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進化するeスポーツ「PUBG JAPAN SERIES season1」が堂々開幕
キルポイントの変更により戦場が活性化! 序盤からバトルが多発する魅力的な展開に
2018年9月23日 00:00
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」の公式リーグ「PUBG JAPAN SERIES(PJS)」のseason1が9月22日、東京ゲームショウ PUBG Corpブースにおいて開幕した。「PJS Season1」は、2018年2月からαリーグ、βリーグという形で準備が進められてきた公式リーグの正式バージョン。約7カ月間間、2回のテストリーグを経て、ついに公式リーグがスタートとなった。
「PJS season1」では、αリーグ、βリーグ、そして世界大会PGIの経験を踏まえ、多くの点で更なる改善が加えられている。基本的な部分では、試合数が1日3試合、6日間18試合から、1日4試合、6日間24試合に増加。1日に連続して4試合もこなすというタフな工程ながら、より多くの試合を行なうことにより、運の上振れ下振れをできるだけ排除したより正確な実力を測ることが可能となる。
増えた6試合は、新たにMiramar(FPP、1人称視点モード)があてられ、従来のErangel(TPP、3人称視点モード)、Erangel(FPP)、Miramar(TPP)に加えて、TPP、FPPが2試合ずつとなった。
Class1、Class2と呼ばれていた上位下位の区分けは、Gradeと呼称が変更になり、Grade1は従来通りすべてオフライン、Grade2はすべてオンラインで行なわれ、βリーグ同様に、Phaseごとに入れ替えが発生する。下位6位は強制的に降格、上位6位は昇格、Grade2で降格し、PaR(入れ替え戦)でもさらに7位以下になると、契約が解除され、名実共に“アマチュアチーム”に降格となる。どのチームに対してもチャンスを提供する一方で、実力を発揮できなければ消えていくという厳しい世界だ。
Grade1出場選手に対しては、オフライン会場に赴くための交通費とファイトマネーが支給される代わりに、PJSが定める「選手行動規定」に従う義務が発生し、プロとしての振る舞いが求められるようになる。正式リーグにおけるファイトマネーの金額については明らかにしていないが、βリーグよりも引き上げる方針と言うことで、「PUBG」だけで食べていける環境が整いつつある。
さて、9月22日のDAY1は、4ゲームが行なわれた。11時過ぎから休憩を挟みながら1時間刻みで約5時間ほどで、心身共にこれまで以上のタフさが要求される。観戦する方もなかなか大変だったが、試合する方はもっと大変だろう。いかに長丁場で、高いスキルレベルを維持しつつ、精神力を集中し続けられるかが問われる戦いとなる。
実況解説はシンイチロォ氏とSHAKA氏。アナリストにはabara氏という布陣。キャスターがOooDa氏ではないのは、OooDa氏は東京ゲームショウ3日目は、ガンホーの「パズドラ」の実況の仕事が先約として入っていたためだ。逆に言えば、当初、東京ゲームショウにおいてPJS season1の実施は、想定していなかったということを意味する。
Oooda氏はオープニングで“大物風”のビデオレターで大人の事情で参加できなかったことを詫び、シンイチロォ氏に「明日来るじゃないですか!」と突っ込まれていたが、「PJS」ファンにとってはお馴染みの陣容で、「PJS season1」が実施されていくことになる。
肝心の試合は、筆者が期待した以上に進化していた。よりわかりやすくなり、おもしろくなった。仕事を抜きにして、リラックスした状態で、ゲーム仲間とツッコミを入れながら観戦を楽しみたい、そういうクオリティの“興行”になっていた。
メイン配信に加えて、全体マップのみの配信も行なわれたほか、上位3チームだけを追いかける配信も追加。メイン配信も、各種情報が見やすく整理され、新たに投擲武器の軌跡がわかるようになっていたり、ミニマップ上でも、全体マップ同様に、細かい戦況がわかるようになっている。これまではメイン配信と、マップ配信の2画面で足りたが、今後は、上位チームの配信も加わり、3画面はないと行けなくなった。観る方も大変である。
レギュレーション上の決定的な変化は、キルポイントが5ポイントから3倍の15ポイントに増やされたことだ。当初、「PJS」運営チームはキルポイントを増やすことに対して、公式サイトでわざわざ否定するアナウンスを出すなど、極めて保守的なスタンスを取っていた。しかし、PUBG Corp主催のPGIで試験的にキルポイントを増やしたところうまく機能したことから、公式大会ではグローバルで一律キルポイントを増やすことを決定、PJSもそれに倣うこととなった。
キルポイントを増やしたことによって何が変わったかというと、端的に言ってすべてが変わった。しかも良い形に。
従来のPJSのレギュレーションでは、キルポイントが低かったため、極端に言えば、リスクを取ってキルを稼ぐより、トイレに隠れて順位を上げた方が総合ポイント的には有利だった。このため序盤はお互いに戦闘を避け、仮にファーミング中に戦闘になり、1人が負傷しても、チーム全員の位置が捕捉され全面戦争に突入するリスクを避けるために、あえて見殺しにするような展開もままみられた。
これはこれで何が何でも生き残るという、バトルロイヤルのドラマを描く「PUBG」のゲーム性に合致している一方で、筆者は過去に繰り返し指摘したことだが、「それは果たしてeスポーツとしての価値観に合致しているものなのか?」という点は常に疑問だった。αリーグでも話題になった、サークルの過半が水域になった際に、多くの選手が水中に入ったまま戦闘を積極的に行なおうとしなかった“全日本PUBG水泳大会”(OooDa氏の発言)事件は、それを象徴する出来事だと思うが、「PUBG」そのもののコアバリューと、“「PUBG」eスポーツ”のそれは切り分けて考えるべきではないかと感じていた。
今回、キルポイントが3倍になったことで、これらの点に大きな変化が生まれた。具体的には、序盤に敵と遭遇した際、避けるのではなく、散開しているメンバーを集めて包囲殲滅戦を展開するようになったし、お互いに逃げなくなった。逃げてもいずれ戦わなければならず、後半に敵が四方八方にいる状態で戦うよりは、純粋に4対4の戦いに持っていけるという判断もあるのだろうが、お互いにファーミングを譲り合うというeスポーツらしからぬ退屈な展開から、お互いにとって“60ポイント獲得の場”として、序盤から熾烈な撃ち合いが観られるようになった。ハッキリ言うが、これこそが観たかったものだ。
もうひとつ、良いなと思ったのは、仲間の救出に全力を注ぐようになったことだ。繰り返しになるが、序盤のメンバー負傷は、他のメンバーが救出に動くことで、それを予期して待ち構える敵の罠にハマり、チーム全体を危険に晒す可能性がある。このためあえて見殺しにして、残りのメンバーを生かすという戦術を採ることが少なくなかった。個人的にはこれもeスポーツとしての価値観に合致しないと思っていた。メンバーの命より順位の方が価値があるからこういうことになる。
新ルールでは、より多くのキルを稼ぐための打撃力を維持するために、メンバーの生存がより重要になった。敵が積極的に攻めてくる以上、逃げ続けるわけにはいかないし、2人よりも3人、3人よりも4人のほうが、キルチャンスを活かしやすい。また、個々のスキルが上がり、地形の強みやグレネードを上手く活用することで、1人でチーム丸ごとキルをすることも珍しくなくなっており、1人の命が従来よりも格段に重くなっている印象がある。
本日の試合では、誰かが負傷すると、他のメンバーは即座に救出に動き、序盤からなけなしのスモークを炊いて是が非でも救出しようとするシーンが随所で観られた。救出後は反撃に出たり、一旦戦線を整えたり、いずれにしてもチーム同士の駆け引きが行なわれる。しつこいようだが、これこそが観たかったものだ。
このキルポイントの仕様変更により、前半15分間の紳士協定的なファーミングタイム、“ファニーウォー”は完全に終焉を迎え、序盤から積極的に仕掛ける動きが活発化してきた。これはeスポーツとしての「PUBG」を語る上で、エポックメイキングな進化だと思う。
残る課題はわずかに1つ。チーム間で降下位置がほぼ棲み分けされ、全チームが安全にファーミングできる点も問題だと思っている。降下直後の病院やカジノで安全にファーミングできるのはやはり違和感があるし、お互いにほぼ丸腰状態から幾多の死線をくぐり抜け、最終的にフル装備で建物から出てきたチームがドン勝にグッと近づくという流れになるべきだと思うからだ。
これについては残念ながら「PJS season1」でもそのままだったが、これも今後、あえて降下直後から仕掛けるチームが出てくるかもしれないし、個人的にはそういうムーブが出てきて欲しいと願っている。
ところで、筆者は他の取材もあって、DAY1の4試合すべてを観ることはできなかった。何度も往復しながらところどころ観戦し、最終ムーブが他の取材と被ったときは、こっそりYouTubeで観戦したりしながら、大まかな展開を追うことができたが、本音を言えばベタ付きでずっと見続けたいと思うぐらいおもしろかった。
「PJS」は、βリーグから少し期間が空いたということもあり、ほぼ全チームでメンバーの入れ替えが発生し、強さの予想がしにくい状況になっていた。そうした中で、βリーグで優勝し、世界大会に勝ち進んだ王者Crest Gaming Xanaduを筆頭に、SunSister Suicider'sや、Rascal Jester、Zoo Gaming、SCARZといった名門チームが、チームのファンの期待に応える形で上位に食い込んでいるのがとても良かった。
とりわけ、βリーグで満足のいく結果を出せなかった「PUBG」随一の名門チームSunSister Suicider'sが、元SunSisterのCiNVe選手がカムバックした上で、1回のドン勝を含む、23キルの上々の成績で初日2位に食い込んでいるのは、「PJS」ファンとしては目頭が熱くなるストーリーだと思う。やはり個人的には、名門チームは、下位Gradeから挙がってきた気鋭のチームを憎たらしいほどの強さで蹴倒す存在であって欲しい。
「PJS season1」は明日9月23日にDAY2を実施し、その後は、週1回、毎週土曜日に4試合ずつ行なわれ、途中入れ替え戦を経ながら、10月まで戦いが行なわれる。「PUBG」ファンはもちろんだが、eスポーツに関心のあるゲームファンは今が観戦を始める良い機会だと思う。ぜひ一度観戦してみては如何だろうか。