2018年3月19日 07:00
スクウェア・エニックスは、Nintendo Switch用ブロックメイクRPG「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」を3月1日に発売した。価格は4,800円(税別)。
「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」は、“あつめる”と“つくる”をテーマに掲げたブロックメイクRPG。1986年に任天堂ファミリーコンピュータで発売された初代「ドラゴンクエスト」に登場する「アレフガルド」が舞台。勇者が闇の王「りゅうおう」の誘いに乗りアレフガルドが闇の力に覆われるifストーリーのもと、“ものをつくるちから”を持つひとりの若者となって荒れ果てた世界を復活させるのがゲームの目的となっている。
Nintendo Switch版では、追加要素として、フリービルドモード「知られざる島」で一緒に冒険ができる仲間「ベビーパンサー」や、ファミコン版「ドラゴンクエスト」の世界観の表現に最適なブロックや装飾アイテムを作り出せる作業台「ドラクエカセット」が登場する。
改めて堪能する「DQビルダーズ」のわくわく感
新規プレイは、第1章「メルキド編」からスタート。実は筆者、約2年前にPS4版をクリア済み。それなりにやりこんだクチなので「当時ハマりすぎたぶん今やってどうかなぁ……」と若干気おくれしたものの、そこは「ドラゴンクエスト」シリーズのファンゆえ“テーマ曲”が流れてきただけで猛烈にテンションアップ。
さすがに指が覚えていたのか、約2年前の初回プレイとは比較にならない手際の良さでチュートリアルを消化しメルキド高原に躍り出る。ちなみに「今回初めてプレイする」方は、ここで“あつめる”と“つくる”そして“ブロックの取り扱い”という超基本操作を「マスターするぞ!」とまで意気込む必要はない。このあと幾千幾万と繰り返す“呼吸に等しい操作”なので、まずは「こういうものか」と認識する程度で十分だ。
続いては、謎の声が導くとおりまっすぐ走った先にある最初の拠点に移動。中心部に“希望の旗”を立てると、最初の住人「ピリン」がやってくるが、ここから先は実質的な“町づくりチュートリアル”がちょっとだけ続く。上でも触れたが、本作は必要とされる操作を端々でサラリとわかりやすく教えてくれる。アイテムを作り、ブロックを設置し、壊したり取りたいときは装備した武器やハンマーで叩く。行為自体が極めてシンプルだから、難しいことは何もない。
このようにクラフト系の作品にありがちな「自由がありすぎて、今何をやればいいのか全然わからない!」といった問題をほぼ払しょくしているのが「ドラゴンクエストビルダーズ」最大の特徴でもあり長所。「ドラゴンクエスト」シリーズらしい世界観と雰囲気のもと、自由度の高いアクションとテンポを両立。プレイしながら応用がどんどん身についていくという“展開の理想”が文字どおり形作られていく。
後述のモンスターとの戦いにもいえるが、本作は操作性が極めてよく、これまたクラフト系にありがちな「ここをこうしたいんだけど……ああもう! 上手くいかないなあ!」とイラつくことがほとんどない(あえて皆無とはいわない)。設置したいブロックの微調整や連続配置もLR併用やボタン押しっぱなしでカンタンのひとこと。ストレスがなく気持ちいいから、どんどんやる気が引き出されて“わくわく”してくる。「ああそうだ、これだこれ。この心地よさにもやられたんだよなあ」と改めて実感させられる。
シンプルでビシビシ気持ちいいモンスターとの戦い ~繰り返しに重点を置いたナイス調整~
クラフト系といえど、「ドラゴンクエスト」シリーズといえばモンスターたちとの戦いは外せない。本作は主人公が勇者ではないため、敵を倒して経験値とレベルを上げていく成長要素はない。主人公の強さは武器や防具などの装備で決まり、強敵に立ち向かうにはより強い装備を作らなければならない。
本作におけるモンスターとの戦いは、装備、アイテム、町づくりに必要なものを集める行動の一環だ。フィールドの植物や鉱石同様、モンスターを倒して固有ドロップアイテムを集めて目的のものを作る。どんなに遠くてもすぐ拠点に戻れる便利なアイテム「キメラのつばさ」など、制作に必要な素材が一部モンスターに限定されているものも少なくないため、戦いは避けて通れない。
戦闘アクションそれ自体は、極めてシンプル。アイテムを使うこともあるが、ほとんどはモンスターに近づいて武器を振って当てる。ダメージを避ける絶対的なコツは“モンスターのアクションの隙をつく”こと。武器が届く間合いは絶妙に調整されており、いわゆるガチャプレイを繰り返しているとわりとひどいことになる。敵の動きを見定め、隙ができたところで瞬時に間合いを詰めビシッビシッとダメージを与えていく。最初は恐らくおっかなびっくりだろうが、慣れてくるとシンプルな操作がどんどんツボにハマる。
慣れるにしたがい、段差の利用などはたまに「簡単すぎない?」となるかもしれないが、ここで思い出して欲しいのは、本作におけるモンスターの戦いが“あつめる”と“つくる”の一環であること。さそりの角などドロップ率が低いアイテムは特にそうだが、何度も繰り返すアクションだけに、目的にたどり着くまでの手順が複雑すぎると「しんどい」になってしまう。
冒険感を演出するうえである程度の手間暇は必要だが、簡単すぎるとつまらないし、さりとて「しんどい」はご勘弁願いたい。このあたりはバランス調整次第なのだが、本作はその塩梅(あんばい)が絶妙。一部特別なモンスターをのぞけば、いずれも幅広いユーザー層とゲームの性質を踏まえた適度な強さで、それでいてモンスターごとのキャラクター性も丁寧に表現。近くで仲間が倒されると怒って反応してくるスライムや夜間突然襲ってくるゴースト系など、思わず(ゴースト系は面倒で嫌いなんですが)ニヤニヤしてしまう。
武器のリーチも最初は「もうちょっと広くてもいいんじゃない?」と思ったが、慣れるにしたがい空振りを誘った隙に素早く間合いを詰めて攻撃する一連の所作が「あれ? 俺うまくない?」と上達の実感をともないどんどん楽しくなっていく。必要な素材が集まったモンスターは無視して進められるのもいい。いずれも丁寧かつセンスのいい設計と調整のたまもので、クラフト系という前提など無関係にアクションRPGとしても素晴らしい仕上がりだ。
ファミコン世代を感涙させる“世界観と雰囲気の再現”
これは筆者がアラフィフでファミコン世代ということもあるが……本作でもっとも感動させられたのは、いわゆる“ロト三部作”……なにより初代「ドラゴンクエスト」へ
のオマージュがあまりにも完璧という点だ。PS4版レビューでも触れたが、発売前まで「『マイクラ(マインクラフト)』クローンを『ドラゴンクエスト』でやらなくても……」くらいのことを思っていたが、当時それが最高にいい意味で裏切られた。ブロック要素についても、8bitオマージュを含め完璧に作品内に取り込むことに成功している。
1986年に産声をあげた初代「ドラゴンクエスト」。ファミコンというハードの制約から生まれた独特の8bit表現とテキスト。なかでも随所に大人の諧謔(かいぎゃく)が散りばめられたNPCとのやりとりは、今でも思い出せるほど脳裏に深く刻み込まれている。思い出補正といわれても仕方ないが、こればかりは他社のタイトルはもちろん近年のオフィシャルシリーズ作品でさえなかなか補完がきかない。本作がアレフガルド、初代「ドラゴンクエスト」のifストーリーということもあるが、世界観の再現がBGMはもちろん“NPCとのやりとり”まで及ぶとは、正直初プレイの寸前まで思ってもみなかった。
妙なたとえ話になって恐縮だが、「ビートルズ」、「レッドツェッペリン」、「クイーン」などレジェンドクラスのアーティストには、だいたい有名な“完コピ(完全コピー)”バンドが存在し、単体やセットでツアー(営業)が行なわれることも多い。特定のアルバムやライブ再現なども好評を博しており、本作のテキストはなんというか……下手をすると今のオリジナル以上にオリジナルというか、まさにそんな感じなのだ。もう「凄い!」のひとことで、個人的には「こんな仕事ができる人たちがまだいたの!?」という失礼な驚きまであった。
シリーズのファンはもちろん、クラフト系が好きな人には迷わずオススメの1本。個人的に唯一難点をあげるとすれば「価格」だろうか。追加要素はあるが、移植がメインと考えると「もうちょっと安くてもいいかな?」という気がする。とはいえ、それは約2年前にどハマりした筆者だから思うことで、初プレイの人は十二分にモトがとれるはず。Nintendo Switch版は、場所を問わず高品質のグラフィックと操作性で楽しめる。まだ未体験で、特に初代「ドラゴンクエスト」世代には改めて注目していただければと思う。
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