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【インディーゲームショートレビュー】ミサイルを使え! 潜るボタンはどうだ? やりこむことでタイムが劇的に縮まる楽しさ「モグモグガンガン」

配信中(12月14日配信)



基本プレイ無料

 ベテランゲーム開発者・奥谷順氏がこだわりを込めたAndroid/iOS向けレースゲーム「モグモグガンガン」、12月14日より配信している。配信開始時にインタビューを掲載したが、今回はプレーヤーとしてその感触を語りたい。

 本作をプレイしていて感じるのは「とてもしっかりしたゲームだなあ」というところだ。地面をひたすら掘り進み、他のプレーヤーとワチャワチャと足を引っ張り合うレースを楽しむその気持ちの良さは、ゲームを長年作ってきた開発者ならではの分厚い背骨が垣間見える。ゲームのしっかりした感触があってこそ、楽しいレースが実現できるのだ。

 本作は初期のマシンで、覚えていないコースを走ってもCPU戦なら勝てる事も多いし、対戦でもそこそこうまく走れるように感じる。しかし試行錯誤すると「新しい道」が見えてくる。「こうすればうまく走れるんじゃないか」、「ここはこうすれば良いんじゃないか?」そういう思いつきがタイム短縮に繋がったときの気持ちよさはたまらないものがある。筆者もまだ入り口に立っただけだが、今一度レビューで「モグモグガンガン」の楽しさをお伝えしたい。

アロービットゲームスタジオの奥谷順氏。本作は奥谷氏のこだわりに満ちたゲーム性を盛り込んでいる

気軽で楽しい対戦、運が良ければ簡単に勝てるが……

 筆者が「モグモグガンガン」と出会ったのは東京ゲームショウのインディーゲームコーナーだ。このコーナーには様々なインディータイトルが出展しているが、本作は触ってすぐに「しっかりしたゲームだなあ」と感じた。ベテランのゲーム開発者がそのノウハウを投入し、手触りの良いゲームを作ってる、そういう事が伝わってきたのだ。

 改めて本作の概要を語っておきたい。「モグモグガンガン」はモグラが様々なドリルマシンに乗り込み、地中を掘り進む対戦を繰り広げるレースゲームだ。本作は「マリオカート」に代表される「バトルアクションレースゲーム」だ。レース中、地中に埋まったボックスを取り、「ミサイル」や「巨大化」、「ニトロ」などのアイテムを取り、相手を邪魔して勝利を目指す。

「モグモグガンガン」はコミカルな雰囲気と、優れた操作性、レスポンスに優れており、触ると作り込みの高さがわかる

 本作はプレイするとプレーヤーの気持ちよさを追求しているのがわかる。スワイプによるマシンの挙動、モリモリと地面を掘り進むマシンが進んでいく姿、ニトロを使ったとき「ギュィーン」という音と共に高速移動する感じ、敵車にミサイルを当てたときに、一瞬敵車が遅くなり、こちらが抜き去る感覚など様々な部分がしっかりしているのだ。この感触はゲーム開発への強いこだわりがあるからこそ生まれるものだと思う。

 「モグモグガンガン」ではチュートリアルとして「1人で遊ぶ」で数コースプレイすることでボーナスが得られ、マシンを購入することが可能となる。最初のマシン「モグマシン」はギアがオートマだが、3速、5速のギアチェンジ可能なマシンもあるし、ハンドリングや耐久度、最高速などパラメーターも異なる。自分のプレイスタイルを考えてマシンを購入し、他のプレーヤーと対戦を繰り広げるのだ。

 「フリー対戦」は他のプレーヤーがルームに飛び込んでくるとカウントダウンが始まり対戦が行なわれる。時間帯にもよるが筆者は4人対戦まで体験することができた。縦一列に並んだ宝箱を一気に全部取ってしまうようなプレーヤーもいて驚かされた。初期のマシンのままの人も多いが違うマシンを選んでいるとそれだけでちょっとうまいプレーヤーのような威圧感が感じられるのが面白い。

フリー対戦は対戦者が現われるとカウントが始まり、戦いがスタートする
対人戦はCPUとは一味違った独特の緊張感がある

 本作は「ホストになる」で対戦ルームを立ち上げホストルームを作り、そこにゲストが参加する対戦も可能だ。奥谷氏の目指す対戦風景はここにある。学校や職場で、小学生がゲームボーイを持ち寄って対戦をしていたように、スマホを持って集まり対戦をして、結果に一喜一憂する、そういう対戦風景こそ「モグモグガンガン」の開発者がプレイ風景として考えているものだ。残念ながら筆者は体験できてないが、「モグモグガンガン」は、このために型落ちのスマホのスペックでもプレイ可能なように設計されている。ぜひ職場の仲間などとも遊んで欲しい。

 触ると楽しさの伝わるゲームだが、一方で、本作は地味なで簡単なゲームという印象も持たれてしまうだろう。グラフィックスは地層が重なった茶色中心だし、マシンはメカ好きにはグッとくるところがあるが、デザインはシンプルだ。

 ゲーム性に関しては初心者でも運が良ければ勝ててしまう。CPU戦、フリー対戦でも単純にミサイルを連射したり、アイテムを適当に使うだけでトップをとれたりする。数回プレイして「ふーん」といってプレイを止めてしまうユーザーもいるのではないかと思う。しかし、それは違うのだ。筆者自身、「タイムアタック」を意識することで本作の面白さが見えてきた。本作の魅力を掘り下げていきたい。

様々なマシンが用意されており、自分なりの走りを追求できる

タイムアタックで見えてくる本作の奥深いゲーム性、やりこむ楽しさ

 「モグモグガンガン」はやりこみ推奨のゲームだ。基本的なボタン配置やアイテムの性能、駆け引きなどお覚えた上で対戦時に現われたコースでプレイし、その場の感覚で楽しむ、というプレイでは到達できない、一歩踏み込んだゲームの楽しさが見えてくる。

 今回筆者が集中的に遊んだコースは「不思議の森」のショートコースだ。ここでは調子が良いと1分9秒台で走ることができた。短いコースで燃料回復アイテムも宝箱も多く、アイテムを使って敵車を邪魔していけば1位はとれる。しかし「タイムアタック」というこだわりが生まれると様々な要素が改めて意味を持ってくる。

筆者が愛車に選んだ「シングルドリラー」。3速のギアがついていて、基本的なマシンより速い

 筆者は「シングルドリラー」という、昔のF1カーにドリルがついた様なマシンを愛車にしている。この車は3速のギアがついていて、基本的なマシンより速い。そして固い地層でもギアを切り替えることで早く進める、初期のマシンよりちょっとだけテクニカルなマシンだ。このスピードを活かすために、コースでどう取り組むか、というところがテーマになる。

 最初の考えたのは「ピットポイントによる数を減らす」ということ。本作では車に燃料ゲージがあり、走ったり、敵車と当たったり、ミサイルに当たるとゲージが減り、0になると数秒動けなくなり大きなタイムロスとなる。このため地中にあるピットポイントに触れて燃料を補給するのだが、最初のポイントに無理によらなくても大丈夫だ。これを飛ばすことで軟らかい地盤をずっと進むことができる。

調子が良いときに記録できた1分9秒台のタイム。ここからゲーム性を考えてやりこんでいった

 「不思議の森」のショートコースでポイントとなるのは中盤でどうしても固い地盤を進まなくてはいけないところ。ここではどうしても遅くなる。しかし実は「巨大化」のアイテムを使うことでこの地帯をくぐれることに気が付いた。巨大化したマシンは地形の影響を受けないのだ。そして「ミサイル」は前方に敵がいない状態で撃つとまっすぐ地面に穴をあけて進み、その穴を通ることでマシンのスピードが上がる。コースを覚えておくことでこのミサイルのスピードアップもうまく使えるようになった。

 もう1つこのコースで問題となるのが「化石」だ。この化石に触れるとスピードダウンしてしまう。この時使えるのが「潜るボタン」。このボタンを使うことで短時間マシンが画面から消え、地形の影響を受けず、ミサイルなども回避できる。このアクションを覚えたとき大きくタイムが縮められとてもうれしくなった。こういった試行錯誤とテクニックの習得により、1分5秒台のタイムを出せるようになったのだ。

 このタイムを出すためには多くのアイテムが必要だ。このためハンドルさばきを工夫し、できるだけ宝箱を取る必要がある。またギアに関してはこのコースの場合は細かいギア操作が必要でなく、「いかに最高速のギアのまま走ることができるか」を実現すれば良いことがわかった。まだタイムが削れないか、今も練習している。

ミサイルを撃つことで穴が開き、タイム短縮ができる
固い地盤は巨大化することでタイムロスが防げる

 今回筆者が遊び込んだのは多数のコースのうち1つだが、フリー対戦でこのコースを走ることになると「負けられない」という気持ちになる。他のコースも同じようにやりこめばドンドンノウハウが積み重ねられるだろう。正直ようやく「モグモグガンガン」の魅力の一端に触れることができた、と感じた。これから気合いを入れてプレイしていくことで対戦にも熱が入ってくるだろう。

 正直、「モグモグガンガン」はその魅力に気が付いている人がまだ少ないんじゃないかという感触がある。対戦はもっと盛り上がっていいと思う。「職場で他の人達とゲームで遊ぶ」という習慣がある人達は、ぜひ本作をダウンロードし対戦を楽しんで欲しい。地味だし、CPU戦では偶然1位をとれることも多く、せっかくダウンロードしても数回遊んで終わりという人もいるかもしれないが、それはもったいない。

 もう少し改良して欲しいところと感じたのが、マシンだけでなく、マシンカラーまでかなり値段が高く、通常のプレイではかなりやりこまなければ変えられないところだ。課金すれば確かに新しいマシンも簡単に手に入るのだが、カラーはもう少し手軽に手に入った方が「愛車」という感覚がつかめたのではないだろうか。決して本作のコンテンツの値付けが他のゲームと比べて高いとは思わないが、タイムボーナスをトロフィー形式でつけコインが得られるなどユーザーの背中を押す要素も欲しいと感じた。

 繰り返すが開発者がユーザーに楽しんで欲しいという想いを込めた、とてもしっかりしたゲームである。ぜひ触ってみて、友達と対戦し、そして勝つためにやりこんで欲しい。

1分5秒台をコンスタンスに出せるようになった。ここからさらに刻めるのか、他のコースもやりこんでみたい