2017年12月29日 12:00
マウスコンピューターからモンスターPCが発表された。CPUにIntel Corei9-7900X、CPUにNVIDIAのGeForce GTX 1080 TiをSLI構成で搭載した上で、さらに水冷化も行なったというとんでもないマシンだ。コンシューマPCとしては考えうる限りのハイエンドパーツを組み合わせた、このMASTERPIECE i1720PA1-SP-DLの実力を見てみよう。
最強の組み合わせに水冷構成をプラス
今回紹介する「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」は、マウスコンピューターのゲーマー向けPCのブランド、G-TuneのMASTERPCICEシリーズに属する製品だ。そのMASTERPIECEの中でも飛び切りのハイエンドシリーズがMASTERPIECE i1720シリーズだ。「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」はシリーズ中最強の製品で、まさに最強の中の最強と言ってよいだろう。ではまず、その「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」のスペックを見ながらどんな製品なのかを紹介しよう。
【スペック】
製品名 | MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL | MASTERPIECE i1720PA2-DL | MASTERPIECE i1720GA1 |
---|---|---|---|
CPU | Intel Core i9-7900X(10コア20スレッド、3.3GHz、TurboBoost時最大4.5GHz、水冷仕様) | Intel Core i7-7820X(水冷仕様) | Intel Core i7-7820X(8コア16スレッド、3.6GHz、TurboBoost時最大4.3GHz) |
GPU | NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti SLI構成(GDDR5 11GB×2、水冷仕様) | NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti(GDDR5 11GB) | NVIDIA GeForce GTX 1080(GDDR5 8GB) |
チップセット | Intel X299 Express | ||
メモリ | PC4-19200 DDR DIMM 64GB(16GB×4) | PC4-19200 DDR DIMM 32GB(8GB×4) | |
ストレージ(システム用) | 512GB M.2 SSD(Samsung SM961、NVMe) | 960GB SSD(Serial ATA 6Gbps) | |
ストレージ(データ用) | 3TB 3.5インチHDD(Serial ATA 6Gbps、7,200rpm) | ||
ストレージ(光学ドライブ) | DVDスーパーマルチドライブ(スロットイン) | ||
インターフェイス(映像出力) | 4(DisplayPort×3、HDMI×1) | 4(DisplayPort×3、DVI-D×1、DVI-HDMI変換コネクタ付属) | |
インターフェイス(USB 3.1) | 2(背面、Type-A×1、Type-C×1) | ||
インターフェイス(USB 3.0) | 6(背面×4、前面×2) | ||
インターフェイス(USB 2.0) | 6(背面×4、前面×2) | ||
インターフェイス(イーサネット) | 1000BASE-T | ||
サイズ | 215×490×501mm(横×奥行き×高さ) | ||
重量 | 約19.7kg | 約19.4kg | 約17kg |
OS | Windows 10 Home 64bit | ||
価格 | 579,800円(税別) | 369,800円(税別) | 299,800円(税別) |
表には、MASTERPIECE i1720シリーズを代表する3製品を比較のために入れているが、1番左の「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」が今回お借りしている製品だ。
CPUには、開発コードネーム「SkyLake-X」と呼ばれていたIntelのCore i9-7900Xが採用されている。このCore i9シリーズは今まで最上位だったCore i7のワンランク上という意味が込められている。現在のところ、メインストリームに向けたLGA1151のCore i7-8700KなどにはこのCore i9という製品名は採用されておらず、ウルトラハイエンドに向けたLGA2066対応の製品の中でもさらにハイエンドの製品に与えられたシリーズ名だ。
お借りした「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」には最高性能のCore i9-7900Xが採用されており、下位の製品でも採用しているCPUはCore i7シリーズの製品となる。CPUのコアの数は10個で、Hyper-Threadにより同時実行できる数は20と、前世代のBroadwell-EのハイエンドCore i7-6950Xと同じだが、周波数は通常時3GHz、Turbo Boost時3.5GHzだったのが、それぞれ3.3GHz、4.3GHzと大幅に引き上げられている。
CPUと組み合わされているチップセットはIntel X299で、本CPUを採用することでPCI Express 3.0を44レーンで利用することができる。現在存在しているGPUがPCI Express 3.0 x16をフルレーンで使えるかはともかく、SLI構成で32レーンを余裕を持って利用することができる。
次にGPUだが、NVIDIAのGeForce GTX 1080 Tiを2つ搭載しSLI構成になっている。GeForce GTX 1080 TiはコードネームPascalと呼ばれている最新のGPUで、NVIDIAのハイエンドGPUとして位置付けられている製品だ。そのGeForce GTX 1080 Tiを2つ同時に搭載しSLI構成にすることにより、圧倒的なゲーミングパフォーマンスを実現している。GeForce GTX 1080 Tiは単体でも4Kでのゲームを不足なく動作できる実力を持っており、それをSLI構成で搭載することにより、3Dゲームを高負荷環境でも快適に楽しむことができるだろう。
メモリはMASTERPIECE i1720シリーズのCPUとチップセットの組み合わせのLGA2066の場合、DDR4-2400のものを4枚同時に利用するクアッドチャンネル(4チャンネル)構成となる。本機には16GBのモジュールを4枚搭載しており合計64GBで下位の製品でも8GB×4の32GB構成だ。
特筆すべきなのは最上位の「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」の場合、CPUやGPUが12cm角ファンを3つ搭載した36cmクラスの大型のラジエータを利用して水冷化されている点だ。この水冷システムはAsetek製のもので、1基のラジエータでCPUとGPUを冷却する。
水冷化は簡易水冷キットの登場で比較的手軽に行なえるようになったものの、GPUの冷却は敷居が高く、簡易水冷での実現は難しい。これは、PCケース内部のスペースに制約がある上に、GPUのSLI構成をサポートする製品がほぼ存在していなかったためだ。マウスコンピューターでは、水冷対応製品に、Asetek製のクイックコネクトを採用した製品を利用している。このクイックコネクトは冷却液が入った状態でも簡単に着脱できるコネクタで、ブレードサーバーの冷却で培われた技術だと言う。この水冷システムを採用することにより、高い冷却性能をCPUとGPUに提供することが可能になっている。
ストレージには最上位の「i1720PA1-SP-DL」の場合、システム用としてPCI Express 3.0 x4接続の高速なNVMe対応のSamsung SM961が採用されており、容量は512GBだ。ゲームをインストールするのには十分に余裕があるのだが、さらにデータ用のドライブとして3TBのHDDが搭載されている。スマートなスロットイン式のDVDスーパーマルチドライブも用意されているため、DVDメディアなどで提供されているゲームをインストールすることもできる。
インターフェイスも、USB 3.1ポートや1000BASE-Tなどのほか、豊富な映像出力も用意されているため、マルチディスプレイやVRデバイスなどを利用することも可能だ。
画像で見る「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」
それでは、「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」の写真を見ながら外観などの特徴をお伝えしよう。本機のケースは主に鉄製のものを採用しており、かなりの重量感がある。実際その重量は19.7kgとヘビー級で、1人で設置するのは避けたほうがよいレベルだ。サイズは横幅215mm、奥行き490mm、高さ501mmのミドルタワータイプで内部構造も余裕のある作りになっている。デザインから見るにガラスパネルを採用したPCケースを得意とする、In-Winの303をベースに使用していると見られる。
正面のパネルは黒のガラスパネルとヘアラインの入った赤いメタルパネルがアクセントになったもの。高級感がありデザイン性も高い。電源やUSBコネクタなどは赤いメタルパネル部分にあり、下部にはスロット式のDVDスーパーマルチドライブのスリットがある。両側のサイドパネル上部には、蜂の巣のようなハニカム模様の入ったスリットがあり、左側面から入った空気が水冷用のラジエータを冷却し、背面や右側面から排出されるようになっている。
ケースの左側のサイドパネルをあけると内部にアクセスできるが、このサイドパネルはスモークの入った強化ガラス製のものにBTOで変更が可能だ。通常のサイドパネルでも隙間からファンなどの光が漏れ出てくるが、内部はガラス製のパネルを意識した作りなのかラジエータのファンやGPUのブリッジなど、赤を基調とした光りモノであふれている。
ガラスパネルの場合、空気を取り込む構造になっていないため、ラジエータの冷却には多少の影響が出るかもしれないが、背面や底面からも空気を取り込む構造になっているため、それほど心配することもないだろう。ちなみに、右側のサイドパネルをあけると、HDDとスロットイン式の光学ドライブを確認することができる。
内部は上下にブロック分けされており、下にマザーボードなどを設置し、上部には電源やラジエータが搭載されている。ラジエータからは水冷用のチューブが伸びており、CPUの水冷ヘッドから2枚のビデオカードを経由し、ラジエータに冷却液が戻っていく構造になっている。ビデオカードはMSI製で、水冷仕様にするために特注されたものということだ。SLI用のブリッジはMSIのゲーミングパーツなどにあしらわれる意匠が施されており、稼働時には赤いLEDが光るようになっている。
ベンチマークソフトでモンスターマシンの実力を見る
さて、それではいよいよベンチマークソフトなどを使ってその実力を見ていくことにしよう。ここでの結果はお借りした試用機であるハイエンドの「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」で行なったものだ。テストは基本的にベンチマークソフトのデフォルトで行なうが、それ以外にも4Kなどの設定があるものについては追加で行なっている。
PCMark 10
Futuremarkの定番ベンチマークソフトであるPCMark10は、PC全体のバランスと実力を見ることができ、日常的なPC作業やデジタルコンテンツを扱うシミュレーションを行なう。これは、アプリケーションの起動速度や動作、ビデオ会議やWebコンテンツの表示といったケースを想定したもので、その快適度を数値化することができる。結果は6,300を超えており、筆者としては、4,500程度を超えればハイエンドPCと言ってもよいと思うが、驚きの数値だ。
PCMark 10 | |
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測定数値 | 6,313 |
3DMark
こちらもFuturemarkが提供するベンチマークソフトだが、これはゲームなどの3D性能を主に見ることができる。DirectX 12に対応したTime Spyはかなり高負荷なテストだが、結果としては16,000をオーバーし17,000に迫る勢いだ。一般的なハイエンドゲーミングPCの場合、10,000以下なので、かなりの性能を持っていることがわかる。DirectX 11時代のテストであるFire Strikeでも驚異の28,263をマークしている。
3DMark(Time Spy) | 3DMark(Fire Strike) | |
---|---|---|
測定数値 | 16,723 | 28,263 |
VRMark
VRデバイスや対応ソフトが次々と登場している現在。やはりVR性能も気になるところだ。VRMarkはヘッドマウントディスプレイがなくてもVRをシミュレーションしてテストを行なうことができるベンチマークソフトで、こちらを利用してそのVRに対する能力を探ってみた。結果は、余裕の10,000ポイント越えで、通常のハイエンドPCで5,000~6,000であることを考えると、ずば抜けていることがわかる。ちなみに、VRMarkでのVR Readyを保証するのは5,000ポイント以上となっていることからも、その性能の高さを見て取ることができるだろう。
VRMark | |
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測定数値 | 10,885 |
SteamVR Performance Test
SteamVR Performance TestもVRMark同様、VRデバイスがなくてもVRに対する対応ができるかを見ることのできるベンチマークソフトだ。結果である「平均忠実度」は11で「非常に高い」というもの。VR Readyのメーターは右に振り切っている。
CINEBENCH R15
CINEBENCHはレンダリングでCPU自体の性能を測るベンチマークソフトだ。マルチコアマルチスレッドの性能をみるCPUの結果は2,175とかなりの高いスコア。10コア20スレッドであるCore i9-7900Xの実力を垣間見ることができる。ちなみに、6コア12スレッドでメインストリームのハイエンド製品であるCore i7-8700Kでは、だいたい1,200程度の結果が出るはずだ。CINEBENCHでは、その倍近い性能を持っていると言える結果になった。
テスト項目 | 測定結果 |
---|---|
CPU | 2,175 |
CPU(シングルコア) | 192 |
SuperPosition Benchmark
Unigineのゲームエンジン、UNIGINE2を使用したベンチマークソフトがSuperPositionだ。フルHDと4K両方でテストを行なったが、フルHDでは言わずもがなの結果。4Kでも平均フレームレートが68.52fpsと申し分ない数値だ。アクションゲームでは平均フレームレートが60を超えていれば快適と言われているので、4Kでも十分アクションゲームを楽しめるという結果だと言える。
SuperPosition Benchmark | |
---|---|
1080p Medium | 4K Optimaized |
20,508 | 9,161 |
153.39fps | 68.52fps |
CrystalDiskMark 5.2.1
CrystalDiskMarkはストレージの性能を見るためのベンチマークソフト。下写真左はM.2のSSDで右が3.5インチHDDの結果となる。高速なMVNe接続のM.2 SSDは2,700MB/sを超える結果をSequential Readで出しており、かなり高い結果ということがわかる。長いロードが必要となる3Dゲームなどでも快適に楽しめそうだ。HDDについては、データ用と割り切って使うことになるだろう。
「バトルフィールド 4」
ここでは実際のゲームを利用してベンチマークを行なった。「バトルフィールド 4」は、世界中にファンのいるFPSで、すでに最新作「バトルフィールド1」も出ているが、重量級の3Dゲームであることには変わらない。
このゲームにはベンチマークの機能がないため、Frapsという平均フレームレートを計測するソフトを使ってテストを行なった。ベンチマークはキャンペーンのTASHGARを開始し、主人公たちが車で移動しているシーンの1分間平均フレームレートを計測して行なった。描画負荷はプリセットがあるため、4K、フルスクリーンの状態で「最高」、「高」、「中」の3つを利用している。結果としては4Kフルスクリーンの最高設定で平均153fpsと60fpsをはるかに超える結果となっている。これだけの結果が出るようなら、かなり処理の重い3Dゲームでも、ほとんどのタイトルを美麗な描画設定で動作させることができるだろう。
最高(4K、フルスクリーン) | 高(4K、フルスクリーン) | 中(4K、フルスクリーン) |
---|---|---|
135.233fps | 189.767fps | 199.75fps |
「『ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター』ベンチマーク」
最後に国産MMORPGの雄、「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」のベンチマークを行なった。本ソフトは公式ベンチマークソフトで、ゲームをプレイする前に動作環境として問題ないかをチェックするのが目的の1つだが、PCの性能を測るためのベンチマーク機能も用意されている。結果は最大負荷のかかる最高品質設定を4K、フルスクリーンでテストしても13,995であった。本ベンチマークでは7,000ポイント以上で非常に快適という最高評価となるため、ほぼダブルスコアでこの条件を満たしたことになる。
最高品質(フルHD、フルスクリーン) | 最高品質(4K、フルスクリーン) |
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18,901 | 13,995 |
非常に快適 | 非常に快適 |
値段は張るがその価値はある
LGA2066対応のCPUにハイエンドビデオカード2枚のSLI構成。その上水冷とくればどんなPCゲーマーでも欲しいと思う最高性能のゲーミングPCと言える。価格は税込みにして60万円を超えるという贅沢な逸品だが、個人では実現が難しいSLIビデオカードの水冷化という離れ業を簡易水冷で実現したところに本製品の価値があると言える。
実際ベンチマークという形では行なっていないが、CPUとGPUがフル稼働する仮想コインのマイニングを少しの間動作させてみたが、CPUは50度以下、GPUも40度前後で安定して動作していた。PCにとって高性能になればなるほど問題になり、寿命にも直結する冷却について、まったくの心配がないというのはうれしいところだ。「MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」は、圧倒的なパワーを持っていてかつ安定した動作を提供してくれる。そんなPCを望んでいるゲーマーにこそ、手に入れてほしいモンスターマシンだ。