「二ノ国II レヴァナントキングダム」インプレッション

二ノ国II レヴァナントキングダム

アニメの美しさと柔らかさ、楽曲の暖かさと豊かさ、確かなRPGの遊びごたえが融合している1本

ジャンル:
  • ファンタジーRPG
発売元:
  • レベルファイブ
開発元:
  • レベルファイブ
プラットフォーム:
  • PS4
  • Windows PC
価格:
10,000円(税別/COMPLETE EDITION版)
 
8,000円(税別)
 
発売日:
2018年3月23日

 世界中のゲームファンから日本のゲームの中でも優れたものが高く評価されることがあるが、レベルファイブが手がける「二ノ国」もまたそのひとつだ。

 RPGをはじめ、数多くのゲーム制作を手がけるレベルファイブ。スタジオジブリ作品にて原画を担当したアニメーターの百瀬義行氏。ジブリ作品をはじめ多数の映画音楽を手がける作曲家の久石譲氏。

 この組み合わせから生まれた「二ノ国」は、“暖かさと柔らかさのあるアニメーションと遊びごたえのあるRPG”という、まさに日本ならではな魅力を強く持つ作品となり、世界中から高く評価された。

 そんな前作に引き続いて、このスタッフ陣で生み出された最新作「二ノ国II レヴァナントキングダム(以下、『二ノ国II』)」が、プレイステーション 4/PC用タイトルとして3月23日に発売される。

 発売に先駆けて、実際にプレイをさせて頂いたので、そこで得たファーストインプレッションをお伝えしていこう。

 なお、プレイをしたのは冒頭の怒濤のストーリー展開が過ぎ、仲間も加わって、本作のいろいろな要素を自由に触れるようになっていく、第3章と第4章だ。

【ストーリー】

ある日 少年は王様になった……

陰謀により、国を追われた幼き王「エバン」

大切な存在との別れを経て、エバンは自らの王国を作る事を決意する。

これは、少年が偉大な王となり、巨悪を討つまでを記した物語である。

細部に至るまで描かれているグラフィックスと、久石譲氏の柔らかな楽曲が、新しい感覚を生み出している

 「二ノ国II」は、クーデターにより国を追われた幼き王である主人公「エバン」が、仲間と出会い、自ら理想とする国を作っていき、その道のりの果てに大きな悪を討ち果たすという、文字通りの……そして2つの意味でも“王道を行くファンタジーRPG”だ。

 プレイして感じた「二ノ国II」の最大の魅力を、あえて先に書いてしまうが、それは“あらゆる要素が丁寧にハイクオリティに作り込まれていること”だ。魅力をひとつやふたつ上げるということでは収まらず、あれもこれもとピックアップするうちに、結局は“全ての要素がよくできている”という話になる。いわば、優等生的な作品と言っていいだろう。

 そのなかでもあえてピックアップすると、やはりキャラクターデザインとグラフィックスの魅力は大きい。

 主人公であるエバンは、パッと見ただけでも、育ちの良さや聡明さ、真っ直ぐな性格が伝わってくる少年だ。

 そんなエバンを支える仲間も、一ノ国(ニノ国とは異なる世界)では48歳で大国の大統領をしていたというが、ニノ国では20歳の若者となっている「ロウラン」、空賊のボスである「ガットー」、その娘として育てられた少女「シャーティー」、さらにはマスコットのような見た目ながらエバンが建国する国の守護神という「ポンゴ」といった、個性的なメンバーが支えている。

 彼らはあくまで今回プレイした第3章と第4章に登場している主要なパーティーメンバーであり、その後の物語にも、さらに多くの魅力的なキャラクターが登場する。

中心にいるのが若き王の主人公「エバン」。左は別の世界では大統領をしていたという青年の「ロウラン」、その右隣の少女が空賊の「シャーティー」、右は空賊のボスである「ガットー」。国を追われた幼い王と個性的な仲間が出会い、少しずつ物語が動いていく。王道のファンタジーRPGだ

 また、主要キャラクターだけでなく、プレイ中に登場するあらゆるキャラクターが個性的に描きわけられているのに驚かされた。今回のプレイでは「ゴールドパウンド」という国を訪れたのだが、そこにいる街の人々はみなそれぞれに異なる個性や特徴、そして表情や動きがあり、1人ひとりに存在感があった。背景の中の1人にすらも個性をしっかり与えるような注力で、それによって他のゲームでは感じられないライブ感(リアルというのとはまた違う、活き活きとしているような感触)を感じた瞬間すらあったほどだ。

 また、スクリーンショットをご覧頂くとすぐに理解してもらえると思うが、街の建物はもとより、飾りやちょっとしたオブジェに至るまで、本当に細かなところまで豊かに描かれている。「ゴールドパウンド」という国が特にそれがわかりやすい国だということもあるとは思うが、アニメテイストのグラフィックスにしっかりと馴染ませつつのライティング(光源)とシャドウ(影)、雑多な雰囲気を出すための物量、古びたものや汚れなどの素材感にもこだわりが感じられる。

 徹底して丁寧に作り込まれている街、妥協せず1人ひとりに個性をしっかりつけている人々。街の人に話しかけるだけでも、ゲームというよりアニメのワンシーンを見ているような、そんな境界線が曖昧になるような感覚を味わったのは初めてのことだった。アニメ的な手法とこだわりで細部まで作り込むことで、新しいゲーム体験の領域に達しているものがある。

主要なキャラクター以外でも、あらゆるキャラクターに個性があり表情がある。その積み重ねが、どこを見てもアニメのワンシーンのように思えるほど独特なライブ感のある世界を作り上げている
賭け事が盛んだという「ゴールドパウンド」の国。この国は特にわかりやすいが、街中は細部まで作り込まれ、雑多な雰囲気、きらびやかさに、生活感のある汚れや古びたマテリアルの質感など、こだわりの感じられる作り込みとなっている

 次にピックアップしたいのは、久石譲氏による楽曲の豊かさと暖かさだ。本作の楽曲もゲームである以上はゲームミュージックというジャンルにはなるのだが、おおよそ、ゲームミュージックという枠組みでは聴いたことのないテイストの楽曲が次々に耳に入ってくる。

 表現が難しいところだが、これは他のゲームミュージックとの優劣の話をしているのではなく、本作の楽曲が良い意味でゲームらしからぬものであり、どちらかというとやはりアニメ作品を思わせるものがあり、ひいてはそれが久石譲氏の曲が持つ色であるということになる。

 グラフィックスのテイストにこの楽曲の暖かさや豊かさがとても良くあっていて、もっと言えば“素晴らしく上手くハマっている”。眼で伝わってくるものだけでなく、耳に入ってくる楽曲の良さが絡み合って、ゲームとアニメの融合を感じさせる「二ノ国II」の独特な魅力を作り上げている。

アニメ作品のワンシーンにしか見えないが、いずれもゲーム中の場面。このクオリティの映像に、久石譲氏による楽曲がハマっていて、独特の魅力を作り上げている

アニメーションセンスと双璧に並ぶ“RPGとしての遊びごたえ”

 本作の魅力は見た目や雰囲気だけではなく、それらの良さと同じぐらいに並び立っているものがある。それは“RPGとしての遊びごたえ”だ。

 本作はフィールドマップではデフォルメされたエバンたちが移動していくスタイル。敵となるモンスターもマップ上を動きまわっていて、こちらを発見すると近寄ってきてぶつかると戦闘になる、いわゆる“シンボルエンカウント”方式だ。

 今回のプレイではフィールドマップは少しの範囲を歩き回っただけに過ぎないのだが、その少しのなかでも宝箱が置かれていて、そこに行くまでに見た目よりも回り道が必要になったり、目的地までのルートがほどよく苦労があるような上手い複雑さを持っていたりと、しっかり作り込まれているのが感じられた。

 一方で、訪れたことのある場所に行く時はいつでもテレポートができたりと、便利さもしっかり備えている。

フィールドマップではデフォルメされたエバンたちを操作。モンスターとはシンボルエンカウントで戦闘になる

 街や洞窟などの場所では、エバンたちもモンスターも全てが等身大で描かれる。モンスターに接近すると、画面切り替えが一切なくシームレスに戦闘に入っていくようになっているのがポイントで、戦闘が多いシチュエーションではよりテンポ良く、スピーディーにプレイが進むよう使い分けられているのが嬉しい。

街やダンジョンといった、いわゆるフィールドから中に入った場所では、全てが等身大のスケールで描かれている。戦闘も画面切り替えなしのシームレスだ

 戦闘はというと、攻撃と防御や回避を駆使してリアルタイムに戦うアクション操作。ダンジョン内などでアクションの戦闘がシームレスに始まり、そして終わるので、よりアクションゲームに近いプレイ感覚になっているのがポイントだ。

 戦闘に参加するメンバーは3人で、キャラクターごとに扱う武器や戦い方のスタイル、さらにスキルなどが異なる。エバンなら剣を扱う近接攻撃と杖、ロウランなら近接攻撃は剣だが遠距離攻撃には銃を扱うし、シャーティーなら槍と弓を使う。

 装備する武器も1人のキャラクターが複数の武器を装備して使い分けられるようになっているし、ボタン操作の順番や組み合わせで攻撃が変化していく。必殺技となるスキルもあり、バースト値が溜っているときにはその性能も変化する。

 戦い方次第で変わっていく要素をたくさん取り入れているのが印象的で、バトルに関しては「二ノ国II」が持つ見た目の柔らかな印象とは裏腹に、がっしりと遊びこめるものになっている。とはいえ、直感的な操作で楽しめるアクションバトルなので、複雑過ぎるというものではないのが嬉しいところ。

 また、バトルのフィールドには「フニャ」と呼ばれる精霊たちがたくさん登場し、彼らもまたエバンたちと共に戦ってくれる。フニャは攻撃だけでなく、エバンたちの能力を高めてくれたり、フニャを吸収してスキルに属性効果を加えたりと、強化にも協力してくれる。

 フニャが集まってサークルが表示されているところに行ってボタンを押せば、フニャたちの「号令スキル」が発動! どこからともなく大砲を出現させて強力な砲撃をお見舞いしたりなど、見た目にも面白いユニークなスキルを使ってくれる。

 こうした様々な立ち回りが重要になるバトルとなっている。

戦闘は攻撃や防御、回避を駆使するアクション

 もうひとつバトルについて特筆したいのは、やはり“動きの細やかさ”だ。エバンたちが攻撃しているときのモーションであったり、ジャンプしたり、魔法やスキルを放ったりなどいろいろな“動き”があるわけだが、そのいずれもがとても豊かで、見応えのあるものになっている。

 攻撃するとき、または敵から攻撃を受けてしまったときなど、その瞬間、瞬間で表情も豊かに変わっていくし、体の動かし方にしても単純な棒立ちのような瞬間はなくて、常に自然な“体の表情”がついている。それは敵についても同じで、常に他のゲームではなかなか見られないほどに、豊かで細かな動きのあるゲームに仕上がっている。それもまたアニメーション技術とこだわりのノウハウが感じられるものだ。

戦闘でも、エバンたちキャラクターやモンスターたちの動きの豊かさや細かさが光る。どの瞬間でもモーションのコマもものすごく多くて、動きに表情がある

RPG世界の中で、国をプレーヤー自身が作っていく「キングダムモード」、部隊で戦う「進軍バトル」

 エバンが目指す“国作り”は、ストラテジー的な要素、いわゆる建国シミュレーションゲーム的なもので、プレーヤー自身が楽しめるものになっている。

 「キングダムモード」という名前のモードになっていて、エバンの建国する国「エスタバニア」の領地内にいろいろな施設を建設し、そこで働いてもらう人材を割り当て、生産したり研究したりするものを指示し、それがエバンたちの新たな力になっていく。

 興味深いのは、これらの人材は、冒険中に訪れる他の国や場所にいるNPCのキャラクターだというところだ。他の国のトラブルを解決することでエバンたちのことが評判になり、エバンたちの作る国で暮らしたいという人が現われるようになったりなど、物語にリンクしたものになっている。

 そうした人を見つけ、ときにはその人からクエストを受け、それを達成することで「エスタバニア」に来てくれるようになることも。建設できる施設は50以上、働いてくれる人材は100人以上もいるということで、オマケ的な建国要素ではなく、がっしりRPG部分と融合した形での国育成が楽しめるようになっている。

エバンの建国する国「エスタバニア」にどう施設を作っていくかはプレーヤー次第。国で働いてもらう人は、他の国などに住む人をスカウトしてくるという、RPGシーンと融合した作りになっている

 国を育成するとなれば、その先には国の戦い、モンスターとの軍勢との戦いも想像するところ。こちらは「進軍バトル」という要素がある。

 「進軍バトル」はフィールドマップ上にバトルが発生するポイントがあり、そこではモンスターの軍勢と、エバンが率いる王国の部隊とがリアルタイムに激突する、通常のバトルとはまた異なるテイストの戦いが繰り広げられる。

 味方もモンスターも部隊単位で動いていき、それぞれの攻撃方法で戦い、相手の数を減らしていく。部隊には兵種があって相性もあるので、敵の部隊に有利に戦える部隊をぶつけるのがポイント。また、部隊長は特殊な攻撃の「戦術」を使えるので、効果的なタイミングで戦術を使うのも重要になる。

 「進軍バトル」は互いの兵士の数がまず勝敗のポイントになり、そのあたりは純然なシミュレーション的のものになっているのだが、リアルタイムに敵が侵攻しくるなか、兵種の相性や戦術といった要素でうまく有利に戦っていくという、プレーヤーの操作がものを言う要素もしっかりと押さえてある。他のバトルはまた違った遊びが込められているのが魅力だ。

フィールドマップのところどころにある「進軍バトル」のシンボル。エバンたちの国の部隊と、モンスターの軍がぶつかりあう、通常のバトルとはまた違う仕組みのバトルだ

細部にまでこだわり、柔らかな暖かさと遊びごたえを実現した「二ノ国II」

 プレイして感じらたのは、本作があらゆる面で非常に丁寧に作られているということだ。アニメーションの魅力を存分に持つグラフィックス、キャラクターたちデザインの魅力、モーションの豊かさと細かさ、それにピタッとハマっている楽曲の良さと、他のゲームでは見られない、ものすごく贅沢なものがそこにある。

 また、それと同時にRPGとしての魅力、バトルのシステム的な面白さに、国を作っていくという要素からの遊びのバリエーションなど、ゲームならではの手触りの魅力も、これまた独自のものがあり、そしてしっかりと、たっぷりと作られている。

 前作にもあった魅力は今作でさらに自然に、そしてハードウェアスペック的にも表現が豊かになり、ゲームとアニメが融合して新感覚をプレーヤーに与えるという境地にたどり着いている。

 少しだけ垣間見た物語の魅力にも触れるが、「二ノ国II」が持つ映像と楽曲、そしてゲームの魅力が持つ色は、とても暖かで柔らかで、あらゆる世代の人にオススメできるものだ。そこで描かれるテーマや物語もまたそれにマッチしたものであり、他のゲームではなかなか味わえない、まっすぐな暖かみを持っている。

 日本ならではのアニメーション技術の積み重ねとこだわり、そして、王道のRPGというゲームの魅力。それらがあってこそ生み出せる作品が「二ノ国」であり、最新作の今作はそれがさらに洗練されている。「細部にこそ神は宿る」という言葉の意味を感じることのできる素晴らしいクオリティの作品だ。

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