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【FFXIV FAN FES】開発パネルでキャラや装備のデザイン秘話を生江氏が披露
アリゼー、ヨツユらの誕生秘話。ヴィエラやヤ・シュトラ新装備など新拡張の情報も
2019年2月3日 02:22
パリで開催中の「ファイナルファンタジーXIV」オフラインイベント「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2019 in Paris」において、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏とリードキャラクターコンセプトアーティスト生江亜由美氏によるトークセッションが行なわれた。このセッションでは、企画からどのようにNPCキャラクターのデザインが作られていくのかといった手順の説明や、キャラクターの装備作成裏話、「漆黒のヴィランズ」に新種族として登場する「ヴィエラ」のバリエーションデザインなど多彩な話が多くのイラストとともに紹介された。
生江亜由美氏は「FFXII」のオープニングに登場するアーシェのウェディングドレスデザインや、エンディングのパンネロの踊り子姿などをデザインしている。「FFXI」ではジョブのコスチュームを担当し、コルセア、青魔道士、からくり士、学者、踊り子などの衣装デザインを手がけた。「FFXIV」には「旧FFXIV」から現在までずっと関わっており、アルフィノ、アリゼー、トールダン7世、カヌ・エ・センナやヨツユなど、主要なメインキャラのデザインや赤魔道士のジョブ装備などを担当している。
ヨツユを例にキャラクターデザインのワークフローを紹介
最初に「紅蓮のリベレーター」の悲劇的な悪役ヨツユを例に、NPCキャラクターの開発ワークフローを紹介した。最初はかなり緊張して言葉が途切れ気味だった生江氏だが、デザインについて話を進めるうちにどんどん饒舌になっていき、仕事に対する愛情とプロ意識を感じることができた。
企画と発注
最初に企画側からキャラクターのコンセプトイメージを基にデザインチームに発注がかかる。ヨツユの場合は、名前と、帝国軍の上官であるということ、ドロンジョ様的な、いわゆるセクシーで美形の悪役キャラという3つを基に最初のデザインが考えられた。
生江氏曰く、ヨツユという、夜霧を連想させる名前の響きなどもあり、イメージしやすかったという。ここからラフを作るためのモチーフとして考えられたのが、サボテンの一種で一晩だけ白い大輪の花を咲かせる「月下美人」、その月下美人の蜜を吸いに来るという「コウモリ」、そして「月」、「夜霧」、「アゲハ蝶」、中世~近世の女性がアクセサリーとして腰につけていた小物入れであるシャトレーン風に吊るした「印籠」など。これらのモチーフを活かして最初のデザインが作られた。この中でも特に月下美人は、生江氏が入れたいとこだわった。
艶やかだが儚い月下美人はヨツユのイメージにぴったりの花だが、実はその時点では生江氏はストーリーを知らなかったのだそうだ。そのため、シナリオを観終わってとても感慨深い気持ちになったという。
ラフ選定
ラフを作る時には、3Dモデルになったときの動きを考える必要がある。生江氏曰く「日本の振袖をMMOの中で表現するのは難しい」。和服を限られたリグやポリゴンの中で自然に表現する難しさは、多くの人が実感として理解できることだ。
4つ作られたヨツユのラフのうち、生江氏としては本来の和服に近い「A」のデザインにしたかったのだそうだが、それは難しいということで裾をマーメイドドレスのように広げたAラインのシルエットになった。袖はスリットを入れて後ろに広がるようなデザインになった。このデザインでも、動きをかなり制約することでようやく実現したそうだ。
「C」と「D」のデザインは素足を大胆に見せているが、これがNGになる可能性も考慮して、ブーツをはいた「B」のデザインも作られた。
顔のバリエーションも、他のキャラクターとの差別化を意識津々何パターンか作られている。これらのデザインを考えている時、生江氏は「ヨツユはそのままで美しいと思っているので、神をお団子にしたりアレンジしたりはしないキャラクターなんだ」という吉田氏の力説で一層キャラクターを掴むことができたのだそうだ。
またヨツユが手にしている長いキセルは、当初は企画側からコストの関係で他のNPCが持っているものと同じ短いものを使いまわすというオーダーが来ていた。しかし、それでは様にならないという想いから3Dチームと相談して、企画チームが思っているほど大変ではないということで、今の長いキセルが採用になった。「さりげなく持っているものでも、開発内では話し合いが行なわれているということを分かっていただけると嬉しいです」と生江氏。そういうこだわりや調整を経て、ヨツユというキャラクターが仕上がっていく。
アリゼーの衣装チェンジ裏話
「4.5」でついに正ヒロインに昇格したとの評判が絶えないアリゼー。「新生エオルゼア」で登場したときには、アルフィノと同じ服装で、「大迷宮バハムート」のガイドキャラクターとして本編にはわずかに登場するだけだった。「蒼天のイシュガルド」でメインクエストにも登場するようになり、「3.4」では衣装を一新。「紅蓮のリベレーター」後半のストーリーでは、アルフィノに変わって暁の血盟を引っ張っていくような重要キャラに成長し、光の戦士にとってもなくてはならないキャラクターとなっている。
そんなアリゼーだが、「新生エオルゼア」では、NPC1人ぶんのコストで役割を持つ2人のキャラクターを作るために、双子という設定でアルフィノと共に生まれたという涙ぐましい過去を持つ。
この時の吉田氏から生江氏へのオーダーは、「特殊感を出すために、浮くくらいはじけて欲しい」、「ストレートなSFライン」、「トリッキーで中二的なキャラクター」、「若き天才科学者」という4つだった。そうして生まれたのが、あの青い服を着た初期デザイン。生江氏は、周りとはまったく異質な服を着た2人が、街の群衆に混じっているシーンを見て「こんなところに立つとは聞いていなかった」と衝撃を受けたことを今でも覚えているそうだ。
「蒼天のイシュガルド」になってようやくコストにも余裕ができて、アリゼーに新しい服を着せることになる。その時の発注は「ミンフィリアに変わり、プレーヤーを導く存在になる予定」、「キャラの成長を見せたいので、可愛いだけでなくかっこいい要素」、「イシュガルドが舞台なので、多少暖かそうにして欲しい」、「バトル参加も想定してほしい」というものだった。
吉田氏によると、当初はミンフィリアに変わる新リーダーとして企画チームからアルフィノを推す声があった。だが直前に奢っていた心をへし折られたばかりのアルフィノがまたすぐにリーダーになるのはおかしい、きっと彼は断るだろうとそのアイデアを没にして、代わりに当初は盟主不在のままストーリーの中で成長したアリゼーがやがてリーダーになっていくというアイデアで固まった。その話から3年半たった現在、ようやくアリゼーが暁の先頭に立つだけの気概を備えてきている。
また、デザインにあたって赤かピンクを入れて欲しいという話もあったのだが、この当時すでに開発に入っていた「紅蓮のリベレーター」で赤い服のキャラクターを大勢作っていたために、「さすがにもう赤は……」ということで現在のデザインとなった。「5.0でもアリゼーのコスチュームは変わるの?」という吉田氏からの質問に対して、「私自身は新しいものを着せてあげたいと思ったのですが……」と生江氏は言葉を濁していた。「5.0」でどんなアリゼーと出会うことになるのか楽しみだ。
ヤ・シュトラの新装備作成裏話
「蒼天のイシュガルド」で髪型と衣装を一新したヤ・シュトラ。白を基調にしたデザインは、シャーレアンの賢人であり、白魔道士のヤ・シュトラのためにシャーレアンの白衣というコンセプトで生江氏がデザインしたものだ。
以前のコスチュームはプレーヤーの装備を流用したもので、「強い魔法使いと聞いているわりに、コスチュームに一般人感があったので、なるべく強くかっこよさそうに見せる」ものを作ったという。
ヤ・シュトラはパリで公開された新トレーラーで、今度は黒魔道士風の衣装を着て登場する。この黒魔道士衣装のコンセプトアートも公開された。ローブやドレスはいくらでも描いていたいという生江氏は、大量のラフを披露したが、実際は裾や袖のバリエーションを含めると更に倍ほどもラフ絵があるそうだ。
そんな中から吉田氏が選んだのは、膨らんだ裾がほつれた野趣のあるデザイン。吉田氏が「これをチョイスするということは、他を使わなくなるということで、申し訳ない気持ちがある」と言うと、生江氏は「デザイナーはアイデアを出してなんぼなので、そこは大丈夫です」とプロらしい返答を返していた。
今回は、最初に口元だけを見せて、その後フードが飛んでヤ・シュトラだとわかるような演出のために、フードとマントが追加された。衣装はビジュアルワークスが制作するシネマティックトレーラーのために、細部まで細かくデザインされている。「ボロボロの衣装ですが、ちぎれ方もデザインなので、嘘も付きつつ作っていくのに苦労しました」と生江氏。一見ボロボロの衣装でも、実際には細部まで計算され尽くしているのだ。
赤魔道士のジョブ専用武器は香水瓶がモチーフ
赤魔道士のジョブ専用装備と武器も生江氏がデザインしている。企画チームからは、武器としてレイピアを使いたいけれど、剣自体はすでにたくさんあるので、それとの差別化をデザイナー側で考えて欲しいというオーダーが来た。
そこで出てきたアイデアが香水瓶をモチーフにした魔器。さらにギミックを考えるのが得意なデザイナーから出た、レイピアにくっ付けて対にしたらいいのではというアイデアを採用して剣と輝く魔器がセットになった現在の武器が考案された。
さらにサプライズとして「漆黒のヴィランズ」の赤魔道士専用装備も紹介された。装備は男女別に分かれており、男性は特徴的なロングブーツと短めの肩マント、女性は腰を絞ったXラインシルエットのコートというデザイン。コートの下は短めのタイトスカートで軽快ながら華やかな雰囲気の衣装だ。
「FFXIV」ではロングコートのAラインシルエットの衣装が多いので、今回は敢えてXラインデザインにしたという。ジョブ専用装備は男女同じが基本だが、今回は開発初期でまだ3Dチームに余裕があったことからアートチームとモデリングチームが頑張って男女別デザインを実現させたのだそうだ。
ヴィエラは前髪ありなしや耳の形が選べる
「漆黒のヴィランズ」の新種族「ヴィエラ」のコーナーは、前回のファンフェスでもしヴィエラを実装するとしたらこんな感じに? といって提出された資料が実は実際のコンペ資料だったことが分かった。あのアートワークが作られた時にはすでヴィエラの実装が決まっており、アートワークはデザインチーム全員でデザインを持ち寄るコンペ用に作られたものだった。
プレーヤーキャラとなるため、顔や髪型にはバリエーションが必要だが、なるべくかぶりのないよう多彩な顔や髪型のバリエーションを作るために、吉田氏、シナリオチーム、デザインチームが集まって選定していく。シナリオチームが参加するのは、シナリオの中で特定の髪型や顔が必要になる場合があるからだ。
髪型については以前からプレーヤーの要望として、前髪のバリエーションを選ばせてほしいというものがあり、それを実現するために、ヴィエラでは前髪を非表示にすることで前髪がある場合とない場合の髪型を選べるようにした。また耳もぴんと立った耳と、途中で折れ曲がった耳から選べるようだ。
生江氏、もし何の制約もないなら「ふわふわの布を動かしてみたい」
最初に吉田氏から「もしコストを考えなくてもいいとしたら、どんなコスチュームを作ってみたいか」という質問が投げかけられた。生江氏は「作ったことがないことをするのが楽しいというタイプなので、CGでは難しいふわっとした布の動きを思い切りやってみたい」と答えた。吉田氏は「う~ん」と悩んだあと「グラフィックスエンジンをリボーンしないとだめだな」と言いつつも、プレーヤーからのフィードバックに応えていくのと同様に、作っている人間からの要望にも応えていきたいので、次の変化を考えていきたいと期待の持てる発言をしていた。
また、「旧『FFXIV』からずっと開発に携わった中で、印象に残っていることは?」という質問に対しては、「新生エオルゼア」に向けた体制の変更を全く知らないまま会議室に集められた開発スタッフが、当時社長だった和田氏より「次のプロデューサーは吉田さんにやってもらいます」と発表された時、生江氏はてっきりイラストレーターの吉田明彦氏の事かと思って非常に驚いたのだそうだ。
当時は開発スタッフもほとんど吉田氏を知らなかった。生江氏も「ちゃらい人が出てきた」と思っていた。そんなスタッフの前で吉田氏は「たぶん僕のことを知ってる人は少ないと思う。でもこれからの仕事ぶりをみて、自分と言う人間を判断して欲しい」と語ったのだという。信頼関係も何もかもゼロからの出発だった「新生FFXIV」。多くの開発スタッフの努力やこだわりが、現在の成功を生み出した。今回のトークセッションではそんな開発スタッフの思いにも触れることができた。
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