2018年3月23日 07:00
スタジオジブリの製作協力で話題となったレベルファイブ開発のRPG「二ノ国 漆黒の魔導士」のリリースから8年。シリーズ最新作「二ノ国II レヴァナントキングダム」が3月23日に発売された。剣と魔法のファンタジーという近年ではめずらしい王道RPGだ。しかし、ただの王道RPGにはとどまらない。王国を発展させていく国作り要素「キングダムモード」や、軍団同士がぶつかり合う「進軍バトル」など、王道の中にも製作側の挑戦ともいえる本作独自の面白さもふんだんに盛り込まれている。
近年では「妖怪ウォッチ」や「イナズマイレブン」などの“子供をターゲットとしたソフトが中心”というイメージのレベルファイブだが、過去にはゲームファンが唸る名作RPGの数々を世に送り出している。本作を一足先にプレイして感じたのは「ダーク」シリーズや「ローグギャラクシー」などの筆者が熱中していたあの頃の“昔のレベルファイブ”が帰ってきたという印象を強く受けた。どの年齢層でも楽しめる良い意味でアクを抑えたストーリーと世界観は、プレイしていて“久々にRPGを遊んでいる”という感覚を味わえた。
シリーズ物というと前作をプレイしていないとなかなか手を出しづらいと思うかもしれないが、前作からのストーリーの繋がりはなく、本作からでも十二分に楽しめる作りとなっている。最近RPGらしいRPGをプレイしていない人へ特にオススメしたい。広大な世界を冒険するワクワク感や、敵との戦闘の面白さなど、RPGの根底にある楽しさを再確認できる作品だ。
開発の熱意が伝わる、アクションゲーム顔負けの爽快バトル
タイトルでありゲームの舞台となる二ノ国はまさにジブリ作品の様な世界観。ネコ耳を付けたニャウ族やネズミのような姿をしているマーウ族など、人間以外の様々な種族も住んでいるファンタジーな世界。
この物語の主人公は、父を亡くし若くしてゴロネール王国の国王に即位する少年「エバン」。エバンは同国の大臣である「チューダイン」の起こしたクーデターにより、国を追われる身となってしまうのだ。
ゲームをスタートすると、待っていたのはプロローグから意表を突く展開だった。高層ビルが建ち並ぶ現代、一ノ国と呼ばれる地上世界から物語は始まる。開幕から都市をめがけて飛んでくるミサイル。一ノ国の大統領「ロウラン」を巻き込み、そのミサイルは1つの街を消滅させた。意識を失う瞬間、ロウランの身体を光が包み、何処へとワープさせる。
ロウランが飛ばされた先はエバンの国、ゴロネール王国だった。一ノ国では白髪交じりの初老であったロウランが、二ノ国ではどういうことか若々しい青年の姿に変わっていた。そしてその頃、城ではクーデターの真っ只中。チューダインの配下に命を狙われていたエバンを救い、2人はゴロネール城から脱出する。争いが続く二ノ国――その歴史を変えるべく、エバンは新たなる王国を建国。そして自らの手で二ノ国を統一し、世界を変えることを決意する。本作は、全てを失った元国王の成長と、世界の革命を描いた物語である。
ここからは、プレイした中で筆者が1番面白さを感じた戦闘について語っていこう。本作はキャラクターを自由に動かして戦うアクションタイプの戦闘システム。筆者を唸らせたのはそのアクション性の高さだ。RPGでアクションタイプの戦闘というと、どうしても大味なものが多く、ボタン連打くらいしかやることがない作品もあったりする。個人的にはそのような単調で作業感の強い戦闘は苦手であり、そんな甘い作りのアクションならばいっそうのことコマンドバトルにしてくれと思ってしまうほどだ。
しかし、本作のアクション部分は“RPGの戦闘なのだから大味なのも大目に見てくれ”というような妥協と甘えが一切なかった。接近武器と遠距離武器を状況に応じて使い分けて戦う戦略性。接近武器には隙の少ない弱攻撃と、大振りだが威力の高い強攻撃の2種類があり、それらの組み合わせで多彩なコンボを繰り出すこともできる。
その他にもジャンプやガード、緊急回避、さらにゲージを溜めて発動できる強力なスキル(技)など、生粋のアクションゲームさながらの作り込みだ。戦闘の楽しさを追求して作られているのがプレイしていてヒシヒシと感じた。
エバンたちが物語中で出会う小さな妖精「フニャ」のサポート要素も戦闘を大いに盛り上げる。バトル中、フニャはオートで一緒に戦ってくれる。威力は低いながらチビチビと敵にダメージを与えたり、パーティの能力やスキルの強化など補助のサポートなどもしてくれる。フニャに近づいて指示を出せば、強力な「号令スキル」も発動できる。数ある号令スキルの中で筆者が気に入ったのは「どっかんキャノン」だ。フニャが大砲を召喚してズドンと砲撃をお見舞いし、まとめて敵を蹴散らす痛快なスキルだ。
フニャごとにそれぞれ性格の概念が設定されているのも面白い。前線にあまり出ない「こわがり」タイプや、逆にガンガン攻め込む「めだちたがり」タイプなど、フニャごとの個性があって愛着が湧いてくる。戦闘の要ともいえるフニャはアイテムの合成で生み出したり、道中に隠れている「フニャ地蔵」にお供え物をすることで、火や風など様々な属性のフニャを仲間にできる。数を増やせばどんどん戦いが有利になっていくのだ。
戦闘で1番手に汗握ったのは、暴走した守護神「ウルデラコン」との戦いだ。キマイラを彷彿とさせる禍々しさ、そしてなにより驚いたのが画面の中に収まりきらないほどの圧巻のスケールの巨大さだ。見た目からの予想を裏切らず、強さもこれまでのボスとは段違いであった。広範囲に放つファイアブレスや、空から隕石の雨を降らせてくるなど、回避が難しいうえに食らうとHPの5割をも持っていかれる高火力の攻撃で攻めてくるのだ。
守護神とのバトルは、何も考えずただひたすらに叩いているだけでは勝つことはできない。ボスの光っている部位が弱点になっており、そこを狙って攻撃しなければまともにダメージを与えられない。ウルデラコンの弱点は前足。わかりやすい場所ではあるのだが、このボスは基本的には溶岩の中に半身が浸かっていて弱点が隠れている。この状態では手が出せず防戦一方になってしまう。
そんな状況の突破口となるのが「守護フニャ」だ。守護フニャは守護神とのバトル限定で助けてくれる通常よりもはるかに強力なフニャなのだ。号令スキルで敵の攻撃を無力化するバリアを展開させれば、食らうと痛い攻撃もバリア内なら一切ダメージを受けずにやり過ごすことができる。ボスの攻撃を耐え忍んでいるとやがて陸地に上がってきて、ボスを叩くチャンスが生まれる。ギミックを使って戦うという巨大ボスならではの面白さを感じた。
王国を発展させるシミュレーションパートも本格的!
本作最大のやり込み要素といえるキングダムモードにも触れていこう。このモードでは、エバンが作る小さな国「エスタバニア」を発展させて一大王国を築き上げるのが目的となる。
国作りの大まかな流れとしては、武器工房や兵舎など様々な施設を建設していく。そして国民に役割を与えて施設をレベルアップさせながら国を繁栄させていくというもの。
国が徐々に大きくなっていく過程は見ているだけで楽しいが、キングダムモードはただ国を大きくするだけのモードではない。施設を充実させていくことにより、本編の冒険で様々な恩恵を受けられるのも熱中してしまうポイントだ。
例えば魔法研究所という施設を作ると、そこではキャラクターに魔法を覚えさせることができる。施設のレベルを上げていけば修得できる幅も増え、どんどん強力な魔法を身につけられる――といったように、発展させていくことで得られるメリットが多く、筆者は実は本編そっちのけでキングダムモードにハマってしまった。
エスタバニアを大きくしていくのに必要なのは資金は当然ながら、最も重要なのは“人”である。お金を使って施設を建設しようと、そこで働く人が居ないことには施設は機能しないのである。資金は時間の経過で自然と貯まっていくのだが人はそうはいかない。世界中を回り、人材をスカウトしていかなければならないのだ。冒険で訪れる街の住人の中にはサブクエストを受注できる人も存在し、クエストを達成することでエスタバニアの国民になってくれるのだ。
サブクエストは指定のモンスターの撃破やアイテムを持ってくるなど様々で、達成させるにはいろいろな場所をあちこち回らなければならない。それだけ聞くと面倒くさそうに感じるかもしれないが、本作はそんなところもしっかりカバーされている。マップの随所にワープポイントが存在し、回収することでファストトラベルのように瞬時に移動することができるのだ。ワープポイントの回収を怠らなければ、ストレス無しでサクサク遊べる親切設計だ。
王国繋がりの話で、兵舎という施設を作ることで国を守る部隊を強化することができる。ここで編成・強化した部隊は「進軍バトル」という軍団VS軍団の戦いで活躍する。通常の戦闘とは異なる進軍バトルではエバンが直接戦うのではなく、軍団を指揮して敵の部隊を蹴散らしていく、シミュレーション要素を含んだバトルだ。
ワールドマップに点在する軍旗を調べることで進軍バトルが発生する。自軍の拠点を守りながら敵の部隊を叩き、敵軍力を0にすれば勝利となる。この戦いでプレーヤーが行なうことは軍団の移動とスキル発動の指示出し程度のシンプルなもの。軍団同士が接触することでデフォルメされたチビキャラたちがオートで戦ってくれるのだ。
兵種の概念と相性も存在する。剣はハンマーに強く、ハンマーは槍に強く、そして槍は剣に強いという三すくみで有利不利が決まってくる。兵種の種類が多ければ多いほど当然戦闘が有利になってくる。進軍バトルで戦わせるキャラクターも先ほどと同じくスカウトで集めなくてはならないので、人材を確保するサブクエストはかなり重要になってくる。進軍バトルに勝利すれば様々な報酬が手に入るので、部隊の強化は欠かせない。
今回「二ノ国II レヴァナントキングダム」を触ってみて、プレイ中終始感じていたことは、とにかく丁寧に作られていることだ。遊びやすい設計が細かな所まで行き届いていて、プレイしていて不満点や惜しい部分などはほぼ0に近かった。
そしてさすがはレベルファイブと言いたいポイントがもう1つ。それは声優のキャスティングのハマリ具合だ。本作のメインキャラクターたちを演じるのは本業の声優ではなく人気俳優陣なのだ。人気の芸能人を起用したキャスティングのゲームは過去にもプレイしてきて、これはさすがにちょっと……というような、物語に入り込めない程のミスキャストの作品も見てきた。
そういう前例もあり、個人的な意見としては俳優を起用するというのはあまり良い印象を持っていないというのが本音だった。本作も正直をいうと少し警戒気味にプレイを始めたのだが、それはまさに杞憂だった。ゲーム冒頭のエバンとロウランの会話シーンを見た瞬間、“キャラクターが生きている”と感じたのだ。中でも空賊のリーダー「ガットー」を演じる吉田鋼太郎氏は高い演技力と渋いボイスでとにかくカッコよく、本業の声優と遜色ない存在感を放っている。人気俳優陣による魂のこもった熱演は5thトレーラーで確認できるので、気になった人はチェックして欲しい。
現在、物語の途中でこの記事を書いているのだが、エバンがどのような王に成長していくのか、先の展開が気になる所である。王道RPGの面白さに浸りたい人には是非触れて欲しい作品だ。