2018年3月21日 10:00
昨今のゲームシーンは、いわゆるバトルロイヤルゲームが盛況である。説明不要の王者「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」を筆頭に、日本語版も配信された「FORTNITE」もアツい。この波はモバイルにも押し寄せており、iPhone/Android向けに配信されている「荒野行動」は全世界でのユーザー登録数が2億人を突破するなど大きなムーブメントになっている。
というわけで、“今、バトルロイヤルブームがキテいる”のだ。今回の記事ではそんなバトルロイヤルというジャンルに参戦する新たな挑戦者「Darwin Project」のレビューをお届けする。
雪深き山奥がバトルロイヤルの舞台。生き残りを賭けた極限バトルの開幕だ!
「Darwin Project」はカナダの新進気鋭のデベロッパーScavengers Studioが開発中のバトルロイヤルゲーム。米国時間の3月9日にSteamのアーリーアクセス版と、Xboxのゲームプレビュー版の配信が開始された。
ゲーム内容は7つのエリアに区切られた雪山を舞台に10人の参加者が繰り広げるバトルロイヤルだ。目的はただ1つ、他の参加者を蹴落として最後の1人まで生き残ることである。
「この説明だけでは他のバトルロイヤルゲームとの違いがわからない」という読者の声が聞こえてきそうだが、本作ならではのユニークなシステムを紹介していきたい。キーワードは「クラフト」、「戦闘」、そして「ディレクター」だ。順番に紹介していこう。
必要なアイテムは自分で作れ! 最重要要素「クラフト」
定番のバトルロイヤルゲームでは武器や防具がフィールドに落ちており、これらを拾い集めつつ、他のプレーヤーが落としたアイテムを使ってさらにアイテム有利な状況を作り……というのが基本的な流れだ。
本作が大きく異なるのは、基本的に装備やアイテムは素材を集めてクラフトしていくことで入手する点だ。ゲームスタート時に武器としてキャラクターは斧と弓を所持しているのだが、矢や各種防具は基本的にクラフトで入手する必要がある。ちなみに参加者の武器は弓と斧だけである。
クラフトというと「ややこしいレシピや定石を覚えないといけないんでしょ?」と思われるかもしれない。しかし本作はかなりシンプルな部類だ。制作できるアイテムの数はそれほど多くないし、なんといっても素材は「木材」、「革」、「電気」の3種類しかない。
さらに本作は作り方を知っていればどんなアイテムでも制作できるわけではない。事前にどのアイテムをクラフトするかをカスタマイズする必要があるのだ。ここが駆け引きのポイントでもある。
例えば本作の重要なアイテムに「矢」がある。遠距離武器は弓のみなのでサバイバルを生き残るのは非常に重要なアイテムだ。矢もクラフトで制作するのだが、いくつか種類がある。
「ARROW」は標準的な性能でサバイバル開始時から5本持って参戦することができる。「FIRE ARROW」はより多くのダメージを与えることができるが、矢のスピード、射程距離は短く、サバイバル開始時は1本も持っていない。矢のカテゴリーには1種類しか設定できないので、どちらを取るか、この時点から駆け引きが始まっている。
矢以外にもトラップや防具、電気を利用した特殊なガジェット的な装備などカスタマイズの幅は広い。自分なりのビルドを考えて戦場に降り立ちたい。
スピード感のある試合展開!ライバルの居る位置がわかりやすい!
バトルロイヤルでは立ち回りが重要だ。銃声や足音、環境音などを元に敵を索敵し、自分は足音を消したり、サプレッサーをつけて銃声を抑え位置を隠そうとする。だが本作のアプローチはかなり異なる。というかバトルロイヤルの当たり前を覆すシステムが複数ある。
というのも、とにかく他の参加者を発見しやすくなっているのだ。例えばある参加者が木を切り倒して木材を得ると、そこには木を切った跡が残る。この跡を調べると木を切った参加者の距離と姿を確認することができるのだ。
このような要素は他にもある。雪が積もっている部分(マップのほとんどの部分)を歩けば足跡は残るし、他の参加者が近くにいると画面上に赤いエフェクトが表示される。クラフトで「RADAR」を制作すると付近の参加者をサーチできるし、極めつけはフィールド上に点在するいくつかの建物には他のプレーヤーがどこにいるかを表示するレーダーがあったりと、他のバトルロイヤルゲームであればチート級に強力なシステムが満載なのだ。
これらのシステムのお陰で必然的にゲームのテンポは早くなる。元々の参加人数が少ないのと、マップが狭いことも重なり、最長でも15分程度で決着するようになる。
神の手でバトルロイヤルに介入!最大の特徴ディレクターシステム!
チートと言えば本作ならではのユニークな要素「ディレクター」システムについても紹介する必要があるだろう。
本作にはプレーヤーの他にディレクターとして試合に参加することができる。このディレクターは熾烈を極めるバトルロイヤルにまるで神のような能力を使い、参加者達を翻弄することが……いや、試合にスパイスを加えることができる。
本作では時間経過に応じてエリアが閉鎖されていくのだが、直近で閉鎖されるエリアを指定したり、特定のポイントに貴重なリソースである電気を出現させることができる。こうすることで参加者全体の動きをコントロールすることができる。
ほかにも特定の参加者を贔屓して体力を回復させたり、逆に賞金首にして他の参加者から狙われやすくすることもできる。さらに強烈なところでは1つのエリア全体に影響がある核爆弾を投下したりと、ディレクターの選択1つで試合の展開が大きく変化する。
ただ、気になる点もある。ある試合では筆者を含めてラスト2人になった。恐らくプレーヤースキル的には相手の方が上で、筆者の体力は残り少ない。この試合は負けたな、と思いつつ対峙していると、瀕死の筆者をディレクターが回復してくれたのだ。ありがたいことなのだが、このシチュエーションで勝ったとしても「自分の実力で勝てたわけではない」し、どこかモヤッとしてしまうのだ。特定の参加者を贔屓することで、はたして試合は盛り上がるのだろうか。
またチーミングの懸念もある。チーミングとは本来は敵対すべき他の仲間と共に同じルームに参加して、協力してプレイを行なう悪質なプレイのことだ。現状のプレイ人数とマッチングまでの時間を考えると、同タイミングにゲーム開始ボタンを押せば同じ試合に参加することは難しくはないだろう。そのリスク以上にディレクターシステムがゲームを面白くしているかという疑問は残る。
と、偉そうに他のディレクターのことを書いているが、筆者もディレクターとして何度か参加したことがある。“ディレクターの役割は試合を盛り上げることだろう”と考えながらプレイしてみたが、何を持って盛り上がる試合なのか、何をすれば試合が盛り上がるのか、と考えるのはサバイバルの参加者として参加するより難しく、面白みを感じにくい部分だった。
実況配信などを行なったり、仲間内での試合ではまた展開が異なるかもしれないが、個人的には野良試合ではディレクターとして参加するのも、参加されるのも楽しむためにはハードルが高いように感じた。
「ずばりこのゲームは買いか?」と言われると筆者は「買い」と答える。確かに同ジャンルのゲームは多数ある。だがここまで紹介したようなユニークな要素があるため、他のバトルロイヤルゲームとは異なったプレイフィールを感じることができるからだ。
最初にも述べた通り、本作はまだ開発途中の段階で、今後もゲームバランス全体やディレクターシステムにも調整を加えていくとのことである。ディレクターシステムがもっと良い形にブラッシュアップされれば、競争が激しいバトルロイヤルジャンルの中でも唯一無二のポジションを築くことができるだろう。
というわけで筆者は本作の今後の進化に期待しつつ、また雪山でのバトルロイヤルに参加してくることにする。試合を盛り上げてくれるディレクターに出会えることを祈って。