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PS3/Xbox 360「KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)」

グラスホッパー須田氏と新氏にスペシャルインタビュー!

8月1日 発売予定

価格:7,980円

 角川ゲームスはプレイステーション 3/Xbox 360用ファンタジー・アクション「KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)」を8月1日に発売する。価格は7,980円で、CEROレーティングはZ(18歳以上対象)。今回は須田剛一エグゼクティブディレクターと新英幸ディレクターのスペシャルインタビューをお届けする。

エグゼクティブディレクターの須田剛一氏
ディレクターの新英幸氏

強いビジュアルインパクトを目指して生まれた“ハイコントラストシェーダー”

――少し前の話になりますが、2月に台湾で行なわれた「Taipei Game Show 2013にて中文版の発売がアナウンスされました。グラスホッパー・マニファクチュアとしては、中文版のリリースは初になるのでしょうか?

須田剛一氏(以下:須田氏)中文版は初めてですね。グラスホッパー・マニファクチュアとしては初トライです。

――そういった意味では海外、特にアジアでの注目度が高まっていると思うんですが、手ごたえはいかがでしょうか?

須田氏布石として、まず「ロリポップチェーンソー(LOLLIPOP CHAINSAW)」がアジアマーケットで……スマッシュヒットといっていいと思うんですよね。台湾でも凄く売れましたし、韓国もそうだと思うんですけど、注目度があるからこそSCE Asiaさんからも「KILLER IS DEAD」に熱烈なオファーをいただきました。で、角川ゲームスさんと一緒に「中文版、どうしましょうか?」というところで、「やりましょう!」と。アメリカ、ヨーロッパ、日本のみならず、アジアのファンベースにも根を張っていくという意味でも、中文版は効果的なんじゃないかと思います。

――中文版はボイスも吹き替えなのでしょうか? それとも字幕のみ?

須田氏字幕オンリーです。これが意外と大変です。

新英幸氏(以下:新氏)今まさに、これから作業!(笑)。中文版は日本語と英語のボイスを切り替えられます。

――今回、新しい絵作りに挑戦した結果として生まれたのが「ハイコントラストシェーダー」とうかがいました。ここにいたるまでの経緯といいますか「これでいける!」と確信できたのはいつ頃でしょうか。それとも、最初から「このタッチでいこう!」と決めておられたのでしょうか?

須田氏元々はハイコントラストシェーダーではない方法も模索してたんですけど、さまざまなモードを試していくなかでハイコントラストシェーダーの絵作りが出来上がったん。

 まず、2色に減色して見せていく絵が、凄く良かったんです。それをしっかり着色して、もっと違う絵作りでできないか。「ノーモア★ヒーローズ」の初期トレーラーで、今回の原型に近いシェーダーを1回作ったことがあって。これは完全なプリレンダのムービーなんですけど。ここを目指して絵作りができるんじゃないかと思って。まさに途中の段階からですね。プロトタイプが終わったあとから絵作りを完成させていきました。まずシステム周りとか大方針を作って、そこから絵作りをすべて変えていきました。

――絵作りは、自然にハイコントラストに収斂されていったんでしょうか? それともいくつかサンプルを作ってコンペをやったりとか?

新氏コンペはやっていないですね。まず「魅力的な絵とは、何か?」というところを手探りでやってはいたんですけど、途中も……それなりのものが出来上がっていて、間違ってはいないと思っていたんですけど、何かつかめていない感じがあった。

須田氏新IPだから「『ロリポップチェーンソー』の延長であってはならない」と思ったんですよ。僕らはまったく新しいものを提供しなければいけない。だから、絵を見た瞬間に“名刺代わり”になるような強いビジュアルインパクトをまず目指して、それを作り上げようと現場に号令をかけた。

 新がディレクターとして中心になって、あとはアートワークの笠原が絵作りにバリバリ没頭して作り上げていった。まさに試行錯誤ですね。色々なライティング、シェーダーを試してね。細かいパラメーター調整を積み上げていって、最終的に今のものが出来上がりました。

――「ロリポップチェーンソー」が成功したわけですから、角川ゲームスさんから「同じ方向性でもう1本」みたいな話はありませんでしたか?

須田氏そうですねぇ……そういう時期、タイミングもありましたね。やはり絵作りが先行してしまうというのもありましたし。リアルな絵作りではないにせよ、ひとつベーシックな絵の方向性でもあったものですから。そこは大きく変えたいというのを、僕から強くリクエストしました。そこで大きい方向性を示していった感じではあります。

――笠原さんとも、当然色々揉まれるわけですよね。何度かアートコンセプトをあげてもらったわけですか?

須田氏あげるというか、毎週ですね。実機上でライティングを組んで、パッと見てもらってグルッと回したりとか。あれこれスペキュラーをどうしようかとか。

新氏その場でパラメーターをいじって、ライトをこういうふうにすると、こう見えますとか。

――初見のインパクトが尋常ではないので、これは調整が本当に大変だったろうなぁとは想像していました。ここまでパッと見でガン! とくるものはなかなかないと思うんですね。コントラストが強烈だと、普通は見づらいわけじゃないですか。本作はそれがあまり感じられない。パラメーターをちょっと変えるだけで違ってくるでしょうし、当然エフェクトにも影響しますよね?

須田氏現場はエフェクトに相当こだわりました!。

新氏凄く難しかったですね。特にベタ塗りが基本のシェーダーになっているので、ベタのエフェクトを出してしまうと、もう向こうが見えなくなってしまう。そこの試行錯誤ったら、なかったですね。

――Episode7を初めて見たとき、ちょっと感動しました。あの濃淡のなかに、よくこの絵をのせたなぁと……。忍者が出てくるシーンとか、もう本当にニヤニヤしながらプレイさせていただきました。

須田氏あれはもう執念ですね。ワンシーンというか、ワンカット単位で現場でライティングも含めて……色合いの調整もやってるよね?

新氏やってます。

――Episodeごとに変わってますよね?

須田氏変わってます、はい! 色の作り方も全部変えています。

――黒の出方も違いますよね。

新氏このシェーダーの1番最下層にあるベタな部分って、実は単純なベタではなく“グラデーション”が入るようになっているんです。

――技術的に難しいところはありましたか? 決めたはいいけど、いざやってみたら「このシーンをハイコントラストでやるのはきつい」とか?

新氏ありました。シェーダーが特殊なので、黒い部分が多いんですよ。普通のリアルなシェーダーだと、同じ色になったとしてもモノが違うと質感の違いもわかる。でも、このゲームは本当にマットになると完全に同化してわからなくなってしまうんですよ。そこでエッジ(輪郭)だけを目立たせるような作りにしたりとか。エッジを目立たせるにはライト(光源)を置かなければならないんですけど、ライトを置き過ぎると処理付加とかアクションのバランスに関わってくるので、そういうところが難しかったですね。試行錯誤で、入れたけどやはり動かなくて削ったり、削ったかわりに何を入れる? とか考えました。

――輪郭の見せ方が凄く印象的ですが、その裏には相当“技術的なせめぎあい”があったんですね。

新氏そこは絶対に出さなきゃいけないものだった。処刑人がテーマということでお気づきだと思うんですけど、このゲーム“夜”のシーンが多いんです。

――ゲーム冒頭で敵を追いかけていくシーンが夜で、しかも雨が降っていますよね。

新氏主人公は仕事人でスーツを着てる。黒じゃないですか。「もう、まったく見えないね」というところからスタートしているんですけど、そこをいかに目立たせるか、っていうところですね。

――スーツという服装自体、いわゆる没個性といいますか。そういった風景下では埋没してしまうものですからね。

須田氏まぁ、普通は選択しない色味ですが、我々はあえてそこに挑戦していく。

(豊臣和孝)