インタビュー

「三國志14」シブサワ・コウ氏、越後谷和広氏両プロデューサーインタビュー

初代「三國志」を現代の技術で蘇らせたらどうなるか? 原点回帰を目指した作品に

【三國志14】

今冬 発売予定

価格:未定

CEROレーティング:審査予定

プレイ人数:1人

 ChinaJoyで行なわれた「三國志14」インタビューでは、極めて珍しいハプニングが起こった。指定された時間を待たずに、インタビューが開始されていたのだ。筆者は、ChinaJoy会場から移動して5分前に入ったところ、すでにインタビューが始まっており、越後谷氏が1問目の質問の回答を終えようとしていた。

5分前に会議室に入ったらすでにインタビューが始まっていた!

 インタビュー終了後に、このインタビューを主催したソニー・インタラクティブエンタテインメント上海(SIESH)の担当者に理由を尋ねたところ、かなり早い時間に中国のメディアが全員揃い、越後谷氏とシブサワ・コウ氏も時間前に会場入りしたため、双方を待たせるのも失礼だと考え、始めてしまったのだという。

 このエピソードは、中国のゲームメディアがいかに「三國志14」に注目しているか、シリーズの生みの親であるシブサワ・コウ氏をリスペクトしているかを示していると思う。実際、サインを求める記者も複数現われ、シブサワ・コウ氏は上機嫌で応じていた。

インタビュー後にサインに応じるシブサワ・コウ氏

 この「三國志14」は、既報の通り、一昨年の「真・三國無双8」の実機デモに続いて、中国で発表されたタイトルとなる。しかも今回は実機デモではなく、発表そのもので、しかもプロデューサーのみならず、生みの親であるシブサワ・コウ氏まで参加する力の入れようで、これまで以上の中国市場重視の姿勢を感じ取ることができる。

 インタビューには、ライブ配信「PlayStation Online Showcase」にも登場したプロデューサーの越後谷和広氏と、ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ氏の2人が参加。過去のシリーズを遊び込んだ熱心な記者による濃い質問が飛び交った。

越後谷P「初代『三國志』はやっぱりおもしろかった」

――なぜ「三國志14」は、「三國志IX」と「三國志11」に似ているシステムを採用したのか?

越後谷氏: プロジェクトを立ち上げた際に、チーム内で十分に検討した上での結論。「三国志13」の1人の武将をプレイするやり方も完成度が高いと思うが、今回もっと伝統的なシステムに戻したいと考えた。そこでファンの間で人気の高い「三国志IX」と「三國志11」のシステムを復帰させることにした。

「三國志14」プロデューサー越後谷和広氏

――最近の人気作品の「Total War: Three Kingdoms」(2019年5月発売、The Creative Assembly)を参考した部分はあるか?

越後谷氏: 「三国志14」の開発はかなり前から始まっていて、「Total War: Three Kingdoms」が発売されたのは最近なので、仕様的なもので取り込んだことはない。ただ、我々も実際にプレイしてみて、純粋におもしろいゲームで、感心したところはある。「三国志」について違う描き方、捉え方をされている。三国志全体が盛り上がるのは良いことだと考えている。

――「三國志」は長年のファンでシリーズはひととおりプレイしているが、実は「三國志13 with PK」の後、そろそろ「三國志14」が出るのではと思っていた。というのも続編が出る周期は、割とパターンがあるような気がしている。感想としては、今まで「三國志」シリーズにおける改良や改善、新要素は、ゲーム性がガラッと変わるようなモノが少なく、徐々に徐々に改善を加えていく感じがしている。本作はプレイスタイル、プレイ体験において、これまでのシリーズ作品との最大の違いは何なのか? またどのような方法で、古いユーザーと新しいユーザーの両方を訴求するか?

越後谷氏: まず過去作との違いで、一番心がけているのは、よりシンプルにしていくこと。これまでナンバリングの初代から13まで色んなシステム、バトルを作ってきたが、どんどん細かく深くディープになっていった。今回14で、最初のチームディスカッションで出てきた意見は、「初代『三國志』はやっぱりおもしろかった」ということ。何がおもしろかったかというと、シンプルに国盗りを楽しめるという部分で、「その国盗りをシンプルを楽しむところを今の技術で表現できたらいいよね」というのが今回の出発点。

 システムはIXや11を踏襲する形で、シンプルに楽しめるように作っていこうと。それによってオールドファンが再び楽しめるように、長年培ってきた深い部分は深いままにして、その両立ができれば、昔のファンは懐かしもを持って遊んで貰えるのではないか。

 シンプルな部分については、色塗りの表現、まさに初代が楽しかったと思える要素の1つ。初代で、色を塗っていって、自分の勢力の色で、天下全土を塗り替えていく感覚が凄く楽しかった、それを再現できたら楽しんじゃないか。その上で、データはより深く細かく、より武将人数も増えている。そういった部分で昔とは違った楽しさを提供できるのではないか。その融合で考えている。

【色塗り】

――「三國志13」まで、シリーズ30年で培ったものがあると思うが、「三國志14」で改革していく中で、ゲームがどのようなパフォーマンスに到達したら成功と考えているか?

越後谷氏: 今回、あえて色塗りという部分を含めて、初代のテイストを出そうというところは心がけて作っている。その意味では、昔のファンがもう1度遊んでくれて、「これおもしろいよね」と言ってくれる、あるいは懐かしく遊んでくれたら今回の狙いは成功なんじゃないかなと思っている。

――「三國志」シリーズを長く開発してきた上で、三国志の歴史において新たな発見は何かあったのか?

越後谷氏: まず三国志の新たな発見については、武将を1,000人まで増やそうとしている。これまでは850人ぐらいいて、そこからさらに150人ぐらい足すことになったが、人選の際にまた一悶着があった。誰を足すか足さないかでまた悩んで、三国志には登場人物がたくさんいることを改めて認識した。色んな武将が関わった中でのドラマであることを作っていて感じて、1,000人の個性付けについても、人によって印象の違う武将がいるので、おもしろいなと感じている。

――過去に水滸伝をテーマにしたゲームを開発されたことがあるが、同じような形で中国の歴史を題材にした別のゲームを作る計画はあるか?

越後谷氏: 今後、三国志に限らず、色んなものにチャレンジしていきたいと考えている。他の歴史題材、たとえば戦国春秋時代も選択肢としては考えられるし、実際「Three Kingdoms」も売れている。他の時代も含めて、ゲーム化できることは検討したいということは、常々考えている。

――「三國志14」は色塗りがポイントということだが、都市ベースのポイントの取り合いではなく、新たなプレイになると思うが、遊び方はどのように変わるのか?

越後谷氏: たぶん一番変わるのは、武将の移動するルートを細かく指定するようになるところ。当然、1つ1つのヘックス、土地をどう塗っていくのかという点において、ルート選択が重要になる。1つ1つ塗っていくことで、結果として全体としての敵国との境界線をどういうポジションにするのかを考えてプレイする事になる。これまでは都市という点を取りに行くだけだったのが、今回は都市を含めた防衛ラインを考えていくようになるので、そこがプレイ感が変わるんじゃないかなと思う。実際、いくつかのバージョンでテストプレイしたが、そこら辺は変わってきている。

【ヘックス】

【ルート】

――AIが大幅に強化され、1,000人の武将に個性を与えるという前提の中で、個性は具体的にどのように表現されるのか。たとえば前作でも命令に従わない武将がいたり、勝手な行動に出る武将がいたが?

越後谷氏: 個性という意味では、君主の市政における管理官の組織図がそもそも違う。たとえば軍事、内政が得意な勢力、そこに勢力による個性の違いは明確に出るようになっていて、機能の違いによって行動パターン、進軍の仕方にも、たとえば色塗りが得意な武将、進軍速度が早い武将がいたりなど、所属する武将によって勢力ごとの攻め方が変わってくる。最終的には色塗りで表現されるようになっている。

――「三國志14」では土地と人材が大きなウェイトを占めるゲームになりそうだが、大きな勢力、人材豊富な勢力が優位で、小勢力がプレイすると不利になるのか? ゲームバランスはどうなっているのか?

越後谷氏: 平たく言うと小勢力は不利(笑)。なので、今まで以上に小勢力で勝つのは相当難しいと思う。そこで活きるのが人材探索であったり、外交、契約になってくる。武将以外で守る方法を序盤駆使していかないと生き残っていくこと自体が難しいと思う。歴史に対してシビアというか、実際弱小勢力は滅びているので、それをなぞる形になる。歴史シミュレーションゲームなので、そういうものだというものが前提としてあって、そこでどう立ち回れば歴史を変えていけるのかというところにゲームとしての面白さがあると思う。

【武将】

 あと難易度については1つだけの難易度に留めるのではなく、イージーからハードまでいくつかの難易度を用意しようと考えている。まずはイージーでプレイしてから徐々に難易度を上げて、ハードにチャレンジして貰うような形にしていきたい。

――「三國志13」は、威名に代表される新システムの中で、威名のようにハードルは下げるつもりで、結果としてユーザーの自由度が下がるような仕様もあったと思う。今作はゲームの方向性をどのように考えているのか。新規重視なのか、コアファン重視なのか?

越後谷氏: 今回、新規というほど、明確に新規に向けたゲームではないが、ゲームをシンプルにしていこうというのは、大事なポイントだと考えていて、初代「三國志」の頃は、みんな新規だったのに、みんながおもしろいと思って、シリーズ化に繋がっていった。ナンバリングが進むにつれて難しくなっていたところをシンプルにしてわかりやすくしようと、難解なところをより単純化して、万人向けの仕様になるように心がけている。ゲームとしてはシステムはむしろコアファン向けかもしれないが、でも遊び方はシンプルになるという感じ。

【見た目はシンプルだがゲームはコア向け】

――簡体中文版も開発中ということだが、これは中国独自のバージョンなのか、それともグローバル版の中に簡体中文も含まれると言うことか?

越後谷氏: 今考えているのは、PS4において中国本土で販売するもの。他にPCもあるので、どうしようか検討中。PS4は中国バージョンとして作っている。ローカライズ自体は、PC版でも行なっているが、それがどういう提供の仕方になるのかは現在検討中。

シブサワ・コウ氏「中国の歴史や文化に対して敬意を表する」

――「三国志」が登場した1985年頃は、三国志ブームで良い環境だった。そこから30年たって、今日の日本の若者は、三国志に対する熱は高いのか? 昔ほどではないのではないか?

越後谷氏: むしろ昔よりも高いと考えている。私自身は「三国志」を好きで読んでいたし、当時も熱は高かったが、今ほど皆さんが知ってるような、当たり前の存在ではなかった。当時はまだ知らない人も多かった。今は当たり前にみんなが三国志について知識を持っている時代になっていると捉えている。より広がっているのではないか。そのへんはシブサワコウがお答えいただいた方がいいのではないか(笑)。

シブサワコウ: ちょっといいですか。1985年当時の日本では、三国志というストーリーはそれほどメジャーなストーリーではなかった。ごく一部のファンだけが読む小説だった。吉川英治の「三国志」。あとはマンガ、人形劇で、三国志のストーリーを楽しんでいた。

 それから34年がたって、今はほとんどの日本人は三国志という言葉や、劉備、曹操、孫権、関羽、諸葛孔明などをほとんどの日本人が知っている。三国志の存在や、武将がポピュラーになってきたのはゲーム、マンガ、人形劇、特にゲームの影響が大きいのではないか。「三国志 ゲーム」というキーワードで検索するとたくさん出てくるので、その認知は今でも深まっていると言えると思う。もっとも、私の周りにいる人たちはゲームの関係者ばかりなのでだからみんな知ってるだけかもしれない(笑)。

ご存じ「三國志」シリーズゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ氏

――現在、ゲームのスマホ展開が進んでいる。実際、「大航海時代」をスマホで展開することをしているし、「三國志」もスマホ化を推進する予定はあるのか? また次世代機も出るが、そこの変化において「三國志」はどう変わっていくのか? 技術面も含めて聞かせて欲しい。

越後谷氏: 現在の私の立場は、コンシューマーの、歴史シミュレーションゲームの責任者という形になっているが、今までと変わらず、「三國志」シリーズは新しいハードに適した形で、引き続きより進化していく形で出していく。スマホや別のプラットフォームにも広く展開していく、どちらもやっていく。あるものすべてに「三國志」、歴史のゲームを展開していく。なんでも対応していく。あるものすべてに「三國志」を登場させたいという考え方。

インタビューでは、参考映像として「仁王2」のトレーラーも披露。発売時期未定ながら中国でも発売したいという

シブサワコウ氏: 三国志という中国の偉大な歴史、文化資産をもとに、1984年に出会って、1985年に初代をリリースして34年間、日本、中国、欧米のゲームファンに長年支持していただいて、今回「三國志14」を発表することができて幸せに思っている。

 これまでに三国志以外にも、水滸伝、項羽と劉邦、封神演義、チンギス・ハーン。こういった中国の歴史をテーマにしたゲームにたくさん取り組んで、世界のゲームファンの方から熱き支持をいただいて現在に至っている。中国の歴史や文化に対して敬意を表すると共に、SIEさんも中国で積極的にPSプラットフォームを展開されている。中国の歴史ゲームである「三國志14」も、そして先ほどお見せした「仁王2」も、SIEのプラットフォーム戦略の中で中国、日本、そして欧米で販売していきたいと考えている。

 先ほど、スマホとコンソールのどちらでゲームを展開していくかという質問があったが、もちろん両方進めていく。スマホはスマホで簡単に楽しめるようなゲーム、PS4については最高のゲームプラットフォームとして、その高いパフォーマンスを最大限に活用して、PS4でしかできないゲームをどんどん開発していきたいと考えている。「仁王2」は、PS4のハードスペックを極限まで活用して作っている。発売時期は未定だが、発売になったらぜひ皆さんも楽しんで欲しい。