包用のパッケージは通常の樹脂製のパッケージの上に赤い粉末を塗布したものなのだが、他では見たことがなく、箱を開けたときに驚かされた。台座も上に布が張ってあり、金のボディを置くと良く映える。
この高級感をもたらす“演出”は2006年版から受け継がれているものだが、ビロード布風梱包材の部分は1981年版ですでに実現していた要素である(復刻版でも同じ梱包材が使われている)。歴史を受け継ぎ、発展させる、玩具でこういった取り組みをしているそのアイディアがとても楽しい。
そしてゴールドライタン本体である。今回は指紋などがつかないようわざわざ手袋を購入して(量販店のカメラコーナーで購入した作業用手袋)撮影に臨んだのだが、手に持つとずしりと重く、そして手の中で回すとクリスタルカットの表面がキラキラと輝く。手の中の光を見ているだけで言いようのない満足感がこみ上げる。
24金メッキ、と聞くとなおさらありがたみが増す。表面処理の複雑さが生む美しい輝きは、正直なところショーケースでもピンとこなかったのだが、実際に手にすると魅了される感覚がある。もちろん、本商品はメッキであり厳密的には金としての価値はないが、宝飾品を集める人の気持ちがわかった。金の輝きは人を強く魅了するのだ。
折りたたまれている手足を展開、シンプルだが魅力的な変形
いよいよロボット形態へ変形させていこう。変形システムは当時の超合金を踏襲たものとなっている。村上克司氏のデザインは玩具、ロボットアニメ、特撮の歴史において大きな影響を与えた。ゴールドライタンの手足がコンパクトに折りたたまれ、胴体に収納されるシステムを実現させたのは、村上氏のアイディアはもちろん、当時の製造技術の高さがあってのものだろう。「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」ではその技術がさらに洗練されている。
ゴールドライタンは、上下2つのカバーを開き、手・足・頭を引き出すことで変形する。手は手首も内部に折り曲げて内部に収納されており、これを引き出していく。写真では手首パーツを外しているが、これは前腕部に取り付ける「ディテールアップパーツ」を取り付けるためで、これをつけなければ余剰パーツなしの「完全変形」が可能である。
上半身の次は下半身だ。下部分のカバーを開け、足を引き出していく。お腹部分は内部を隠すためのシャッターがある。当時の玩具はここに玩具オリジナルのミサイル発射ギミックを搭載していた。「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は、内部にメカ風モールドも描かれており、制作者のこだわりが感じられる。
実際に触って気が付いたのだがこの足の収納ギミックは、1979年に発売された「超合金 ダルタニアス」のアトラウスの変形システム、足の収納ギミックを活用したものではないかと思う。ふくらはぎをがらんどうにして腿を収納させるシステムはその後も様々な変形メカで活用されている。
頭と手足を引き出し、蓋部分をきちんと閉じれば変形完了だ。シンプルだが、当時の子供に驚きをもたらした変形システムである。「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は変形後、ディテールアップパーツを使うことでアニメに近いスタイリングを実現している。手首、ふくらはぎにパーツをつけることで、ロボットとして説得力のある姿にすることができる。
「金ってスゴイ」、今まで感じたことのない、心を魅了する金の輝き
「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は、腕、足共にいくつも関節が仕込まれており、様々なポージングが楽しめる。特に足の付け根は足を広げたり、太ももが軸回転するため、1981年の超合金を大きく超える可動域を獲得している。
しかし、やはり昨今のアクションフィギュアと比べるとポーズは限定される。箱に手足がついたその姿はとてもシンプルで、ある意味「昔のロボット像」そのままで、現在の線の多いロボットを見慣れた若いユーザーにはその魅力は伝わりにくいかもしれない。
アニメに近いスタイリングのゴールドライタンは、当時のアニメの記憶を刺激する。巨大化して戦っているライタンの姿はもちろんのこと、小さな姿で主人公の友達として日常を暮らしているライタンの姿も思い出す。超合金の大きさは、自分が主人公の少年になってライタンと触れあっているような想像にもつながり、懐かしい気持ちにさせてくれる。ゴールドライタンは戦いだけでなく、親しみやすさも感じさせてくれたロボットなのだ。商品にその想いを込めるのも楽しいだろう。
そして、今回実際手に持って気が付いたのだが、ライター形態同様、このピカピカの24金メッキは、デザインやプレイバリューを超えた魅力がある。これはガンダムやバルキリーのアクションフィギュアにはない楽しみ方と言えるかもしれない。とにかく、このキラキラがカッコイイのだ。筆者はZガンダムの百式の金色の輝きにあまり魅力を感じていなかったのだが、ゴールドライタンを手にした今なら全く違う。“金色”というのは、それだけでものすごい魅力なのだ。
手の中で光を反射する輝き。細かい凹凸のあるクリスタルカットはその輝きをさらに増幅させる。金色というのはそれだけで人を魅了する魅力を持っている、「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は、筆者に金の魅力を実感させてくれた。「ギミックやプレイバリューもキャラクター性もない、想像力を刺激しない宝飾品に何の魅力があるのか」という筆者の固定概念を揺るがせた商品だ。
「指輪物語」に出てくるゴラム(ゴクリ)が手の中の「いとしいしと(指輪)」をうっとりと眺めているのは、こういう気分なのかもしれない。「金ってスゴイ」と実感させてくれる体験だった。
そしてやはり、それがロボット玩具であるのが楽しい。アクセサリーなどの宝飾品の魅力を持ちながら、ロボットの活躍を想像させるアイテム、この面白い企画は、やはり唯一無二なのではないだろうか。「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」を触ることで、改めて1981年に「超合金 ゴールドライタン」が大ヒットした理由を実感できたと思う。
「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」は、最大のターゲットは1981年当時の超合金を手にした、もしくは筆者のように憧れを持っていたユーザーだ。当時の憧れをもう1度手にしたい、そういう想いをかなえてくれる商品である。
しかし、当時の思い出のない若いユーザー、女性のユーザーも注目して欲しい。この独特の高級感、クリスタルカットが生む“魔力”をロボットに込めているその“融合”が素晴らしい。ロボット玩具にはこういう魅力の付加もできたのかと、驚かされ、自分の見聞が広くなる。筆者はこの商品で改めて宝飾品に魅力を感じる人の気持ちがわかった。筆者と同じように、全くロボットに興味がなかった人が、「超合金魂 ゴールドライタン 24金メッキ仕上げ」に触れることで、ロボット商品、アクションフィギュアの楽しさに目覚めてくれれば良いなと思う。
タツノコプロ