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コーエーテクモ、過去最高益の秘訣は「IP展開」にあり! シブサワ・コウ氏が自社の成長戦略を語る【CEDEC2023】

【CEDEC2023:シブサワ・コウのゲーム開発】

8月25日9時45分~11時5分 配信

コーエーテクモゲームスの代表取締役社長の襟川陽一氏

 ゲーム開発者向けの技術交流会「CEDEC2023」の基調講演として「シブサワ・コウのゲーム開発」が行なわれた。

 登壇者はコーエーテクモゲームスの代表取締役社長の襟川陽一氏。ゲームプロデューサーのシブサワ・コウとして「信長の野望」シリーズなど様々なタイトルを手掛けている襟川氏が近年のゲーム業界についてや、ゲームを手掛ける企業としてIPによる展開が重要になることを紹介。そして最後にはクリエイターに向けたメッセージを述べる基調講演となった。

シブサワ・コウの名義で活躍する襟川陽一氏が登壇
「信長の野望」シリーズは2023年で40周年を迎える

 本講演では自身のこれまでの振り返りながら、近年のゲーム業界の発展について紹介された。世界的にゲーム業界は成長を続けており、20兆円を超える産業になっている。2022年は世界的な半導体の不足により2021年と比較するとやや落ち込む形になったものの、2025年は25.8兆円に成長することが予想されているという。コーエーテクモゲームスも成長を続けており、2022年度は営業利益と売上高が過去最高を記録。これについて「IPが鍵になる」と襟川氏は述べ、同社が手掛けるグローバルIPの創造と展開について紹介された。

 コーエーテクモゲームスにはシミュレーション「信長の野望」シリーズや、アクション「戦国無双」シリーズなど同社を代表する作品が存在するが、今でも新たな作品を生み出し続けている。「アトリエ」シリーズや「三國志」シリーズをはじめ「仁王」や「Wo Long: Fallen Dynasty」などが存在し、これらIPを最初から世界へ向けて作っていくことで販売本数の増加に繋げ、その後のナンバリングタイトルを制作することができるという。

 また、1つのIPが大きく成長すると、同じタイトルを冠する作品を複数のジャンルに派生させる事が可能になる。今回は例として「信長の野望」シリーズが挙げられた。本作品は歴史シュミレーション作品として発売されたが、その後はオンラインゲームやソーシャルゲーム、シミュレーションRPGなどジャンルやプラットフォームの垣根を超えて展開が行なわれてきた。

日本国内だけでなくグローバルなIPとして展開することを目指す
「信長の野望」シリーズは複数のジャンル展開が行なわれている。MMORPGとしてリリースされた「信長の野望 Online」は20周年を迎えるが現在もサービスが継続されている

 それによりIPをより強固なものに成長し、7月にはシリーズ最新作となる歴史シュミレーション「信長の野望・新生 with パワーアップキット」を発売。8月31日にはスマートフォン向けの位置情報ゲーム「信長の野望 出陣」をリリースするなど、初代の発売から40年が経過した今でもコーエーテクモゲームの看板作品として複数の方面に展開することができている。

 さらに、「戦国無双」シリーズは「ファイアーエムブレム(任天堂)」や「ゼルダの伝説(任天堂)」など他社作品とコラボも実現でき、IPを成長させることが会社をより安定させることにも繋がるとした。

位置情報ゲームがリリースされるなど「信長の野望」シリーズの派生は続いていく
「無双」シリーズは他のメーカーの作品とのコラボを実現

 そのほか、中国などの企業に対するライセンス展開やアニメ・グッズ・映像化などのタイアップ展開。カップ麺や焼酎など食品とのコラボレーションやアパレルアイテム、火災予防に関するポスターの展開など、IPを成長させることでゲーム以外の取り組みも実現できるようになる。

 IPについての内容は講演のおよそ半分を占める内容になっており、既存のタイトルを大切に育てていくことの重要性、加えて新たなIPを展開する際には、最初から世界を見据えた作品を開発することで販売本数を伸ばし、その後の展開に繋げることができると説明した。「信長の野望」シリーズではゲーム内でマネジメント要素が重要になるが、本作を生み出した襟川氏自らが語る企業を成長させるためのIPの重要性が語られた。40年を迎えても愛され続けるシリーズを作り上げるための成長戦略を学べる内容になっていた。

ゲーム以外のIPについても幅広く手掛けていくようだ

 なお、講演の終盤にはシブサワ・コウの大切にしてきたことや、今後についてが語られた。自身の信条としては「好きなことを一生懸命行なう」、「伸びていく業界で思いっきり仕事をする」、「幸せな家庭を築く」の3つ挙げた。さらに、今後は「もっと面白いゲームを作りたい」と宣言。「信長の野望」シリーズとの親和性も高いAI技術をゲーム開発やデバック、ゲームの中にも活用できるよう探っていきたいとコメントした。

講演の最後には「信長の野望」シリーズにあやかって「野望を抱け」というクリエイターに向けたメッセージを残した