2018年6月6日 06:00
戦車(クルマ)に乗り込み、荒廃した近未来を舞台にモンスターを狩る――現代にこれほどまでに男臭く、女子受けのしないRPGも珍しいだろう。しかし、世紀末の世界観、戦車の改造、賞金首の討伐などなど、男なら心震える要素がふんだんに盛り込まれている作品、それが「メタルマックス」シリーズなのだ。
「メタルマックス」シリーズは1991年に1作目がファミリーコンピューターでリリースされ、その独特な世界観でコアなゲームファンを虜にした。シリーズを重ねてもゲームのコンセプトは変わらず、今でもファンから熱狂的な支持を受けるシリーズだ。
そして4月19日、ファン待望のシリーズ最新作「METAL MAX Xeno(メタルマックス ゼノ)」が前作から約5年ぶりに、長き沈黙を破って発売された。発売から僅か数日で売り切れ報告が相次ぐ好調な勢いを見せた。
本作が今までのシリーズと決定的に違う点は、フィールドの好きなところから自由に冒険するということができなくなり、シナリオに沿って進んでいく形式となっているところだ。
これは意見が分かれるかもしれないが、自由度の高さは確かにシリーズのウリのポイントではあったが、自由ゆえにゲーム自体の敷居が上がるのも確かだ。本作はシリーズの雰囲気を壊さず、ライト層や新規でも楽しめる新生メタルマックスなのだ。原点からの新たな挑戦……これがナンバリングではない理由である。世界観やストーリー、そしてゲームシステムなど、プレイして感じた本作の魅力をここから語っていきたいと思う。
人類の存亡を賭けた、脅威のモンスターとの戦い
人類が作り出したマザーコンピューター「NOA」。NOAの反乱によって脅威のモンスター“SoNs(サンズ)”が生み出された。人類根絶を狙うモンスター軍団に、人々は成す術なく蹂躙されていった。自然災害にも匹敵するモンスターの大破壊によって死の星になった荒廃した東京「デストキオ」が本作の舞台。人類とモンスターの生き残りを賭けた戦いを描く作品なのだ。
主人公は、僅かな生き残りである最後のモンスター・ハンター「タリス」。仲間や母親を皆殺しにされた過去をもち、モンスターへの復讐を誓っている。モンスターを駆逐しながら放浪するタリスが、大破壊の生き残りが住む施設「アイアンベース」に辿り着くところから物語りは始まる。アイアンベースで補給を受ける替わりに、デストキオ中の生存者の確認調査を頼まれることとなる。
アイアンベースを拠点に戦車で広大な砂漠のフィールドを進んでいき、指定されたポイントで生存者の調査をしていくのがゲームの基本となる。フィールド中のあちこちを駆け回るのだが、移動の面倒さを感じさせない快適な作りは目を見張るものがある。フィールドにはベスターポートと呼ばれる転送ポイントがあり、1度そこに訪れればその場所に一瞬でワープすることができる。
フィールドではシンボルエンカウント形式で、モンスターに一定の距離まで近づくと戦闘に突入する。戦車に搭乗している状態なら、砲撃でフィールド上のモンスターへ戦闘開始前に先制攻撃を仕掛けることができる。プレイしているとわかるのだが、このシステムのおかげでゲームのテンポがかなり良い。弱いザコ敵なら先制の砲撃1発で倒すのも可能で、戦闘に突入する前にフィールド上でサクッと勝利することができるのだ。もちろん通常の戦闘同様、経験値やドロップアイテムなどもしっかり手に入るので、レべリングもサクサクだ。
先制攻撃で仕留められなくても開幕から大きなダメージを与えられ、有利な状態で戦闘に入ることができる。戦闘はオーソドックスなコマンドバトル。戦車に積んだ武装や、キャラクター固有の特技を駆使して戦っていく。戦車には攻撃から車体を守る「ETシールド」が搭載されており、ゲージが無くなるまではバリアで本体を守ってくれる。本体にダメージを受けすぎると故障して攻撃ができなくなることもあるので、ボス戦などの長期戦ではこのシールドの耐久度が戦局を左右する。弾薬やシールドの耐久度が無くなったらアイアンベースに戻れば回復できる。
フィールドではもちろんのこと、戦闘中でも戦車には自由に乗り降りが可能。一部キャラクターによっては戦車よりも生身で戦う方が真価を発揮できる場合もあるが、基本的にはモンスターは戦車があって初めて同等に戦える相手なので、戦闘中に破壊されて強制的に降ろされない限りは戦車から降りて戦うメリットはあまりない。
朽ちた施設の中を探索するリメインズ(ダンジョン)パートもあり、ここでは強制的に戦車から降りて生身で進んでいかなければならない場面もある。リメインズではフィールドとは違い、ランダムエンカウント制となっている。モンスターの姿が表示されておらず突然エンカウントするので戦闘を避けて進むことができない。
生身で戦うと、モンスターの恐ろしさを嫌というほど思い知らされる。戦車に乗っていればザコ中のザコである巨大アリですら、人間で戦うと初めは中々に歯ごたえがある。強敵も容赦なく出現するので、戦況を見極めて戦闘から逃走することも重要な戦術になる。
戦車が無い状態でどうしても強敵と戦わなければならない場面に遭遇したら、タリスの切り札「復讐の左手」を使うしかない。タリスの左手は機械の義手で、それは未知のテクノロジーが使用された兵器なのだ。変形した左手から強力な電撃を発することができる。戦車の主砲にも匹敵する威力で、生身の状態では間違いなく最大の火力である。
しかしこの攻撃には欠点もある。1度使うたびに麻痺カウンターが1つ溜まり、3つ溜まってしまうと戦闘不能になってしまう、いわば諸刃の剣なのだ。なので無闇な使用は控えるのがいいだろう。戦車の回復同様、アイアンベースに戻ることで溜まってしまった麻痺カウンターはリセットされる。
「メタルマックス」シリーズの伝統要素である「ウォンテッドモンスター」ももちろん登場する。ウォンテッドモンスターとは、その名の通り懸賞金を掛けられた賞金首である。雰囲気でお察しだろうが、通常モンスターとは比べ物にならい強さを誇っている。
ウォンテッドとの戦いはストーリーのイベントで必ず戦う場合と、フィールド上に存在していて自分の好きなタイミングで勝負を挑める場合の2パターンがある。基本的には後者のウォンテッドの方が強い場合が多く、初めて発見したタイミングでは勝つのは難しいだろう。
始めのうちはウォンテッドは無視してストーリーを進め、ある程度キャラクターや戦車が強化されてから挑むのをオススメする。ウォンテッドを撃破すればしっかり賞金をもらうことができる。
キャラクターの育成、戦車の改造、アイテム収集など、やり込み要素が満載!
キャラクターを成長させる自由度の高さも本作の面白さだ。さまざまな条件を課されるチャレンジをクリアするとスゴ腕ポイントが手に入る。ポイントを使って能力を強化させることができる。強化できるのはパラメーターをはじめ、人間時や戦車搭載時の能力アップやアイテムドロップ率アップなど、幅広い強化項目がある。キャラクターの強味をとことん強化させるか、弱い部分を強化して補うか、成長方針はプレーヤー次第だ。
本作にはキャラクターごとに職業がある。戦車での戦いで真価を発揮するタイプや、逆に人間状態が強いタイプ、さらには回復向きのサポートタイプなど職業ごとに特徴は様々。職業固有の特技は修得すれば別の職業に転職してもフリースロットにセットして使用できる。例えばメディックがハンターに転職した場合、回復特技を継承してハンターになれるのだ。いろいろな職業を経験しておけばおくほどメリットは多く、万能なキャラクターを作ることができる。
強くなるのはキャラクターだけじゃない。改造を施して自分だけの最強の戦車を作るのもこのゲームの醍醐味である。アイアンベースでは戦車のパーツの生産や、改造による能力の底上げなどができる。
パーツの生産は、敵を倒したときに拾える素材を使って新しい武器やエンジンを作って戦車へ積み込むことができる。そして冒険で最も重要なのが戦車の改造だ。改造はシャシー(本体)・エンジン・武器の大きく分けて3つの強化ができる。
初めに最優先で強化させたいにはエンジンだ。エンジンの馬力によって、シャシーや武装が積める最大積載量が決まってくる。武器やシャシーの装甲を強化するとそれだけ重さも当然増してくる。馬力が低いとせっかく強化しても使うことができないので、エンジンのパワーは最も重要になってくるのだ。
そして戦車の性能とは関係は無いが、戦車のカラーリングを自由に変更するのも可能。パーツごとに色を細かく設定できるのもエディット好きにはたまらない。自分のオリジナルカラーの戦車で冒険するのもまた1つの楽しみである。
戦車を改造すれば強さは格段に上がる。今まで勝てなかったウォンテッドに改造してから挑んで撃破できたときの優越感と達成感は格別だ。
本作はハックアンドスラッシュ要素も強く、敵を倒して強力な武器や素材を集めるのも夢中になれる要素なのだ。フィールド中のいたるところに宝箱やお宝が埋まっているポイントもあり、それらを回収してどんどん強くなっていく過程は中毒性が高い。
アイテムのほかにも、フィールドやリメインズには大破壊前の遺産である書物や資料などが散りばめられている。集めることでテクノロジーレベルが上がり様々な恩恵を受けることができる。ちなみに先で書いた生産や改造もテクノロジーレベルを一定上げることで開放される要素なのだ。
強敵と渡り歩くためにぜひとも欲しい究極の兵器も存在する。大破壊を引き起こした電子頭脳NOAのテクノロジーをリバースエンジニアリングした人類文明最後の遺産を使った超兵器、それがネフィリム・テクノロジー装備……通称「ネフテク装備」と呼ばれるものだ。強力なネフテク装備だが手に入れるには条件がある。レーダーを頼りに「ネフィリム・ウォール」という遺産を守護するボスモンスターを見つけ出して撃破しなければならない。
ネフィリム・ウォールから手に入る原型パーツを元に強力な兵器を作れるのだ。そしてネフテク装備をさらに強く強化するには「ネフテク変異材」が必要になる。この素材も先ほど同様にレーダーで見つけ出す。手に入れる条件は大変だが、その分性能は通常の装備とは桁違いの強さだ。本作はやり込めばやり込むほど自身が強くなっていくのが肌で感じられ、プレイの爽快感を深く味わえる。
筆者が最後にプレイした「メタルマックス」シリーズの作品がニンテンドーDSの「メタルマックス3」なので、今回プレイしたのは筆者にとって約8年ぶりの「メタルマックス」だった。過去作に比べて確かに自由度は減ってしまったが、その分遊びやすさを随所に感じ取れる程とても丁寧に作られている。グラフィックスだけで中身がスカスカのゲームとは違い、とにかく遊べる要素が満載で、中身で勝負している作品だとヒシヒシと感じた。
従来の作品よりもしっかりとしたストーリー展開もあり、物語に引き込む力も強い。主人公・タリスの復讐劇の結末は……人類は滅びの道から再生できるのか? 先の気になる展開が止まらないというRPG最重要ポイントをしっかり抑えている作品だ。
ストーリー以外の見所といえば、CERO C(15歳以上対象)とは思えない過激な表現にも驚かされた。人類が絶滅危惧種になっている世界だからというのもあるが、RPGのヒロインがここまで子作りとセックスの話をするゲームも他にないだろう。いろんな意味で目が離せない作品である。
本作は周回プレイを前提として作られており、エンディングを迎えてからがやり込みの本番である。1周目では登場しなかったモンスターや未知の施設なども追加される。2周目以降はストーリーやイベントなども最小限なので、ダレずに新鮮な気持ちで遊ぶことができる。
人を選ぶ作風ではあるが、入り口さえ越えてしまえば誰でも楽しめる良作RPGだと筆者は感じた。やり込みRPGを欲している人はぜひこの荒廃した世界に飛び込んでもらいたい。
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