「信長の野望・大志」レビュー

信長の野望・大志(PS4通常版)

外交と合戦にフォーカスしたシリーズ最新作

ジャンル:
  • シミュレーション
発売元:
  • コーエーテクモゲームス
開発元:
  • コーエーテクモゲームス
プラットフォーム:
  • PS4
  • Nintendo Switch
  • Windows PC
価格:
8,800円(税別)
(PS4通常版)
11,800円(税別)
(PS4デジタルデラックス版)
発売日:
2017年11月30日

 歴史シミュレーション「信長の野望」シリーズの最新作「信長の野望・大志」が発売された。シリーズ第15作目となる本作最大の注目点は、武将たちの戦略や個性を演出する「志システム」だろう。AIの動きにも影響し、各大名の動向に大きな影響を及ぼす「志」とは何か。まずはそのあたりを踏まえつつ本作の特徴などをざっくりとではあるがお伝えしていく。

【オープニングムービー「信長の野望・大志」】
基本シナリオは6本。ダウンロードコンテンツとして追加シナリオが順次配信される
今作は大名ごとに「志」が設定されている。CPUの動向もそれぞれの志に基づく

システムは総じて簡略化された

 全国まとめて表示されるようになった3Dマップ。美しく描かれた中世日本には、シナリオごとにさまざまな武家が群雄割拠しており、プレーヤーは好きな武将を選んでゲームスタート。全国の半分以上と二条御所を確保し惣無事令を発すれば天下統一=ゲームクリアとなる。ターン制を採用しており、1ターン1カ月で進行していく。

 内政は従来シリーズに比べると総じて簡略化されており、特に「農業」は季節ごとにコマンド入力が求められる程度で、最初から委任(CPUに任せる)でも構わないほど。外交や合戦に注力していると農業コマンドは忘れがちで、それを防ぐ意味でも委任がオススメだ。

 その一方、同じ内政でも「商業」は後述の外交と大きく関わるとても重要なポイント。本作は、“商圏”と呼ばれるエリアを広げて収益を増やしていく。商圏は領内だけでなく、外交で通商協定を結んだ他勢力の商圏にも進出できる。商圏は独占して利益を100%吸い上げることも可能だが、他家も進出中の商圏を独占すると当然心象が悪化する。

 商業コマンド回数は当初月1回のみだが、3カ月に1回行われる評定で獲得したポイントを消費して「方策」を発展させれば回数が増える。方策はツリー形式でさまざまなメリットをアンロックし発展させていくシミュレーション定番のシステムで、これにより配下との評定が実利をともなう楽しいものとなっている。

システムはターン制。メニューもシンプルで遊びやすくなった
内政でも農業は特に簡略化。いきなり委任してもいいくらい
商圏は外交も関係する重要なポイント。お金は外交の原資でもある
大きなメリットが得られる地方特有の特殊商圏はなるべく押さえておきたい
シミュレーションでおなじみツリー形式の「方策」システム
方策のアンロックや獲得に必要なポイントは評定でためていく

最大の特徴は他家の動きと関係性

 前述のとおり、本作はそれぞれの武将が「志」に基づいて行動する。「志」システムは、武将がさまざまな「志」をもち、戦略に多様性を与える方針のようなもの。大名家の特性を際立たせ、その戦略に多様性を与えるもので、プレーヤーは、プレイする大名の特性を理解し、独自の戦略を構築することができる。また、大名が死亡もしくは隠居した際には、その「志」を次代の大名となる武将に引き継ぐことができる。

 「志」ごとに特定兵科の攻撃力が上がるなどのメリットや納税額が減るなどのデメリットが存在するが、ぶっちゃけそれらは歴史シミュレーションを楽しむためのエッセンス。「志」をもとにした“周辺勢力との関係性や変化”がもっとも重要で、攻撃性はもちろん、他家を狙っているか、狙われているならどこか、結びつきの強さを踏まえ積極的に外交を展開していくのが攻略のコツだろう。

 外交のメリットは絶大で、前述の商圏拡大、同盟、援助、合戦の援軍などさまざまなメリットが期待できる。特に威力(?)を発揮するのが同盟と援軍要請。同盟は成立と引き換えにすることで金、兵糧、鉄砲、馬のいずれかを要求でき、弱小勢力でプレイする際は必須というか「これなしではクリアできない?」とさえ言えるほど。

 援軍は城単位で戦力をまるっと借り受けられるシステムで、契約期間内は借りた城の戦力を自らの手足のごとく使い倒せる。遠いと急場に間に合わないため、なるべく自国領に近い城を借り受けたい。なお、交戦状態はダラダラ続けると民忠(民衆の忠誠心)の低下による一揆など領地経営に支障をきたすため、破たんをきたさない程度に講和でインターバルをとり、その間に次の戦いの下準備を行なっていくのがセオリーだろう。

 あまりの重要性に、なんとなく「外交なしプレイ」も試してみたが、文字どおり八方ふさがりで、すぐ行き詰ってしまった。他家の合戦時にもお呼び(援軍要請)がかかるため、状況によっては手を結んだり同盟を切るなど大胆な決断も必要。本作の屋台骨は「外交」にあるといっていい。

親善の奏者を任命して「心証」を改善。ただし毎月一定のお金がかかる
弱小勢力必須の外交テク。あえて通商協定を結ばず同盟締結で見返りを要求
通商協定後だと対価を求められるが同盟締結時だとほぼ要求が通る

大軍が必ず勝つとは限らない「決戦」システム

 従来シリーズでもさまざまな試みが行なわれてきた合戦システム。大きな変化のひとつが、攻城戦がなくなったこと。城攻めは3Dマップ上で行なわれるため、ある意味シンプルの極致。軍勢が敵の城(拠点)に着くと、敵が出撃してこなかった場合は「籠城戦」となり包囲または強攻を選択。包囲で士気、強攻で拠点耐久力がそれぞれ下がり、どちらかがゼロで陥落し拠点を占領できる。

 決戦(野戦)は、敵軍勢とぶつかったときに発生。群(部隊の単位)ごとの決戦マップに移行し、どちらかが敗れるまで命令と進行のターン制で戦いが行なわれる。最大のポイントは、各郡で出兵できる“いちどに出せる戦力の上限”が決まっていること。たとえば10万の大軍を引き連れても、その群で1万という制限があったら、残り9万は予備兵力となり待機中の武将に少しずつ追加投入されていく。これにより、一見勝負にならない戦力差でも“桶狭間の戦い”よろしく寡兵による大逆転が狙えるわけだ。

 ただし、大逆転のためには武将の頭数も重要になる。質で劣っていても“1対多”で対応すれば勝機が開けるのが決戦仕様。敵の士気を削ぐことが何よりも重要で、そのためには1対多で敵軍の重要な部分を徹底的に叩くのが1番の近道。

 そのため、敵陣を奪う攻撃側よりも本陣と拠点めがけて敵が殺到してくる防御側のほうが戦いやすい。慣れないうちは時間がかかるかもしれないが、こうしたポイントを抑えると通常はお手上げの戦力差でも十分戦える。自前の配下武将が少ないときは、前述の外交による援軍が頼もしい味方となってくれるはずだ。

本作の合戦において1番重要なのは士気。頭数が少ないときは孤立を徹底的に避ける
ターン制なので展開を予想しルートを設定。進行中は次ターンまで指示が出せない
こちらの部隊数が多いときは逆に1対多をキープし敵の士気を削っていく
弱小勢力は武将が少ないので一人でも多く捕縛したいが必ず登用できるとは限らない

スマホ全盛時代に寄せた感がうかがえるシリーズ最新作

 本作はPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)版がリリースされており、本稿執筆時点でiOS版とAndroid版が開発中(iOS版が2018年1月、Android版が2018年)。筆者は本レビューを書くにあたりPS4版をプレイしたが、ゲーム画面を見た瞬間「UIや画面レイアウトがスマホゲーみたい」と感じた。これは実際プレイした人の多くも同様に感じられたのではないだろうか。

 3D全体マップ、専用マップを用いた攻城戦の廃止、メニューやボタンレイアウト、決戦の仕様など、さまざまな要素から推察するに、本作はスマートフォンを前提に作られたように感じた。ホビーパソコン黎明期から続く長寿シリーズだけに、古参ファンのなかには難色を示される方もいそうだが、一方で新規ファンに対する親和性や訴求力は増したかもしれない。少なくとも、こうしたレビューや紹介記事などでスクリーンショットを見たとき、従来シリーズに比べると「なんだか難しそう」といった心理的ハードルは下がったように思える。

 外交と合戦メインのプレイスタイルはシンプルでわかりやすく、まさに「スマホ時代の『信長の野望』」といった印象。ただ、カジュアルさをよしとするなら、頻発しがちな決戦に「遊びごたえ」よりも煩雑さが上回るのはいかがなものかと思ったが、この点は直近のアップデートで決戦のスルーが選べるようになるということで一安心。あとは、外交重視なのだから標準インフォメーションも外交データ優先のほうが遊びやすいであろうこと、志が生涯不変ではなくイベントやプレイスタイルでゲーム中に変化しても面白いのでは? といった事柄くらいだろうか。

 コアなファンは重厚長大かつ緻密な作品を求めるイメージだが、スマホ全盛の今、据え置き版も「この形」になったのは極めて自然なのかもしれない。ボードゲームのウォーシミュレーションでいえば“作戦級”から“戦略級”にシフトし、局地的なところよりより大局的な視点が必要となった。外交を駆使して有利な状況を形作っていく楽しさは、これまでのシリーズ以上にダイナミックだ。