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PS3「DUST 514」オープンβインプレッション

巨大なスキルシステムと装備システム。RPG顔負けのキャラクタービルド

巨大なスキルシステムと装備システム。RPG顔負けのキャラクタービルド

ラウンド終了後の報酬画面。これはわりと良いほう
本作のホーム画面となる傭兵居住区
膨大なスキルがあるので極められるのは一部だけだ
必要スキルを習得して高性能武器にアクセス

 いろいろと気になる点はあるものの、本作の試合はそれなりに面白く遊べる。そして決着がつくと、各プレーヤーはその貢献度に応じてスキルポイントとゲーム内マネー(EVE宇宙共通通貨のISK)を獲得できる。筆者が30試合ほどやってみた感触では、1試合で得られるスキルポイントは最大6,000ポイント、金銭は25万ISK程度。あまり活躍できないとこの半分少々だ。

 こうして稼いだスキルポイントとISKは、キャラクターのスキルを成長させたり、新たな兵器を手に入れて次の戦いを有利に運んでいくために使える。

 まず、プレーヤーごとの個性が強く出てくるのがスキルポイントの使い方だ。本作には100を超える膨大なスキル項目があり、それぞれが各種武器の使用や、より効果的な活用のために必要な要素となっている。

 たとえば「アサルトライフルオペレーション」というスキルを向上させていくと、アサルトライフル使用時のダメージが向上するほか、より上級のアサルトライフルを使用できる。スキルレベルが最大の5に達すると2次スキルである「アサルトライフルスキル」が学習できるようになり、最高級のアサルトライフルの使用が可能になるという感じだ。

 各スキルにはレベルアップのための必要スキルポイントが設定されており、レベル1から2へは数万ポイントで向上させられるが、レベル4から5へは10万~100万ポイント以上のスキルポイントが必要となる。1日に稼げるスキルポイントはせいぜい数万なので、100以上もあるスキルをすべて最大にするのは事実上不可能(実際に計算した人によると最低7年かかる)、現実的にはどれかに特化するしかない。

 そしてアサルト兵、スナイパー、ヘビーガンナーといった、いわゆる“クラス”の概念も、本作ではスキルと装備の構成で表現される。だから本作でいくつかの戦闘を経験してからやることは、どんな兵士を目指すか、自分なりのスタイルをまず決めてしまうことだ。そのうえで、各クラスで使用する装備を利用するためのスキル項目を調べ、スキルポイントを使っていこう。

 これに加えてキモとなっているのが非常に複雑な装備システムの存在だ。プレーヤーの装備には「EVE ONLINE」の艦船と同じく“フィッティング”という概念がある。つまり、各装備が要求する「CPU」、「パワーグリッド」という数値の合計が、装備の入れ物となる「降下スーツ」の容量をオーバーしないように装備を構成する必要があるのだ。

 これはなかなか手ごたえのある知的作業だ。より高性能のアサルトライフルを使いたいなら「アサルトライフルオペレーション」を上げるだけではダメで、容量の大きい上級の降下スーツを使うための各スキルや、CPUとパワーグリッドの使用効率を向上させる電子工学系のスキルも必要になってくる。

 そのうえスーツの装備項目には武器スロットだけでなく、アーマーやシールド、それらのリペアラーやリチャージャー、運動能力を高める「生体ブースター」その他の補助装置もあり、それぞれに上級装備、前提スキルが存在する。攻撃力を優先すると防御力が犠牲になるようなトレードオフの関係も複雑に絡み合っているため、全てを勘定してプレイスタイルに最適な“フィッティング”を作り出すのはかなりの大事業だ。

 まずは使いたい武器を第1目標にして、次はシールド、次はアーマー、次は運動能力の向上……と、自分のスタイルに合わせて漸進的にスキルと装備の改善を続けていくことになるだろう。他のFPSではありがちな単純なアンロックシステムに比べて、実にやりがいのある遊びになることは間違いない。

 ちなみに有料ポイント「Auram」を使えば低スキルでも高性能な装備を使えるが、性能的には高スキル用の無料アイテムで代替可能なので、リアルマネーを使いまくれば圧倒的になれるというほど単純な話でもない。最も重要なのは、自分のプレイスタイルに合わせ、特色をさらに伸ばせる装備の組み合わせを見出すことだろう。

装備編集画面。降下スーツの各スロットに対応するモジュールをプラグイン。自分で必要なだけプリセットを作成したり、数量を補充できる
装備のまとめ買いには思いのほかたくさんのISKが必要になる

 ここまできて、「DUST 514」のキャラクタービルドシステムは、そこらのRPGよりも余程複雑で、奥深いものであると気が付く。そこに気が付けば、各試合にどのような装備で臨み、どのように戦い、スキルポイントとISKをいかに稼いでいくかというイメージがわいてくるはずだ。

 そこで、本作ではここが重要なのだが、無料のデフォルト装備を除き、出撃時に選択した装備はキャラクターが死亡するたびに1セットが失われる。1本7,000ISK程度のアサルトライフルでも、20セット失えば14万ISK。やられてばかりだと赤字になることもある。全身をハイグレードな装備で固めて戦えばなおさらである。

 だから本作では、長期的な資金繰りの感性も必要だ。コーポレーションを組織してまとまった資金を調達することにも意義がある……と、なんだか経営シムの話をしているような気がしてくる。これこそ本作が「EVE ONLINE」のエッセンスをよく取り入れている証拠だろう。

 「EVE ONLINE」はゲーム界有数の複雑なシステムを持つMMORPGであり、そのぶん学習が難しく初心者の離脱率が非常に高いことで知られている。それと同時に、システムを理解し使いこなせるようになったプレーヤーには他で味わえない面白さ提供できる作品でもある。

 「DUST 514」も同様の路線を継承する作品になりそうだ。システム全体を把握するまでの期間は他のFPSとは比べられないほど長いものになるだろう。そして、その先には本作でしか得られないような、ディープな面白さがある。少なくとも筆者はその手ごたえを感じている。

コーポレーション単位で請け負える「コーポレーション契約」。開始時間に合わせてメンバーを招集するスタイルだ。試しに自分のコーポレーション(社員1人)でもやってみたが、相手は5人もいて勝負にならなかった。戦争は数だよ……

「EVE ONLINE」との完全連動が実現すれば……!?

現在は既定のマップでの対戦だが、「EVE ONLINE」連動が本格化すればマップもプレーヤーが作ったものになる
マッチロビーから眺める戦場惑星も、EVE宇宙に実際に存在するものになるはずだ

 冒頭で指摘したように、現時点では本作はほぼ単体のFPSとして機能している。目玉となる「EVE ONLINE」との連携要素は、ごく一部のあたりさわりのない部分に留まっており、本作の戦場もEVE宇宙的などこか、でしかない。

 したがって、本作での現時点でのプレイは純粋に、スキルと武器のアンロックと蓄財をただ目指すだけのものであり、いささか無機質な印象だ。しかし、今後正式サービスに向けて「EVE ONLINE」との連動要素が開発側のコンセプト通りに実装されていけば、本作のさまざまな側面に血が通いはじめるはずだ。

 まず、戦場の姿が変わる。単なるランダムマッチだけでなく、EVE宇宙におけるコーポレーションやアライアンスの抗争が戦場を設定することになるだろう。プレーヤーは幅広く“雇い主”を選べるようになり、よりよい報酬を求めて戦場をさすらう傭兵となる。経済システムも連結することになれば、EVE宇宙で産する莫大な資産を投入した戦いが展開するかもしれない。

 EVE宇宙では惑星軌道の占拠を巡って艦隊戦が行なわれ、勝利した艦隊が上空からの支援砲撃を行なう。地上にはEVEコーポレーションの支援を受ける傭兵があふれ、数メートルの距離で銃弾を応酬する。戦闘に勝利した兵士たちには契約に基づいた報酬が与えられ、次なる戦場がまた、EVE宇宙で形作られていく。

 マーケットの連動も実現すれば楽しみな要素だ。「DUST 514」の戦場で使われる降下スーツ、各種兵装、戦闘用車両などの生産がEVE宇宙で行なわれるようになれば、熾烈な価格競争が展開していくことだろう。装備を生産するために必要な鉱石やマテリアルの産地では商魂たくましいアライアンス間での“実力行使”が発生し、それがまた「DUST 514」の戦場を作り出していく。

 そうなれば本作での一匹狼プレーヤーもEVE宇宙の動向とは無縁ではいられないし、コーポレーションを組織することの意味が非常に大きくなる。コーポレーション単位で戦闘契約を得て戦うこと、それは他のFPSで言うところのクラン戦に相当するが、EVE宇宙に渦巻く利害が複雑に絡み合あって成立するものだから、その背景には幾万通りものドラマが生まれていくことになる。

 やがては、あなたが撃つ1発の銃弾がEVE宇宙の勢力図を塗り替えるかもしれない。そのようなゲームになることを本作に期待したい。

(佐藤カフジ)